投稿日: Sep 19, 2016 6:0:26 AM
『しあわせな明日を信じて―作文集 乳児院・児童養護施設の子どもたち―』
長谷川眞人監 修著
福村出版
2008年
この本は乳児院や児童養護施設の子どもたちの作文集です。乳児院や児童養護施設は保育所などの保育現場からは、ちょっと離れた位置にある子どもと関わる現場です。乳児院や児童養護施設といった社会的養護に関わる仲間の人たちとともに以前に作った本を紹介させていただきます。
施設の子どもたちの作文集はこの本の他にもたくさん出版されています。この本の特長の一つが最初に出版した作文集に書いてくれた同じ子に、3年後にも書いてもらっていることです。この本を発行するにあたって社会的養護の多くの子どもたちのことを理解してもらいたいと思ったため、児童養護施設だけでなく乳児院の子のことも載せることになりました。けれども乳児院の子は作文を書けませんので、職員の方にその子の様子やその子への思いを書いてもらいました。そして3年後には幼児になり乳児院から児童養護施設に移って暮らすことになった、その子の様子を職員の方に書いてもらったりしています。この本では子どもの作文だけでなく子どもと関わっている職員の方にも、子どものことを書いてもらっています。
第1巻では高校生だった愛さんは本の中で「今のところ具体的に就職したいとか進学したいとか、はっきりした考えはないけど…」と書いていました。3年後の第2巻では彼女は大学に進学していました。本の中で彼女は「本当にたくさんのことを悩みます。不安になります」と書き、レポートを書くためにパソコンを貸してもらいに施設に行き、夜遅くまで職員と語り合い、「今は答えがみつからなくてもいいよ」と職員さんに言葉をかけてもらい安心したことなどが書かれています。
他にも子どもたちの成長に気づけることがたくさん書かれています。そして子どもたちの成長を長く見守ってきた職員の方の思いも伝わってきます。
最後にちょっとだけお知らせをさせてください。近いうちに、子どもたちの作文集『しあわせな明日を信じて3』を出版する予定にしています。作文集で出会う6年後の子どもたちの成長を楽しみにしています。
(紹介:吉村 譲,2015年8月20日)