投稿日: Apr 18, 2018 2:58:40 AM
作 小西貴士
絵 石川えりこ
童心社
2016年9月1日 第1刷発行
この絵本は子どもの気持ちが痛いほど伝わってきて切ないくらい。児童書と違い、子どもの気持ちがしっかり描かれている絵本ってありそうでない気がする。後半になったら、今度はお母さんの思いが伝わり、涙がこぼれてしまった。
関西弁で「なあ とうちゃん ばくな また かあちゃんに おこられてん」ではじまる。「かたづけや~!」「また こんなのこして~」「まだやんのかいなあ~」とかあちゃんに怒られた言葉に、どうしてそうなったのかをお風呂でとうちゃんに語っていく。とくに「また うそついて~っ」と叱られて「ぼくな うそついてまう。ぼくがやったって しったら、かあちゃん おこるやろ」と語る場面では見ていた、子どもたちの顔が、心当たりがあるって感じで一瞬変わった。そうなんだよね、でも親は嘘つかれるのが一番いやだしね、とわたしも子どもたちの顔を見ながら心の中で思う。
そして、とうちゃんは、「けんたろうよお、・・」と、けんたろうが頭をうって救急車で運ばれたときのかあちゃんのことを話してくれる・・・・。それをお風呂の外でパジャマを持ったまま聞いているかあちゃん。読み終わると、一緒に見ていたお母さんたちが顔を見合わせて「そういう展開だったんだ」「やられちゃいましたね」と涙ぐむ。大人にも読んでもらいたい。
作者は森で子どもたちの写真を撮り続けている、小西貴士さん。そういえば小西さんの「子どもは子どもを生きている」を読んだときも涙が止まらなかった・・。写真という瞬間の場面で子どもたちのことを伝えることをしているから、短い文章で思いを伝えることができるのかも。ちょっと目立たない絵本だけれど、手にとって読んで欲しい1冊です。
(紹介:安井素子, 2018年4月10日)