Chapter8 Social Development
Carol S. Dweck.(2013).
pp.167 - 190.
筆者のキャロル・ドウェックは、動機づけの研究者です。
TEDでは『必ずできる!-未来を信じる「脳の力」-』というテーマで、「不合格」ではなく「未合格」という視点から、子どもが取り組んでいるプロセス(例:努力、粘り強さ、集中力など)を褒めることで、強くしなやかな子どもを育てることができると説いており、その知見の一部は本章でも説明されています。
https://www.ted.com/talks/carol_dweck_the_power_of_believing_that_you_can_improve?language=ja
知能や才能を褒めるよりも、プロセスを褒めることの効果が実証された今、子どもたちの様々な能力や才能が育てられるということが、すべての子どもたちの基本的人権であるとして「いかなる命も無駄にするのはやめましょう!」という彼女の力強い言葉を聞くと、本章の概要・要点が、より理解できるでしょう。
本章では、社会性の発達の中心的な問いに関連する新しい理論、概念、方法について説明し、社会性の発達において学問の垣根のない学際的性質を帯びた最近の研究を紹介する。人を人たらしめる社会性の性質を帯びたもの(social-ness)の基盤とその役割、遺伝子と環境および気質と環境の相互作用、その相互作用による重要な社会的アウトカムの出現に関する新しい知見、子どもの心的表象と生理学的変化によって社会化の経験がどのように進められるか、親や仲間、メディアなどの様々な社会化エージェントの影響、認知的発達と社会性の発達の相互作用、社会的で認知的な介入による知的能力の促進、急激に進んでいる集団間の知覚と相互作用の領域に関する知見について取り上げる。全体を通して、介入に関する最近の発見が意味することや、介入によってどのように理論が検証され、システムを発達させる可塑性がどのように証明されるのかを論じている。
キーワード: 社会性の発達(social development),社会脳(social brain),遺伝子と環境の相互作用(gene×environment interactions),気質(temperament),ストレス制御(stress regulation),親の応答性(parental responsiveness),攻撃性(aggression),成績(achievement),認知課題成績(cognitive performance),集団間関係(intergroup relations),ステレオタイプ化(stereotyping)
社会性の発達の分野は、計り知れない発展を見せており、事実上、ますます学際的になっている。
単に認知的能力というよりはむしろ、“社会性の性質を帯びたもの(social-ness)”が、人を人たらしめるものの核であるかもしれない。発達に関する多くの新しい理論は、社会性のプロセスが中心的役割であることを示している。
遺伝子と環境の相互作用は、以前に考えられていたよりもずっとダイナミックなものであり、新たな手法によって、社会性の発達におけるそれらの役割が明らかにされ始めている。
与えられた遺伝子型(もしくは、与えられた気質)は、環境によって強みや弱みとなる。
将来のアウトカムに与える経験の影響は、子どもの経験の心的表象に左右される。もしくは、その経験が、特にストレス制御に関連する生理機能にどのように影響するかに左右される可能性がある。
親の応答性は、子どものアウトカムの主要な決定因子であり、親の応答性のトレーニングによって、アウトカムは改善する。
子どもが進んで攻撃性に浸ってしまうような新しいメディアには、注意すべきである。現実世界での攻撃性が促進されることで、脳の発達を変化させる可能性がある。
社会性の発達は、認知発達に影響を与える。社会的なインプットや社会的スキルは、認知発達を促進する。最近の社会的動機づけの介入では、知的能力が引き上げられている。
ステレオタイプ化と偏見は、社会性の発達における重要なトピックになりつつあり、研究によって、それらが出現する条件が突き止められてきている。
最近の多くの研究によって、特定の社会的発達の理論が実証され、社会性のプロセスが発達する可塑性を強調するような効果的な介入が生み出されている。
(発表担当者および発表日:山梨有子・伊藤理絵/2016年1月)
(まとめ:伊藤理絵)