西曆2017年 9月29日(金) 日本学術振興会への提言

日本学術振興会(英称 Japan Society for the Promotion of Science)

研究倫理eラーニングコース(e-Learning Course on Research Ethics)[eL CoRE]

へのアンケート回答(2017年9月29日(金))

https://www.netlearning.co.jp/clients/jsps/top.aspx

Q15 4.6 事例学習について,よかった点やご提案・ご要望がありましたら,具体的にご記入ください。

2017年8月20日(日)に英語版で学習し、英語でコメントを送ったので、今回はそれ以外の雑感を日本語で送る。

第4章21/72でA准教授の言う「すべからく倫理審査に掛けることになったらしいんだ。」という日本語は明らかな誤用である。正しくは、「すべて倫理審査にかけることになったらしいんだ。」である。「すべからく」は、「須(すべか)らく・・・すべし」という漢文表現の前半部であり、後ろには「・・・すべし」が来ないといけない。案外と団塊世代周辺の高齢者に多い日本語の誤用ではあるが、今回は若手の准教授という設定だった。

第5章18/32で遺伝子組み換え作物の研究に携わっているA講師が生放送のテレビのインタビューで語った「私はこれからも、新しい品種をどんどん作り出しますよ。これで世界の食糧問題は全て解決されますよ。そうすれば、賛否両論なんて起こらなくなりますよ。」という発言で、視聴者から抗議が殺到したという設定だが、これは研究倫理とは無関係である。A講師は言論の自由の範囲内で個人の見解を述べたに過ぎず、講師本人も、ましてや彼を雇用する大学も、抗議の声に屈するのは間違っている。「科学と社会の関係を無視している無責任なもの」という日本学術振興会の解釈は、私に言わせれば詭弁というものだ。尤も私個人は遺伝子組み換え作物には反対の立場だ。しかしヴォルテールも書簡に書いているではないか、「神父さん、私はあなたの書いたものは嫌いだが、私の命を与えてでもあなたが書き続けられるようにしたい。」(仏原文 Monsieur l’abbé, je déteste ce que vous écrivez, mais je donnerai ma vie pour que vous puissiez continuer à écrire.)と。これをを分かりやすく一般向けに解釈した言葉、「私はあなたの言うことに不同意だが、あなたがそれを言う権利は死守する。」(英文 I disapprove of what you say, but I will defend to the death your right to say it.)が独り歩きしているが、こちらでも良い。日本学術振興会には言論の自由に関して再検討を促したい。