Chapter6 The Structure of Temperament and Personality Traits : A Developmental Perspective
Rebecca L.Shiner & Colin G. DeYoung.(2013).
pp.113 - 141.
赤ちゃんを見ていると、人生の最初の時期から既に個人差があると誰しも感じることでしょう。
人生の初期から見られる一貫性ある特徴を「気質」と呼びますが、乳児期の気質研究は、トマスとチェス(Thomas & Chess)が誕生時から見られる行動スタイルの個人差に注目したことから火がついたと言われています。
赤ちゃんの頃から見られる特徴である気質は、育つ環境によって影響を受け、パーソナリティ(性格)が形成されます。
パーソナリティは、神経症傾向(情緒不安定性)、外向性、開放性(知性)、調和性(協調性)、誠実性(勤勉性)という5因子構造で捉えられており、ビッグファイブ(Big Five)と言われています。
筆者らは、これまでの乳児期から成人期を対象とした気質とパーソナリティ特性の研究を整理し、個人差の研究と一般的な発達研究を統合しようと試みています。
時の経過や状況にかかわらない安定的な特徴は乳児期の頃からあるが、発達する中で変化したり、ある程度状況に応じた特異的な傾向もみられたりするようになる(McAdams & Pals, 2006)。本章では、乳児期から成人期にかけての気質とパーソナリティ特性に関する発達的観点を示す。第一に、気質とパーソナリティの関係と、これら二つの伝統的な研究において特性の構造を解明するための手法について述べる。気質とパーソナリティの伝統が、同じ基本的特性を説明する際に異なる方法を用いてきた点について議論する。第二に、もっとも有名な気質モデルとBig Five 特性モデルの現状について述べる。第三に、乳児期から成人期にわたる気質とパーソナリティ特性に関する現代の知見を統合する構造モデルを明確に示す。第四に、子ども期と成人期におけるBig Five特性の個人差の基礎となる心理学的プロセスと生物学的プロセスに関する最近の研究について述べる。生涯にわたる特性の基本構造について明らかにしようとする研究は、現在、著しい進歩を遂げており、パーソナリティ発達研究にとって心躍る時期が到来している。
キーワード: パーソナリティ発達(personality development),子ども期の発達(childhood development),連続性と変化(continuity and change),生涯(lifespan),気質(temperament),分類法(taxonomy),神経科学(neuroscience),メタ特性(metatraits),測定(measurement),ビッグファイブ(Big Five)
McAdams, D. P., & Pals, J.L.(2006). A new Big Five: Fundamental principles for an integrative science of personality. American Psychologist, 61, 204-217.
(http://psycnet.apa.org/?fa=main.doiLanding&doi=10.1037/0003-066X.61.3.204)
(発表担当者および発表日:荒牧美佐子/2016年3月)
(まとめ:伊藤理絵)