投稿日: Sep 18, 2016 4:16:7 PM
秋田さんの保育エッセイの最新作。
大学テキストや研究論文ではなく、「ある出来事をもとにしたその折々に私が本当に心動いたこと」を書いたもの。見開きにそのエピソードとそこでの保育の原則が明示される。どのページもなるほどと感じ、またそうかと考え込む。
例えば、
「子どもの声を聴くとともに、その声を具体的に、どのような手だてとして実現したら次への意味ある活動につながるのか。そのことを即興的に考え出す、保育者の専門知識にもとづくひと手間、ふた手間かけた保育。」
「散歩に出かけて摘んできたのであろうタンポポや花が、小さな瓶に生けられているのが目に留まりました。ひとりひとつずつ生けてあります。中には、大きな枯れた葉を3枚拾ってきて、オブジェのように立てている子どももいます。
「水を張った透明のボウルに、ピンクのビー玉と散ったチューリップの花びらが浮かべられていました。チューリップの花が終わっても、花びらをそのまま捨ててしまうのではありません。ひと工夫して水に浮かべたことで、美しさと共に、咲いているときには見られない花びらの内側も見ることができるのです。」
小さい襞に届く感性と、たおやかな文章、そしてそこにある骨太な理論、この類まれな組み合わせを楽しむことができる。一連の小著は日本の保育の結晶にさえ見える。
なお、見開きごとに保育の写真が掲載されている。宮前幼稚園の亀ヶ谷さんのもの。これもおそらく日本の保育の映像として突出していると思う。写真集としても読むことができる。
(紹介:無藤 隆,2014年8月7日)