投稿日: Jan 21, 2018 5:25:15 PM
本書のテーマはタイトル通り「リフレーミング」である。一般に「リフレーミング」とは、物事の悪いところや短所を、良いところや長所に言いかえることで、認知やイメージの変換を図るものである。いわば「ものは言いよう」で、家族療法などではよく使用される技法である。著者はリフレーミングを以下のように定義とその効果について述べている。
リフレーミングとは、現象・事象に対する見方や理解の仕方に関する既存のフレーム(枠組み)を変化させることである。人のもっているフレームが変わることで、その感情や言動にも連鎖的に変化が生じる。それは家族や職場の人間関係にも影響するので、結果的にその人のおかれた環境も多かれ少なかれ変化する。(3頁)
個人個人の心の中の思いや、 それに応じて言葉として出てくることが個人的なフレー ムであり、自己規定であり他者規定となる。これを緩めること、あるいは変化させることをリフレーミングという。(95頁)
第1部では、システムズアプローチと呼ばれる著者の臨床の基となる心理療法について説明している。我々はしばしば、問題の本当の原因を探すが、「システムズアプローチが私たちに教えてくれる宝物は、要は一つひとつの内容(コンテンツ)ではなく、相互作用 が変わることが大切だということである」(216頁)と述べているように、生じている問題に対して、何が原因であるという唯一の正解はない。このシステムズアプローチの考え方がリフレーミングを理解するための ベースになっている。
第2部では、著者の心理療法の初回面接の内容を通して、リフレーミングの実際を学べるように4つの事例が書かれている。また各事例の後には、著者からの解説と、著者のゼミ生とのディスカッションが続くことで、より具体的にリフレーミングを学ぶことができる。そこでは、解決に向けての物の見方を選択することの重要性が示唆されている。そして、それは家族の相互作用を変えていくことを意味する。
また、本書では家族の成長する力を信じることの重要性を随所で説いている。
しかし、「どこからどうみても健康にみえない家族」はどうしたらいいのか、などと問う人もいる。しかしそれは、あなたが健康な面を探し足りないだけである。もっと意地悪くいうと、あなたが探そうとしないからである。家族を健康にする一番のコツは、「家族はいつも成長しつつある」とセラピストが信じることだ。目につくところがたとえどのような悲惨な状況にあっても、内部では成長のマグマがうごめいていると考えるのがよい。(164~165頁)
このような家族の力を信じることは、ストレングスの視点につながるものであるが、リフレーミングには欠かせない視点であろう。
本書は、保護者支援に活用できる。ただし、単に技法の活用にとどまらず、保護者を肯定的に捉えることの重要性を示唆するものである。
(紹介:鶴 宏史,2018年1月9日)
目次
第1章 システムとフレームの考え方
第2章 P循環療法
第3章 過食症の女性/個人面接
第4章 万引きの高校生/母子合同面接
第5章 息子の不登校/両親面接
第6章 娘の非行/両親・子ども合同面接