投稿日: Sep 19, 2016 7:3:22 AM
保育・幼児教育の遊び・記録研究の第一人者(と紹介者が信じている)河邉貴子さんが、ホスピスでご主人と過ごした最後の71日間の記録に、同じ時を「共に歩」かれた山崎医師がメッセージを加えています。
40歳前後に最愛の人を見送らなくてはならないという辛く、怖い日々の中で、筆者が始めたのが病室(116号室)での様子をユーモラスに書き記した「116NEWS」という絵手紙を部屋のドアに貼りだすということ。それはご夫妻のささやかな楽しみであるだけでなく、同じように最期を迎えなければならない、ホスピス内の他の患者さんやご家族の気持ちを和らげるものでもありました。さらに、ご主人を亡くされた後、その記録を著書にされたことにより、「ホスピス」の認知に役立ったことはもちろん、同じ境遇の多くの方への励ましとなったと思います。
いとおしい人への細やかな心遣い、まなざし。辛い時にも忘れない遊び心。そして、客観的(であろうと努める)な記録。どれも保育・幼児教育に関わる者に欠かせない大事な要素であり、学ぶところが大きいです。
また、実践者から研究者への転機ともなったであろうこの著作は、一人の女性が自立して生きる覚悟を決めるためのものでもあったろうと想像します。
2000年に発行された著作に近況を加筆し、2014年に改訂新版として、聖公会出版から出されています。そのことに関し、ある会合で筆者は「この本が絶版になると聞いて、龍一さん(ご主人)が死んでしまうというような悲しい気持になったが、新たに出版され、また一緒に生きていかれると思い、とても嬉しかった」と話されていました。
(紹介:瀬木葉子,2015年10月30日)