投稿日: Sep 03, 2018 10:42:50 PM
乳児保育では、担当制を採用しているところがありますね。担当制(育児担当制とも言います)とは、世話をする保育者を、子どもごとに固定するという保育の方法です。毎日同じ保育者に食事、排泄、睡眠、沐浴などの世話をしてもらうことで、乳児は安心して過ごすことができます。それは「この人がいてくれたら安心」「困ったときに、この人が来てくれれば大丈夫」という信頼感につながります。毎日の生活の中で繰り返されるその関わりから、強い愛着関係が形成されるのです…授業では、こんな風に「担当制保育」について説明しています。
保育士として就職し、最初に受け持ったクラスが0歳児でした。その園は担当制を採用していましたので、就職した4月1日から、私は3人の赤ちゃんの担当になりました。出勤すると、まず連絡帳を読みます。「昨日は何を食べたのかな?」「寝た時間は?」…生活の一通りを確認した後、自由欄に書かれた家でのエピソードにニヤニヤするのです。毎日同じお母さんとやりとりするので、この一冊のノートは、まるで交換日記のようでした。
7月のある日、私は研修のため一日お休みをすることになりました。初めての不在。3人の子どもたち、大丈夫かなあ…研修中もなんだか落ち着かなかったことを記憶しています。さて次の日、連絡帳と共に代わりの人が書いた個人記録をドキドキしながら読みました。K君の欄には「担当保育士が不在、朝から探している。『先生いないねー』と言うと、『テンテー』と言う。」と書かれていました。K君は、それまで私のことを「先生」と呼んだことがなかったので、初めてのこと!おもわず、「今日は先生来たよ~」とK君を抱きしめました。
その頃からです。私が視界から消えると泣く…後追いが始まったのです。トイレに行くのも、お茶を取りに行くのも大急ぎです。就職して大変さも感じていましたが、でも担当の赤ちゃんたちとのかかわりで、私は本当に満たされていました。
担当制保育は「必ずうまくいく」という万能な方法ではありません。保育者が自分の担当しか見えなくなってしまうという事例が報告されることもあります。また、出張や休暇、ローテーションで不在になる時には、色々と工夫をしなければなりません。そのために二人体制の緩やかな担当制をとる園もあります。園により適切な方法は様々だと思いますが、でも私は自分の経験から、担当制保育は赤ちゃんの愛着形成にとても有効な方法だと思っています。
こうやって思い返すと、当時「私自身」が赤ちゃんによって愛着形成されていたのかな…とも思います。担当制保育の有効性は、新人保育者にもあったのかしら!?確かに私は、赤ちゃんたちによって心も体も動かされていました。新人だった私を育ててくれたあの子たちは、今、29歳…どうしているかなぁ。
(執筆:和田美香 2018年8月30日)