前期18「イギリス文化論」(2021/ 6/17 + 6/24) 英国の大学年表と女権(ブレグジット国民投票からEU離脱成立まで)

前の年表( https://sites.google.com/site/xapaga/home/universitytimeline4 )から続く。日本の大学年表についてはウェブページ6種( https://sites.google.com/site/xapaga/home/japanuniversitytimeline1 / https://sites.google.com/site/xapaga/home/japanuniversitytimeline2 / https://sites.google.com/site/xapaga/home/japanuniversitytimeline3 / https://sites.google.com/site/xapaga/home/japanuniversitytimeline4 / https://sites.google.com/site/xapaga/home/japanuniversitytimeline5 / https://sites.google.com/site/xapaga/home/japanuniversitytimeline6 )を参照のこと。

2016年6月23日(木) 連合王国(UK: United Kingdom)の欧州連合(EU: European Union)からの離脱の是非(ぜひ)を問う所謂(いわゆる) Brexit referendum (ブグジット・れファれンダム)なる国民投票が実施される。

2016年6月24日(金) 未明 連合王国のEUからの離脱の是非(ぜひ)を問う国民投票で、EU残留派(the Remain side)が48.11%、EU離脱派(the Leave side)が51.89%という僅差(きんさ)で離脱派が勝利し、今後二年以内の離脱に向けてEUとの交渉に入る。残留派のキャメロン(David Cameron, b.1966; 首相在任2010-16; オクスフオッド大学ブレイズノウズ学寮卒)内閣総理大臣は2016年10月の保守党(Conservative Party; 別称・蔑称 Tories)大会までに今回の敗北の責任を取って辞任することを表明。投票結果が発表された直後に英国通貨ポンド(the pound sterling; 記号 £)が急落したことから、海外や遠方で休暇を過ごすのではなく、自宅や近場で贅沢(ぜいたく)な休暇を取る人が増え、stay (滞在(する))と vacation (長期休暇)を合成した staycation (ステイケイション)なる造語が生まれる。航空券代が掛からず予算が浮いた分だけ近場の高級ホテルに宿泊して贅沢できるというわけである。

2016年6月26日(日) 連合王国のEUからの離脱が決まった直後の週末、ロンドン西部のポーランド社会文化協会(POSK: Polski Ośrodek Społeczno-Kulturalny; 英称 Polish Social and Cultural Association)、通称 ポーランド文化センター(Polish culture centre)が暴徒に襲撃されて損傷を受け、人種差別的な落書きをされる。「英国は今後EUを離脱するのだから、お前たちポーランド人はもう英国に居られなくなってザマァ見ろ!」というメッセージが込められていた。

2016年7月13日(水) 保守党(Conservative Party; 別称・蔑称 Tories)のキャメロン(David Cameron, b.1966; 首相在任2010-16; オクスフオッド大学ブレイズノウズ学寮卒)内閣が総辞職。与党保守党内の対立候補が総裁選に出馬することを断念したため、同日にキャメロン内閣で内務大臣(Home Secretary: 日本の「法務大臣」に相当)を六年間務めてきたメイ(Theresa May, b.1956; 首相在任2016-19; オクスフオッド大学聖ヒュー学寮卒)夫人の内閣が組閣。メイ夫人(英 Mrs May; 米 Mrs. May)は英国史上二番目の女性首相(the second Prime Minister in British history)となる。メイ夫人自身は元々欧州懐疑派(Eurosceptic ユーろスプティック)で、ブレグジット国民投票では残留派(the Remain side)に身を置いていたが、皮肉にもEUとの離脱交渉を引き受ける羽目になる。メイ首相は私生活ではテリーザ・ブレイジャー(Theresa Brasier, b.1956)嬢としてオクスフオッド大学聖ヒュー学寮(St Hugh’s College, Oxford)在学中に知り合った1歳年下の同大学リンカン学寮(Lincoln College, Oxford)在学中のフィリップ・メイ(Philip May, b.1957)氏と、同大学卒業後の1980年に満24歳の誕生日が来る前に結婚したが、子供はいない。夫のメイ氏は投資ファンド(investment fund)の顧客関係管理職(customer relationship manager)の職に就いている。

2016年9月21日(水) 英教育専門誌タイムズ高等教育(THE: Times Higher Education)はこの日、2016-17年度の「世界大学ランキング」を発表。世界第1位には英オクスフオッド大学(University of Oxford; 通称 Oxford University)が英国初の栄冠に輝いた。その他も欧米勢が上位を占めた。2位は米カリフォルニア工科大学(California Institute of Technology; 通称 Cal Tech)で、米スタンフォード大学(Stanford University)、英ケイムブリヂ大学(University of Cambridge; 通称 Cambridge University)が続いた。アジア首位はシンガポール国立大学(NUS: National University of Singapore)の24位だった。

2017年1月24日(火) ニューカッスル王室直轄裁判所(Newcastle Crown Court)がイングランド北東部のノーサンブリア大学(Northumbria University; 厳密には University of Northumbria at Newcastle)に40万ポンド(約5,800万円)の罰金を命じる。前年(2016年)3月に同大学講師が行なった実験で、本来は300ミリグラムのカフェイン(caffein; 化学記号 C8H10N4O2)を投与すべきところを、スマートフォンで計算した際に小数点(decimal point)の位置を誤ってその百倍の30,000ミリグラム=30グラムを被験者のスポーツ科学専攻の男子学生2名に誤投与したことについて、大学側の監督不行き届きを問題視した判決だった。学生たちは致死量の2倍とも言われる生命の危険に達する量のカフェインを摂取してしまったが、集中的な治療を受けたことで命に別状はなかったという。(2017年1月25日(水)付の地元の Sunderland Echo (サンダーランド・エコー)紙の Karon Kelly 記者署名記事 http://www.sunderlandecho.com/news/north-east-students-almost-died-after-taking-equivalent-300-cups-of-coffee-in-one-dose-when-experiment-went-wrong-1-8352037 と同日付のBBCのオンライン記事 http://www.bbc.com/news/uk-england-tyne-38744307 と米 Gizmodo の Hudson Hongo 記者署名記事に基づく2017年1月31日(火)付の岩田リョウコ女史による翻訳記事に依拠)

2017年1月27日(金) 一週間前の同年1月20日(金)に就任したばかりのトランプ(Donald Trump, b.1946; 大統領在任2017-21; 私立ペンシルヴェニア大学卒)米新大統領が大統領官邸のホワイトハウス(the White House: 「白館」の意)にて外国の首脳として初となる会談を英国のメイ(Theresa May, b.1956; 首相在任2016-19; オクスフオッド大学聖ヒュー学寮卒)内閣総理大臣と持つ。但し、大統領就任直前には日本の安倍晋三(あべ しんぞう, b.1954; 首相在任2006-07 & 2012-20; 成蹊大学卒、カリフォルニア州立大学ヘイウォード校遊学、南カリフォルニア大学遊学)内閣総理大臣がトランプ次期大統領のニューヨーク市内の私邸で会見している。会談後はホワイトハウス内にて記者を集めて合同記者会見(joint press conference)を実施し、英米の特別な関係(special relationship)を内外に印象づける。ホワイトハウスが公開した米英二ヶ国首脳の発言( https://www.whitehouse.gov/the-press-office/2017/01/27/president-trump-and-prime-minister-mays-opening-remarks )と動画( https://www.whitehouse.gov/featured-videos/video/2017/01/27/president-trump-and-pm-may-joint-press-conference )。英国首相官邸が公開した英米二ヶ国首脳の発言と質疑応答と動画( https://www.gov.uk/government/speeches/pm-press-conference-with-us-president-donald-trump-27-january-2017 )。なお、外国の首脳として2人目は日本の安倍晋三(あべ しんぞう, b.1954; 首相在任2006-07 & 2012-20; 成蹊大学卒、カリフォルニア州立大学ヘイワード校遊学、南カリフォルニア大学中退)総理大臣であり、同年2月10日(金)にホワイトハウス内にて会談・合同記者会見(joint press conference)を実施した後、安倍首相はその儘(まま)トランプ大統領と一緒に大統領専用機エアフォースワン(Air Force One)に乗り込み在フロリダ州パームビーチ(Palm Beach, Florida)のトランプ氏別荘へ移動し、同年2月11日(土)に日米両国の首脳がトランプ氏所有のゴルフ場でゴルフ対決を楽しむことで強固な日米関係を内外に印象づける。日本国外務省が公開した日米首脳会談の日程( http://www.mofa.go.jp/mofaj/na/na1/us/page1_000297.html )。ホワイトハウスが公開した動画( https://www.whitehouse.gov/featured-videos/video/2017/02/10/president-trump-and-prime-minister-shinz%C5%8D-abe )。日本国首相官邸が公開した安倍首相冒頭発言( http://www.kantei.go.jp/jp/97_abe/statement/2017/0210usa.html )。日本国政府インターネットテレビ・内閣広報室が公開した動画( http://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg14920.html )。日本国外務省が公開した日米共同宣言和文( http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000227766.pdf )と英文( http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000227768.pdf )、ホワイトハウスが公開した英文( https://www.whitehouse.gov/the-press-office/2017/02/10/joint-statement-president-donald-j-trump-and-prime-minister-shinzo-abe )。

2017年2月6日(月) 英女王エリザベス二世(Elizabeth II, b.1926; 在位1952-)が Sapphire Jubilee (サェファイャジューブァリー)と呼ばれる即位六十五周年の日を迎え、大ロンドン市ウェストミンスター区(City of Westminster, Greater London)内のバッキンガム宮殿(Buckingham Palace)附近では公式な祝砲が鳴らされる。女王自身はこの日をイングランド東部の別邸であるサンドリンガム館(Sandringham House)で過ごし、公式行事には参加しなかったが、英王室は記念として、1947年11月20日(木)に当時はまだ王女(Princess)だった同女王がエディンバラ公フィリップ殿下(Prince Philip, Duke of Edinburgh, b.1921)と結婚した際に父親の国王ジョージ六世(George VI, 1895-1952; 在位1936-52)から贈られたサファイアのネックレスとイヤリング(sapphire necklace and earrings)を着けた三年前の2014年の写真を公開した。

2017年3月22日(水) 14:50頃、大ロンドン市ウェストミンスター区(City of Westminster, Greater London)内に在る国会議事堂(Houses of Parliament)、正式名称 ウェストミンスター宮殿(Palace of Westminster)近くのウェストミンスター橋(Westminster Bridge)を四輪駆動車(a four by four)が暴走。歩道を歩いてた多数の通行人を轢(ひ)き倒し、その車から降りてきた男が議会開催中の英議会下院(House of Commons)への侵入を試み、持っていたナイフで非武装警官1名(an unarmed police officer)を刺殺。ロンドン警視庁(Metropolitan Police Service)、通称 スコットランドヤード(Scotland Yard)の発表によると、この事件により犯人を含む計5名が死亡し、40名が負傷した。死亡したのは結婚二十五周年で米国ユタ州から欧州観光旅行の最終目的地としてロンドンを訪れていた夫婦の夫の方(妻も意識不明)と、保育園に子供を迎えに行く途中だった40代の英国人(但し、父親はギリシア系キプロス人で母親はスペイン人)の女性教員と、70代の英国人年金生活者と、上述した警察官だった。警官以外は車に轢(ひ)かれたことが原因で亡くなったが、アメリカ人観光客は暴走車になぎ倒されて橋から石の歩道に落とされたことで命を失った。なお、同じようにテムズ川(the River Thames)に落とされたルーマニア人女性観光客は負傷したが命は助かった。単独犯の男は現場で警察官に3発の銃弾を浴びせられ殺害された。犯人の射殺自体は緊急時の適正な措置だったとして批判の声は上がっていない。英当局は本事件は犯人が国際テロリズムに触発(inspire インスパイヤー)されたという想定で捜査を進め、テロの脅威度を5段階中2番目に高い「深刻(severe)」を継続するとし、事件後数日間は大ロンドン市内をはじめ英国全土で武装・非武装の警察官を多く配置するとした。なお、この事件は2016年3月22日(火)にベルギー王国首都にして欧州連合(EU: European Union)の事実上の首都でもあるブリュッセル(仏 Bruxelles ブひゅクセル; 蘭 Brussel ブりゅッセル; 独 Brussel ブりゅッセル; 英 Brussels ブらッセルズ)市近郊のブリュッセル国際空港、及びブリュッセル市中心部の地下鉄マールベーク(蘭 Maalbeek; 仏 Maelbeek)駅での IS 戦闘員による爆弾テロで死者35人(犯人グループ3名を含む)を出した事件からちょうど1周年の日だったため、その関連性が指摘されている。一方、メイ(Theresa May, b.1956; 首相在任2016-19; オクスフオッド大学聖ヒュー学寮卒)内閣総理大臣は、翌日(2017年3月23日(木))午前の議会での答弁の中で、「議長さん、この犯人は単独犯だったと現段階でも考えられており、公衆に対する更なる差し迫ったテロ攻撃の可能性があるものと警察が考える理由はありません。/ 男の身元は今や警察と国内公安機関 MI5 (エマイファイヴ)が知るに及びましたが、捜査への支障がない限りに於いて後ほど公表されます。/ 私が確実に言えることは、その男は英国生まれであり、何年か前に暴力的な過激思想への関りで捜査を受けています。男は周縁的(註: 「中心的」の反対)な人物でした。/ (その時の)事件は過去のものです。男は現時点での(テロ対策の)捜査対象に浮かんできていませんでした。/ 男の計画や企(たくら)みを事前に把握することは不可能でした。徹底的な捜査が続きます。」(Mr Speaker, it is still believed that this attacker acted alone, and the police have no reason to believe there are imminent further attacks on the public. / His identity is known to the police and MI5, and when operational considerations allow, he will be publicly identified. / What I can confirm is that the man was British born and that some years ago, he was once investigated in relation to concerns about violent extremism. He was a peripheral figure. / The case is historic – he was not part of the current intelligence picture. / There was no prior intelligence of his intent – or of the plot. Intensive investigations continue.)と述べ、事件を未然に防げなかった警察を暗に擁護(ようご)した( https://www.gov.uk/government/speeches/pm-commons-statement-on-westminster-attack-23-march-2017 & https://www.youtube.com/watch?v=3tMdteSplBI (5:14-6:02 of 10:52))。同日(2017年3月23日(木))午後、警察は射殺した単独犯を満52歳のカリド・マスード(Khalid Masood, 1964-2017)と特定して発表したが、同容疑者は多数の偽名(many alias)を使用していたとのことで、出生時の名前がエイドリアン・ラッセル・エルムズ(Adrian Russell Elms, 1964-2017)だったことや、エイドリアン・アジャオ(Adrian Ajao, 1964-2017)やハリド・チョウドリー(Khalid Choudry, 1964-2017)と名乗っていた時期もあると後に明らかにした。イングランド南部のケント(Kent)州に黒人の父親と白人の母親の間に生まれたが、英国社会では黒人として認識されていた。1983年に器物損壊罪で服役したことに端を発し、2000年7月に人種的な諍(いさか)いが基(もと)でパブの主人の顔をナイフで刺して禁固2年の刑に服すなど、マスードことエルムズは暴力犯罪者としての道を歩んでいた。2009年頃に刑務所内でイスラム教の過激思想に感化されたと考えられている。今回(2017年3月22日(水))の事件直後に警察はいち早く動き、犯行に使われたレンタカーを犯人が借りた英国第二の大都市バーミンガム市で犯人と関係のありそうな人物宅を家宅捜査し、複数名を逮捕した。ロンドンで一度逮捕した女性は翌日釈放した。他方、満48歳で殉職したキース・パーマー巡査(PC Keith Palmer, 1968?-2017)の遺族への同情がネットを通じて拡散され、2日間で35万ポンド(£350,000: 約4850万円)が集まった。(2017年3月22日(水)から24日(金)にかけて放映された英国放送協会のテレビ及びラジオのニュース報道と、3月23日(木)付で日本国外務省から発出された海外安全ホームページの内容と、同年3月24日(金)付のヤフーニュースに転載されたフランス通信社 AFP の日本語版オンライン記事と、同24日(金)付の英国ヤフーニューズに転載されたテレグラフ紙とスカイニューズのオンライン記事に依拠)

(参考)英国放送協会(BBC: British Broadcasting Corporation)が纏めた英新聞各紙の反応

http://www.bbc.com/news/blogs-the-papers-39388352

2017年3月23日(木) 英国の研究者による理系論文数が2012年から’16年の過去5年間で17%増大したと英名門科学誌 Nature が発表。自然科学系の有力学術誌68誌に掲載された論文の著者をデータベースで調べた結果、5年間で中国の論文数が48%、英国が17%伸びた一方、日本は8%減少し、アメリカも6%減少した。(2017年3月23日(木)付の共同通信のオンライン記事に依拠)

2017年3月29日(水) 英国政府メイ(Theresa May, b.1956; 首相在任2016-19; オクスフオッド大学聖ヒュー学寮卒)内閣が欧州連合(EU: European Union)に対して離脱の意思を正式通告。EUの規定により、この通告から2年以内に英国はEUから離脱する必要がある。

2017年4月18日(火) メイ(Theresa May, b.1956; 首相在任2016-19; オクスフオッド大学聖ヒュー学寮卒)内閣総理大臣が大ロンドン市ウェストミンスター区ダウニング街10番地(10 Downing Street, City of Westminster, Greater London)の首相官邸前に記者団を集め、玄関前の階段に立って記者会見を実施。その内容は、議会下院(the Lower House of Parliament)=庶民院(the House of Commons)の選挙日程を三年早めた総選挙(General Election)を六週間後の同年6月8日(木)に実施するとの突然の発表だった。英国の首相は日本の首相同様に(日本が単に英国を模倣しただけだが)議会解散権(mandate to dissolve Parliament)を有している。但し、2011年定期議会法(FTPA: Fixed-term Parliaments Act 2011)が施行されて以来、首相による議会解散権が制限され、下院議員の三分の二(two thirds of MPs)が解散総選挙への賛成票を投じない限りは成立しない。欧州連合(EU: European Union)からの離脱の方針・方法について国民の信を問うための選挙であり、既に決まっているEU離脱の是非を再度問うわけではないとのことだが、EU当局は英首相の突然の発表に当惑したという。メイ首相の発表のニュースは欧州委員会(European Commission)の定例記者会見中に飛び込んだが、同委員会の広報官は「ノーコメント」を貫く。英マスコミ各社は「抜き打ち総選挙」(snap general election: 日本で言う「解散総選挙」に相当)と一斉に報じたが、首相本人は「抜き打ち(snap)」という用語には同意せず。なお、議会上院(the Upper House of Parliament)=貴族院(the House of Lords)に選挙は無く、無給ボランティア議員がいるのみ。そして翌日(2017年4月19日(水))に下院議員の三分の二を大幅に超える賛成票が投じられ、同年(2017年)6月8日(木)に総選挙を実施することが正式決定。

2017年5月22日(月) 22:33頃(日本時間では2017年5月23日(火) 6:33頃) 2017年マンチェスター・アリーナ爆破事件(2017 Manchester Arena incident)が発生。マンチェスター・アリーナ(Manchester Arena)で米人女性歌手アリアナ・グランデ(Ariana Grande, b.1993)嬢のライブ・コンサートが終わった直後に、同アリーナの一般用出入口と旧国鉄の一大ターミナルであるマンチェスター・ヴィクトリア駅(Manchester Victoria station)との間で爆弾の炸裂が起こる。歌手本人やその他のミュージシャンは無事だったが、少なくとも19人が死亡し、60人以上が負傷して病院で手当てを受けていると一旦報道され、後に8才の女の子を含む22人死亡(実行犯1名を含めれば23人)・59人負傷と情報が修正された。警察は犯人の男が自殺ベルト(a suicide belt)に入れた手製の爆弾を起爆させて死亡していたと発表した。これは所謂(いわゆる)「脆弱(ぜいじゃく)な標的(soft target)」が狙われたテロ事件ということになる。事件のことを知ったグランデ嬢は、自身の公式ツイッター(Twitter)アカウント( https://twitter.com/ArianaGrande/status/866849021519966208 )に、「打ちひしがれる。[改行] 心の底から、ホントにホントにお気の毒で。言葉にならない。」(broken. [New line] from the bottom of my heart, i am so so sorry. i don’t have words.)と投稿した。グランデ嬢は26日(金)にはマンチェスターの犠牲者を追悼するコンサートを開きたいと意思表示した。そして日程の調整がつき、ロンドンでの別のテロ事件(下記参照)の翌日であるにも拘(かか)わらず、同年6月4日(日)に大マンチェスター(Greater Manchester)市内の約5万人収容の Old Trafford クリケット競技場(cricket ground)にて慈善(charity)コンサート ‘One Love Manchester’ を開催した。そこではグランデ嬢自身がマイリー・サイラス(Miley Cyrus, b.1992)とブラック・アイド・ピーズ(Black Eyed Peas: 「目の周りに痣(あざ)を作った豆たち」の意)と共演し、またグランデ嬢自身は地元マンチェスター南部の国立総合中等学校(a state comprehensive secondary school)である Parrs Wood High School の生徒たちとも共演した。他にもケイティ・ペリー(Katy Perry, b.1984)とロビー・ウィリアムズ(Robbie Williams, b.1974)とジャスティン・ビーバー(Justin Bieber, b.1994)が友情出演し、グランデ嬢自身がコールドプレイ(Coldplay)のクリス・マーティン(Chris Martin, b.1977)と元オウエイシス(Oasis: 日本では誤って「オアシス」)のリアム・ギャラガー(Liam Gallagher, b.1972)と共演するという豪華な顔合わせとなった。事件翌日の5月23日(火)昼にはイスラム教のテロ組織「イスラム国」(Islamic State)こと IS が犯行を認め、これを誇示した。警察はマンチェスター南部の治安の悪い地区で23歳の男を共犯として逮捕したが、当局は死亡した実行犯や逮捕した共犯の身元については公表せず、捜査を継続するとした。このテロ事件を受け、メイ(Theresa May, b.1956; 首相在任2016-19; オクスフオッド大学聖ヒュー学寮卒)内閣総理大臣は23日(火)に首相官邸(10 Downing Street)前から国民向けに演説し、テロの脅威度を5段階中2番目に高い「深刻(severe)」から最高レベルの「危機的(critical)」に引き上げるとした。これは更なるテロ攻撃が切迫していること(that a further attack may be imminent)を意味する(演説の原稿全文 https://www.gov.uk/government/speeches/pm-statement-following-second-cobr-meeting-on-manchester-attack-23-may-2017 から特に第9段落; 動画 https://www.youtube.com/watch?v=P3LMgJSwYkY 2:10-2:30)。しかしながら、四日後の27日(土)には警戒態勢が整ったとのことで、テロの脅威度を再び「深刻(severe)」に戻した。英捜査当局は周辺捜査のため実行犯の氏名の発表を控えていたが、米マスコミが漏洩(ろうえい)情報(leaked information)を基(もと)に報道してしまったことから、サルマン・ラマダン・アビーディ(Salman Ramadan Abedi, b.1994?)容疑者の名を公表し、テロ組織 IS の構成員であるとも付け加えた。アビーディ容疑者はリビア人イスラム教徒の移民の両親の間にマンチェスター南部の貧民街で生まれた22歳のサルフオッド大学(University of Salford, Manchester; 通称 Salford University)の元学生(退学済)とのこと。また、リビアに居た実行犯の父親と兄と弟も共犯として逮捕され、この事件で逮捕または拘束された者は26日(金)夜までに18歳から51歳まで計9名となった。24日(水)付の米ニューヨーク・タイムズ紙(The New York Times)はまた、警察の鑑識(かんしき: Identification Section)が撮影した起爆ボタンや殺傷力を高めるために使われた釘(くぎ)などが写った爆発物の写真を掲載したため、英国政府(Her Majesty’s Government)は米側に提供した機密情報が漏洩(ろうえい: leak)されたと見て、米側との情報共有の停止を決めた。25日(木)にベルギー王国首都にして欧州連合(EU: European Union)の事実上の首都でもあるブリュッセル(仏 Bruxelles ブひゅクセル; 蘭 Brussel ブりゅッセル; 独 Brussel ブりゅッセル; 英 Brussels ブらッセルズ)市で開催の北大西洋条約機構(NATO: North Atlantic Treaty Organization)首脳会議で、メイ(Theresa May, b.1956; 首相在任2016-19; オクスフオッド大学聖ヒュー学寮卒)首相はこの件に関してトランプ(Donald Trump, b.1946; 大統領在任2017-; 私立ペンシルヴェニア大学卒)米大統領に対して直接厳重抗議した。英側からの公然とした米国非難を機に、これまで「特別な関係」(the special relationship)と称されてきた英米関係に亀裂が走った。マンチェスターで起こった大規模な爆弾テロ事件としては、1996年6月15日(土)の事件( https://sites.google.com/site/xapaga/home/shockingcrimes )以来二十一年振りとなった。今回事件の舞台となったマンチェスター・アリーナは、同市中心街北端に位置するマンチェスター・ヴィクトリア駅(Manchester Victoria station)に隣接していて、1995年にNYNEXアリーナ(NYNEX Arena)として開場し、幻に終わった自称「マンチェスター・オリンピック」の会場として使用する予定だったが、1996年大会(実際には米国でアトランタオリンピックが開催)と2000年大会(実際には豪州でシドニーオリンピックが開催)のいずれにも国際オリンピック委員会(IOC: International Olympic Committee)の会場選考評決で落選していた。2002年の英連邦大会(Commonwealth Games: 日本で譬(たとえ)えれば「アジア大会」並みに重要な国際大会)ではボクシングとネットボールの会場として使用された。最大収容人数は21,000人ということになっているが、実質的には18,000人で開催している。現在では「世界でも有数の大繁盛している屋内アリーナ(one of the world’s busiest indoor arenas)」とされている。以前は命名権を得た企業により、上述のNYNEXアリーナや、マンチェスター・イーブニング・ニューズ・アリーナ(Manchester Evening News Arena; 略称 MEN Arena)や、フォーンズ・フォー・ユー・アリーナ(Phones 4u Arena)の呼称が使われていたが、2011から’13年の間と2015年以降は、命名権は使われていない。

2017年5月26日(金) 約14,000人のティーン(13~19歳に限定する英語表現だが、実際には15~16歳)の子が受験した「英文学」(English Literature)のGCSE試験で、出題ミスがあったことを試験実施委員会最大手の OCR が認める。そのミスとは、シェイクスピア(William Shakespeare, 1564-1616)の『ロミオとジュリエット』(Romeo and Juliet)に関する問題で、重要な脇役であるティボルト(Tybalt)の家系(family background)について他との混同があったことを指す。試験問題はティボルトがモンタギュー家の一員(a Montague)としていたが、正しくはキャピュレット家の一員(a Capulet)だった。同委員会は謝罪するとともに、この出題ミスで不利益を受けた受験生は一人もいないとした。試験内容規制監督団体(exams regulator)である Ofqual (ヴクウォール)こと、資格及び試験規制監督局(Office of Qualifications and Examinations Regulation)の話では、今回の問題は受け入れ難(がた)い(unacceptable)ため、今後 OCR の原因究明調査を細かく監視して行くとした。(同日付の BBC News の Hannah Richardson 記者署名記事 GCSE exam error: Board accidentally rewrites Shakespeare に依拠)

2017年6月3日(土) 22:08頃(日本時間では6月4日(日) 6:08頃) ロンドン橋(London Bridge)の南側で時速50マイル(50mph)、約80キロ(80km/h)と思しき速度でロンドン中心部から南下する白いヴァンが歩道に乗り上げ、5人の通行人を次々と轢(ひ)き倒し、少なくとも1人が死亡したと、まず報道される。運転手の男は武装警官に現行犯逮捕される。しかしその白いヴァンからは1フィート(約30cm)のナイフを持った3人の男たちが飛び出しており、附近のテムズ川南岸(South Bank)のバラーマーケット(Borough Market: 「区市場」の意)地区という飲食店街の路上で警察官1人を刺してから、パブ(pub: 「公的家屋」を意味する public house の略)で少なくとも客4人を刺した。人を刺しながら男たちは、「これはアッラーのためだ。(This is for Allah.)」と叫んでいたという。犯人たちは爆発物を詰めたチョッキ(bomb vests; explosive vests)を着ているように見えたが、実は偽物(fake)であることが後に判明した。武装警官たちが現場に駆けつけて対応に当たり、犯人3人全員を射殺した。6月4日(日) 昼までにロンドン橋と区市場地区での死者の合計は7人(刃物の通り魔の実行犯3名を含めると10人)となり、48人が病院で手当てを受けた。さらに同じ頃にはロンドン南西部の治安の悪い地域であるヴォクソール(Vauxhall)にも武装警官たちが派遣されたが、事件の詳細は発表されず、その後テロとは無関係と発表された。一方、メイ(Theresa May, b.1956; 首相在任2016-19; オクスフオッド大学聖ヒュー学寮卒)内閣総理大臣は、事件翌日の6月4日(日)に首相官邸(10 Downing Street)前から国民に向けて演説し、次のように結んだ。「(犠牲者や遺族や警察や救急隊員や救護に協力した市民に)敬意を表し、(保守党と労働党の)二大政党は本日(日曜)の全英での選挙キャンペーンを停止します。しかし暴力が民主的プロセス(訳註: 選挙による代議制民主政治のこと)を途絶えさせることがあってはなりません。したがって選挙キャンペーンは明日(月曜)に全面的に再開します。そして総選挙は予定通り木曜日(6月8日(木))に実施されます。一国として、暴力に直面した際の私たちの対応はこれまで通りでなければなりません。私たちは一体となられねば、まとまって協力せねばなりません。そして団結して敵に挑(いど)み、打ち負かすのです。」(As a mark of respect the 2 political parties have suspended our national campaigns for today. But violence can never be allowed to disrupt the democratic process. So those campaigns will resume in full tomorrow. And the general election will go ahead as planned on Thursday. / As a country, our response must be as it has always been when we have been confronted by violence. We must come together, we must pull together, and united we will take on and defeat our enemies.)と( https://www.gov.uk/government/speeches/pm-statement-following-london-terror-attack-4-june-2017 / https://www.youtube.com/watch?v=SuhFVsiUfDU 7:21-7:58)ロンドン警視庁(Metropolitan Police Service; 略称 MPS; 通称 Met Police; 歴史的通称 Scotland Yard)は、6月4日(日) 昼過ぎまでに、事件に関与したとしてロンドン東部のバーキング(Barking)地区で12人を拘束した。一方、事件翌日の6月4日(日)にイスラム教のテロ組織「イスラム国」(Islamic State)こと IS は今回の犯行を認め、これを誇示した。捜索先のアパート(flat)に住んでいた27歳のパキスタン移民の男が事件の主犯格であり、射殺された3人の男のうちの一人だったと、6月5日(月)未明に警察が発表した。また、警察は射殺された犯人のうちの1人はパキスタン生まれで英国籍の27歳のクラム・バット(Khuram Butt, b.1990?)容疑者であること、もう1人が北アフリカのモロッコ人とリビア人の両親から生まれた30歳のラシッド・ルドゥアーヌ(Rachid Redouane, b.1987?)容疑者であることを同日(月曜)深夜までに発表した。バット容疑者については警察も国内公安機関の MI5 (エマイファイヴ)も危険人物として認識していたが、すぐにもテロ行為に走るとは考えておらず、警戒していなかった。不意を突かれた形になった当局は批判を浴びることになった。ロンドンでは同年(2017年)3月22日(水)にもウェストミンスター橋(Westminster Bridge)で四輪駆動車が歩道の通行人を轢(ひ)き倒し、単独犯の男を含む計5名が死亡し、40名が負傷するテロ事件があったばかりである。(2017年6月4日(日)の BBC Radio 4 ‘News at Midnight’ 及び BBC Word Service News 及び BBC News のウェブサイトの報道に依拠。)

2017年6月8日(木) 同年(2017年)5月22日(月)に三番目の規模の都市マンチェスターで、そして6月3日(土)に首都ロンドンで、イスラム教過激派によるテロ事件が相次いだ(同年3月22日(水)のロンドンでのテロを入れると3連続)にも拘(かか)わらず、議会下院(the Lower House of Parliament)=庶民院(the House of Commons)の総選挙(General Election)が予定通り実施される。メイ(Theresa May, b.1956; 首相在任2016-19; オクスフオッド大学聖ヒュー学寮卒)内閣総理大臣の与党保守党(Conservative Party; 別称・蔑称 Tories)は選挙直前の1週間で最大野党の労働党(Labour Party)党首コービン(Jeremy Corbyn, b.1949; 北ロンドン総合技術専門学校=現ロンドン・メトロポリタン大学卒)氏の猛烈な追い上げを受け、しかもキャプテン・スカー(Captain SKA)によるメイ首相に対する中傷ソング ‘Liar Liar’ (「ライヤー・ライヤー」: 「嘘つき嘘つき」の意 https://www.youtube.com/watch?v=HxN1STgQXW8 )なる楽曲がネット上で大ヒット。英国放送協会(BBC: British Broadcasting Corporation)は選挙での中立公正性(neutrality and fairness)に支障が出ることを恐れ、聴取者たち(listeners)のリクエストに応じることを拒否。

2017年6月9日(金) 未明 前日(2017年6月8日(木))の総選挙(General Election)の開票とその後の修正発表の結果( http://www.bbc.com/news/election/2017/results )、保守党(Conservative Party; 別称・蔑称 Tories)が得票率42.4%で13議席減の318議席にとどまり、定数650の議会で過半数割れ(議席率48.9%)を起こす。つまり議会の半数を抑(おさ)えるのにあと7議席が足りず、過半数にはあと8議席が足りなかった。それでも保守党が議会最大政党であることには変わりがなく、政権交代はない。対する労働党(Labour Party)は得票率40.0%で30議席増の262議席(議席率40.3%)と大健闘した。これは保守党が推進していた緊縮財政(austerity measures)に対して有権者の嫌気がさしたことが最大の理由と考えられる。緊縮財政とは、メイ夫人(英 Mrs May; 米 Mrs. May)がキャメロン(David Cameron, b.1966; 首相在任2010-16; オクスフオッド大学ブレイズノウズ学寮卒)内閣の内務大臣(Home Secretary: 日本の「法務大臣」に相当)を六年間務めていた時代に警察組織を2万人も削減したことや、やはりキャメロン内閣時代に起きた大学の学費(tuition fee)の高騰(こうとう)、それにメイ(Theresa May, b.1956; 首相在任2016-19; オクスフオッド大学聖ヒュー学寮卒)内閣での国民健康保険制度(NHS: National Health Service)の予算削減や身障者への補助金削減が含まれる。そのため保守党は大学生をはじめとした若者の間で不人気である。迎え撃つ労働党は、そうした有権者の不満をうまく引き出し、議席の大幅増に繋(つな)げる。抜き打ちの選挙を実施することで政権基盤を盤石(ばんじゃく)なものにしようと画策(かくさく)したメイ首相だったが、蓋(ふた)を開けてみれば大誤算と判明。キャメロン前首相が二年前の2015年5月7日(木)の総選挙で大勝利した折角(せっかく)のレガシー(legacy)を台無しにしてしまう。そして議会下院(the Lower House of Parliament)=庶民院(House of Commons)は、今や決定的な勝者としての政党が無い所謂(いわゆる)「宙づり議会」(a hung parliament)となる。以後は英国の政策決定に多大な障碍(しょうがい)が出る。メイ首相は、自党の過半数割れという事態を乗り切るため、北アイルランドのプロテスタント系地域政党である民主ユニオニスト党(DUP: Democratic Unionist Party; 「ユニオニスト」とは北アイルランドが今後とも連合王国の一部であることを望む立場)に政権への協力を促す。結果として僅(わず)か10議席しか持たないミニ政党であるDUPがキャスティングヴォート(casting vote: 議会で賛否が対立しているとき、会議の議決を決める決定権を少数の第三党が持ってしまうこと)を握るのではないかと危惧する声が出る。

2017年6月14日(水) 未明~同15日(木) ロンドン西部でグレンフェルタワー火災(Grenfell Tower fire)が発生。詳細は、授業資料「1990年代以降イギリスが騒然となった事件・事故(後篇)」( https://sites.google.com/site/xapaga/home/shockingcrimes2 )へ。

2017年6月19日(月) 午前0:15頃 ロンドン北部でフィンズベリーパーク事件(2017 Finsbury Park incident)が勃発。詳細は、授業資料「1990年代以降イギリスが騒然となった事件・事故(後篇)」( https://sites.google.com/site/xapaga/home/shockingcrimes2 )へ。

2017年8月18日(金) 英ケイムブリヂ大学出版局(CUP: Cambridge University Press)が中国共産党(中共)独裁政権の要請を受けて、学術誌『チャイナ・クォータリー』(China Quarterly: 『中国季刊』の意)のウェブサイトに掲載された天安門事件(Tiananmen Square massacre of 1989)や無産階級文化大革命(Great Proletarian Cultural Revolution; 通称 Cultural Revolution, 1966-76)や習近平(习近平; Xí Jìnpíng, b.1953; 国家主席在任2013-)主席への批判的記述など中共政府に不利な内容を含む論文300本超への中国本土(mainland China)からのアクセス(access)を遮断(block)したと発表。英名門大学の出版部門が中共政権の検閲(censorship)圧力に屈した事実に研究者や学生が耳を疑う事態となる。これには中共などの独裁国家を除いた全世界の学者が失望と怒りの声を上げ、挙句には数百人分の非難署名が寄せられ、三日後の2017年8月21日(月)に同出版局(CUP)は一転して中共政権の検閲受け入れの決定を撤回する。「本学の根幹を成す学問の自由という大原則を擁護する」(uphold the principle of academic freedom on which the university’s work is founded)ためだという。CUPは多くの出版物を中国本土で販売しているが、中共政権は「もし我が国にとっての有害情報を遮断しないのなら、中国本土での販売を禁止する」という趣旨の脅迫を英ケイムブリヂ側にしてきたとCUPは説明し、その協議をするための会合があるので、それまでの「一時的な措置」だったと弁明する。中国本土に九年間も在住しながら今回のCUPによる検閲騒動への批判の急先鋒となった北京大学深圳校HSBCビジネススクール(Peking University HSBC Business School, Shenzhen)の米人クリストファー・ボールディング(Christopher Balding, 生年非公開; ジョージ・ワシントン大学卒、カリフォルニア大学アーヴァイン校哲学博士: ニューズウィーク日本版の表記は誤ってバルディング)准教授は英ケイムブリヂ大学出版局に対し、中共政権の圧力に屈しないようネット上の公開嘆願に踏み切ったことで名門北京大学(Peking University)の職を解雇され、中国を去る予定であると、2018年7月18日()付の英ロイター通信(Reuters)のエリアス・グレン(Elias Glenn)記者署名オンライン記事が伝えている。ボールディング准教授はかつて4つのT(天安門事件と台湾とティベット=西蔵と The Party こと中国共産党)のことさえ言及しなければ中共の国内での言論活動は可能としていたが、今回のケースでは間接的に天安門事件の禁忌(きんき: taboo)に触れてしまった格好である。中共の国がどれほど学問の敵であるか世界に見せつけた好例であると、このウェブページの管理人 xapaga は考える。その後、ボールディング准教授は私立フルブライト大学ベトナム(Fulbright University Vietnam)に職を得て、ベトナムに暮らしている。(文中紹介した記事の他、2017年8月21日(月)付の英ガーディアン紙のオンライン記事と、2017年8月23日(水)付の米ニューズウィーク日本版に掲載された遠藤誉東京福祉大学国際交流センター長兼筑波大学名誉教授兼中国社会科学院社会科学研究所元客員研究員署名オンライン記事と、2017年9月1日(金)付の米ニューズウィーク(Newsweek)日本版に掲載されたクリストファー・ボールディング北京大学深圳校HSBCビジネススクール准教授署名オンライン記事にも依拠)

2017年8月~11月 ミャンマー西部のラカイン州(Rakhine, Myanmar)で起きている少数派イスラム教徒ベンガル人ロヒンギャ族(Rohingya people)の村々への多数派ビルマ人仏教徒による焼き討ちや虐殺事件が国際社会(international community)で問題となり、ミャンマー国家顧問(State Counsellor of Myanmar)のアウンサンスーチー(Aung San Suu Kyi, b.1945; インド国立デリー大学シュリ・ラム英勲爵士夫人学寮卒、オクスフオッド大学聖ヒュー学寮大学院修士、ロンドン大学東洋アフリカ研究学院修士、オクスフオッド大学名誉博士)女史から1991年ノーベル平和賞(Nobel Peace Prize 1991)を剝奪(はくだつ)すべきだとする意見がインターネット上のchange.orgで展開される。そして同年(2017年)9月、オクスフオッド大学聖ヒュー学寮(St Hugh’s College, Oxford)が1999年から玄関ホールに飾っていたスーチー女史の肖像画を理由の説明も無く外した。同年(2017年)10月、オクスフオッド市議会(Oxford City Council)は二十年前の1997年にミャンマーの「民主政への長い闘争」(long struggle for democracy)に敬意を表してスーチー女史に授与していた称号「当該都市の自由」(Freedom of the City)、通称「オクスフオッドの自由」(Freedom of Oxford)を剝奪(はくだつ)することを全会一致で決め、翌月(2017年11月)には称号の永久剝奪が正式決定。(2017年10月6日(金)付の東京新聞朝刊と、2017年11月27日(月)付のBBC Newsのオンライン記事に依拠)

2017年10月16日(月) 日立製作所(英称 Hitachi, Ltd.; 本社在東京都千代田区)笠戸事業所が製造した「英国鉄道800形」(British Rail Class 800)が、ロンドン・パディントン駅(London Paddington station)とイングランド西部のブリストル・テンプル・ミーズ駅(Bristol Temple Meads station)を結ぶ全長192キロの大西本線(GWML: Great Western Main Line)で初走行。

2017年10月25日(水) 英国の大学ラグビー界で、新入部員に死んだネズミをバケツから口で引き上げさせるといったバカげた儀式(ritual)が横行しているのを受け、選手の数が激減していることが明らかになる 。

2017年11月9日(木) 深夜 メイ(Theresa May, b.1956; 首相在任2016-19; オクスフオッド大学聖ヒュー学寮卒)内閣総理大臣が2017年11月9日(木) 23:30更新、紙版では同年(2017年)11月10日(金)付の日刊テレグラフ紙(The Daily Telegraph)に寄稿し、「英国は2019年3月29日午後11時に欧州連合から離脱することを法律に明記する」( http://www.telegraph.co.uk/news/2017/11/09/determined-give-country-best-possible-brexit/ )と表明。メイ首相がEU離脱の具体的な日時を明言したのはこれが初めて。午後11時=23時とは、一見中途半端な時間に見えるが、英国時間よりも常に1時間進んでいる中欧時間(CET: Central European Time)という時間帯に位置するベルギー王国首都ブリュッセル(仏 Bruxelles; 蘭 Brussel; 独 Brüssel; 英 Brussels)市=欧州連合(EU: European Union)の事実上の首都では、2019年3月29日(金) 24時=2019年3月30日(土) 夜半0時ということになる。メイ首相は半年以上前の2017年3月29日(水)の時点で連合王国(UK: United Kingdom)の離脱の意思をEUに対して正式に通告していたが、EUの規定により、通告から2年以内に英国はEUから離脱する必要があるため、ギリギリの時間を選んだ次第。

2018年2月10日(土) ウェールズ南東部のマンモス州(Monmouthshire)の実家に戻ったスウォンジー大学(Swansea University)の医学生テッド・シニア(Edward ‘Ted’ Senior, 1995?-2018)氏=22歳が、自宅敷地内の林(woodland)で首吊り自殺を遂げる。ニューポート検視法廷(Newport Coroner’s Court)が2018年7月5日に発表した判定によると、「すぐに終わった恋愛関係」(brief relationship)についてシニア氏がラグビーティームの友人らに自慢げに送ったワッツアップ(WhatsApp)のメッセージが、面白半分で多くの人にシェアされてしまったという。これがシニア氏の通うスウォンジー大学にも伝わり、同大学は或る人物(性行為をした当事者女性なのか、その関係者なのか定かではない)からの厳重抗議を受け、シニア氏を一部の講義から締め出す処分にした。医師になる夢を断たれたと感じたシニア氏は地元モンマス州の自宅敷地内の林で首を吊って死んでいるのを発見される。専門家らはSNS(social networking service; 英通称 social media sites)の危険性を指摘する。後に弟のマックス・シニア(Max Senior, 生年非公開)氏がテッド・シニア財団(Ted Senior Foundation)を創立し、若者の自殺防止の活動を開始。(2018年7月5日(木)付の BBC News のオンライン記事に依拠)

2018年4月23日(月) ケイムブリヂ公爵家に再び子宝。ケイムブリヂ公爵夫人キャサリン(Catherine, Duchess of Cambridge, b.1982; 聖アンデレ大学卒)さんに男児が生まれる。四日後の同年(2018年)4月27日(金)にルイ王子(Prince Louis Arthur Charles of Cambridge, b.2018)と名付けられたことが発表される。この王子は王位継承順位で、ウェールズ大公チャールズ皇太子(Charles, Prince of Wales, b.1948; ケイムブリヂ大学三位一体学寮卒、ウェールズ大学留学)、ケイムブリヂ公爵ウィリアム王子(Prince William, Duke of Cambridge, b.1982; 聖アンデレ大学卒)、その長男のジョージ王子(Prince George Alexander Louis of Cambridge, b.2013)、その妹のシャーロット王女(Charlotte Elizabeth Diana, b.2015)に次ぐ第5位。

2018年5月19日(土) ロンドン西郊のウィンザー城聖ゲオルギオス礼拝堂(St George’s Chapel, Windsor Castle)にて、チャールズ皇太子(Charles, Prince of Wales, b.1948; ケイムブリヂ大学三位一体学寮卒)の次男、サセックス公ハリー王子(Prince Harry, Duke of Sussex, b.1984; 王立サンドハースト士官学校の出)と、米国出身の離婚経験者で三つ年上の元女優メガン・マークル(Meghan Markle, b.1981; 米ノースウェスタン大学卒)嬢の結婚式が挙行される。

2018年5月~2019年7月 1965年創立の所謂(いわゆる)「板ガラス大学」(plateglass universities)の一つでありながら評価の頗(すこぶ)る高いウォリック大学(University of Warwick; 通称 Warwick University; 俗称 Warw)で、「強姦チャット事件」(Rape Chat Incident)が発生。同大学の学生向けニュースサイトの The Boar ( https://theboar.org/ 「猪(イノシシ)」の意)が学生11人の停学処分(suspension)の一報を伝える。当該の11人はフェイスブック(Facebook)のグループチャット(group chat)に女子学生の実名を挙げた上で、Rape her friends too (その女の友人たちも強姦しろ)、Sometimes it’s fun to just go wild and rape 100 girls (時々野性的になって100人の女の子を強姦するのは楽しい)、Rape the whole flat to teach them all lesson (寮のワンフロア全員を強姦して教訓を与えてやれ)などと書き込んだスクリーンショット(screenshots)を残していて、大学当局に苦情が殺到していた。警察が捜査したものの違法行為とまでは言えず、逮捕者は出ていない。しかしながら、同大学は11人中特に悪質と見做(みな)した者2名を向こう十年間の停学処分とする。当該学生2名が処分を不服として異議申し立てをしたため同大学は再検討し、同年(2018年)夏の時点で一年間の停学処分に変更する。ところが処分の変更が発表されたのが新年度(a new academic year)に入った同年(2018年)10月だったことから騒動と成る。停学処分が僅か一年間ということは、苦情を申し立てた学生たちが卒業しないうちに停学学生たちが大学に戻ってくることになってしまう。翌年(2019年)1月末の時点でマスコミが騒動を嗅ぎつけ、全英に報道される。2019年2月1日(金)には同大学副学長(Vice-Chancellor: 日本の大学で言う学長または総長に相当)スチュアート・クロフト(Stuart Croft, b.1963; サウサンプトン大学卒、同大学大学院修了)教授・哲学博士(サウサンプトン大学)が大学公式ウェブサイトに公開状( https://warwick.ac.uk/insite/news/intnews2/vc_open_letter/ )を掲載するも、被害者(但し、言葉で攻撃を受けた被害者)の女子学生への言及が無かったことから、翌日(2019年2月2日(土))にも学生向けニュースサイトの The Boar (「猪(イノシシ)」の意)が公開状への批判的返信( https://theboar.org/2019/02/to-stuart-croft-the-victims-should-always-have-been-the-focus/ )をウェブ上で公開。その二日後の2019年2月4日(月)には同大学が声明を出し、停学学生2名は次の年度である2019年9月(英国の他の多くの大学では10月)には大学に戻ってこないと確約。事件の発覚から一年が経過した2019年5月28日(火)には英国放送協会(BBC: British Broadcasting Corporation)テレビが The Warwick Uni Rape Chat Scandal (ウォリック大の強姦チャット醜聞)と題したドキュメンタリー番組を放映。同年(2019年)7月10日(水)にはシャロン・ペルソー(Sharon Persaud, 生年非公開)博士・事務弁護士による外部評価(an external review)が発表され、その中でペルソー女史は同大学が「自分たちの評判に関わる利害にばかり目が向いていて、事件の公正で適正な評価がおざなりになっていた」(had been more concerned with its own reputational interests than in a fair or just assessment of the case)と断じ、同大学による独自調査は「(学生の)処分の過程が何のためにあるのか、どんな哲学があるのか、他者の感情を害する行為がそれを緩和する諸要素に対してどんな比重を持ったのか、そしてどんな比重を持つべきなのかについての共通理解」(no common understanding of what the disciplinary process was for, what its philosophy was, how offending conduct was or should be weighed against mitigating features)を有志ていなかったと結論づけ、同時に「事件に関係したおそらく全員にとって深く不満足な結果が残った。」(there was a profoundly unsatisfactory outcome for almost every single person involved.)とした( https://warwick.ac.uk/newsandevents/independent_external_review/press-release/ )。この外部評価を受けて、上記のクロフト副学長(日本の大学で言う学長または総長に相当)は同日(2019年7月10日(水))にも英国放送協会(BBC: British Broadcasting Corporation)とのインタビューの中で、「私どもは純粋に申し訳なく思っております。これ(この事件への対応)を間違っていました。彼女ら(被害者)への支援が充分ではありませんでした。意思疎通が充分ではありませんでした。」(We are genuinely sorry. We have got this wrong. We have not supported them enough. We have not communicated enough.)と謝罪。(2019年1月31日(木)付のBBCニューズのダルシー・リー記者、ラリッサ・ケネリー記者共同署名オンライン記事と、2019年2月4日(月)付のBBCニューズのオンライン記事と、2019年2月5日(火)付のガーディアン紙のリチャード・アダムズ文教部門編集長署名オンライン記事と、2019年7月10日(水)付のBBCニューズのダルシー・リー記者署名オンライン記事に依拠)

2018年6月3日(日) この日に出た日曜タイムズ紙(The Sunday Times)の報道によると、ケイムブリヂ大学のレガッタ競艇女子競漕団(Cambridge University’s female rowing team)が男子との間に厳然と横たわる差別待遇を不服として、クロアチアで開催される国際大会への出場を取りやめたとのこと。記事によると、男子部員の旅費は大会主催者持ちで宿泊先が五つ星ホテル(five-star hotel)であるのに対し、女子部員は自費で現地へ飛ばねばならず三年連続で安宿(digs; hostel)に宿泊させられる手筈になっているという。翌日(2018年6月4日(月))にはエル・UK誌(Elle UK)が自社ウェブサイトにほぼ同内容の記事を掲載し、2018年6月12日(火)には Elle Online 日本語版とエスクァイア(Esquire)日本版が和訳を転載し、2018年6月13日(水)には日本のヤフーニュースも転載。

2018年7月8日(日) 欧州連合離脱省(Department for Exiting the European Union)のトップであるデイヴィッド・デイヴィス(David Davis, b.1948; ウォリック大学卒、ロンドン大学経営学大学院=ロンドン・ビジネス・スクール修士、ハーヴァード大学留学)欧州連合離脱大臣(Secretary of State for Exiting the European Union)=通称ブレグジット大臣(Brexit Secretary)が辞任。テリーザ・メイ(Theresa May, b.1956; 首相在任2016-19; オクスフオッド大学聖ヒュー学寮卒)首相が、英国の欧州連合(EU: European Union)からの離脱=ブレグジット(Brexit)後もEUと強固な経済関係を保持する柔軟路線(EUとの貿易や人の移動などについてEU規則との協調継続を受け入れる計画)で党内を纏(まと)めようとしていることに反撥したものと見られている。ブレグジットをめぐる内閣の意見の不一致が露(あら)わになり、メイ内閣に大きな痛手となる。デイヴィス氏は「ブレグジットの顔」としてEUとの交渉団を率いていたが、2018年になるとメイ首相とその側近らが重要な交渉を担うことが多くになり、デイヴィス氏の影響力は低下していた。

2018年7月9日(月) 前日(2018年7月8日(日))の欧州連合離脱省(Department for Exiting the European Union)のデイヴィス(David Davis, b.1948; ウォリック大学卒、ロンドン大学経営学大学院=ロンドン・ビジネス・スクール修士、ハーヴァード大学留学)大臣の辞任に続いて、スティーヴ・ベイカー(Steve Baker, b.1971; サウサンプトン大学卒、オクスフオッド大学聖十字架学寮修士)政務官(Parliamentary Under-Secretary of State for Exiting the European Union )が辞任。デイヴィス氏に同調してメイ(Theresa May, b.1956; 首相在任2016-19; オクスフオッド大学聖ヒュー学寮卒)内閣総理大臣に反撥したものと見られている。また、追加で飛び込んできたニュースとして、ボリス・ジョンソン(Boris Johnson, b.1964; 首相在任2019-; オクスフオッド大学ベァリオル学寮卒)外相も同日に辞任。そもそもジョンソン氏は二年前の2016年6月23日(木)に実施された連合王国(UK: United Kingdom)の欧州連合(EU: European Union)からの離脱の是非(ぜひ)を問う所謂(いわゆる) Brexit referendum (ブれグジット・れファれンダム)なる国民投票で、EU離脱派(the Leave side)の急先鋒だったため、投票前は欧州懐疑派(Eurosceptic)で尚且(なおか)つEU残留派(the Remain side)であり、投票後は離脱穏健派(soft Brexit bench)のメイ首相とは意見が大きく異なっていた。離脱強硬派(hard Brexit bench)のジョンソン氏はメイ首相を蹴落として首相の座を手に入れる野心を持つ者と理解されており、メイ内閣崩壊の序曲とも考えられる。ブレグジットをめぐる内閣の意見の不一致が二日連続で露(あら)わになり、メイ内閣に大きな痛手となったことは確かである。

2018年9月22日(土) ヴィクトリア女王(Queen Victoria, 1819-1901; 在位1837-1901)の玄孫で、現女王エリザベス二世(Elizabeth II, b,1926; 在位1952-)の従弟(いとこ)に当たるアイヴァー・マウントバッテン卿(Lord Ivar Mountbatten, b.1963)が英王室の親類(extended family)としては史上初めて同性婚(same-sex marriage)を行なう。マウントバッテン卿は1994年4月にペニー夫人(Penelope ‘Penny’ Anne Vere Thompson, b.1966)と結婚し、3人の娘をもうけていたが、2010年9月に別居し、2011年11月に「円満に」(amicably)協議離婚していた。2016年9月にマウントバッテン卿は民間航空機客室業務管理職(an airline cabin services director)であるジェイムズ・コイル(James Coyle, 生年非公開)氏と同性愛の関係にあることを公式に表明していたが、結婚式はそれから二年後にイングランド南西部のデヴォン州(Devon)に在るマウントバッテン卿の地所で挙行される。式では元妻がまるで花嫁の父親のように教会の中央通路(和製英語で言う「バージンロード」)を一緒に歩き、マウントバッテン卿を新しい結婚相手に引き渡した(walked him down the aisle and gave him away)という。

2018年9月30日(日) イングランド西中部(West Midlands)バーミンガム市(City of Birmingham)=英国第二の規模の都市=内で開催された与党保守党(Conservative Party; 別称・蔑称 Tories)の党年次大会(party annual conference)にて、保守党人権委員会(Conservative Party’s human rights commission)と非政府組織(NGO: non-governmental organisation)香港ウォッチ(Hong Kong Watch)が「香港の自由、法の支配、自治の侵害」をテーマとしたイベントを共催。香港の人権問題に取り組むベネディクト・ロジャーズ(Benedict Rogers, 生年非公開; ロンドン大学王立ホロウェイ学寮卒、ロンドン大学東洋アフリカ研究学院大学院修了)氏が、「私は中国政府の香港市民への対し方を懸念している。中英共同宣言で謳(うた)われた約束(commitment)を尊重し、一国二制度(One Country, Two Systems)が維持されることを確実にするのが双方の利益になる。」と訴えると、中国共産党(中共)独裁政権の国営中国電影台(CCTV: China Central Television)の女性記者が、「お前は嘘つきだ。お前に中国を分裂させる権限は無い。香港から来た他のスピーカーは裏切り者だ。」と怒声を浴びせる。運営係男性が中共女性記者に退席を要請したところ、中共女性記者は男性の顔を2回平手打ちし( https://www.facebook.com/HongKongWatch1/videos/1543672115778226/ )、警察に現行犯逮捕される( https://www.hongkongwatch.org/all-posts/2018/10/1/volunteer-assaulted-a-conservative-party-conference-fringe-event-on-human-rights-in-hong-kong )。在英中国大使館(Embassy of China in London, UK)は、「香港の独立を主張するいかなる試みも行動も無駄に終わるだろう。保守党人権委員会は中国への内政干渉と香港問題をかき回すのを止めて、主催者は中国人記者に謝罪すべきだ。」と猛抗議。(2020年1月23日(木)付のヤフーニュースに掲載された木村正人コラム「香港「民主の女神」アグネス・チョウさんとオンラインで討論した日本の大学生 大学は中国の圧力に屈するな」に依拠した上で加筆)

2018年10月16日(火) 教育に関する議会小委員会(Parliamentary Select Committee on Education)、通称 教育小委員会(Education Committee)に日仏で共同開発され、大ロンドン市内のミドルセックス大学(Middlesex University)で使用されているソフトバンク・ロボティクス社(SoftBank Robotics)の人工知能(AI: artificial intelligence)ロボットのペッパー(Pepper)が招致され、国会議員たちの前で証言する。ロボットが議会で証言するのは英国憲政史上初とのこと。(2018年10月17日(水)付のAFP日本語版に依拠)

英国放送協会(BBC: British Broadcasting Corporation)提供の動画と記事

https://www.bbc.com/news/technology-45879961

英左派系高級紙、ガーディアン紙(The Guardian)提供の動画

https://www.youtube.com/watch?v=ox1eF1UWpvU

教育小委員会の公式動画(1時間37分)

https://www.parliamentlive.tv/Event/Index/49d8117b-09e8-45f4-89f4-1af11b643e9f

2018年11月25日(日) メイ(Theresa May, b.1956; 首相在任2016-19; オクスフオッド大学聖ヒュー学寮卒)内閣総理大臣が欧州連合(EU: European Union)27ヶ国首脳たちとの間で、英国の離脱条件を具体的に示したEU離脱協定案に合意。ところがこの協定案は僅(わず)か七週間後の2019年1月15日(火)に英国議会下院(Lower House of Parliament)=庶民院(House of Commons)での採決で歴史的大差をもって否決されることになる。

2019年1月14日(月) 19:00 女性博士による体を張った講演。ケイムブリヂ大学ゴンヴィル&キーズ学寮(Gonville and Caius College, Cambridge)のヴィクトリア・ベイトマン(Victoria N. Bateman, b.1979; ケイムブリヂ大学卒、オクスフオッド大学博士課程修了)博士(経済学)=39歳が、ケイムブリヂ市内の劇場(1990年開館)であるケイムブリヂ・ジャンクション(Cambridge Junction)にてブレグジット(Brexit: 英国のEUからの離脱)に抗議するため「ブレグジット: 丸裸の真実」(Brexit: The Naked Truth)と題して18歳未満入場禁止の全裸パフォーマンス( http://vnbateman.com/brexit.html / https://vimeo.com/314265471 )を敢行する。講演の最後には聴衆に対して自分の体にブレグジットに反対するための署名をするよう呼びかける。この異様なパフォーマンスのお蔭で、内外のマスコミの注目を浴びる。なお、ベイトマン博士は常日頃から売春婦の権利やその経済効果を擁護(ようご)してきた論客として一部の人々には知られている。

2019年1月15日(火) メイ(Theresa May, b.1956; 首相在任2016-19; オクスフオッド大学聖ヒュー学寮卒)内閣総理大臣が欧州連合(EU: European Union)27ヶ国首脳たちとの間で、ほんの七週間前の前年(2018年)11月25日(日)に合意したばかりのEU離脱協定案が英国議会下院(Lower House of Parliament)=庶民院(House of Commons)での採決で、歴史的大差をもって否決される。政権与党の保守党(Conservative Party; 通称・別称・蔑称 Tories)からも造反組を出してしまったことが首相の敗因。

2019年1月29日(火) 二週間前の同年(2019年)1月15日(火)に英国議会下院(Lower House of Parliament)=庶民院(House of Commons)での採決で前年(2018年)11月25日(日)に合意したばかりのEU離脱協定案が否決されたことを受け、アイルランド共和国と北アイルランドとの複雑な国境問題を含む修正案の7本中2本が議会下院で可決される。メイ(Theresa May, b.1956; 首相在任2016-19; オクスフオッド大学聖ヒュー学寮卒)内閣総理大臣は離脱協定案をEU側と再交渉する羽目になる。

2019年1月30日(水) 前日(2019年1月29日(火))の英国議会下院(Lower House of Parliament)=庶民院(House of Commons)での修正案可決を受け、欧州連合(EU: European Union)のユンケル(Jean-Claude Juncker, b.1954; 仏ストラスブール大学法学修士)欧州委員会委員長とバルニエ(Michel Barnier, b.1951; ESCP欧州卒)首席交渉官が欧州議会で声明(statement)を発表。両名は離脱協定を再交渉することはないと明言し、英国側に釘を刺(さ)す。同年(2019年)3月29日(金) 23:00の期限を目前に「合意なき英国離脱」(no-deal Brexit)の可能性が高まる。

2019年3月29日(金) 23:00 連合王国(UK: United Kingdom)が欧州連合(EU: European Union)から離脱する予定だったが、この日に内閣の提案する離脱案が英国議会で三度目の否決の憂き目に遭い、離脱は同年(2019年)4月12日(金) 23:00まで延期となる。当初の時刻はEU本部が置かれているベルギー王国首都ブリュッセル市では2019年3月29日(金) 24:00 = 2019年3月30日(土) 0:00に相当し、2019年3月の通常営業日の終了を意味していた。

2019年4月初旬~7月上旬 ロンドン経済政治学院(LSE: London School of Economics and Political Science)はターナー賞(Turner Prize)受賞者マーク・ウォリンジャー(Mark Wallinger, b.1959)氏による、直径4メートル(4 metres in diameter)に及ぶ逆さまの地球儀(globe)のオブジェ(The World Turned Upside Down statue)を大学構内に設置するも、中国本土が黄色く塗られ、臺灣(台湾)がピンクに塗られ、台北(Taipei)が一国の首都であるように表現されていたことから、中国共産党(中共)独裁国から来た留学生たちが、「台湾が中国とは別の国のように表現されているのは怪(け)しからん!」と、LSEに猛烈な抗議を開始。LSEの執行役(Director)=事実上の学長であるエジプト生まれの英女性勲爵士ミヌーシュ・シャフィク(Dame Minouche Shafik, b.1962; 米マサチューセッツ大学アマースト校卒、LSE修士、オクスフオッド大学聖アントニー学寮大学院修了)哲学博士(オクスフオッド大学)は、同年(2019年)4月4日(木)に中国本土からの留学生と台湾人留学生の双方を呼んで意見交換を実施。しかしながらLSE当局は、「国連(UN: United Nations)の地図に従い、台湾は中国の一部を構成するものと見做(みな)す」と声明を発表したことから台湾人留学生の間に失望が拡がる。翌日(2019年4月5日(金))には中華民國(臺灣)の呉釗燮(Jaushieh Joseph Wu, b.1954; 國立政治大學卒、米ミズーリ大学セントルイ校大学院修士、米オハイオ州立大学大学院修了)外交部長(外相)・哲学博士(オハイオ州立大学)がLSEのシャフィク執行役に公開書簡を送り、「台湾は一つの主権を持った民主国家(a sovereign democratic country)で、他の国に属していません。」「台湾は独裁的で無慈悲な共産党支配下で今でも暮らす中国人民にとっての希望の狼煙(のろし)火(beacon of hope for the people of China, who are still living under autocratic and ruthless communist rule)です。」「LSEでは台湾の若者も多く学んでいます。蔡英文総統もその一人でした。国力や人口で決められるべきではありません。もし彫刻に今回の計画のような変更が加えられれば、LSEは北京政府の圧力といじめ(the pressure and bullying of Beijing)に屈したと世界の若い男女は思うことでしょう。」と申し入れを行なう。ロンドンを拠点とする非政府組織(NGO: non-governmental organisation)フォーモサ・サロン(Formosa Salon)は、中共の圧力に屈して地球儀(globe)オブジェに変更を加えることが無いようネット上で署名嘆願(online petition)を開始し、あっという間に一万筆(10,000 signatures)を獲得したという。結局、LSEは中国本土と台湾の色はそのまま(それぞれ黄色と赤色)に、台湾の横にアステリスク(*)を追加し、論争があるとの注釈(annotation)「係争の対象になっている国境線があり、アーティストはそれらにアステリスクを付すことでこれら係争地のうちの一部を示している。」(There are many disputed borders and the artist has indicated some of these with an asterisk.)を挿入することで玉虫色の決着を図る。このLSEの措置について中華民國(臺灣)外交部(MOFA: Ministry of Foreign Affairs; 日本で言う外務省)は、同年(2019年)7月10日(水)に高く評価する声明を出す。同外交部によると、約三ヶ月の間に英国の国会議員や学者や専門家や世論に影響力を持つ人々が、中国本土と台湾の色をそのまま(それぞれ黄色と赤色)にするよう運動してくれたとのこと。LSEのクリストファー・ヒューズ(Christopher R. Hughes, 生年非公開)教授は、中国人留学生が香港の抗議者の信用を密(ひそ)かに傷つける活動に参加したり、中国共産党(中共)独裁政権の喧伝機関である孔子学院(Confucius Institute)の職員が学術会議で台湾に関する論文を没収したりするのを目撃したとのこと。LSEは親中派のベンチャーキャピタル(venture capital)から資金提供された中国研究プログラムを中止している。なお、中華民國(臺灣)の蔡英文(さい えいぶん; Cài Yīngwén; Tsai Ing-wen, b.1956; 總統在任20-; 國立臺灣大學卒、米コーネル大学大学院修士、英ロンドン経済政治学院大学院博士)總統・哲学博士(LSE)は、1984年にLSEで法律(Law)を修め、哲学博士(PhD)の学位を授与されている。(2019年4月5日(金)付の日刊テレグラフ紙の Sophia Yan 記者と Izzy Lyons 記者の共同署名オンライン記事と、2019年7月10日(水)付の台湾の英字紙、台灣英文新聞こと Taiwan News の Keoni Everington 記者署名オンライン記事と、2020年1月23日(木)付のヤフーニュースに掲載された木村正人コラム「香港「民主の女神」アグネス・チョウさんとオンラインで討論した日本の大学生 大学は中国の圧力に屈するな」に依拠した上で加筆)

2019年4月5日(金) 連合王国(UK: United Kingdom)の欧州連合(EU: European Union)からの離脱をめぐり、英国のメイ(Theresa May, b.1956; 首相在任2016-19; オクスフオッド大学聖ヒュー学寮卒)内閣総理大臣が欧州理事会(European Council)のトゥスク(Donald Tusk, b.1957; 大統領在任2014-19; グダニスク大学卒)大統領に書簡を送り、離脱期限になっている2019年4月12日(金)を同年(2019年)6月30日(日)まで再延期するよう要請。

2019年4月11日(木) 英国のメイ(Theresa May, b.1956; 首相在任2016-19; オクスフオッド大学聖ヒュー学寮卒)内閣総理大臣の要請を受けた欧州連合(EU: European Union)が緊急首脳会議を開き、英国の離脱期限を2019年10月31日(木) 23:00にまで再延期することで合意に達する。

2019年5月15日(水) 日立製作所(英称 Hitachi, Ltd.; 本社在東京都千代田区)笠戸事業所が製造したヴァージン列車東海岸社(VTEC: Virgin Trains East Coast)用の車両「英国鉄道800形」(British Rail Class 800)が、ロンドン・キングズクロス駅(London King’s Cross station)とスコットランドの都に在るエディンバラ・ウェイヴァリー駅(Edinburgh Waverley station)を結ぶ全長632.7キロの東海岸本線(ECML: East Coast Main Line)で初走行。従来までの4時間半の運行時間を4時間に短縮。ヴァージン社は日本文化と日本語に敬意を払い、「東」の和名に因(ちな)んで「ヴァージン・あずま」(Virgin Azuma)と命名し、三年余り前の2016年3月18日(金)にマスコミ向けにお披露目していた。運転席の脇には大きな平仮名で「あずま」と、その下に英文字で AZUMA と書かれている。三文字の平仮名にしたのは、日本の旧国鉄時代から続く、JR東海の東海道山陽新幹線「ひかり」「こだま」「のぞみ」の習慣を踏襲(とうしゅう)している。

2019年5月24日(金) テリーザ・メイ(Theresa May, b.1956; 首相在任2016-19; オクスフオッド大学聖ヒュー学寮卒)内閣総理大臣が、ダウニング街10番地(10 Downing Street, City of Westminster, Greater London)の首相官邸前でスピーチを読み上げ( https://sites.google.com/site/xapaga/home/theresamayspeech24may2019 )、二週間後の同年(2019年)6月7日(金)に首相の職を辞任すると発表。スピーチの最後には涙声を詰まらせ、背中を見せて官邸に入る。

2019年6月22日(土) インド東部のマニプール州インパール市(Imphal, Manipur, India)の南西20キロの幹線道路沿いにインパール平和博物館(IPM: Imphal Peace Museum)が開館し、開館式(openining ceremony)が旧敵国同士である駐インド英国高等弁務官(英連邦加盟国に於ける大使に相当)ドミニク・アスクィス(The Honourable Sir Dominic Asquith, b.1957; 私立アンプルフォース校の出)氏と、駐インド日本国大使平松賢司(ひらまつ けんじ; Kenji Hiramatsu, b.1956; 京都大学卒)氏と、マニプール州歳入大臣カラム・シヤム(Karam Shyam, b.1963?; 学歴不詳)氏と、日本財団(TNF: The Nippon Foundation)会長の笹川陽平(ささかわ ようへい; Yohei Sasakawa, b.1939; 明治大学卒)氏が出席。(2019年6月23日(日)付のインドの英字紙ヒンドゥスタン・タイムズのオンライン記事に依拠)

2019年7月23日(火) 離脱強硬派(a hard Brexiter; a hard Brexiteer)のボリス・ジョンソン(Boris Johnson, b.1964; 首相在任2019-; オクスフオッド大学ベァリオル学寮卒)元外務大臣・元ロンドン市長=55歳が、与党保守党(Conservative Party; 別称・蔑称 Tories)の党首選(leadership election)の最終局面の一騎打ちでジェレミー・ハント(Jeremy Hunt, b,1966; オクスフオッド大学モードレン学寮卒)外務大臣=52歳を得票数92,153対46,656の大差(ジョンソン氏の得票を100とした場合、ハント氏は50.63%)で下し、党首に選出されたことで、翌日(2019年7月24日(水))にも総理大臣(Prime Minister)に就任することが決定。

2019年7月24日(水) ボリス・ジョンソン(Boris Johnson, b.1964; 首相在任2019-; オクスフオッド大学ベァリオル学寮卒)元外務大臣・元ロンドン市長=55歳が総理大臣(Prime Minister)に就任( https://sites.google.com/site/xapaga/home/borisjohnsonspeech24july2019 )。

2019年同月同日(水) ランカスター大学(University of Lancaster; 通称 Lancaster University)への「洗練され悪意に満ちたサイバー攻撃」(sophisticated and malicious cyber attack)によって学生の個人情報が盗み出された事件で、警察はイングランド北部の西ヨーク州ブラッドフオッド市(Bradford, West Yorkshire, England)在住の25歳の男(氏名非公開)を逮捕。(同日付の BBC News のオンライン記事に依拠)

2019年9月17日(火) マリア・ベアトリーチェ・ジョヴァナルディ(Maria Beatrice Giovanardi, 生年不詳)なるイタリア系女性が請願サイトであるchange.org(チェインヂ・ドット・オーグ)で署名を呼び掛けたところ( https://www.change.org/p/change-oxford-dictionary-s-sexist-definition-of-woman?recruiter=234306796 )、三万人近い人々が署名。オクスフオッド大学出版局(OUP: Oxford University Press)に対し、性差別的な定義を削除するよう要求するも、同出版局は拒否。(同日付の英ガーディアン紙に依拠)

2019年10月31日(木) 連合王国(UK: United Kingdom)の欧州連合(EU: European Union)からの離脱期限だったが、UKとEU加盟27ヶ国との交渉が纏(まと)まり、北アイルランドとアイルランド共和国の間の国境線での検問・税関を復活させないという合意ができ、離脱期限が2020年1月31日(金)に延長となる「合意なき英国離脱」(no-deal Brexit)はひとまず回避されたことが好感され、離脱期限は三ヶ月後の2020年1月31日(金) 23:00まで延期。

2019年11月5日(火) 英国議会下院(Lower House of Parliament)=庶民院(House of Commons)の外交委員会(Foreign Affairs Committee)の報告書が公表され、中国共産党(中共)独裁政権が英国の大学に及ぼしている影響について重大な懸念が示される。(同日付のガーディアン紙の Patrick Wintour 外交記事編集長署名オンライン記事と、2020年1月23日(木)付のヤフーニュースに掲載された木村正人コラム「香港「民主の女神」アグネス・チョウさんとオンラインで討論した日本の大学生 大学は中国の圧力に屈するな」に依拠)

2019年12月12日(木) ボリス・ジョンソン(Boris Johnson, b.1964; 首相在任2019-; オクスフオッド大学ベァリオル学寮卒)内閣総理大臣が議会を同年(2019年)11月6日(水)に解散したことを受け、議会下院(the Lower House of Parliament)=庶民院(the House of Commons)の解散総選挙(general election)が実施される。なお、2011年定期議会法(FTPA: Fixed-term Parliaments Act 2011)が施行されて以来、首相による議会解散権が制限され、下院議員の三分の二(two thirds of MPs)が解散総選挙への賛成票を投じない限りは成立しない。

2019年12月13日(金)朝 前日(2019年12月12日(木))実施された議会下院(the Lower House of Parliament)=庶民院(the House of Commons)総選挙(General Election 2019)の結果が発表され、ボリス・ジョンソン(Boris Johnson, b.1964; 首相在任2019-; オクスフオッド大学ベァリオル学寮卒)内閣総理大臣=55歳が率いる与党保守党(Conservative Party; 別称・蔑称 Tories)が大方の予想に反して圧勝し、議会での安定多数(a working majority)を確保。保守党が大勝し、サッチャー(Margaret Thatcher; Baroness Thatcher, 1925-2013; 首相在任1979-90; オクスフオッド大学サマヴィル学寮卒)内閣第三期(the third government of Margaret Thatcher, 1987-90)に繋(つな)がった1987年総選挙(General Election 1987)以来、三十二年ぶりの大勝利と成った。今回の選挙の大きな特徴は、従来まで労働党(Labour Party; 略称 Labour)の牙城(がじょう: strongholds)とされてきた選挙区(constituencies)で保守党が勝利したことである。そして野党第一党の労働党は惨敗し、コービン(Jeremy Corbyn, b.1949; 北ロンドン総合技術専門学校=現在のロンドン・メトロポリタン大学卒)氏=70歳はテレビカメラの前で党首を辞す考えを示す。また、野党第三党の自由民主党(Liberal Democrats; 略称 Lib Dems)も惨敗し、党首のスウィンソン(Joanne “Jo” Kate Swinson, b.1980; ロンドン経済政治学院卒)女史=39歳ですら落選という憂き目に遭う。落選した元議員が党首の座に留まることは許されないため、スウィンソン女史は即日党首の職も失う。ジョンソン首相にとって議会での賛成票を獲得しやすい環境が整ったため、2020年1月31日(金) 23:00迄にブレグジット(Brexit: 連合王国の欧州連合からの離脱)が実現できる公算が高まる。ジョンソン首相にとって最大の頭痛の種は、スコットランド民族党(Scottish Nationalist Party; 通称 SNP)の大躍進である。この政党はスコットランドの連合王国(UK: United Kingdom)からの分離独立と欧州連合(EU: European Union)への新規加盟を目指している。ニコラ・スタージョン(Nicola Sturgeon, b.1970; 自治政府首相在任2014-; グラーズゴウ大学卒)SNP党首・スコットランド自治政府首相=49歳は、2014年9月18日(木)に55.3%対44.7%で否決されたスコットランド住民投票(Scottish Referendum 2014)を2020年にも再度実施することをジョンソン首相に要求すると公言している。しかしながら、ジョンソン首相は二度目の住民投票を認める積りは無いと明言している。また、北アイルランドでは連合王国からの分離と南のアイルランド共和国との統合(United Ireland)を目指すシン・フェイン(Sinn Féin; 略称 SF: アイルランド・ゲール語で「我ら自身」の意)が大躍進していることも悩みの種である。この勢いで行くと2025年頃には連合王国(UK: United Kingdom)という国体(national polity)は消滅し、イングランド&ウェールズ王国(Kingdom of England and Wales)という小国に転落する可能性すら見えてきている。

2019年12月23日(月) 英内務省(Home Office; 「法務省」と和訳されることもあり)は、ブレグジット(Brexit: 連合王国の欧州連合からの離脱)後に優秀な研究者を勧誘する英国政府の計画の一環として、ファストトラック査証(fast track visa)を発給する科学者と研究者の数を現行62人から120人余りに増やすと発表。パテル(Priti Patel, b.1972; キール大学卒、エセックス大学大学院修士)内務大臣(「法務大臣」と和訳されることもあり)=内相(法相)は、「英国が今後もイノベーション(innovation)の最前線であり続けるために、世界から最優秀な人材を引き付ける入国管理制度が必要だ。」と述べる。ジョンソン(Boris Johnson, b.1964; 首相在任2019-; オクスフオッド大学ベァリオル学寮卒)内閣総理大臣は同年(2019年)8月にも英国の人材不足に対応するため科学者に関する入国管理法を緩和すると約束していた。(2019年12月24日(火)付のヤフーニュースに転載された英ロイター通信の日本語版オンライン記事に依拠)

2020年1月6日(月) イングランド北西部のマンチェスター国家法廷(Manchester Crown Court)は、英国史上最多(法廷で認定されただけでも136件)の性的暴行事件を起こしたインドネシア人の元男子大学院生、レイナード・シナガ(Reynhard Sinaga, b.1983; マンチェスター大学大学院修士課程二度修了)被告=イギリス発音で「スナーガー」=36歳に終身刑(life imprisonment)を言い渡す。被害者が一人も殺害されていないにも拘(かか)わらず被告人が終身刑に処されるのは英国でも異例のこと。シナガ被告は24歳時の2007年秋以来、英国イングランドで私費留学生の身分だったが、逮捕当時の2017年にはリーヅ大学(University of Leeds; 通称 Leeds University)大学院地理学研究科博士課程に、俗に言う「永遠の学生」(a perpetual student)として在籍していて、「性的傾向と日常的国境越境主義: マンチェスターに於ける南アジア人同性愛者・両性愛者の男たち」(Sexuality and everyday transnationalism. South Asian gay and bisexual men in Manchester)と題した博士論文(英 a doctoral thesis; 米 a doctoral dissertation)を執筆中だった。趣味と実益を兼ねた論文だったと言えよう。シナガ被告はマンチェスター繁華街南部に位置するゲイに人気のエリア(日本で言う新宿二丁目に相当)に在る酒場やナイトクラブのすぐ外の路上で知り合った若い男性たちをすぐ近所の自宅アパート(英 flat; 米 apartment)に誘い、鎮静剤などの薬物(俗に言う date rape drug の一種)が入った酒を飲ませて意識を失わせた上で性的暴行を加え、しかも性暴行をスマホ(smartphone)等の電子ツール(electronic devices)で撮影していたという。被害者は約195人に及ぶと見られているが、そのうちの70件は被害者の身元(identities)が特定できていない。同法廷の勅撰法官スザンヌ・ゴダード(Suzanne Goddard QC)判事はシナガ被告について「若い男性たちを獲物とした邪悪な連続性犯罪者」(an evil serial sexual predator who has preyed upon young men)と断じ、少なくとも三十年の服役(a minimum term of 30 years)が必要だと述べる。判明している被害者の全員は加害者と同性(same sex)であったため、自身が性暴行(rape)されたことを自覚していなかったが、この判決の約二年半前の2017年6月2日(金)未明に被害者男性(氏名非公開)=18歳が性暴行されている最中に偶然意識を取り戻し、まだ意識が朦朧(もうろう)とする中でシナガが気絶するほどの勢いで殴ったという。被害者が自身の携帯電話の電源が切れていたことに気づき、シナガの住む集合住宅(block of flats)の隣人の電話を借りて救急通報し、シナガを病院に搬送してもらったが、このことで被害者は傷害罪の容疑で逆に警察に逮捕されてしまう。ところが実はシナガがとんだヘマ(a blunder)を犯していて、被害者のジーンズのポケットにシナガの白い iPhone 4 が入っていたことがすぐに判明した。それが簡単に解錠できたことから、シナガのおぞましい性犯罪が記録された動画や静止画像が多数発見されたという。そのことがシナガの逮捕に繋(つな)がったのだった。また、シナガのアパート(flat)への現地警察の家宅捜索で黒い iPhone やその他の電子ツール(electronic devices)も発見され、シナガの犯罪記録が更に確認された。シナガへの暴力行為で一旦逮捕された被害者男性は、もちろん後に釈放されている。逮捕が判明した2017年6月の時点でリーヅ大学はシナガ被告を停学(suspension)処分にし、最初の公判が始まった2018年6月には放校(expulsion)処分としていた。シナガ被告は男性レイプ事件136件と男性レイプ未遂8件を含めた計159件の性的暴行などの罪で4つの裁判にかけられ、有罪判決を受けている。性的暴行を記録したDVD×250枚に収められた30万枚相当の静止画像も警察に押収(confiscate)された。シナガ被告はインドネシア共和国スマトラ(Sumatra)島のジャンビ(Jambi)州に生まれ、父親は裕福な不動産王(a property tycoon)である。世界最大のイスラム教国(但し、飲酒が認められた緩いイスラム教の国)である同国では少数派(minority)に属するカトリック信徒(a Roman Catholic)として育てられた。そのためマンチェスターでもカトリック教会(Catholic Church)や、同教会に教義上よく似たイングランド教会(Church of England)の教会堂の礼拝に熱心に通っていたという。今や悪い意味で有名人と成ったシナガ受刑者については、いち早くウィキペディア(Wikipedia)英語版、インドネシア語版、中文版に項目が設けられ、数日後にはフランス語版、ポルトガル語版、ベトナム語版が加わっている。(同日付のBBC=英国放送協会のオンライン記事と、日刊メイル紙のリチャード・マースデン記者、リチャード・シアーズ記者共同署名オンライン記事と、2020年1月7日(火)付のAFP=フランス通信社の日本語版オンライン記事に依拠)

2020年1月31日(金) 23:00 連合王国(UK: United Kingdom)が欧州連合(EU: European Union)から離脱。EUの事実上の首都ブリュッセルの時刻(中欧時間)では一時間早いため、2020年1月が終わると共にブレグジット(Brexit: 「英国の離脱」)が遂に実現。アイルランド島にEU加盟国であるアイルランド共和国と、非加盟国の英領北アイルランドが存在するため、同島にはEUの境界線が新たに引かれてしまう。但し、この時点では完全な離脱ではなく、2020年12月31日(木)までの十一ヶ月間の移行期間に入ったことになる。ジョンソン(Boris Johnson, b.1964; 首相在任2019-; オクスフオッド大学ベァリオル学寮卒)内閣総理大臣は移行期間の延長を法律で禁じるとしている。EU側にとってみれば、1958年1月1日(水・祝)発効のローマ条約(Treaty of Rome)以来、常に拡大発展を続けてきた多国間組織が初めて一国の離脱という事態(但し、過去には1973年1月1日(月・祝)に連合王国等と同時に加盟したデンマーク王国領グリーンランドが約十二年後の1985年2月1日(金)に離脱した例はある)に直面し、加盟国は27ヶ国に減少。

次の年表( https://sites.google.com/site/xapaga/home/universitytimeline6 )へ続く。