投稿日: Sep 18, 2016 12:26:29 PM
私(内田千春)の元勤務校オハイオ大学(Ohio University)アセンズキャンパスにある付属子ども発達センター(Child Development Center)をご紹介します。理想的な施設であるとは、CDCの先生方もオハイオ大の教員たちも思ってはいませんが、理想に向けてできる限りの努力を積み重ねてきたと胸を張って言える。そんな園です。
玄関
このCDCという名称はラボラトリースクール(研究目的で設置された大学附属の幼児教育施設)に一般的につけられている名称です。設立は1972年、医療・福祉・家政学系の学部に所属していましたが、学部再編により小学校から幼児の免許を教育学部で出すようになったため、現在は教育学部付属になっています。
オハイオでは義務教育は6~18歳です。学校区で幼稚園(1年間)を置いている場合は5才から、ない場合は6才から小学校に通います。学校に入る予定の年の1月1日に5才になっていれば、その年の8月か9月に入学することができます。
入り口から教室の方へ向かう、センター長たちのオフィスの前
オハイオ大学のCDCでは、6週間~5才の子どもたちが朝7時半から夕方5時半まで過ごすことができます。
プログラムは、乳児infants、よちよち~2才児toddler & Two、3~4才プレスクールに分かれています。 乳児は子ども3名に教員1名、よちよちから上の年齢は2学年の混合クラスで、1クラスの平均よちよち~2才で12人、プレスクールで18人の子どもに対し、ベテラン教員が2名+複数の教育実習生が常に入っています。
0~1才のinfant roomsの前を通っていくと、建物の1階の中心にある共有スペースへ
地域の子どもたちとその家族への貢献と同時に、次世代の教員の養成もセンターの大切なミッションとして公式にうたわれています。大学附属ならではです。(そちらの仕組みはまた別の回に。)
ところで、アメリカから最初にイタリアのレッジョエミリアに行った先生たちのグループの
メンバーの多くがオハイオの人たちだったというのはご存知でしょうか。その時の血気盛んな若い先生たちが今は教育省の幼児教育担当官、教員養成大学の教授、ヘッドスタートの理事長等各地域のキーパーソンになっています。
同じエリアにあるライブラリー
このセンターのカリキュラムは、アメリカで一般的なDAP(発達に適した実践)と構築主義理論(constructivism)に基づいており、レッジョエミリアアプローチの影響を受けています。そのカリキュラムは、次のことを前提としています。
学びは、子どもたちの発達しつつある認知・情操システムと環境とのダイナミックな関わりあいの結果おきるものである。実践では、発達段階と力に応じた継続的な成長を支援する環境を提供している。(ホームページより)
社会構築主義(social constructivism)の考え方を明確に出すことで、応用行動主義的な「目に見えるカリキュラム」との対比をはっきりさせようとしています。これは、このセンターを訪れる学生や見学者へのメッセージでもあります。
絵を描くことができるテーブル
親向けには、こんな風に紹介しています。
CDCで働くスタッフは次のことを信じています。
・ 子どもたちは有能であり、知識を自分で構築していく力があること
・ 子どもたちと実習生にとって、養育的かつ刺激的な環境を創造することでベスト・プラクティスのモデルを提示できること
・ 幼い子どもたち、学生、そして家族に、関わり合い、関与し、振り返る機会を提供し、生涯に渡って学び続ける学び手のコミュニティを創造すること
・ 子どもたちは周囲の世界への能動的な参加者であるべきである。すなわち、家庭や、地域、センター、ザ・リッジ(園のある地域名)、大学、アセンズ市、そして世界の一員として。
このような学び観に基づいて、どのように保育が組み立てられているのか、 次回引き続きご紹介します。
CDCホームページ
https://www.ohio.edu/education/centers-and-partnerships/centers/child-development-center/
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両側にある白い棚は子どものロッカーです。(この手前には乳児の部屋がありますが、子どもが写らないように写真を撮ることができなかったので写真がありません。)
(2015年8月1日 / 内田 千春)