投稿日: Sep 19, 2016 6:4:52 AM
この本は、お手軽に正解がほしい人やふわっとしたあたたかさを求めている人には難しく感じられるかもしれません。
この本を読むということは、正しいことを鵜呑みにするような学習ではなく、うなずいたり首をひねったり考えたりしながら、保育にかかわる様々な実践や概念についての筆者の思考の過程に付き合うということです。いままでスルーしていた概念が分割され、その前提が吟味され、それが入念に具体的な実践とつなぎ合わされます。
だから、読み合わせには最適な本の一つです。評者は、学生を10グループに分けて、各章をまとめて発表させ(中間報告)、さらにそこからグループで考えて発展させて発表させたのですが(最終報告)、学部2年生でも、スマホ片手にみんなで必死に言葉を吟味していました。正解がないこととの格闘というか。また、非常勤先の大学院では、現場保育者(1名、男)と一緒に、それぞれ読んで線を引いてきて話し合うのですが、これが本当に勉強になりました。
一緒に悩みつつ、それぞれの解釈や現場での場面を出し合いながら、黒板に図式化したり直したりする過程で、自分なりの新たな知に開かれていくのです。そして積み残された課題は、研究や実践に関わりながら考えていくことへの新たな起点になります。
独自の理想論といったものではなく、徹底して子どものリアリティに基づいた検討と問いかけから、評者は子どもへのニュータイプの賛歌にもなっていると感じました。筆者の意図とは異なるかもしれませんが。
(紹介:矢藤 誠慈郎,2015年8月30日)
目次
第1章 遊びとは何か
第2章 園の環境デザイン
第3章 園における音環境と表現
第4章 身体の動き
第5章 積み木と組み立て遊び
第6章 ごっこ遊びの分析
第7章 造形活動とは
第8章 協同性を育てる
第9章 美への感性を育てる
第10章 感情の場としての園環境