12「イギリス文化論」(2021/11/ 2) ガイ・フォークスの夜: 十一月五日の年中行事

Guy Fawkes Night (ガイ・フォークスの夜)

別名 Guy Fawkes Day (ガイ・フォークスの日)

別名 Bonfire Night (篝火(かがりび)の夜)

別名 Fireworks Night (花火の夜)

https://www.bbc.co.uk/history/the_gunpowder_plot (リンク切れ)

https://en.wikipedia.org/wiki/Guy_Fawkes_Day

https://en.wikipedia.org/wiki/Bonfire_Night

https://ja.wikipedia.org/wiki/ガイ・フォークス・ナイト (著作権侵害が指摘され、2020年10月現在、ウィキペディア内で審議中のため閲覧不可)

1605年11月5日にガイ・フォークス(Guy Fawkes, 1570-1606)らカトリック信徒による国会議事堂爆破及び国王暗殺テロ計画(Gunpowder Plot ガンパウダー・プロッ: 直訳「火薬陰謀」)が未遂に終わり、テロリスト一味が逮捕された。実はガイ・フォークス自身はテロの首謀者ではなく、火薬の導火線(the burning fuse)に点火する係として議会上院(the Upper House of Parliament)=貴族院(House of Lords)の地下室に隠れていたところを当局によって逮捕されたわけだが、これは当局が事前に匿名の手紙(an anonymous letter)を受け取ったことでテロ計画が発覚していたためだった。一方、首謀者のロバート・ケイツビー(Robert Catesby, 1572-1605)は事件三日後の同年(1605年)11月8日にイングランド西部の屋敷ホルビーチ館(Holbeche House)に潜伏中のところ、当局の襲撃を受け死亡した。ガイ・フォークス自身は翌年(1606年)1月31日に他の3人の仲間とともに当時の慣習に則(のっと)り公開絞首刑(public hanging)となり、遺体は四つ裂き(quarter)にされた。

議事堂も国王も無事だったことを祝すと同時に冬の到来を告げる年中行事である「ガイ・フォークスの夜」=「篝火(かがりび)の夜」だが、厳密に西暦何年に始まったかのは定(さだ)かではない。英国の子供たちは毎年11月5日が近づくとガイ(Guy)と名づけられた等身大または極端に大きな人形(an effigy)を町中に引き回し、‘A penny for the guy!’ (奴(ヤツ)のために1ペニーを!)や ‘A penny for poor old Guy Fawkes!’ (哀れな老ガイ・フォークスのために1ペニーを!)などとマジック(英 a felt-tip pen; 米 a Magic Marker)で書いたボール紙(cardboard)を示して同様に叫びながら通行人から小銭をせびる。アメリカの子供たちが毎年10月31日のハロウィーン(Halloween)に叫ぶ “Trick or treat?” (いたずらされるか、それともおごってくれるか?)と同様に悪意がこもっているとも言える。

なお、今日イギリス英語でもアメリカ英語でも「男」や「奴(ヤツ)」を意味する guy (ガイ)という英単語、たとえば「いいヤツ」を意味する a nice guy (ナイスガイ)や、「善玉」や「正義の味方」を意味する the good guy (グッガイ)や、「悪玉」を意味する the bad guy (バェッガイ)は、フォークスの処刑から二世紀半近くも経過した1847年の文献から登場するようになったが、このガイ・フォークスの名に由来する。元来はガイ・フォークスの夜(Guy Fawkes Night)に焼かれるガイ・フォークス人形(an effigy of Guy Fawkes)を指し、その定義(definition)での文献の初出は1806年である。つまりフォークスの処刑から二世紀も経過している。この人形から派生した定義として1836年の文献に初出が見出せる「グロテスクな外見の人」もあったが、現在では殆(ほとん)ど使われない。これが転じて「男」や「奴(ヤツ)」を意味するようになった。今日アメリカ英語の口語では、you guys (ユーガイ)や yous guys (ユーズガイ)が 「ねえ、みんな」の意味で使われ、女性をも含むことになっている。(この段落は OED こと、Oxford English Dictionary =『牛津大学英語辞典』電子版 https://swuvpn.swu.ac.jp:8443/remote/login?lang=x-sjis に依拠した上で加筆)

ガイ人形は11月5日の夜に篝火(かがりび)で焼かれ、近くで花火に火を付けて楽しむ。一部の自治体では市参事会(City Council or Town Council: 日本で言う市議会と市役所の合体型)や商業会議所(Chamber of Commerce or Guild: 日本で言う商工会議所や青年会議所に相当)などが打ち上げる花火が呼び物となっていて、多くの市民が詰めかける。かなり寒いながら、公園や広場や自宅の庭などでバーベキュー(BBQ: barbecue)を始めてしまう者もいる。この行事はイギリスの冬の到来を告げる風物詩となっている。

11月5日の夜は火災事故が多発している。首都ロンドンでは、この夜の消防への通報が通常の3倍近くになる。また、環境への影響も侮(あなど)れない。オクスフオッド大学(University of Oxford; 通称 Oxford University; 中文繁體字表記 牛津大學; 中文簡体字表記 牛津大学)の研究調査では有害なダイオキシン類(dioxins and dioxin-like compounds)や、フラン(furan: 4個の炭素原子と1個の酸素原子から構成される複素環式化合物)の大気中の濃度が約4倍になるとのこと。しかし当局は今のところ、この伝統行事を禁止することも、祭の規模を抑制することも考えていない。

火災の問題に加え、この祭りは英国に於()ける「宗教的少数者の中の最大多数」とされるカトリック信徒(Roman Catholics)に対する憎悪や偏見(hate and prejudice)を煽(あお)る物だとして、当のカトリック信徒は心を痛めている。中には禁止すべきだと主張する者もいる。

連合王国(UK: United Kingdom)内でも北アイルランドだけは7月11日の夜に「11日の夜」(Eleventh Night)という名の「篝火(かがりび)の夜」を実施するが、これは1689年にロンドンのイングランド議会に呼ばれてイングランド王国(ウェールズ公国を含む)及びスコットランド王国及びアイルランドの国王になったオランダ人のオラニエ公ヴィレム三世(Willem III van Oranje, 1650-1702)こと、英名ウィリアム三世(William III, 1650-1702; 在位1689-1702)の率いるプロテスタントの軍勢が、1690年7月にボイン川の戦い(Battle of the Boyne)でカトリック信徒を破って決定的な勝利を収めたことを祝ってのことである。したがってロンドンで起こったガイ・フォークス(Guy Fawkes, 1570-1606)一味のテロ未遂事件とは無関係となっている。

連合王国以外の一部の英連邦(Commonwealth of Nations ; 通称 British Commonwealth)諸国(たとえばカナダのニューファウンドランド及びラブラドル州、ニュージーランド、南アフリカ、カリブ海諸国)でも、11月5日に「篝火(かがりび)の夜」が行なわれているが、NZと南アは南半球に位置しているため英本国とは逆に夏の開始を告げる風物詩となっている。

なお、比較参考として、ドイツでは毎年11月11日が伝統的に聖マルティヌスの日(独 Martinstag ンスター; 英 St Martin’s Day セントゥマーンズデイ)とされていて、子供たちがランタン(独 Laterne ; 英 lantern ラェンタン)を手にして広場に集まり、赤マントに乗馬姿の市長(独 Bürgermeister ビュマイスター; 英 mayor メー; 米音 メイヤー)が扮する聖マルティヌス(独 St. Martin ザントゥ; 英 St Martin セントマー)を教会に案内し、その見返りとしてパンを貰(もら)う。子供たちはまた家々を一軒ずつ回り、祝福の言葉を述べ、その家の人からパンや菓子を貰(もら)う。広場には最終的に大きな焚火(たきび)が炊()かれ、その炎を聖マルティヌスの焔(ほのお)(独 Martinsfeuer ティンスフォイヤー; 英 St Martin’s fire セントゥマーンズファイヤー)と言う。聖マルティヌスとは、ローマ帝国の兵士だった頃、雪の中で凍えていた半裸の物乞い(独 Bettler トゥラー; 英 beggar ガー)に自らのマントを半分裂いて与えたとされる。その夜、マルティヌスの夢に半分のマントを纏(まと)ったイエス・キリスト(Jesus Christ, c.4 BC? – c.AD 30)が現れ、「まだ受洗もしていないローマ兵マルティヌスが、私にこのマントをくれた。」と言ったとのことで、半裸の物乞いはイエス・キリストその人だったとされる。マルティヌスはその後、キリスト教の修道士となり、ローマ領ガリア(現在のフランス)初の修道院を建て、さらに後にトゥール(Tours, France)の司教となった。

(子供向けに文字とアニメで説明)

Who was Guy Fawkes?

(ガイ・フォークスって誰?)

BBC Bitesize (BBCバイトサイズ)

https://www.bbc.com/bitesize/articles/zdrrcj6 (但し、2020年10月現在、アニメ動画は日本での視聴不可)

(動画集)

英国政府系の文化宣伝機関、ブリティッシュ・カウンシル(The British Council)による説明(2012年制作)

http://learnenglishteens.britishcouncil.org/uk-now/video-uk/bonfire-night

https://www.youtube.com/watch?v=8NYjLCyzUFg (リンク切れ)

ポケット版歴史(2012年アップロード)

http://www.youtube.com/watch?v=q1DC2BAsXb4

大マンチェスター市(Greater Manchester)に於ける篝火(かがりび)の夜の様子(2013年11月5日(火))

http://www.youtube.com/watch?v=5h8Cx7rUOGQ

イングランド南部の東サセックス州ルイス市(Lewes, East Sussex)から米経済誌「ウォール・ストリート・ジャーナル」(WSJ: Wall Street Journal)の特派員リポート (2012年11月1日(木))

http://www.youtube.com/watch?v=4uLyCdFnoFk

同市(Lewes, East Sussex)に於ける篝火(かがりび)の夜の様子(2013年11月5日(火)): 映像中(2:45-2:49)に現れるカトリック信徒への挑発の言葉 No Popery (ノウ・ポウパりィ: 和訳 「教皇制はごめんだ」)にも注目

http://www.youtube.com/watch?v=xovOPjDS6hc

国際ハッカー集団アノニマス(Anonymous: 「匿名(とくめい)」の意)による2011年11月5日(土)フェイスブック(Facebook: 直訳 「顔面本」)へ攻撃予告を報道するロシア国営RT放送(Russia Today: 「今日(こんにち)のロシア」の意)の英語版ニュース

http://www.youtube.com/watch?v=24zvr-0_XCs

国際ハッカー集団アノニマス(Anonymous)が公式動画で2013年11月5日(火)の世界規模でのデモ呼びかけ

http://www.youtube.com/watch?v=HhAeWah-774 (リンク切れ)

Who Was Guy Fawkes? - Anglophenia Ep 18

(ガイ・フォークスとは誰だったのか アングロフィーニア第18挿話)

2014年11月6日(木) 公開

https://www.youtube.com/watch?v=v0zlMSmUXc4

令和TV: イングランド国教会の正体【俺的歴史に残る真実の映画10】 2020年2月23日(日・祝)

https://www.youtube.com/watch?v=ftR5nEwwLM0

The HORRIFIC Execution And Torture Of Guy Fawkes

(ガイ・フォークスの恐るべき処刑と拷問)

TheUntoldPast (語られていない過去)

2020年11月2日(月)

反権力象徴のマスク “覆面禁止”の香港にあふれる

テレビ朝日系ANN

2019年11月6日(水) 15:29配信

https://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000168524.html

https://www.youtube.com/watch?v=ARfm9wR-26k (リンク切れ)

https://newsnow.link/2019/11/06/37992/

https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/ann?a=20191106-00000037-ann-int(リンク切れ)

https://headlines.yahoo.co.jp/cm/videomain?d=20191106-00000037-ann-int(リンク切れ)

香港で覆面禁止法が施行されてから1カ月となり、街はマスク姿で抗議する人であふれ返りました。ハッカー集団「アノニマス」も着用したマスクに込められたその意味とは。

香港で顔を覆うマスクなどを使用して無許可のデモに参加するのを禁じた覆面禁止法の施行から1カ月となった5日、大勢の参加者が抗議のためにマスクを着用してデモ隊のテーマソングとなった「香港に栄光あれ」を合唱しました。このマスクは「ガイ・フォークスマスク」と呼ばれ、香港でも先月からよく見られるようになりました。

ガイ・フォークスは、今から414年前のイギリスで王を殺害しようとした事件の実行者とされる人物です。ちょうど11月5日がその事件の日にあたりますが、事件そのものは失敗。現在では11月5日は王の無事を祝う祭りが行われる「ガイ・フォークスデー」として知られています。

しかし、王に反抗したこの事件の内容からガイ・フォークスそのものは次第に「権力者への抗議」のシンボルとして使われるようになります。最も有名なのが「アノニマス」。各国政府による抑圧やテロ行為に対してハッキングなどの手段で対抗する集団で、各地で着用しています。

(改行・中略・改行)

香港では「覆面禁止法施行から1カ月」と「ガイ・フォークスデー」が重なったほか、(後略)

(日本国政府の在外公館が邦人にメールで注意喚起)

Subject: 日本大使館からの集会・デモに関する注意喚起

From: 在英国日本大使館

Sent: 2016年11月5日(土) 01:00 JST

英国にお住まいの皆様及び旅行者の皆様へ

在英国日本大使館

英警視庁によれば、ガイ・フォークス(1605年の火薬陰謀事件に関与し反逆罪で処刑)の仮面を被った集団が、5日(土)18時から21時まで、トラファルガー広場、リッチモンド・テラス及びパーラメント・スクエアー・ガーデンズ(国会広場)にて、「ミリオン・マスク・マーチ」と称して集会とデモ行進を予定している模様です。

警察は、集会場所及びデモ行進の時間と行動範囲を限定して対応する予定ですが、昨年の集会・デモ行進では小競り合いが発生し、警察官4名が負傷し、同集団の活動家50名が逮捕される事態となりました。

つきましては、下記の英警視庁ウェブサイト等にて最新の情報を確認いただき、集会・デモ行進の現場に近づかないように注意して下さい。

【英警視庁ウェブサイト】

http://news.met.police.uk/news/conditions-imposed-upon-million-mask-march-event-195187 (リンク切れ)

(了)

Subject: 【安全情報】ボン・ファイヤーナイトに対する特別警戒実施

From: 在エディンバラ日本国総領事館

Date: 2018/10/30, Tue 03:05 JST

スコットランドにおいてボン・ファイヤーナイトと呼ばれる花火を使用した風習があります。昨年この時期にエディンバラで車への放火や花火による危険な迷惑行為が発生したことから、スコットランド警察は,10月31日(水)から11月6日(火)までの午後2時より午前零時までの間、エディンバラの北東地区及び北西地区において特別警戒を実施し,迷惑行為及び反社会的行為に厳正に対処するとしています。

不審な集団や異変を察知した場合には、迷うことなく速やかにその場を離れる等,安全確保に十分注意を払ってください。

【問い合わせ先】

在エディンバラ日本国総領事館

住所:2 Melville Crescent, Edinburgh EH3 7HW, UK

電話:(市外局番131)-225-4777

Subject: 【安全情報】ボンファイヤー・ナイトに対する特別警戒実施

From: 在エディンバラ日本国総領事館

Date: 2019/10/30, Wed 17:41 JST

報道によれば,スコットランド警察は,11月5日(火)のボンファイヤー・ナイトに対する特別警戒を実施する予定です。

英国においてボンファイヤー・ナイト(ガイ・フォークス・ナイト)と呼ばれる花火を使用した風習があります。一昨年,この時期にエディンバラで車への放火や花火による危険な迷惑行為が発生していることから,スコットランド警察は,11月1日(金)から11月5日(火)までの午後2時より午前零時までの間, Muirhouse, Portobello, Loganlea, West Pilton, Saughton, Gorgie, Gorgie, Moredun地区において特別警戒を実施し,迷惑行為及び反社会的行為に厳正に対処するとしています。

不審な集団や異変を察知した場合には,迷うことなく速やかにその場を離れる等,安全確保に十分注意を払ってください。

【問い合わせ先】

在エディンバラ日本国総領事館

住所:2 Melville Crescent、 Edinburgh EH3 7HW、 U.K.

電話:(市外局番131)-225-4777

(比較参考)

英国のクリスマス

クレヴィア・タイムズ No.13

在ロンドン 山下めぐみ

執筆時期・発表時期ともに不明

http://www.crevia-times.com/live/13/

七面鳥がイベントで食べられる由来や大統領の恩赦式まで徹底解説!

オリーブオイルをひとまわし

上野圭代(うえの たまよ, 生年非公開)

管理栄養士 佐々木倫美(ささき ともみ, 生年非公開)監修

2020年12月20日(日)

https://www.olive-hitomawashi.com/column/2020/12/post-13039.html

https://article.yahoo.co.jp/detail/19aacb7f992d7ab2da02a9e36b8eb3b8bac47675