Chapter 11 Peer Relationships in Childhood
K. H. Rubin, J. C. Bowker, K. L. McDonald, & M. Menzer
pp.242-275.
子どもの仲間関係に関する学術的な議論というのは、少なくとも1800年代後半から1900年代初めにターマン(LuisTerman)やスタンリー・ホール(Stanly Hall)など著名な心理学者らによってなされてきました。
1931年に出版されたHandbook of Child Psychology(Murchison,1931)では、子どもの仲間関係に関する内容が2章分も言及されており、それだけこの分野が当時注目されていた証でもあります。
その後、子どもの仲間関係に関する科学的な興味は強まったり弱まったりしましたが現在でももちろん重要な研究分野として継続されています。もちろん、初期の研究と現代の研究を比較すると、方法論的厳密さや洗練さに大きな隔たりがありますし、研究仮説についても発達的指標の強調していた時代から現代では個人差の重視へと転換が起こっています。
本章では、子どもの仲間関係に関する現代の研究の理論的基礎となったピアジェ(Piaget,1932)等の研究から現代の仲間関係に関する研究までを紹介しています。
子どもと青年の生活において、「仲間」は重要なものだと言われている。本章では仲間との相互作用、仲間との関係性、仲間集団に関する研究に関した理論を議論することから始める。次に検討するのは子どもの友達関係の頻度(prevalence)、安定性、特徴、相互の友達関係や適応困難を経験する他人との友達関係を持つことによる心理社会的関係と結果についてである。それから、本章では仲間受容や拒否、人気の評価について、そして行動的、社会認知的、情動的、自己システムに付随するものについて、仲間受容や拒否の縦断的結果に着目する。その後、子どもと青年の仲間集団や派閥(cliques)、集団(crowds)に関して現存する文献について述べる。次節では、文化と仲間関係に関して増加しつつある文献について議論する。そして、まとめでは、子どもの仲間関係の経験の個人差を理解するための相乗相互作用的で発達的な枠組みを提案する。
キーワード:仲間(peers)、 友達関係(friendship)、 仲間受容(peer acceptance)、仲間拒否(peer rejection)、人気(popularity)、仲間集団(peer group)、内在化問題(internalizing problems)、外在化問題(externalizing problems)、個人差(individual differences)、文化(culture)
ピアジェやサリバン、クーリー、ミード、バンデューラ、ハリスといった仲間との相互作用や関係性がいかに子どもの発達や適応に影響するのか述べた初期の理論から、現代の仲間関係研究を描く。
友達関係は、相互の感情によって特徴づけられる親密で自発的で二者間の関係性であり、多くの場合しばしば似た仲間同士で形成される。互恵性は子ども・青年両方の友達関係における重要な特色であるが、友達関係は青年期の間により親密性と影響力を増す。
友達関係を伴うことはしばしば適応調整(adaptive adjustment)や幸福(well-being)と結びつくものの、すべての友達関係が正の関係性の文脈を表すわけではない。たとえば、攻撃的な子どもとの友達関係、あるいは関係性の質が不十分な友達関係は心理社会的困難をもたらすかもしれない。
より大きい仲間集団における成功は、仲間受容、仲間拒否、認知された人気といったものの構成概念によって反映される。一方、仲間受容と仲間拒否は、子どもがどのぐらい仲間集団から好かれるかもしくは嫌われるかの量を指すのに対して、認知された人気はどの子どもが人気者として認知されるかどうかの結果を指す社会的注目度の指標である。
攻撃的にふるまう子どももしくは引っ込み思案な子どもは拒否される傾向がある一方で、仲間拒否もまたこれらの行動傾向を悪化させる傾向がある。
社会的情報処理理論や研究は、子どもの社会的行動が自分たちや自分たちの社会的世界についてどのように考えているかによって部分的に説明されうるということを示した。
子ども期と青年期初期における2つの最も共通の仲間集団のタイプ(同性の派閥cliquesと集団crowds)は適応に強く影響するが、高校の終わりまでに異性の派閥とグループに一般的に置き換えられる。
注目すべき性差が、子ども期の友達関係と仲間集団の関係性の形成、機能、相関、結果において存在する。例えば、男児は仲間関係においてより集団志向になる傾向があるが、女児はより二者間系志向になる。不安‐引っ込み思案な男児は、不安-引っ込み思案な女児よりも仲間との困難をより抱えやすい。関係性攻撃(relational aggression)は男児よりも女児にとって認知された人気とより強い関連がある。
多くの場合、子どもの異なる人種や民族、文化における友達関係や仲間経験は類似しているが、重要な差異が示されてきた(例.中国対アメリカ合衆国における恥ずかしさと拒否の関連)。さらに文化に敏感な研究が必要である。
相乗的相互作用モデルは、子どもの内的傾向性と生物学的な特徴、(男児、女児の)両親の社会化の訓練、家族内外の関係性の質、子どもと家族に影響を与える文化、ストレス、ソーシャルサポートの力が、仲間受容または拒否、質的な豊かな友人関係または乏しい友達関係、そして、そうした経験によって引き起こされるポジティブもしくはネガティブな結果を決定づけることを提唱する。
(発表担当者および発表日:野口隆子/2013年11月)
(まとめ:白川佳子)