西曆2010年10月 3日(日) 日本アマゾンのレビュー、『アメリカはどれほどひどい国か』

実名でレビューを書く。

日下公人、高山正之

アメリカはどれほどひどい国か (Voice select) (新書)

最初の投稿: 2010/10/3 11:46 PM JST

原田俊明さんのコメント

http://www.amazon.co.jp/review/R1Z1XSUVWKZ0XG/ref=cm_cr_pr_cmt?ie=UTF8&ASIN=4569707386&nodeID=&tag=&linkCode=#wasThisHelpful

アマゾンがいつまで経っても我がreviewを載せてくれないので、じゃが~氏へのコメントの形をとることにする。

題名ニ偽リ有リ

『ア メリカはどれほどひどい国か』とあるが、実際には『アメリカはどれほどズルい国か』もしくは『日本はどれほどひどい国か』という内容だった。「ひどい国」 とは、映画監督のマイケル・ムーア(Michael Moore)のような左翼論客から見た場合であり、「国民健康保険が存在しない米国では、民間の保険に加入することがベストだと思われているが、実際は保 険会社は利益重視で、いざ保険金となると、過去の病歴をあげ、手術を実験的だと判断し…と、できるだけ保険金がおりないように画策する」(『シッコ』の DVD内容紹介より)ような国が「ひどい国」なのである。これに対してこの対談の日下と高山が言うような狡猾な国アメリカは、ズルくはあってもひどい国と は言えない。2人が言う「ひどい国」とはむしろ日本であり、日本国政府ではないのか。

日本の外務省は「民間のことは民間で」と言い、事態の解決に乗り出そうとしない。中国で日本企業がトラブルに巻き込まれたときも同じでした。(日下p.70)

いったい、何のために(米国に)一五もの総領事館を置いているのかわからない。訴訟があって日本企業が訴えられても日本総領事館が知らんぷりを決め込むのは、同胞のために一肌脱ぐと、アメリカ人に「友人だと思っていたのに何だ」となじられるからです。(高山p.70)

こ の箇所では私も日下と高山の両氏の憤慨を共有できた。しかしその怒りの矛先は、彼らとは違い日本国政府に向いた。米国政府は飽くまでも国益のためにズルい ことをしているのに対して、日本の在外公館は同胞が泣いていても全然助けてくれないのだ。日本国が自国民に対してこれほどひどい国だとは。

ちなみに日本では、老人のための介護用のバスはあっても、公立校のスクールバスなどありません。これほど、子供を貶めた国も珍しい。(高山p.92)

田 母神空幕長が民間の懸賞論文で一等をとった。それを(増田防衛次官は)「事前許可を取っていない」などと因縁をつけて、「蚤(のみ)の心臓」の浜田靖一防 衛相を脅し上げた。浜田大臣も内局の言いなりとなった。(中略)シナの役人を超えた陰湿さです。(中略)ここまで軍人を貶める国は世界にも例がありませ ん。(高山pp.150-51)

ここでも私は高山の怒りを共有したが、やはり怒りの矛先は日本である。日本はどれほどひどい国か。それにしても日 本は極端な国だ。戦時中は軍人が威張り腐って中野正剛のようなジャーナリストを血祭りにあげ、翻って敗戦後は軍人がトコトンやり込められ、言論の自由さえ 許されない。

成功した相手を妨害しようとするアメリカ人の性(さが)(高山p.18)

は、日本人も見習うべきである。

普通、日本人だったら、二十世紀の最も印象深かった出来事としては、人類が月に立った、ペニシリンができた、計算機ができた、飛行機を造った......などと考える。(高山p.90)

私 は日本人だが、高山のようには全く考えない。核兵器の使用とホロコーストが最大の出来事だったと考える。高山は自身の経歴とは裏腹に随分と能天気な理系脳 である。しかしだからといって日本人が十把一絡げに核なき平和な理系脳にされてしまっては適わない。しかし何だな、人類月面着陸も、ペニシリンや計算機や 飛行機の発明も、それに核兵器も、すべて白人様が成し遂げた成果であって、我々黄色い猿人はそのおこぼれにあずかっているに過ぎないのだ。高山にはそうし た謙虚さが欠けている。

白人優越主義の根本はキリスト教で、(日下p.23)

リベラルというのは奴隷解放のことですが、(日下p.24)

アメリカは生誕から二百三十年、さまざまな目に遭ってきましたが、イギリスやフランスの四百年にはまだ及びません。(日下p.37)

封建時代から近代化、現代化を図る過程で、普通の国は経済発展のために奴隷制か植民地獲得かのいずれかを採用しました。どちらも使わず、自分で働いたのは日本だけです。(日下pp.43-44)

昔、ワシントンに日独弱体化研究会という組織があって、そこの人が私のところに「どうすれば日本が弱体化するか」について質問に来たこともあります。(日下p.44)

は 全く以て意味不明である。日下という人は歴史をまったく知らないらしい。「日独弱体化研究会」などという、ありもしない団体を妄想し、仮にあったにしても 「どうすれば日本が弱体化するか」について日本の日下に質問に来るなど「アホか!」と言いたくもなる。正気の沙汰ではない。

『魏志倭人伝』や『後漢書』などを読むと、中国の史書には日本人が奴隷を連れてきたということが書かれていますが、中国の文献はまったく当てにならない。(高山p.25)

とあるが、では日本の文献は当てになるのか。それどころか、紀元後3世紀になっても日本にはまだ文字その他の記録手段もなかったのだから、支那の文献にでも頼らざるを得ないのだ。

グリーンスパン前FRB(連邦準備制度理事会)議長は「百年に一度の"ツナミ"」という日本語を使い、バーナンキ現議長も、日本の失われた十年を研究している。/ 皆、日本を師と仰ぎ、対応を考えるしかないのです。(高山p.34)

とは、能天気もいいところである。彼ら米上層部は日本を反面教師にしているに過ぎない。「日本の跌は踏むな」が合言葉なのだ。

先 般、金融サミットに出席した中川昭一財務相が最後の記者会見で酔っ払っていたと内外から批判され、辞任しました。(中略)約十年前のダボス会議で、アメリ カのミッキー・カンターUSTR(アメリカ通商代表部)代表が酔っ払って、二階から落ちて、会議を休んだことがあります。(中略)でも、そうした白人政治 家の不祥事は欧米のメディアは触れない。(中略)だけど、考えてもみてください。中川昭一さんはミッキー・カンターと違って、会議を休んだわけではありま せん。終わった後の記者会見での不始末に過ぎません。(高山pp.99-100)

と、高山はカンターを引き合いに出して中川(故人)を盛んに擁護 しているが、的外れである。泥酔野郎のカンターが欠席したのはむしろ賢明であった。中川は他人に任せれば良いものを自ら醜態を晒してしまったことが叩かれ たのだ。「白人政治家の不祥事は欧米のメディアは触れない」なんてとんでもない。単に高山が無知なだけか、意図的に大嘘を吐いたか、どちらかだ。高山の情 報源はもしかして米下層民が読む USA Today だけなのだろうか。

という具合にツッコミどころ満載の対談集であった。それなりに面白かったが、買わなくて良かったと思う。

以上

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以上

註: 私(xapaga = 原田)は職場では「支那」や「シナ」の名称は使っていない。しかし1912年から使われ出した「中国」の名称を用いて、それ以前の国体(帝国や王国)を指すのは歴史的に言って誤りである。英米人が「チャイナ」、フランス人が「シーヌ」、ドイツ人が「シナ」や「ヒナ」と言っても一向に怒らないシナ人が、日本人の言う「支那」や「シナ」や「東シナ海」の名称に噛みつくのは笑止千万である。彼らが西洋人に頭が上がらず日本人を見下している証左でもある。