生き残り鳥居

大分市王子神社

2023年3月、大分市王子町を訪ねました。王子神社に非常に貴重な江戸時代に造られた鋳物の鳥居があります。この鳥居は、大分空襲にさらされたのです。大分が焼け野原になった中、一部は損壊したものの、柱や貫は無事でした。消沈する人々の心の支えになったそうです。大空襲の恐ろしさ、戦争の無意味さ、そして、復旧の時代、それらを現在に伝える鳥居なのです。

関連資料

鳥居

由緒

王子神社略記

一、鎮座地 大分市王子北町壱百拾番地

二、御祭神

伊邪那美大神(イザナミノオオカミ)

速玉之男大神(ハヤタマノオノカミ)

豫母都事解之男大神(ヨモツコトサカノオノカミ)

三、神社縁起

若一王子神社の創祀は遠く後三条天皇の延久元年(西暦一,〇六九年)正月元日紀州熊野郡那智山の道士善行坊及び舎人高倉左衛門、佐藤直秀らが、夢みらく「予跡を鎮西に垂れ辺鄙の民を守らん」との王子神の神託を奉じて西国を歴遊、駄原の海辺にて初めて若一王子権現の神霊を拝し、同五年清浄の地を駄原のこの地に求め、宝殿を造営、鎮座す。爾来、九百有余年に亘り豊後の国、若一王子一社と称され多くの尊崇を集めている。

四、主な祭典

元旦祭 一月一日、二日、三日

春季大祭 四月四日、五日

夏季大祭 七月二十一日、二十二日

秋季大祭 十一月十四日、十五日

除夜祭 十二月三十一日

五、境内神苑 三,四〇〇平方米

神社境内にある鋳鉄製の鳥居は府内藩主松平(大給)近儔公の奉献のもので、駄原の鋳物師の作で、貴重な鳥居であり、大分市重要文化財の指定を受けている。又、境内には樹齢数百年の御神木の銀杏樹がある。

説明文

鳥居

Sacred Torii (Gate)

大分市王子北町 王子神社

市指定有形文化財(昭和49年1月9日)

明神鳥居の様式をとる鋳物の鳥居です。陽刻の銘から、「寬政8

年(1796)2月穀日(穀日はめでたい日)」に府内藩主第6代・松平近儔によって建立されたことがわかります。この地域は江戸時代、駄ノ原村に属し「駄ノ原鋳物師」という鋳物職人が活躍した所で、その手になる作品としても貴重です。昭和20年(1945)7月16日、米軍機空襲で被災し笠木、鳥木は取り替えましたが、柱・貫は制作時のままです。

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