西曆2021年 2月 3日(水) ジョンソン英首相のキャプテン・トムお悔み

https://eiga.com/news/20200930/7/

https://trilltrill.jp/articles/1577543 (リンク切れ)

コロナ禍の英国で寄付51億円を集めた100歳の退役軍人が映画に

映画.com

2020年9月30日(水)

[動画]

https://www.youtube.com/watch?v=Yl_7zQPuiVo

https://twitter.com/BorisJohnson/status/1356654437381656581

[原文と和訳]

Captain Sir Tom Moore was a hero in the truest sense of the word. In the dark days of the Second World War he fought for freedom and in the face of this country’s deepest post-war crisis he united us all, he cheered us all up, and he embodied the triumph of the human spirit. It’s quite astonishing that at the age of a hundred he raised more than thirty-two million pounds for the NHS on his own and so gave countless others their own chance to thank the extraordinary men and women who have protected us throughout this pandemic. He became not just a national inspiration but a beacon of hope for the world. Our thoughts today are with his daughter Hannah and all his family, and his legacy will long live after him.

英勲爵士トム・モー大尉は言葉の最も真の意味で英雄でした。第二次世界大戦の暗黒の日々に彼は自由のために戦いました。そしてこの国の戦後最大の危機(=新型コロナのこと)に際して彼は私たち皆を一体化し、皆を元気づけ、人間精神の大勝利を具現化してくれました。驚くべきことに彼は百歳にして3200万ポンド(≒約45億8600万円)の募金を国民健保のために単独で集め、そのことで国民健保以外の人にチャンスを与えてくれたのです。そのチャンスとは、今回のパンデミック(=世界的感染拡大)の中で私たちを護ってくれている尋常ならざる男女たち(=医療従事者たち)に感謝するチャンスなのです。彼は国民的な感化(インスピレーション)だっただけではなく、世界のための希望の光でした。私たちの思いは遺された娘ハナさんとそのご家族と共にあります。そして彼のレガシー(「遺した業績」の意)は、彼が逝()ってしまった後も長らく生き続けます。

(日本語訳: 原田俊明)

【解説】

2021年1月31日(日)、昨年から国民的英雄に成っていた英国陸軍(British Army)退役軍人トム大尉(Captain Tom)こと、英勲爵士トマス・モー大尉(Captain Sir Thomas Moore, 1920-2021)が、新型コロナウイルス(new coronavirus; novel coronavirus; WHO国際名称 Covid-19)に感染して入院したことが報道された。このニュースを知ったジョンソン(Boris Johnson, b.1964; 首相在任2019-)内閣総理大臣は、「我が思いはキャプテン・トムとそのご家族と共にあります。あなたは国全体に感化(インスピレーション)を与えてくれました。そして私は知っています、私たち国民全員があなたの完全な快復を願っていることを。」(My thoughts are very much with @CaptainTomMoore and his family. You’ve inspired the whole nation, and I know we are all wishing you a full recovery.)と自身のツイッター(Twitter)にツイート(tweet)した( https://twitter.com/BorisJohnson/status/1355937035362697217 )。キャプテン・トムの国民的大人気は10ヶ月程前に始まっていた。

2020年4月6日(月)、キャプテン・トムが、満百歳の誕生日である同年(2020年)4月30日(木)が目前に迫ったことを記念して、慈善団体「国民健保チャリティー協会」(Association of NHS Charities)=通称「国民健保チャリティーを一緒に」(NHS Charities Together)のために募金活動を開始した。新型コロナウイルス(new coronavirus; novel coronavirus; WHO国際名称 Covid-19)と戦っている医療従事者たちを支援するための募金である。歩行器(walking frame; walker)の助けを借りて一周約25メートルの自宅庭を毎日10周(ten laps)ずつ10日続けて計100周(a hundred laps)するという企画であり、「トムの100歳の誕生日に国民健保のための歩き」(Tom’s 100th Birthday Walk For The NHS)と自ら名づけた。当初予定していた募金額1千ポンド(約13万3千円)は五日目の同年(2020年)4月10日(金)に早くも達成されたため、目標額を5千ポンド(約66万5千円)、続いて5万ポンド(約665万円)に設定したが、英マスコミが大きく報道したことにより、ジャストギヴィング(JustGiving: 「単に与える」と「公正なる寄付」の両義)という団体の発表では同年(2020年)4月26日(日) 21:00(日本時間で4月27日(月) 5:00)現在、約2900万ポンド(£29m: 約38億5700万円)が集まったという。130万余りの人々が寄付したとのこと。第二次世界大戦(Second World War; World War II, 1939-45)中のビルマ戦線(Burma Campaign, 1942-45)で日本軍と戦った生き残りである無名な老人が、「キャプテン・トム」(=トム大尉)の愛称で一躍時の人と成ったのだった( https://en.wikipedia.org/wiki/Tom_Moore_(fundraiser) )。当初目標にしていた庭の百周は同年(2020年)4月16日(木)午前中に達成したが、その時には地元のヨークシヤ連隊第一大隊(1st Battalion of the Yorkshire Regiment)の儀仗兵(ぎじょうへい: 英 guard of honour; 米 honor guard)が付き、報道陣のカメラが向けられた。

百周達成記念に歌手のマイケル・ボール(Michael Ball, OBE, b.1962)氏=57歳が、英国放送協会テレビ第1放送(BBC One)の「ブレックファスト」(Breakfast: 「朝食」の意)という番組の中で七十五年前の人気ミュージカル挿入歌である “You’ll Never Walk Alone” (1945) =直訳「あなたは決して独りで歩くことはない」=邦題「ユール・ネヴァー・ウォーク・アローン」=別邦題「人生ひとりではない」のカバーを披露したところ、「国民健保介護合唱の声」(NHS Voices of Care Choir)という合唱団の歌声と、キャプテン・トム自身がマスコミの取材に答える声がミックスされたデジタルシングル盤( https://www.youtube.com/watch?v=LcouA_oWsnU )がチャリティー目的に販売された。このシングル盤はあっという間に売れに売れ、同年(2020年)4月26日(日)には週間ナンバーワンヒットとなる。このナンバーワンの記録は同年(2020年)5月3日(日)まで保持されるため、同年(2020年)4月30日(木)で百歳の誕生日を迎えるキャプテン・トムはヒットチャートの1位を獲得した世界最高齢としてギネスブック(Guinness World Records)に掲載されることになった。

同年(2020年)4月27日(月) 10:00には、ちょうど1ヶ月ぶりにダウニング街10番地(10 Downing Street, City of Westminster, Greater London)の首相官邸前に姿を現し、国民へ向けてスピーチ( https://sites.google.com/site/xapaga/home/borisjohnsonspeech27april2020 )を披露したボリス・ジョンソン(Boris Johnson, b.1956; 首相在任2019-)内閣総理大臣が、そのスピーチの最後で、「ですので私が最後にあなた方に言いたいのは、もしあなた方がこれまでのように進んで行けば、もしあなた方が我々の命を救っている国民健保(NHS: National Health Service)を護(まも)るのを手伝ってくれれば、もし我々国民一丸(いちがん)となって、今週にも百歳に成るトム・モー大尉によって示されたのと同じ楽観精神と活力を示すことができれば、もし我々が過去六週間で示したのと同じ団結と決意の精神を示すことができれば、その暁(あかつき)には私は少しの疑念も無く我々がそれ(=新型コロナ)に打ち勝ったことになるということです。一緒に我々は益々(ますます)迅速にこれ(=新型コロナ)を切り抜け、連合王国はこれまで以上に強くなって頭を擡(もた)げてくることでしょう。」(And so I say to you finally if you can keep going in the way that you’ve kept going so far, if you can help protect our NHS to save lives and if we as a country can show the same spirit of optimism and energy shown by Captain Tom Moore, who turns a hundred this week, if we can show the same spirit of unity and determination as we’ve all shown in the past six weeks, then I have absolutely no doubt that we will beat it. Together we will come through this all the faster and the United Kingdom will emerge stronger than ever before.)という具合に「キャプテン・トム」(=トム大尉)に言及した。なお、Mooreという苗字はイギリス発音で「モー」だが、アメリカ発音では「ムーァ」となる。軍人が尊敬されるイギリス社会では退役後も除隊時の階級で(この人の場合はキャプテン=陸軍大尉と)一生呼ばれ続ける。紛らわしいことに、同じキャプテン(Captain)でも海軍のキャプテンは「大佐」という三階級も上のランクになる。更(さら)に紛らわしいことに、キャプテン・トムは名誉大佐(an honorary colonel)の肩書も有している。

同年(2020年)5月20日(水)、ジョンソン首相の強い薦めにより女王から騎士階級(knighthood)が授与されることが決まり( https://www.bbc.com/news/uk-england-beds-bucks-herts-52732300 )、同年(2020年)7月17日(金)にウィンザー城の四角い芝生庭(the quadrangle at Windsor Castle)にて女王による叙勲式が挙行され( https://www.bbc.com/news/uk-england-beds-bucks-herts-53442746 / https://www.bbc.com/japanese/53453741 )、その後は Capt Sir Tom Moore(Captain Sir Thomas Moore)と成る。英国放送協会(BBC: British Broadcasting Corporation)の報道によると、叙勲式の時点で3249万4701ポンド(£32,794,701)≒約44億900万円(JPY4,409,000,000)を約150万人から集めたという。

ところが上述したように年が明けて2021年1月末にキャプテン・トムが新型コロナウイルス(new coronavirus; novel coronavirus; WHO国際名称 Covid-19)に感染して入院したことが報道されたが、同年(2021年)2月2日(火)に亡くなったことが翌日(2021年2月3日(水))に伝えられると、ジョンソン首相はツイッターにスピーチ動画を発表した。

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