ディキンスンの詩 “My Country’s Wardrobe”
米女性詩人エミリー・ディキンスン(Emily Dickinson, 1830-86)
Complete Poems. 1924.
『全詩集』1924年刊行
Part One: Life, Poem 29: “My Country’s Wardrobe”
第一部: 人生、詩29番「我(わ)が祖國(そこく)の衣装箪笥(いしやぅ だんす)」
My country need not change her gown,
我(わ)が祖國(そこく)は自(みづか)らの外衣(ガウン)を換(か)へる必要(ひつえう)なし、
Her triple suit as sweet
其(その)三揃(みつぞろ)ひの洋裃(やぅ かみしも)[註1]は甘美(かんび)にして
As when ’twas cut at Lexington,
先頃(さきごろ)レクシントン[註2]の地(ち)で裁斷(さいだん)され、
And first pronounced “a fit.”[註3]
初(はじ)めて「體(からだ)に合(あ)ふ服(ふく)」と公言(こぅげん)されし時(とき)と同樣(どぅやぅ)に。
Great Britain disapproves “the stars”;
大(グレイト)ブリテンは「星(ほし)ども」[註4]を否認(ひにん)する。
Disparagement discreet, —
誹謗(ひばぅ)も控(ひか)へめに、
There’s something in their attitude
彼(かれ)らの態度(たいど)、腹(はら)に一物(いちもつ)ありて、
That taunts her bayonet.
其(そ)が嘲罵(てうば)するは彼(かれ)らが國(くに)の銃劍(じゆぅけん)なり。
註1: 第一連2行目の triple suit は、赤青白の三色が使われた米国旗「星条旗」を指すが、ここでは三(み)つ揃(ぞろ)いのスーツに譬(たと)えられている。
註2: 第一連3行目の Lexington は1775年4月19日(水)にアメリカ独立戦争が勃発したマサチューセッツ州の都市名で、通常「レキシントン」とカタカナ表記するが、ここでは原音に近い「レクシントン」とした。
註3: 第一連末尾(4行目)の a fit は「体に合う服」の意味で訳したが、「(病の)発作」の意から転じて「(発作的に起こった)一時的興奮状態」の意味があり、詩人ディキンスンは恰(あたか)も in a fit of rage =「激怒の発作で」の意味で使っているようにも見える。また、a fit は「詩の一節(a canto)」や「(歌の)ひとくさり (a strain)」を意味する古語でもある。したがって本来は翻訳不能である。
註4: 第二連1行目の “the stars” は米国旗「星条旗」を表すと同時に、米国の運命を占う存在と解釈できる。
【参照ウェブサイト】
Bartleby.com: Great Books Online (バートルビィ・ドットコム: 偉大な本をネット上で)
http://www.bartleby.com/113/1055.html
Emily Dickinson Riddle (エミリー・ディキンスンの謎)
http://emily-dickinson-riddle.blogspot.jp/2016/02/my-country-need-not-change-her-gown.html
Educational Technology Clearinghouse (教育テクノロジー情報センター)
http://etc.usf.edu/lit2go/115/the-poems-of-emily-dickinson-series-two/3708/life-poem-29-my-countrys-wardrobe/
Wikisource (ウィキソース)
https://en.wikisource.org/wiki/My_country_need_not_change_her_gown,