投稿日: Sep 30, 2016 12:42:16 PM
前回取り上げた「アクティブ・ラーニング」について、家庭教育の重要性という側面から無藤デスクが解説した投稿をピックアップしました。
投稿者:無藤 隆
投稿日:2016年9月16日
Facebook記事からの転載
家庭教育と学校教育をつなぐ(親向けメモ)。
家庭で親として子どもの学習をどう面倒見たらよいのか。
今後の学校教育で大事なことは二つある。基礎的な知識を教えることと自ら学ぼうとする姿勢を育てることだ。(後者のことをアクティブ・ラーニングと呼ぶことがある。)
勉強全般で言えば、大事なことは二つある。試験に向けての勉強を半分、残りの半分は試験のその先の長い行く末を見通して学ぶことだ。それは簡単に言えば、出題範囲の学びと出題範囲を超えて、それを時には無関係でも学ぶことだ。後者があって、その学びは仕事や人生の豊かさにつながる。そこで一番必要なことは入試が終わり、卒業をしても、学び続けることであるが、そのためには、学ぶことは楽しいと実感する経験と、一人やネット・本で学ぶスキルや習慣を身に付けることだ。(なお、たとえば、実用的な英語は入試だとせいぜい5千語程度の語彙数だろうが、実用的なものは2万から10万語程度になる。)
その上で、教師の指導によらない学習を4つに分けてみよう。
一人で学ぶ。
一緒に学ぶ。
調べて学ぶ。
体験して学ぶ。
どれも家庭でやったらよい。調べて、と体験して、を含めることが大事だ。家庭でしか出来ないとか、時間を掛けられないことはけっこうたくさんある。
その際、特に、一人で学ぶにせよ、親はそれをそばにいてやることはまだあまりうまく学べない段階の子ども(小学生でも中学生でも)に意味がある。大事なことは教えることより、聞いてやることだ。子どもに説明をさせ、解説してもらう。それを親は感心して聞けばよいのである。「9と3を足すとね、12でしょ、その十って横にちゃんと1って書くんだよ」「へー、そうなんだ。さすが小学生、難しいこと勉強するんだね。」とか。「因数分解って全然わかんない。」「たしかに分からないね。何か昔教わった気がするけど、忘れたなあ。そもそもその問題って何さ。」「だからね、・・・って書いてあって、それを何か他のことに変えるらしいのね。」「なるほど。他って何だろうかね。」・・・・・
分かったことについて感心する。分からないことについて説明を丁寧に聞いて、分からないことを解きほぐしつつ、難しいことを考えているだと感心して聞いていく。子どもは多くの場合、答え以前に問題が何を聞いているかが分からない。分からないことを解かなければいけないことにめげている。それを支えるのは子どものやっていることに感心するのが一番だ。
子どもの関心を広げよう。学ぶことは専門家の世界では、こう分けている。
学校教育
社会教育
社会教育って言うのは、塾とかだけではなくて、趣味の世界の学びも含めるし、さらに近頃は先生につかなくて、ネットや本で楽しんでいる内に覚えることも含めるようになった。だから、受験とか補習と共に、例えば、プロになっていく将棋やピアノやサッカーやマンガやプログラミングも入ってきた。金にならなくても、釣りが好きだとか、昆虫採集だってそうだ。
そういう趣味に近いところでこそ、「自ら学ぼうとする姿勢」が養われる。それがある子どもはどこかで大人になって他で学ばないといけなくなると、その経験を活かすことが出来るようになるだろう。これからの社会はそういう子どもが大人になってこそ、生き延びていき、仕事で生計を立てつつ、生きがいを見出す人生を送れるのではないだろうか。
※この記事の転載については,ご本人の了解を得ています。
私が所属する園では「自ら学ぼうとする姿勢を育てること」「学ぶことは楽しいと実感する経験」を大切にしています。また、その過程において、そばに大人(保育者)がいることに意味があることも実感しています。就学後、家庭教育と学校教育をつなぐ働きを保護者が自覚的に行うためにも、就学前教育を担う立場からの情報発信・共有のための場づくりが重要となります。
これから保護者となる世代、保育者・幼稚園教諭を目指している皆さんにも、ぜひ伝えたいメッセージです。
(執筆:中村章啓,2016年9月27日)