投稿日: Sep 19, 2016 1:2:53 AM
著者は保育所勤務もある保育学者。専門は保育史研究。保育実践に詳しい。
本書は保育の現在の制度変更に伴う諸事情を丁寧に解説する。戦後のとりわけ保育所の歴史をたどりつつ、子どもの権利としての保育について考察している。また、現場の保育の姿を生き生きとした筆致で描いている。
必ずしも子ども・子育て新制度について賛同していないところも多いと思われるが、その解説は公平である。真摯な議論である。どのような立場にある人にも保護者などにも参考になると思う。
こう書いている。
努力すべき方向性は、「子どもにとって最善の利益」を守るという姿勢で取り組むことだろう。私たちおとなは、混乱を少なくして、信頼関係をとりもどす努力を粘り強く重ねていかねばならない。
国・自治体は、日本社会の将来そのもの=子どもたち、のために、財政の拡充をはかり、公立保育園・私立保育園をはじめとした公的保育の拡充に、力を尽くすべきではないだろうか。
特に、自治体が直接責任をもつ公立保育園の役割を確認したい。児童福祉法の理念を踏まえ、養育困難な子どもや虐待のおそれがある子の入所義務をはたすことなどである。
さらにあとがきにはこうある。
新制度への率直な批判をすること、積極的提案をすること、いずれも大事にしたい。議論を重ね身近なところから改善できることに着手したい。ここから子どものために真に求められる内容が明らかになる。粘り強さが必要となる取り組みだが、子どもたちの生き生きとした姿へ共感し、おとなたちが手をつなぐことで、たしかな光を見つけ道筋を示すことができると思うが、どうだろうか。
私もそう思うのである。
(紹介:無藤 隆,2014年10月26日)