投稿日: Dec 21, 2016 1:19:37 AM
研修が心と体の負担にならないように。元気になる研修のスタートを。そんな雰囲気づくりにつながる、研修の事例や資料を紹介したいと思います。
親しくさせていただいている保育所・こども園・幼稚園の園長先生が、研修にあたって、スタッフの研修への負担感、疲労感がよく指摘されます。研修のスタート台に立つ上で、研修の位置づけを確認し、元気な気持ちにつながるように促すことを提案したいと思います。
以下、研修例を紹介しましょう。
1)『教育基本法』第九条や、『児童福祉施設の設備及び運営に関する基準』第七条の2を、園内研修で一緒に読んでみましょう。
『教育基本法』
第九条 法律に定める学校の教員は、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない。
二 前項の教育については、その使命と職責の重要性をかんがみ、その身分は尊重され、待遇の適正が期せられるとともに、養成と研修の充実がはかられなければならない。
『児童福祉施設の設備及び運営に関する基準』
(児童福祉施設の職員の知識及び技能の向上等)
第七条の 児童福祉施設の職員は、常に自己研鑽に励み、法に定めるそれぞれの施設の目的を達成するために必要な知識及び技能の修得、維持及び向上に努めなければならない。
2 児童福祉施設は、職員に対し、その資質の向上のための研修の機会を確保せねばならない。
2)読んだ後に以下について、スタッフで語り合ってみましょう。
参考となる視点:研修と保育者の仕事の重要性、身分保障、待遇の適正との関係について
研修は、個々の自助努力として、自己研鑽としての位置づけのみならず、施設が確保すべきこと、さらには、公的にその整備がなされる必要があるということです。それと関わり、『教育基本法』の第九条にあるように、その仕事の社会にとっての意味、大切さ、つまり「重要性をかんがみ」、その「身分」が「尊重」され、「待遇の適正」がはかられ、「養成と研修の充実がはかられなければならない」のです。つまり重要な仕事であること、それゆえに研修が保障されねばならないと位置づけられているのです。
よって、研修を実施は、専門職の自負とつなげていただきたいのです。保育者は誰にでもできる仕事ではないということ、わずかな時間の研修で身につく知識や技術ではなく、養成さらには現職になってからも学び続けねばできないという仕事であるということです。このことを保育者がしっかりと自覚し、自らの仕事に誇りをもって、研修についてもその必要性のある高度な専門職であるということを認識して欲しいと思います。
1)園の研修を振り返ってみましょう
多くの園長・主任等から受ける研修についての相談の内容は、大変厳しい就労状況の毎日にあって、研修についての、やらされ感、負担感をどうやって払拭することができるのか、といったものです。
やらされ研修から、主体的な研修へといかに変えていくことができるのか。まず、以下について省察してみましょう。
①研修のテーマは、誰が決めていますか? 自分で提案してみましょう
②研修の頻度は、どう思いますか? 多い・少ない・適当? 具体的回数は?
③研修は楽しいですか? どこが? どんなふうに?
④研修で学んだことが、自分の保育に役立っていますか? 何が? どんなふうに?
⑤研修で工夫したいこと、アイディアをあげてみましょう
2)当事者意識を高めましょう
主体的な研修となるように、研修の内容について、自分や他の先生方の興味関心と関連づける努力が必要であると思います。保育者が保育を振り返って作成した記録内容との関係性、保育者が日ごろ感じている具体的な悩みとの関係性、保育者自身のクラスにいるまさに「この子ども」の状態との関係性、といったことを踏まえて研修を考えたいものです。
①内発的動機づけ:まず、各保育者が、自分のクラスの具体的な子どもの姿(興味関心、発達の特徴、生活課題等)を語り、研修テーマとの関係性を確認しましょう。
②参加から参画へ:各保育者が、発言したり、考えたり、創ったり、研修企画をしたり、実際に講師になるなどの機会を設けましょう。感想、疑問、提案などをひとり一言、話すなど、当事者意識を高める工夫をしましょう。
③効果、意義の実感:研修を明日の保育に何をどのように反映させるのか、行動目標を確認しましょう。クラスの環境構成をどう変えるのか、どの子どもにどのような援助をするのか、言葉をかけるのか、そのシミュレーションを行いましょう。
④事後評価:抽象的評価ではなく、変化を具体的に可視化しましょう。園長やリーダー、スタッフ同士など園内での個人的な評価だけではなく、研修や研究の実態を活字や映像で可視化し、保護者や地域にも発信し、専門職としての自負や誇りにつなげたいものです。
なお、研修に関しての法規定や、具体例について学ぶには、以下の文献をおすすめします。
保育教諭養成課程研究会(2015) 2014年(平成26年度) 文部科学省委託「幼児養育の改善・充実調査研究」『幼稚園教諭・保育教諭のための研修ガイドー質の高い教育・保育の実現のためにー』
全国保育士会(2011年(改訂))『保育士の研修体系~保育士の階層別に求められる専門性』