投稿日: Apr 01, 2018 12:28:46 PM
保育者にとっての研修とは?
まず、その位置づけを再度確認しておきましょう。
『児童福祉施設の設備及び運営に関する基準』
(児童福祉施設の職員の知識及び技能の向上等)
第七条の二 児童福祉施設の職員は、常に自己研鑽に励み、法に定めるそれぞれの施設の目的を達成するために必要な知識及び技能の修得、維持及び向上に努めなければならない。
2 児童福祉施設は、職員に対し、その資質の向上のための研修の機会を確保せねばならない。
『保育所保育士指針』第七章 職員の資質向上
3 職員の研修等
(一)職員は、子どもの保育及び保護者に対する保育に関する指導が適切に行われるように、自己評価に基づく課題等を踏まえ、保育所内外の研修等を通じて、必要な知識及び技術の修得、維持及び向上に努めなければならない。
(二)職員一人一人が課題を持って主体的に学ぶとともに、他の職員や地域の関係機関など、様々な人や場との関わりの中で共に学び合う環境を醸成していくことにより、保育所の活性化を図っていくことが求められる。
『教育基本法』
第九条 法律に定める学校の教員は、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない。
二 前項の教育については、その使命と職責の重要性をかんがみ、その身分は尊重され、待遇の適正が期せられるとともに、養成と研修の充実がはかられなければならない。
園内研修の前提として、保育者の研修は、保育者としての仕事を従事するために不可欠なものとして位置づけられていることを確認しましょう。その場合、研修は自己責任によるものというだけではなく、公的なシステムとして位置づけられていることを確認しましょう。
研修は、個々の自助努力として、自己研鑽としての位置づけのみならず、施設が確保すべきこと、さらには、公的にその整備がなされなければならないということです。それと関わり、『教育基本法』の第九条の二にあるように、その仕事の社会にとっての意味、大切さ、つまり「重要性をかんがみ」、その「身分」が「尊重」され、「待遇の適正」がはかられ、「養成と研修の充実がはかられなければならない」のです。つまり重要な仕事であること、それゆえに研修が保障されねばならないと位置づけられているのです。
よって、研修の実施は、専門職の自負とつなげていただきたいのです。保育者は誰にでもできる仕事ではありません。その専門的な知識や技術は少しの研修で身につくものではありません。保育は養成さらには現職になってからも学び続けねばできないという仕事であるということです。このことを保育者がしっかりと自覚し、自らの仕事に誇りをもって、研修についてもその必要性のある高度な専門職であるということを認識して欲しいと思います。
1)園の研修を振り返ってみましょう
多くの園長・主任等から受ける研修についての相談の内容は、大変厳しい就労状況の毎日にあって、研修についての、やらされ感、負担感をどうやって払拭することができるのか、といったものです。
やらされた感のある研修から、主体的な研修へといかに変えていくことができるのか。まず、以下について省察してみてください。
①研修のテーマはだれが決めていますか?
②頻度は?スタッフに聞いてみましょう。多い?少ない?適当?
③研修の受け止め方は? スタッフに研修評価アンケートをとってみましょう。
④疲労感は?
2)内発的動機づけを高めましょう
主体的な研修となるように、研修の内容について、スタッフの興味関心と関連づける努力が必要であると思います。スタッフの保育の振り返りの記録の内容との関係性、日ごろの悩みとの関係性、自分のクラスのこの子どもの状態との関係性、といったことを踏まえて研修を考えたいものです。
①動機づけ:スタッフにとっての研修の自明性と必然性を常に考慮したいものです。自分の保育、クラスの子どもと研修が関連あると意識できるように、研修を実施するにあたっては、具体的な子どもの姿(興味関心、発達の特徴、生活課題等)について話したり、語ったりするようにしましょう。
②研修の参加と参画:研修のプロセスにあたっては、受け身にならないように、能動的な、アクティブな研修となるような工夫したいものです。個々のスタッフが、ただ聞くだけではなく、発言したり、考えたり、創ったり、時に研修企画や登壇などの機会を設けて、能動的な参加の機会を多用に設けたいものです。ひとり必ず一つ発言する(感想、疑問、提案)ことからはじめるのもよいでしょう。
③研修の効果、意義の実感:研修が役に立った、と感じることができるように、明日の保育に何をどのように反映させるのか、明日の保育にいきる行動目標を持つ工夫が有効であると考えます。研修の次の日に、クラスの環境構成をどう変えるのか、どの子どもにどのような援助をするのか、言葉をかけるのか、そのシミュレーションを是非行って、研修のまとめとしたいものです。研修を、個々の保育者の自信や、次への希望にいかにつなげるのかが大切であると思います。
④研修の後の評価:研修の後、スタッフの評価を行うことが大切です。抽象的評価ではなく、変化を具体的に可視化し、発信することも大切でしょう。保育者の自信や意欲につながる評価は、管理職の発信の仕方による部分も多いでしょう。研修や研究の実態を活字や映像で可視化し、保護者や地域にも発信し、専門職としての自負や誇りにつなげたいものです。
次週の記事は 【004 保育実践力の向上のために保育を一緒によく「考える」研修を】 です。
※本記事の内容は、特定非営利活動法人ちゃいるどネット大阪情報誌「ちゃいるどネットOSAKA」に掲載されたものを許可を得て転載しています。
(執筆者 北野幸子 2018年3月17日)