投稿日: Sep 19, 2016 7:6:41 AM
詩人新川和江さんの詩選集。恋をし、結婚し、子どもを産み、育てる。どこにでもいる特別でない女性として、周囲の人や自然を慈しみながら、けれども寄りかからずに、自立して生きてきた日々。その情景や折々に感じた事を、平易な言葉で表現したアンソロジーです。
保育に携わる女性は、目の前の子どもたちやそのご家族のために、様々なことを考え、悩みながら仕事をされていますが、真剣であるからこそ、視野が狭くなることも少なくありません。そんな時、勤務帰りの電車の中で、文庫本サイズのこの詩集を取り出して読むと、凝り固まった頭の中がほんの少し、ほぐれるのではないでしょうか。同じシリーズに茨木のり子さんの「おんなのことば」等がありますが、茨木さんの詩よりも、自分にぐさっとくるものが少なく、安心して(?)読めると思います。
「詩集なんてとっつきにくい」と思っている方の入門編としても。
子どもが笑うと……
ちいさな子どもが
クスッと笑うと
草の実が ぱちん! とはじけます
クスクスっと笑うと
木の葉がゆれて
ひかりが こぼれます
クスクスクスッと笑うと
もう誰だって
いっしょに笑わずにはいられない
朝の空気も 牛乳びんも
石段も 風も 遠くの海も
(「わたしを束ねないで」より)
(紹介:瀬木葉子,2015年10月30日)