投稿日: Sep 19, 2016 1:8:17 AM
著者が質的な方法論の基本を実習を交えつつ解説した授業のやりとりを再現したもの。
仮説の立て方、インタビューの仕方、その資料をカテゴリーにまとめるグラウンディッド・セオリー風の分析の実際、等々、実に丁寧に語られていて、初心者にもある程度の経験者にも参考になるだろう。私なら1・2回の講義で片付けそうなことが1冊の本になっているのだけれど、それだけの手間が必要だということが実感できる。
著者はまことに懇切であり、対話的な人だ。そのため、単に初心者の陥る誤解が解かれるだけでなく、論理の隅々まで丁寧に光を当てていくという快感を感じられることだろう。
今や、著者は様々な活躍をしているわけだが、そういった原理的でありながら啓蒙的(本来の意味での)でもあり、平明な文章でそれが書ける希有な人だ。文章を読んでいると(最近とみにそうだと思うが)、濁った川が突然透明になり、底にある砂や小石や魚の泳ぐ姿が見えてくるような感じがすることがある。
(紹介:無藤 隆,2014年10月8日)