投稿日: Aug 21, 2018 9:50:17 PM
もう10年前になりますが、保育者養成校で初めて担当した科目が「乳児保育」でした。 テキストは何が良いだろうか…と悩みながら色々眺めました。そして、ふと思った事があります。「乳児保育」って一体何だろう?これから授業を受け持つという人が、そんなことをつぶやいたら、関係者の誰もが不安になると思ったので、もちろん口には出しませんでしたが。でも、ふと、そう思ってしまったのです。テキストをパラパラとめくると、発達や、食事、保健関連のこと…テキストの一章一章が、他の科目のミニチュア版に見え、「乳児保育ってその寄せ集まりなの?」という印象でした。もちろん優れたテキストもたくさんあるでしょう。ですが、たまたま手に取ったテキストを見て、新米の私には、そう見えてしまったのです。 発達のことは「発達心理学」の専門家の講義があるし、離乳食の詳細は「小児栄養」(当時)で講義を受けているだろうし、保健関係は「小児保健」(これも当時の名称)で医療関係の専門家が担当しているのだろうし…。
さて、そんな中「乳児保育」として、私は何を教えればいいのだろうか。発達心理学の専門家でも、脳科学の専門家でもないし、医者でも看護師でもない、ただ0歳児クラスを担当したことがあるという、元保育者…そんな立場で、私は何を教えたらよいのだろう…と、テキストを前に悩み考えました。
色々考えた末、「乳児保育」という科目は、その各論に含まれる重要な知見を現場につなげる役目として期待されているのではなかろうか…というところに辿り着きました。その知見が、現場でより生かされることを目標にして授業を展開すればよいのではないか、と考えたのです。「月齢の違う赤ちゃん集団というクラスの中で、一人一人の快適な生活や発達に合った遊びを、どう確実に毎日保障していくか」ということを考えていくことが、この授業の肝なのだ、と生意気ながら思ったのです。限られた空間、予算、保育者の数、それを最大限に生かしながら、この各論で述べられている重要なところを実現させていく…その視点から、大人が動き、環境を考え、赤ちゃんたちにとって最適な場をそれぞれが工夫して作り上げていく…その土台としての知識。するとここは、もしかしたら現場経験者の出番なのではないか、そんなふうに考えたのです。無理矢理にでも、そんなふうに考えなかったら、私は怖くて教壇に立てませんでした。
さて、そんなスタートで「乳児保育」の担当者になったわけですが、授業をする中で、現場でのあんなこと、こんなことを思い出すことしばしば。それらを「つれづれに…」ぽつぽつと書いてみたいと思います。何が正しいとか、そのやり方は間違いとか、そういうことではなく、今、現場で赤ちゃんたちと向き合っている方々や保育について学んでいる方々のどこかに、なんとなく引っかかって、思考のどこかにホワンと風のように流れたならば幸いです。保育士として経験するなかで思った私なりのあれこれ。「つれづれに…」お付き合いいただけたらと思います。
(執筆:和田 美香 2018年6月27日)