スコットランド民謡「ライ麦畑を通って」歌詞比較

日本の盲人用歩行者信号で國寶松本城を背景に「故郷の空」を聽く

Japan: Matsumoto castle (2/4) and a pedestrian traffic signal 2010-08-24(Tue)1157hrs

http://www.youtube.com/watch?v=uXe4qQ77v8I

英文説明: In Japan people in general do not help the blind (or “visually impaired [or challenged] persons” in this age of political correctness) when they struggle to cross the street, so that pedestrian traffic lights often have a simple cuckoo sound, the traditional Japanese melody of “Tōryansé” (“Please Allow Us To Pass”) or the rather erotic Scottish melody of “Comin’ Thro’ the Rye” as you see in this instance. (和訳: 日本では盲人(もうじん)、或(ある)いは昨今の言葉狩りの時代には「目の不自由な方(かた)」が、道を渡ろうと四苦八苦していても他人は概(がい)して助けようとしない。それゆえ歩行者用信号機に屡々(しばしば)郭公(カッコー)の声が入っていたり、日本伝承歌「とおりゃんせ」=「我らを通せ」の意が流れたり、この動画に見られるようにちょっとエロいスコットランド民謡「ライ麦畑を通って」=邦題「故郷の空」が聞こえてくる。)

擬古典体和文説明: 國寶松本城を背景に蘇格蘭艶唄の聞こゑる歩行者用信號機を渡る。

なお、昭和女子大学近代文化研究所発行 『學苑』 平成20年=2008年11月/第817号文化創造紀要(ISSN1348-0103)所収の原田俊明「訪日・滞日イギリス人のカルチャーショック」( http://ci.nii.ac.jp/naid/110007041829 )に xapaga (原田)は下記のように書いた。

(自己引用開始)

事例9) 歩行者用信号が青になるとエロティックなスコットランド民謡 “Comin’ Thro’ the Rye” (邦題「故郷の空」)のメロディーが流れてきた9。なぜ信号機からエロい曲が聞こえて来るのか。盲人用信号だって? イギリスにはそんな物は存在しない。

事例33) 日本の自動ドアの普及率には目を見張る。さすがはハイテクの国だ20。しかし自動ドアではないコンビニの扉で危うく怪我(けが)をしそうになったことがある。知人のためにドアを押さえていた日本人が,他人である私の前で突然ドアから手を離したからだ。

事例34) 日本人は自分の知り合いには優しいそぶりを見せるが,他人には非常に冷たい21。この落差(gap)はなんだろう22

事例35) 日本では横断歩道や駅のプラットフォームで盲人の手を引く人がいない。それどころか皆,盲人を避けて歩いているように見受けられる。日本人は他人,特に身障者には冷たい23

9: 年配の日本人には大和田建樹(1857-1910)作詞による郷愁を誘う歌詞「夕空晴れて秋風吹き/月影落ちて鈴虫鳴く/思へば遠し故郷の空/ああ,我が父母いかにおはす」の印象が強いだろう。しかしイギリス人にはスコットランド英語の原詞 Gin a body meet a body / Comin’ thro’ the rye / Gin a body kiss a body / Need a body cry? / Ilka lassie has her laddie / Nane, they say, hae I / Yet a’ the lads they smile at me / When comin’ thro’ the rye. (体と体が出会うとき / ライ麦畑の中をくぐって / 体と体が接吻するとき / 体は泣く必要あるだろか / どこのおなごも彼氏もち / あたしには居ないってこった / でも男子はみんなあたしにニコっとしてくれる / ライ麦畑の中をくぐって / 筆者試訳)のもつエロティックな印象が頭から離れない(歌詞は Rampant Scotland Directory なるウェブサイトから引いた)。ウィキペディア(Wikipedia)日本語版によると,ライ麦は「草丈が大人の背丈ほどあるため,夜でなくても畑の中に紛れ込むと,キス以上のことをしても,恥ずかしい思いをすることがないようだ」とのことである。その2メートル近くにも及ぶ草丈は少々下品な言い方になるが,分かりやすく言うと「天然ラブホテル状態」である。作詞家なかにし礼(b.1938)は1970年に原詞の味わいに近い訳詞「誰かさんと誰かさん」を作っている。曰く「誰かさんと誰かさんが / 麦畑 / チュッチュッチュッチュッしている / いいじゃないか / ぼくには恋人ないけれど / いつかは誰かさんと / 麦畑」である。原詞では女性の立場で歌っているのに対して,なかにしは男性の視点に置き換えている。

20: イギリスでは21世紀に入っても一部の中長距離の列車で19世紀そのままの手動式ドアが健在である。

21: 中国人はもっと極端で,血縁者にのみ優しい傾向がある。

22: シンガポールの欧亜混血(Eurasian)作家(父親がイギリス人)レックス.・シェリー(b.1930)は「内」と「外」という古典的な概念を日本体験初心者に説いている(Rex Shelley, Culture Shock Japan. pp.149-151)。

23: 経済ジャーナリストで自らも英米への海外赴任の経験のある宮智宗七(b.1931)は,日本人帰国子女が帰国後に抱く違和感を「逆カルチュア.ショック」と規定し,自ら実施したアンケート結果から次の回答を引いている。「▼『マナーの悪さ. 人を押しのけて電車に乗る,次に来る人のためにドアを開けておいてあげない,老人や女性への思いやりのなさ,身体障害者(handicapped people)への配慮のない公共施設などにそれを感じる』/ ▼『駅で切符を買うとき運賃表を見ていたら,うしろから突き飛ばされた』/ ▼『ビルやホテルの入口のドアを開けてもらっても,何もいわないで通りすぎる』/ ▼『狭い道で相手が通りすぎるまで,こちらが待ってあげても,だれ一人礼もいわない。アメリカなら必ず相手は “Thank you”(ありがとう)といい,こちらも “You’re welcome.”(どういたしまして)と言葉を交わしたのに……』/ ▼『とにかく人と人との対話がない。目が合っても,こちらからあいさつしても,知らんぷりの人が多い』」(宮智宗七『帰国子女—逆カルチュア・ショックの波紋』pp.589)。一方,イギリス在住のハウスキーパー高尾慶子(b.1942)は世代間の違いを指摘している。曰く「今日,日本で一番不作法で行儀が悪いのは老人男性である。そして,英国でいちばん行儀がよくて,親切で,あたたかいのは老人男性である。英国の老人男性はシルバーシートに競って座ろうなどとはしない。あくまで,女性に席をゆずる。(中略)今回,十一年ぶりで,日本へ帰国して驚いたことの一つは,日本の中年男性,そして,若者が非常に礼儀正しかったことである。以前なら,街や列車の中でぶつかりあうと,キッとにらむか,捨てゼリフを投げ捨てたものだったが,今日では,『あっ! すみません!』と向こうからすぐ言葉が出てくるのには本当に感激してしまった。(中略)しかし,日本の老人はあいかわらず,行儀が悪く,子どもっぽかった。敗戦の経験はこうも人格を落とすのかしら,といった私に,母は,/『いいえ,戦前,戦中,戦後,日本の男はずっとこうよ。特高なんていばりくさって,女子どもに容赦しなかったよ』/といった。そう,そうだったと思う。そういう連中が,連合軍兵士だった若者が捕虜になったとき,大喜びでいたぶりまわしたのだ。そしてその後始末を,戦争を知らない日本の若者は今日もなお負わされている。(後略)」(高尾慶子『イギリス人はかなしい. 女ひとりワーキングクラスとして英国で暮らす』pp.21-22)。(自己引用終わり)

【原曲】

“Comin’ Thro’ The Rye” written by Robert Burns (1759-96) in 1782 with the music composed by someone else in the 1790s

ロバート・バーンズ作詞の歌詞に曲を付けたスコットランド民謡「ライ麦畑を通って」(短縮版)

http://www.youtube.com/watch?v=gCZ-RInxxs8

Gin a body meet a body

体と体が出合うとすると

Comin’ thro’ the rye

ライ麦畑を通って

Gin a body kiss a body

体が体にキスするとなると

Need a body cry?

体は泣く必要があるだろか。

Ilka lassie has her laddie

どこのおなごも彼氏もち

Nane, they say, hae I

あたしにはいないってこった。

Yet a’ the lads they smile at me

でも男子たちはあたしにニコッとしてくれる

When comin’ thro’ the rye.

ライ麦畑を通るとき。

(原田俊明訳)

訳者註

Gin = If ~すると

meet = 正しくは meets

the rye = ライ麦畑(8月の収穫時には2メートルにもなるため、中で何をしても人目につかない)

kiss = 正しくは kisses

Ilka = Each それぞれの

lassie = little lass 小娘

laddie = little lad 男子(この文脈では彼氏)

Nane = None 誰も~ない

hae = have もっている

【日本でお馴染みの唱歌】

大和田建樹(おほわだ たけき; おおわだ たけき, 1857-1910)作詞 「故鄕(こきやう)の空(そら)」(明治廿一年=西曆1888年)

https://www.youtube.com/watch?v=JFu016MGo-c

夕空(ゆふぞら)晴()れて秋風(あきかぜ)吹()き

月影(つきかげ)落()ちて鈴虫(すゞむし)鳴()く

思(おも)へば遠(とほ)し故鄕(こきやう)の空(そら)

あゝ、我()が父母(ちゝはゝ)いかにおはす

澄行(すみゆ)く水(みず)に秋萩(あきはぎ)たれ

玉(たま)なす露(つゆ)は、ススキに滿()つ

思(おも)へば似()たり、故鄕(こきやう)の野邊(のべ)

あゝ、我()が弟妹(はらから)たれと遊(あそ)ぶ

國策映畫 『燃()ゆる大空(おほぞら)』(昭和十五年=皇紀二千六百年=西曆1940年9月25日(火)公開)の中で山田耕筰(やまだ かうさく; Kósçak Yamada, 1886-1965)作曲の主題歌に続いて「故鄕の空」(11:45-13:47)

https://www.youtube.com/watch?v=6Jh-u2R2yU4

【より原詩に近い歌詞】

大木惇夫(おほき あつを; おおき あつお, 1895-1977) & 伊藤武雄(いとう たけお, 1905-1987)作詞 「誰(たれ)かが誰(たれ)かと」(昭和十年代前半頃=西曆1930年代後半頃)

http://www.youtube.com/watch?v=tmPdo7x1xX0

1

たれかがたれかと むぎばたけで

こっそりキッスした いいじゃないか

わたしにはいいひと いないけれど

たれにもすかれる、ネ、むぎばたけで

2番以降略

なかにし礼(なかにし れい, 1938-2020)こと、本名 中西禮三(なかにし れいぞう, 1938-2020)作詞 「誰かさんと誰かさん」(昭和四十五年=西曆1970年)

https://www.youtube.com/watch?v=0rrkeV8q41o

1

誰(だれ)かさんと誰(だれ)かさんが

麦畑(むぎばたけ)

チュッチュッチュッチュしている

いいじゃないか

僕(ぼく)には恋人(こいびと)ないけれど

いつかは誰(だれ)かさんと

麦畑(むぎばたけ)

2

誰(だれ)かさんと誰(だれ)かさんが

傘(かさ)の中

しっぽり濡()れてる

いいじゃないか

僕(ぼく)には相手(あいて)がないけれど

ぐっしょり濡()れてる

破(やぶ)れ傘(がさ)

3

誰(だれ)かさんと誰(だれ)かさんが

暗(くら)い道(みち)

イチャイチャしている

いいじゃないか

俺(ぼく)には関係(かんけい)ないけれど

頭(あたま)にきちゃうぜ

麦畑(むぎばたけ)

4

うちのパパとうちのママが

お茶(ちゃ)の間()で

デレデレ寄()り添()う

いいじゃないか

まだまだ眠(ねむ)たくないけれど

パパママおやすみ

ごゆっくり

5

僕(ぼく)だってみよちゃんと

麦畑(むぎばたけ)

どうしてもキスした

ざまあ見()ろ

見()ている君(きみ)らにゃ分()からない

こんなにこんなにホントに楽(たの)しい

麦畑(むぎばたけ)

【比較参考】

一方、クロアチア(旧ユーゴスラヴィアで二番目のEU加盟国)の首都ザグレブ(Zagreb, Croatia)では、、、

歩きスマホでも赤信号見逃さない、クロアチア首都に新型信号機

フランス通信社(AFP: Agence France-Presse)日本語版

2019年10月15日(火)

https://www.afpbb.com/articles/-/3249504?act=all

https://egg.5ch.net/test/read.cgi/news5plus/1571164754/

First traffic lights in Croatia warning pedestrians on mobile phones

(携帯電話を手放さない歩行者に警告するクロアチア初の信号機)

現地英字誌 Croatiaweek (クロゥエイシャウィーク: 「クロアチア週」の意)

2019年10月12日(土)

https://www.croatiaweek.com/first-traffic-lights-in-croatia-warning-pedestrians-on-mobile-phones/

動画

Semafor za pješake u Zagrebu koji usmjerava crveno prema tlu za pješake koji gledaju u mobitel

英訳: A pedestrian traffic light in Zagreb that points red towards the ground for pedestrians looking at their cell phones

和訳: 携帯電話を見入っている歩行者のために路面を照らすザグレブの歩行者用信号

https://www.youtube.com/watch?v=J_lt_Lae3Pc