大正三年乃至九年戰役記念碑

時は大正三年八月 　オウストリヤ、セルビヤ間の葛藤は遂に歐州全土の大動乱を惹起 し　驚天動地 の勢にて砲煙天を掩ひ 　弾雨地を貫き　天日ために暗〃 　科學的兵機の進歩は空中より地上の力戦を制し　毒瓦斯 の大害に驚きて防毒装置に成功し防禦 工事を完備すれば　装甲自動車 の暴威を振ふあり　小銃に機関銃　要塞に迫撃砲 　遠距離巨砲と進化し　海には出没自在の潜航艇 　城郭の如き大艦　馳騁 の如き驅逐艦　空には飛行機　航空舩　氣球　傅書鳩 の應用 と　三界を縫ふ戰畧 戰術兵器の發達　〇象の外にあり

大戰彼我 の総勘定開戰以来　約六ケ年の星霜 と参加人員三千二百万人　戰病死七百餘 万人　戰費三千七百億円を費やして　全〃劍匣 を納め　其結果世界地圖の変色甚しきを見るに至れり

同年八月　日英同盟大義に基き　我國は對擉宣戰の大詔涣發せられ　青島 の要塞を破り　海上保全の為南洋に出没せる敵艦を防壓 し、七年八月　西比利 の寒野に正義の軍を送り、九年二月尼港 の惨劇あり、数次の 征戰 　其功を奏し　世男平和のために貢献せし疐尠なからず 　

此間本村より應召 せる者四十九名にして　中二名の戰友を失ひたりと雖も 　ベルサイユ條約 により平和克復するに至れり

惟ふに 彼の荒原寒野に苦闘して得たる戰跡を案ずるに　能〃 人の力もて堪ふ べきにあらず　寔に 神霊の加護に興る もの多しと信ずべし

今や〇戟 を歇め たりと雖も　吾人 の任務は未だ完了したりと云ふべからず　

滔々と して侵入する物資的文明の弊竇 たる外来危険思想は　尊嚴なる我國體 と善美なる我國俗 を破壊せんとし　帝國の領域は東西思想の交戰状態にあり　

夫れ 社會 問題は克〃 兵力の及ばざる所なれば　之等危臉思想の防壓は在郷軍人 の責務と覚悟し　郷にありては勤倹 産を収め　忠實 業を興し　質朴剛健 の氣風を養ひ　自治の発達に助勢し　武士道の擁護者たり　人道的國家主義の鼓吹 者たるべきなり

其の任務や重く　其の目的や遠し　而して 斯る 重大なる責務を決行するに當り 　天祐 と神護に俟つ べきもの多し　〇に於て か分會員 一同　敬神の念勃々 として禁ずる能はず　加ふるに多大なる有志の後援を得るあり　以て此世思的大戰を記念すべく、丹生神社に華表 の奉納　并に 忠魂碑 に外圍 を設け　戰友の英霊を永へに祀らんとす　焉に 如上の 信念と覚悟に基き戰役記念事業の梗概 を銘す

大正十年三月十日 陸軍記念日

帝國在郷軍人會 丹生村分會