投稿日: Sep 19, 2016 1:6:55 AM
都会の真ん中に住んでいても、その片隅に草が育ち、花が開いているものだ。タンポポかもしれない。ヒメジョオンか。イヌフグリの可憐な花が咲いていたり、ドクダミの白い花が見えたりする。そんな街の風景をイラストレーター・絵本作家である著者が素敵な文章と植物画で見せてくれる。季節の折々の様子をどこでもよいので、開いてみるとよいのだろう。「図鑑」とあるけれど、多少の解説もあるものの、むしろ著者が生活の中で出会う草花との交際エッセイといったものである。どれもありふれたよく見かける植物ばかりだ。もっとも私はあまり植物の名前を知らないので、勉強になったけれど。
タンポポのところを読むと、図鑑風解説は少しだけ入れてありますが、むしろ早春の風景が目に浮かんでくるようだ。原っぱ公園の「南斜面にまわり、ふと身をかがめてよく見ると、枯れ芝の下に固く張った根を分けて、小さなタンポポの根葉がぴったりと地に貼り付くようにロゼットを広げていました。一つに気付くと、それは目で追う先々に数え切れないほど広がっています。中にはシロツメクサや霜に遭って鮮やかな赤色に変わっているヘビイチゴ、表が若草色で葉の裏の白いチチコグサモドキ、暗緑色のアレチマツヨイグサまで混ざっていて、丘にびっしりと冬の草芽のつづれ織りができ上がっていました。」
秋のところを見てみようか。あかまんまって懐かしい気がする。「カラスウリが色付き、公園のハナミズキの枝先にも赤い実がツンツンと上を向いています。ハゼの木はいち早く紅葉し始めましたが、大方の木々はまだ緑の葉をまとっています。赤いイヌタデの花が道々の楽しみでした。何本かを摘み帰り、足付きのグラスに生けてテーブルに置きますと、起きてきた夫が「ああ、あかまんまだね」と言いました。そう、私もあかまんまと呼んで、さんざんまなごとあそびの相手をしてもらった花です。玄関前のたたきにうすべりを敷いてもらい、妹とお隣のミキちゃんと三人でよくままごとをして遊びました。「おつかいしてきます」といって、アオキの赤い実、ツバキや茶の実、ジャクヒゲのルリ色の実、ツワブキの花やイヌダテの花を集めてきては、ままごとのごちそうにしました。」
今時の子どもはこういった遊びをするものなのだろうか。園にアカマンマの花は咲くのかな。花や実でごっこ遊びを出来るとよいのだけれど。
まわりがマンションだらけで、道は舗装されていても、ちょっとした公園や土手に草花が咲いている。あるいは花壇やプランターに大事に栽培されていたりもする。園の庭であれば、きっといろいろな植物が植えてあることだろう。まずは大人がその四季折々の変化を楽しんで、子どもと一緒の遊びに活かすようにしていくとよいと思う。
なお、図鑑として、「雑草のはなし」(田中修著、中公新書)も役立つ。
(紹介:無藤 隆,2014年11月8日)