投稿日: Apr 30, 2018 12:30:30 PM
1)公開保育への抵抗感を払拭しよう
「保育を公開しよう!」とのタイトルをみてどのような印象を持たれたでしょうか?
「ちょっとイヤだなぁ」「恥ずかしいなぁ」「怖いなぁ」といったネガティブな印象を持たれた先生方もおられるのではないでしょうか?公開保育といえば、他の先生方や外部の講師に保育を観られて、いろいろと批判されてしまうのではないか、と思っておられる先生も多いかもしれません。しかし、ちょっと発想を変えていただけたらいいのに、と私は思います。
2)子どもこそが保育の一番の評価者
保育現場の先生方は、一番厳しい評価者に毎日その実践をさらされています。このことを思い出して欲しいと思います。つまり保育の一番の評価者は子どもたちです。子どもの発達や興味関心に適していない活動や、不適切な関わり方に対して、子どもたちが、一番見える形で反応し、ある意味、厳しい態度で評価を下しています。それに対して、センシティブに反応されない、子どもの評価を意に介さないような鈍感な先生方は保育現場にはほとんどおられないと思います。仮に、園長や主任、保護者の目ばかりを気にして、子どもの姿から子どもによる保育実践への評価を気にしない状態になってしまっては真の意味での保育実践力の向上がなかなか期待できないと思います。
「子どもこそが保育の評価者である」ことを念頭におけば、公開保育への抵抗感がずいぶん和らぐと思います。公開において、保育を見学された同僚や参加者の方、外部講師の先生方のコメントをとらえる時に、それが絶対ではないものとして受け取ることが大切です。個々の子どもの特徴、クラスの雰囲気、昨日までの子どもたちの姿を知らない方が語るコメントです。
3)善意ある同僚性を前提としよう
公開保育での参加者のコメントの受け止め方についても、是非、意識改革をしていただきたいと私は思います。参加者のコメントは、「自分はここに気付かなかった、是非、自分のクラスでもこうしてみたい」といったものや「もし自分だったら、こうすると思う。なぜならば。」といったものが多いと思います。これらは、まさに実践が好きで、実践がよりよくなるためにはどうしたらよいのかを自らも試行錯誤している立場からの発言です。よりよい実践となるために、共に考えたいという、同僚意識や、子どもたちへより楽しくより実りある保育実践を創っていきたい、との願いを込めた、善意からなされる発言であり、提案です。
1)園内でよく語り合う
公開保育の後、公開された先生方からよくお聞きすることは、公開保育によってスタッフの一体感がうまれた、より同僚意識が高まったという、園の人間関係によい影響をもたらしたということです。また、保育についても、公開保育の準備にあたって、日ごろの保育を第三者の視点からはどう見えるのだろうか、といったかたちで客観的に見直すきっかけとなった、今までにも思っていたけれどもこれを機会に環境の充実や行事の見直し保育の方法などについて意見を言うことができた、本園の特徴や自負できることなどについて改めてみんなで確認することができた、といった声もよく聞かれます。
これらの背景には、公開保育に向けて、保育者同士がよく語り合う時間が増えることがあると思います。
2)指導案を作成する
実践にあたり、部分的なものでも構わないので(公開する時間が1時間であればその時間だけでもよいと思います)、指導案(部分指導案、細案)を作成して欲しいと思います。子どもの姿を予測し、期待し、子どもの気付きや育ち、学びにつながる環境構成と保育者の援助や配慮の関係が分かるように記載することは、当日子どもたちの姿をよりみとる準備となります。また参加者にも視点を持つ上で役立つ資料となります。
指導案は保育を公開する先生にとっても、参加される先生にとってもよい事後の学びの教材になります。持ち帰り園内研修に活用することもできます。例えば指導案の「子どもの姿」欄のみをみて、自分ならどのような「ねらい」を考えるであろうか、書いてみます。「ねらい」の欄をみて、この「ねらい」につながる「環境構成」や「保育者の援助や工夫」をそれぞれ違う色のマーカーで印しをつけてみてもよいでしょう。保育を公開した先生も予測と違った子どもの姿や、実践で計画よりもさらに工夫した点などを描き加えてみることもよい研修となります。
3)事後検討会を実施する
公開保育の後には、事後検討会を実施することが望まれます。公開した先生方の自評に加えて、参加者や助言者への質問などを含めると対話型の振り返りとなり、参加者との一体感も生まれます。参加者の質疑やコメント、助言指導者のまとめの講評を含め、多くの人が発言するような事後検討会となるような工夫が望まれます。実践力の向上には実践を振り返り、良い実践はより着実に自分のものとすること、他者のアドバイスをたくさん得て次のとっさの判断における引き出しを増やしていくことが不可欠です。
事後検討会については、「自分では普段通りで特に意識していなかった自分の実践の良い点を多く参加者から見出してもらい、認めてもらって自信がついた」といった意見や、「自分と同じ悩みを抱いている先生がたくさんいることが分かり、一緒に考えることができてよかった」といった感想がよく聞かれます。単なるセレモニーにならないように、参加型の検討会としたいものです。
4)打ち上げ(慰労会)をする
公開保育の後に、公開した園のスタッフ間での事後の打ち上げは是非実施して欲しいと思います。慰労しあうことで一体感が強まり、共に学ぶ職場のさらによい雰囲気づくりにつながります。公開にあたり頑張ったことを評価し、得たものをしっかりと確認し、さらなる宿題を確認して欲しいと思います。公開の経験を自信につなげ、さらなる連携と発展をめざして欲しいと思います。管理職の方には、特に評価を園内に留めることなく、子どもたちの姿も含めて先生方の頑張りを保護者や地域にも発信して欲しいと思います。
「公開に、後悔なし、効果あり」
実践力の向上には、省察、気付き、学びの同僚性づくりが大切であると思います。実践力は実践からの学びによってこそ向上すると思います。公開保育を恐れずに。多くの園が公開保育にチャレンジしていただきたいと願っています。
次週の記事は【008 保育のアクション・リサーチのすすめ】です。
※本記事の内容は、特定非営利活動法人ちゃいるどネット大阪情報誌「ちゃいるどネットOSAKA」に掲載されたものを許可を得て転載しています。
(執筆者:北野幸子 2018年3月20日)