14「イギリス文化論」(2021/11/16) 英国の宗教

語源的には

宗教」を意味する英語の名詞(無性) religionヂュン)も、フランス語の女性名詞 religionふリヂヨン)も、ドイツ語の女性名詞 Religionれリギオーン)も、羅典(ラテン)語の女性名詞 religiōれリギオー: 「神への畏敬」「綿密さ」「敬虔なる不安」「迷信」「良心」「神聖さ」「崇敬の対象」「宗教行事を執り行なうこと」「恭順」の意)に由来する。無料辞典 Wiktionary 英語版を参照。

この名詞は羅典(ラテン)語の動詞 relegereれレゲれ: 「再読する」と「取り集める」の両義)に由来するという古代ローマの政治家・弁護士・文筆家・哲学者のキケロ(Marcus Tullius Cicero, 106-43BC)が唱える説がある。この説が正しいとすれば、羅典(ラテン)語の女性名詞 religiōれリギオー)の原義は、「骨身を惜しまずに宗教行事を執り行なうこと」ということになる。世界最大の英語辞典 Oxford English Dictionary (OED) 12巻本の電子版を参照。

また、上記のOEDによれば、古代ローマでキリスト教が布教されると、羅典(ラテン)語の動詞 religāreれリガーれ: 「結び合わせる」の意)に由来するのであるから、羅典(ラテン)語の女性名詞 religiōれリギオー)の原義は、「信者と神を結び合わせるもの」であるという説が唱えられるようになったという。この説についてはフランスで広く信じられているとのことで、教父テルトゥリアヌス(Quintus Septimius Florens Tertullianus, c.160-c.220AD)や教父ラクタンティウス(Lucius Caecilius Firmianus Lactantius, c.250-c.325AD)が唱えたと、コント=スポンヴィル(André Comte-Sponville, b.1952)著、小須田健(こすだ けん, b.1964)、コリーヌ・カンタン(Corinne Quentin, b.1959)共訳 『精神の自由ということ 神なき時代の哲学』(紀伊國屋書店, 2009年)=2006年刊行のフランス語の原著 L’Esprit de l’athéisme. Introduction à une spiritualité sans Dieu (直訳『無神論の精神(エスプリ) 神なき一つの精神性への案内』)=に書かれている。

世界価値観調査(WVS: World Values Survey)

米ミシガン大学(University of Michigan)のイングルハート(Ronald Inglehart, b.1934)教授が主導して世界各国の人々の社会文化的(socio-cultural)・道徳的(ethical)・宗教的(religious)・ 政治的(political)な価値観(values)を調査する世界価値観調査(WVS: World Values Survey)が存在する。2015年に実施された第6回調査(通称: WVS6 or WVS-6)でも恒例となったイングルハート-ヴェルツェル図(Inglehart-Welzel Map)が示されている。この図は上記のイングルハート教授・世界価値観調査協会会長と独リューネブルク大学(Leuphana Universität Lüneburg)のヴェルツェル(Christian Welzel, b.1964)教授・同協会副会長が共同で作成したものである。第7回調査は2016年に準備をし、2017年1月から2018年12月まで丸々2年をかけて調査をし、2019年に発表する予定だったが、調査に時間がかかり、2020年11月10日(火)になって漸(ようや)く発表された。

http://www.worldvaluessurvey.org/wvs.jsp

http://www.worldvaluessurvey.org/WVSEventsShow.jsp?ID=427

https://www.youtube.com/watch?v=ABWYOcru7js

https://ja.wikipedia.org/wiki/世界価値観調査

https://en.wikipedia.org/wiki/Inglehart–Welzel_cultural_map_of_the_world

今回(2017-20年)調査に基づいて2020年にまとめた第7回調査(通称: EVS-WVS 2017-2020)の最新版イングルハート-ヴェルツェル文化地図(Inglehart-Welzel Cultural Map, 2020)

http://www.worldvaluessurvey.org/photos/cultural_map_2020.jpg

前回(2010-14年)調査に基づいて2015年にまとめた第6回調査(通称: WVS6 or WVS-6)のイングルハート-ヴェルツェル文化地図(Inglehart-Welzel Cultural Map, 2015)

http://www.worldvaluessurvey.org/images/Cultural_map_WVS6_2015.jpg

世界価値観調査に基づく社会実情データ図録の「世界各国における組織・制度への信頼度」(2010年)

https://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/5215.html

世界価値観調査に基づく東京大学(東大)と電通総研の発表(2010年)

https://www.u-tokyo.ac.jp/public/public01_230422_j.html

諸外国の人たちがどのような組織・制度に信頼を寄せているかをさぐる…日本編(2017~2020年分)

不破雷蔵(ふわ らいぞう)=本名・生年ともに非公開

ヤフーニュース(Yahoo! Japan News)個人

2021年1月24日(日)

https://news.yahoo.co.jp/byline/fuwaraizo/20210124-00217359/

【比較参考】

米コロラド大学デンヴァー校(University of Colorado Denver)コミュニケーションデザイン講師キャリー・オスグッド(Carrie Osgood, 生年非公開)女史による宗教分布と信者の人数が一目で分かる地図

2019年4月3日(水)

https://gigazine.net/news/20190403-map-religion/

https://asahi.5ch.net/test/read.cgi/newsplus/1554303514/

https://www.carrieosgood.com/dataviz/world-population.html

https://www.weforum.org/agenda/2019/03/this-is-the-best-and-simplest-world-map-of-religions/

https://carrieonadventures.com/

日本の無神論者は最も「超自然を信じない」──6カ国での大規模調査

米ニューズウィーク(Newsweek)日本版

松丸さとみ(まつまる さとみ)記者署名記事

2019年6月7日(金)

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/06/6-50.php

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/06/6-50_2.php

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190607-00010009-newsweek-int (リンク切れ)

[上記の記事が依拠する英ケント大学の調査]

Understanding Unbelief

(不信心を理解する)

Atheists and agnostics around the world

(世界中の無神論者と不可知論者たち)

https://research.kent.ac.uk/understandingunbelief/

https://research.kent.ac.uk/understandingunbelief/wp-content/uploads/sites/45/2019/05/UUReportRome.pdf (リンク切れ)

https://www.facebook.com/Understanding-Unbelief-555402424651858/

https://twitter.com/search?q=%40U_Unbelief&src=typd&lang=en-gb

Mapping Leadership Cultures

リーダーシップ文化のマッピング図

Harvard Business Review誌2017年7月・8月号掲載のエリン・マイヤー(Erin Meyer, b.1971)論文 “Being the Boss in Brussels, Boston, and Beijing” (直訳「ブリュッセルとボストンと北京にて上司であること」)より

日本語版は『日経ビジネス』誌(2021年8月20日(金))が作成

*文中の「エリン・メイヤー」はエリン・マイヤーの誤り。

https://hbr.org/2017/07/being-the-boss-in-brussels-boston-and-beijing

https://hbr.org/resources/images/article_assets/2017/06/R1704D_MEYER_MAPPINGLEADERSHIPCULTURES-850x839.png

https://business.nikkei.com/atcl/seminar/20/00046/081700004/

https://business.nikkei.com/atcl/seminar/20/00046/081700004/?SS=imgview&FD=-1040850507

宗教に関する各種調査

イギリスでは10年毎、下1ケタに1のつく年に国勢調査(Census)を実施している(ちなみに日本では5年毎、5で割り切れる西暦年に実施しているが大規模調査は10年毎、下1ケタに0のつく西暦年、つまり10で割り切れる西暦年に実施)。2011年国勢調査(Census 2011)は2011年3月27日(日)に実施された。しかし分析・解析に時間がかかり、2013年10月まで結果が小出しにされた。直近では2021年国勢調査(Census 2021)が2021年3月21日(日)にイングランド&ウェールズ(England and Wales)及び北アイルランド(NI: Northern Ireland)で実施されたが( https://census.gov.uk/ / https://en.wikipedia.org/wiki/2021_United_Kingdom_census )、スコットランド(Scotland)だけは新型コロナウイルス(new coronavirus; novel coronavirus; WHO国際名称 Covid-19)の感染拡大を理由に翌年(2022年)3月22日(日)へ延期した( https://www.nrscotland.gov.uk/statistics-and-data/census/2022-census / https://en.wikipedia.org/wiki/2021_United_Kingdom_census#2022_Census_for_Scotland )。この調子で行けば前者(Census 2021)の結果は2023年10月まで結果が小出しにされ、後者(2022 Census)の結果は2024年10月まで結果が小出しにされるだろう。

イギリスの国民統計局(ONS: Office for National Statistics)のデータに見るイングランド&ウェールズの宗教の割合(小数点以下を四捨五入)

https://www.ons.gov.uk/ons/rel/census/2011-census/key-statistics-for-local-authorities-in-england-and-wales/sty-religion.html

より正確なエクセル・シート

https://www.ons.gov.uk/ons/rel/census/2011-census/key-statistics-for-local-authorities-in-england-and-wales/chd---sry-religion-figure-1.xls

・キリスト教徒(Christian) 59.3%(各宗派の細かい内訳は調査されず不明)

・無宗教(No religion) 25.1%

・無回答(Not stated) 7.2%

・イスラム教徒(Muslim) 4.8%

・その他(Other) 3.6% — ヒンドゥー教徒(Hindu)1.5%、シーク教徒(Sikh)0.8%、ユダヤ教徒(Jewish)0.5%、仏教徒(Buddhist)0.4%

https://www.ons.gov.uk/ons/dcp171778_310514.pdf

https://www.brin.ac.uk/news/2013/2011-census-detailed-characteristics/ (リンク切れ)

https://www.theguardian.com/news/datablog/2013/may/16/uk-census-religion-age-ethnicity-country-of-birth

宗派間の年齢の中央値を見ると、キリスト教徒が45歳と最も年齢層が高く、反対にイスラム教徒が25歳と最も年齢層が低いことが判明した。

2013年10月1日(火)付の朝日新聞東京13版朝刊10面の国際面に「消えゆく教会 欧州 信者減り進む転用」という見出しで同新聞社ヨーロッパ総局の沢村亙(さわむら わたる, 生年不詳)記者による署名記事が載った。

キリスト教会の荒廃は、

欧州全域で進む。英国教会

の場合は1年に25の教会が

閉鎖されている。

最大の理由は教会離れ。

2011年の英国の国勢調

査で「キリスト教徒」と答え

た人は59%と、10年前の

72%に比べ大幅減。4人に

1人が「無宗教」と答え

た。フランスでも、毎日教

会に通う人は4%。(後略)

【参考】

[連載] 宗教消滅─資本主義は宗教と心中する─【5】

ヨーロッパを覆う「イスラム化」という恐怖

島田裕巳(しまだ ひろみ, b.1953)東京女子大学非常勤講師、NPO法人葬送の自由をすすめる会会長

2015年10月1日(木)

https://online.sbcr.jp/2015/10/004118.html

https://online.sbcr.jp/2015/10/004118_2.html

https://online.sbcr.jp/2015/10/004118_3.html

日本で、そして世界で宗教が捨てられようとしている

現代人の死生観「もう救いはいらない」

新刊書 『捨てられる宗教 葬式・墓・戒名を捨てた日本人の末路』(SB新書, 2020年)の宣伝

講談社現代ビジネス

島田裕巳(しまだ ひろみ, b.1953)東京女子大学非常勤講師、NPO法人葬送の自由をすすめる会会長

2020年9月5日(土)

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/75370

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/75370?page=2

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/75370?page=3

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/75370?page=4

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/75370?page=5

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/75370?page=6

https://news.yahoo.co.jp/articles/1e2f463f94268feed3e71d3102032d7c24b1e423 (リンク切れ)

「キリスト教系は5万人増、仏教系は4000万人減」この30年間に起きた宗教離れの意味

新刊書 『捨てられる宗教 葬式・墓・戒名を捨てた日本人の末路』(SB新書, 2020年)の宣伝

プレジデント・オンライン

島田裕巳(しまだ ひろみ, b.1953)東京女子大学非常勤講師、NPO法人葬送の自由をすすめる会会長

2020年9月9日(水)

https://president.jp/articles/-/38441

https://president.jp/articles/-/38441?page=2

https://president.jp/articles/-/38441?page=3

https://news.yahoo.co.jp/articles/9b07a2aaf2a67941045ab7b93a1ebdf4443e49d0 (リンク切れ)

米ハーバード大学、聖職者組織の代表に無神論者が就任

フランス通信社(AFP: Agence France-Presse)日本語版

2021年8月28日(土)

https://www.afpbb.com/articles/-/3363718

https://news.yahoo.co.jp/articles/6314ae6dc2740d60a677ed32f30a50226ba4c79f

https://news.yahoo.co.jp/articles/6314ae6dc2740d60a677ed32f30a50226ba4c79f/comments

前々回2001年国勢調査(2001年4月29日(日)実施)に基づくデータを振り返ることにする。イングランド&ウェールズで「あなたの宗教は何ですか (What is your religion?)」と質問したところ、14.81%が「なし(None)」と回答。スコットランドでは訊き方が違っていて、「どの宗教、宗派、宗教組織に属していますか(What religion, religious denomination or body do you belong to?)」という質問に対して、27.55%が「なし(None)」と回答。連合王国(UK)全体として見ると、キリスト教徒(Christian)が約71.6%、無宗教(No religion)が約16%、イスラム教徒(Muslim)が約3%、ヒンドゥー教徒(Hindu)が約1%だった。前回調査(2001年)では71.6%の人がキリスト教の信者と回答していたのが、最新調査(2011年)では59.3%と、12ポイント以上も下落した。

国勢調査(Census)とは別に、欧州連合(EU: European Union)加盟各国に義務づけられた労働力調査(Labour Force Survey)というアンケートで、「今現在実践していないとしても、あなたの宗教は何ですか(What is your religion even if you are not currently practising?)」との質問に対して、2004年には回答者の15.7%が「無宗教(No religion)」と回答し、同じ質問に対して2010年には22.4%が「無宗教(No religion)」と回答した。

他に全国社会調査センター(NCSR: National Centre for Social Research; 通称 NatCen)が行なった英国社会動向調査(BSA survey = British Social Attitudes survey)によると、「あなたは自分が何か特定の宗教に属していると見做(みな)していますか(Do you regard yourself as belonging to any particular religion?)」という質問に対して、2001年には回答者の41.22%が「無宗教(No religion)」と回答し、2009年には50.67%が「無宗教(No religion)」と回答した。無宗教の人が遂に過半数に達したことで画期的な結果だった。そして2017年9月4日(月)に同センターが発表した最新データ( https://www.natcen.ac.uk/news-media/press-releases/2017/september/british-social-attitudes-record-number-of-brits-with-no-religion/ )では、実に53%が「無宗教」(no religion)と回答している。

さらに欧州学術財団(ESF: European Science Foundation)が実施している欧州社会調査(ESS: European Social Survey)では、「どの宗教または宗派にあなたは現在属していますか(Which religion or denomination do you belong to at present?)」という質問に対して、2002年には50.54%が「無宗教(No religion)」と回答し、2008年には52.68%が「無宗教(No religion)」と回答した。

以上のように国勢調査では無宗教の率が低く出て、英国社会動向調査(BSA)や欧州社会調査(ESS)では高く出る傾向が毎回あり、どの数値を信じて良いのか分からず混乱する。どうやら国勢調査では滅多なことでは教会に行かない名ばかり信徒(日本で言う「葬式仏教の人」)でも「キリスト教徒(Christian)」と回答する傾向があるようだ。いずれにせよ、無宗教の率は年々上がっていることが分かる。

また、全世界に目を向けるとイスラム教の擡頭(たいとう)がひときわ目に付く。2015年4月6日(月)付の日本經濟新聞の記事「イスラム教徒、2100年には最大勢力 世界の宗教人口予測」によると、2010年に世界に暮らすキリスト教徒の数は約21億7千万人(approx. 2 billion 170 million = approx. 2,170m)、イスラム教徒の数は約16億人(approx. 1 billion 600 million = approx. 1,600m)だった。それぞれ世界人口の約31.4%と約23.2%を占めたが、九十年後の2100年(二十一世紀が終わる年)にはイスラム教徒が世界最大の勢力になると予測されているとのこと。

上記のBSA(2009年)の各数値を小数第2位で四捨五入すると(if rounded off to the first decimal place)、

・イングランド教会(Church of England)19.9%

・ローマ・カトリック教会(Roman Catholic)8.6%

・長老派・スコットランド教会(Presbyterian/Church of Scotland)2.2%

・メソジスト派(Methodist)1.3%

・その他のプロテスタント諸派(Other Protestant)1.2%

・キリスト教無宗派(Christian (no denomination))9.3%

・その他のキリスト教(Other Christian)0.4%

・イスラム教(Muslim)2.4%

・ヒンドゥー教(Hindu)0.9%

・シーク教(Sikh)0.8%

・ユダヤ教(Judaism)0.4%

・その他(Other religions)0.3%

無宗教No religion)50.7%(2001年の41.2%から9ポイントあまり上昇)

・回答拒否・無効回答(Refused/NA)0.4%

キリスト教とは

キリスト教の教義(Christian dogma)は大雑把に纏(まと)めると、「唯一神による天地創造(God’s Creation of the Universe)」「父・子・聖霊の三位一体(the Trinity of the Father, the Son and the Holy Spirit)」「イエス・キリストの生涯(the life of Jesus)」「世界の終末と最後の審判(Doomsday and the Last Judgement)」「イエス・キリストの復活と永遠の命(the Resurrection of Christ and the eternal life)」を信じることである。

キリスト教宗派の見取り図

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/b/b9/ChristianityBranches-2JP2.png

【参考】

【日本人の知らない教養】あなたは「キリスト教」がどんな宗教か説明できますか?

ダイヤモンド・オンライン

上馬キリスト教会ツイッター部 MARO(マロ, b.1979)=本名非公開

2020年8月7日(金)

https://diamond.jp/articles/-/245155

https://diamond.jp/articles/-/245155?page=2

https://news.yahoo.co.jp/articles/c5bd3beeebef9e6c11f6ef69957c50b2cdd6aea9 (リンク切れ)

クリスマススペシャル!「聖書」「キリスト教」の入り口をのぞいてみよう!

デイリー新潮

Foresight

2020年12月10日(木)

https://www.dailyshincho.jp/article/2020/12101130/?all=1

東方教会(Eastern Church)

中東・ギリシャ・アナトリア・東ヨーロッパに広がり成長したキリスト教諸教派(正教会、東方諸教会)の総称。正教会のみを指す場合もあるが、広義には(広い意味では)正教会(Orthodox Church)、非カルケドン派正教会(Non-Chalcedonian Orthodox Churches)、アッシリア東方教会(Holy Apostolic Catholic Assyrian Church of the East: 中国で言う景教のことであり、芥川龍之介の未完の中篇小説「邪宗門」に登場する宗派)、東方典礼カトリック教会(Eastern Catholic Churches)、及び現存しない異端(heresies)とされた各派をも含む。

東方教会の代表例

正教会(Orthodox Church)、または東方正教会Eastern Orthodox Church)、またはギリシア正教(Greek Orthodox Church)

https://ja.wikipedia.org/wiki/正教会

https://en.wikipedia.org/wiki/Eastern_Orthodox_Church

東ローマ帝国(395-1453年)で発展した宗派。「オーソドックス」とは「正統派」の意味で、「普遍的」の意味の「カトリック」と歴史的に対立した。下記に示す西ローマ帝国(395-476年)で発展したカトリック教会(西方教会の一つ)と決別した年号は、日本の歴史教科書では、ローマ法王(教皇)とコンスタンティノープル総主教が互いを破門(excommunicate)した西暦1054年とされる。なお、この相互破門状態は1965年12月7日(火)にローマ法王パウロ六世(羅 Pāpa Paulus VI; 英 Pope Paul VI, 1897-1978; 教皇在任1963-78)とモスクワ総主教アレクシイ一世(露 Алексий I, патриарх Московский = Aleksiy, patriarkh Moskovski; 英 Patriarch Alexy I of Moscow, 1877-1970; 総主教在任1945-70)が和解するまで九百十一年間も解消されなかった。それから半世紀を経た2016年2月12日(金)にはローマ法王フランシスコ(羅 Pāpa Franciscus; 英 Pope Francis, b.1936; 教皇在任2013-)とモスクワ総主教キリル一世(露 Кирилл, патриарх Московский = Kirill, patriarkh Moskovskiy; 英 Patriarch Kirill of Moscow, b.1946; 総主教在任2009-)がキューバの首都ハバナ(西 La Habana, Cuba; 英 Havana, Cuba)で初の会見を行ない、東西キリスト教会の和解を世界に印象づけた。

下記に述べるカトリックやプロテスタントの西方教会(Western Christianity)との決定的な違いは、東方教会(正教会)が原罪説(the doctrine of original sin)を採用していない点である。人類の祖先であるアダムとエヴァ(イヴ)が犯した原罪(original sin)を、我々人間は生まれながらに背負っているが、その根源的な罪を救世主イエス・キリスト(耶蘇基督)が十字架に磔刑(たっけい)になることでよって贖(あがな)ってくれたのであるから、このキリストによる人類の贖罪(しょくざい)を信じることで人は天国に行くことができると、カトリックをはじめとした西方教会は考えている。

これに対して東方教会(正教会)では、人間は絶対神によって善なる存在として創造されたと考えている。聖(来世=あの世)と俗(現世=この世)は二元論的に対立するものではなく、聖(来世=あの世)と俗(現世=この世)は調和の関係にあるとする。俗(現世=この世)に生きる我々人類は聖なるものへの信仰を通じて俗を聖化・昇華するように努めるとする。

東方教会(正教会)はギリシア、ブルガリア、セルビア、ロシア、ベラルーシ、ウクライナ、ジョージア(旧称 グルジア)で主流派となっていて、たとえばギリシアならギリシア正教(Greek Orthodox Church)と、ロシアならロシア正教(Russian Orthodox Church)と呼び習わす。

日本では東京都千代田区神田駿河台(JR御茶ノ水駅、東京メトロ新御茶ノ水駅附近)のニコライ堂(正式名称 東京復活大聖堂)や、北海道函館市元町の函館ハリストス正教会(正式名称 主の復活聖堂)が、来日ロシア人の設置した東方教会(正教会)の教会堂として知られている。

イギリスで東方教会(正教会)は少数派だが、故ダイアナ妃(Diana, Princess of Wales, 1961-97)の葬儀で使用された曲「アテネのための歌(Song for Athene)」を書いた英国の著名作曲家、故ジョン・タヴナー(Sir John Tavener, 1944-2013)は正教会の熱心な信徒だった。

【関連記事: 東方教会と西方教会の和解】

<キリスト教>ロシア正教会総主教とローマ法王会談・和解へ

毎日新聞

2016年2月5日(金)

http://mainichi.jp/articles/20160206/k00/00m/030/134000c

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160205-00000129-mai-int (リンク切れ)

【モスクワ真野森作】ロシア正教会は5日、最高位のキリル総主教がフランシスコ・ローマ法王と今月12日にキューバの首都ハバナの空港で会談すると発表した。東方正教会で最大のロシア正教会と、カトリック教会のトップが対面するのは初めて。11世紀に正統性を巡って東西に分裂したキリスト教の両教会は、1000年近くの対立を乗り越え、和解を進めることになる。

ロシア正教会とローマ法王庁は5日に声明を出し「長い準備をかけた会談は歴史上初となり、双方の関係が重要な段階に至ったことを示すだろう。全ての人にとって希望の兆しとなることを願う」と表明。会談では中東やアフリカで強まるキリスト教徒への迫害対策が主要議題となり、共同宣言に署名する。

両教会は中東で勢力を広げる過激派組織「イスラム国」(IS)などに対抗するため、連携に踏み切った。プーチン露政権にとっては、シリア領空爆を通じて中東外交を強化する中、両教会が現地のキリスト教徒迫害阻止をアピールすることはプラスとなりそうだ。

ロシアでは1991年にソ連が崩壊した後、ロシア正教会の影響力が復興。正教会側には旧ソ連諸国でのカトリックの宣教拡大に対する反発が根強く、関係改善は劇的には進まなかった。現在もウクライナで反露姿勢を強めるカトリックの一派、ユニエイト教会の問題が残る。

カトリックの総本山・バチカンとロシアは2009年に正式な外交関係を樹立。プーチン露大統領は13年11月と昨年6月にローマ法王庁を訪れ、フランシスコ法王と会談しており、今回の対面へのレールを敷いた。

ローマ法王庁は第二次大戦後、共産主義勢力を封じ込める狙いなどから、東方正教会との和解に取り組み、1964年にはギリシャ正教総主教との会談を実現。今回はロシア国内で推定7500万人の信徒を抱えるロシア正教会との和解にも乗り出した形だ。

フランシスコ法王は予定されているメキシコ訪問の途上でキューバに立ち寄る。キリル総主教も今月11~22日に中南米諸国を訪れる予定。会談は2時間程度とされる。

西方教会(Western Christianity)

西ローマ帝国(395-476年)で発展したカトリック教会及びそこから十六世紀の宗教改革で枝分かれしたプロテスタント諸派を指す。

https://ja.wikipedia.org/wiki/西方教会

https://en.wikipedia.org/wiki/Western_Christianity

カトリック教会(Catholic Church: 「普遍的な教会」の意)、またはローマ・カトリック教会(Roman Catholic Church)とも言うが、これはイングランド教会側が用いる敵意に満ちた言い回し

様々な団体に分かれるものの、ヴァティカン(バチカン)のローマ法王=教皇(羅 Pāpa パーパ; 伊 Papa パーパ; 独 Papst パープストゥ; 仏 Pape パプ; 英 Pope ポウプ) が全体を統括しているため、形式的には一枚岩の教団。世界最大のキリスト教団体で全世界に約12億人(1.2 billion)の信者を誇り、世界人口の約7人に1人(約14%)がカトリック信徒とされるが、南欧と中南米とフィリピンに集中している。ちなみに中華人民共和国の人口は正確には分からないが約13億人(1.3 billion)と屡々(しばしば)言及され、イスラム教徒(Muslims)は全世界に約16億人(1.6 billion)いるとされる。英国に於けるカトリック信徒の割合は、2009年の英国社会動向調査(BSA: British Social Attitudes survey)によれば、世界標準よりも低く人口の8.6%。

世界のカトリック信徒の大多数は貧民でありながら、逆にカトリック教会は莫大な資産を有する。信者に貧民が多い理由は、貧富の格差が大きく、国民の大多数が貧民階層に属する中南米諸国とフィリピンに信者の大多数が偏在(へんざい: 偏(かたよ)って存在)しているからである(なお、南欧のカトリック圏は既に貧困から脱している)。しかし日本ではなぜか金持ちが信徒になる傾向がある(例: 麻生太郎元首相の一族)。

六世紀末の西暦597年、ローマ教皇グレオリウス一世(羅 Gregorius Magnus papa; 英 Pope Gregory I, c.540–604; 教皇在位590-604)の命によってブリテン島に派遣された修道士の聖アウグスティヌス(羅 Sanctus Augustinus Cantuariensis; 英 Saint Augustine of Canterbury, 5??-604?)がケント王国(Kingdom of Kent: 現在のイングランド南東部のケント州)に到着。同国の国王エゼルベルト(Æthelberht, Æthelbert, Aethelberht, Aethelbert or Ethelbert, c.560–616; 在位589?-616)に布教の許可を求め、カンタベリー(Canterbury)に居住することと説教の自由を認められた。エゼルベルト王はフランク王国の国王カリベルト一世(Charibert I, c.517–567; 在位561–7)の娘ベルタ(Saint Bertha or Saint Aldeberge, c.565–601?)というキリスト教徒と結婚していたが、聖アウグスティヌスの到着後、王自身もすぐにキリスト教に入信した。聖アウグスティヌスは初代カンタベリー大教(Archbishop of Canterbury: 現在のカンタベリー大教)に任ぜられ、同年(597年)クリスマスまでに約1万人のイングランド人に洗礼を施した。これを以(もっ)てイングランドに於(お)けるキリスト教元年とされる。

七世紀後半の西暦664年にはノーサンブリア王国(Kingdom of Northumbria: 現在のイングランド北部)の国王オズウィ(Ōswīg, Oswiu, Oswy or Oswig, c.612–670; 在位642-670)が、西隣のアイルランド島(Ireland)から伝わったケルト系キリスト教(Celtic Christianity)のケルト式典礼と、ローマ(現在のヴァティカン)の正統派とされたベネディクト会(羅 Ordō Sancti Benedicti; 英 Benedictine Order)則のローマ式典礼との対立を収拾すべく自国内でウィットビー教会会議(Synod of Whitby)を召集した。この会議でローマ・カトリック(Roman Catholicism)が優位に立ったため、徐々にローマ・カトリックがイングランド各地に影響力を拡大していき、ケルト系キリスト教は非公認の地位に甘んじることになった。これによりケルト式典礼は廃され、ローマ式典礼が採用されるようなった。

近現代英国でカトリックは少数派であり、英国支配層からは十六世紀(1501-1600年)以来敵視され続ける。国王ヘンリー八世(Henry VIII, 1491-1547; 在位1509-47)の離婚問題(詳細は、授業資料08番 https://sites.google.com/site/xapaga/home/historicrulers へ)が引き金となり、イングランド王国はカトリック教会から袂(たもと)を分かち、自称プロテスタント系のイングランド教会(Church of England)が国家の宗教となった。

離婚問題で国王ヘンリー八世を助けた有能な側近トマス・クランマー(Thomas Cranmer, 1489-1556)と初世エセックス伯トマス・クロムウェル(Thomas Cromwell, 1st Earl of Essex, 1485-1540)の両トマスは、思想的にも政治的にもローマのカトリック教会(Roman Catholic Church)からの分離独立を主張するプロテスタンティズム(Protestantism: 直訳「抗議派主義」)の推進者だった。ヘンリー八世は、まず1532年に聖職者の初年度の収入をローマ教会に納めていた従来の慣例を禁じる法律を制定し、続いて翌’33年にはイングランドの宗教裁判所(religious court)がローマ教皇(羅 Pāpa; 英 the Pope)に上告するのを禁じる「1532年教皇上訴禁止法(Ecclesiastical Appeals Act 1532)」(名称とは裏腹に1533年の成立)を制定し、同年クランマーはカンタベリー大主教(Archbishop of Canterbury)に就任した。クランマーはヘンリー八世と最初の妻キャサリン(Catherine of Aragon, 1487-1536)の結婚は最初から無効であり、アン・ブーリン(Anne Boleyn,c.1507-36)との結婚こそが有効であると強弁した。そのためローマ教皇クレメンス七世(羅 Clemens VII; 英 Clement VII, 1478-1534; 教皇在位1523-34)とは対立を深めた。1534年9月25日に上記の教皇クレメンス七世が薨去(こうきょ)し、それから六週間足らずの同年11月3日にロンドンのイングランド議会(English Parliament)は「1534年国王至上法(Act of Supremacy Act 1534)」の法案を通過させた。この法律は、それまで全西欧世界の宗教界の長だった筈(はず)のローマ教皇の地位を、ローマという一都市の司教(bishop)に過ぎない存在であると規定した。したがってローマ教皇が元来イングランドで所有していた財産や権利はすべて没収され、イングランド国王であるヘンリー八世こそがイングランドの宗教界の唯一にして最高の長であると宣言した。ここにイングランドの宗教改革(English Reformation)が達成され、イングランド教会(Church of England)が成立した。ヘンリー八世の離婚を批判したカトリック信徒の法律家トマス・モア(Sir Thomas More, 1478-1535)は1535年に処刑された。新たにローマ教皇の位に就いたパウルス三世(羅 Paulus III; Paul III, 1468-1549; 在位1534-49)は、即位五年目の1538年にヘンリー八世とクランマーを破門(excommunicate)した。

ヘンリー八世の跡を継いだ少年王エドワード六世(Edward VI, 1537-53; 在位1547-53)は側近たちの助けを得て、父ヘンリー八世の築いた国教をカトリックから更(さら)に遠ざけ、よりプロテスタント的なものにした。2度にわたる礼拝統一法(Act of Uniformity of 1549 & Act of Uniformity 1552)の制定や英語による『一般祈祷書』(Book of Common Prayer, 1549)の発行により、イングランド国教会の脱カトリックが進んだ。国王エドワード六世の母方の伯父であるエドワード・シーモア(Edward Seymour, 1st Duke of Somerset, c.1506-52)は幼い同国王の王位継承直前にサマセット公(Duke of Somerset)の位を創設し、自ら護国卿(Lord Protector)=事実上の摂政(Prine Regent)と成ってイングランドの事実上の支配者となった。ところが1552年1月22日に初代サマセット公エドワード・シーモアが大逆罪(high treason)で処刑されると、ノーサンバランド公ジョン・ダドリー(John Dudley, 1st Duke of Northumberland, 1502-53)が実権を握り、若き王に政治教育を行なったが、エドワードの病状から死期が近いと悟ったジョン・ダドリーは、エドワード亡き後について画策(かくさく)し、後述するジェイン・グレイ(Lady Jane Grey, 1537?-54; 在位1553年中の9日間)を次期国王(イングランド史上初の女王)に擁立することをエドワード六世に認めさせた。なお、ノーサンバランド公ジョン・ダドリー自身は、ジェイン・グレイの後にカトリック信徒の女王となったメアリー一世(Mary I, 1516-58; 在位1553-58)によって1553年8月22日に大逆罪(high treason)で処刑されてしまう。少年王エドワード六世の治世で行なわれた国家的な事業としては、1549年に刊行された英語による『一般祈祷書』(Book of Common Prayer, 1549)が挙げられる。それまでの羅典(ラテン)語ではなく、自国語であるイングランド語(English: 今でいう英語)を用いて祈祷文の集大成を刊行したことがプロテスタント精神を体現した。しかしながら、エドワード六世は半年もの間、発熱と咳(せき)がおさまらず、満十五歳九ヶ月にも満たずに薨去(こうきょ)してしまう。生涯独身で子なし。ほぼ同年代の従姉(いとこ)のジェイン・グレイ(Lady Jane Grey, 1537?-54; 在位1553年中の9日間)を跡継ぎに指名して死んでいき、メアリーやエリザベスといった異母姉妹を無視したために混乱が生じる。

名目上イングランド初の女王に成ったジェイン・グレイの九日天下の後、名実ともにイングランド初の女王に成った異母姉のメアリー一世(Mary I, 1516-58; 在位1553-58)は、亡父ヘンリー八世の意向に逆らって、むしろヘンリー八世に捨てられ満50歳で寂しく歿したカスティーリャ王国(現在のスペイン王国中央部)出身の母親のキャサリン(Catherine of Aragon, 1485-1536)の遺志であるカトリック信仰を強化すべく、イングランド王国をカトリック国に戻した。そして反抗する人々を容赦なく逮捕して処刑した。そのため「血まみれのメアリー(Bloody Mary)」という異名(いみょう)がついた。宗教改革を推進していたカンタベリー大司教トマス・クランマー(Thomas Cranmer, 1489-1556)もメアリー女王に処刑された。メアリーは5年余りの在位の後、卵巣腫瘍(らんそう しゅよう: ovarian tumour)のため満42歳で薨去(こうきょ)した。

1558年に、代わって王位に就いた異母妹のエリザベス一世(Elizabeth I, 1533-1603; 在位1558-1603)はイングランドを再びイングランド教会(Church of England: ウィキペディア日本語版では「イングランド国教会」の訳語で、日本の世界史教科書では伝統的に「英国国教会」の訳語)の国家に戻した(後述する「イングランド教会」の項目を参照)。エリザベス一世は1558年11月17日に王位に就くや、早くもその翌年の1559年には礼拝統一法(Act of Uniformity 1559)の再宣言を行なってイングランド教会を国教(国の宗教)と定めた。1570年2月25日にエリザベス一世はローマ教皇ピウス五世(Pius V, 1504-72; 在位1566-72)から正式に破門され(excommunicated)た。1576年4月、エリザベス一世は礼拝統一法の徹底を強化する委員会を組織させ、翌年(1577年)にはカトリック取り締まりが田舎にまで及ぶようになった。そしてカトリックに対する残虐な仕打ちが続いた。たとえば1582年5月30日にはイエズス会修道士トマス・コタム(Thomas Cottam, 1549–82)が首吊(くびつ)り・内臓抉(えぐ)り・四つ裂き(hanged, drawn and quartered)の刑を受けた。すなわち、首吊り台にかけ、息のあるうちに降ろして生殖器を切り落とし、腹を切り裂き、死にかけた本人の目の前で引きずり出した内臓を燃やしてみせ、それから首を切り落とし、遺体をひきちぎり、ばらばらの手足等をあちこちの獄門にさらされる刑である。1583年にはカトリックのエドワード・アーデン(Edward Arden, c.1542-83)が女婿(むすめむこ)のジョン・サマヴィル(John Somerville, 1560-83)と共に捕らえられ、同年(1853年)12月に同様の刑を受けている。欧州大陸でカトリック神父となってイングランドに帰国したロバート・ディブデイル(Robert Dibdale, c.1556-86)=別名 ロバート・デブデイル(Robert Debdale, c.1556-86)は逮捕され、1586年に同様の刑を受けた。1591年12月には、かつてサウサンプトン伯(Earl Southampton)の家庭教師を務めていたカトリック信徒の学者スウィザン・ウェルズ(Swithun Wells, c.1536-91)が同様の刑を受けている。1593年にはカトリック取締法が議会を通過し、カトリック信徒をいとも容易(たやす)く逮捕・処刑できるようなった。

しかしながら、エリザベス一世はカトリックとプロテスタントの中間的な「中庸(ちゅうよう)の道(羅 via media ウィア・メディア)」を模索した。イングランド教会及び世界の聖公会(Anglican Church)が中庸的な(悪く言うとどっちつかずの)性格を帯びているのは、このエリザベス一世時代の方針に由来する。

十七世紀中盤の一時的なピューリタンの天下を除いて(後述する「ピューリタン」の項目を参照)、歴代の国王はイングランド教会の名目上のトップの地位を占めて今日に至っている。1605年11月5日にはガイ・フォークス(Guy Fawkes, 1570-1606)らカトリック信徒による国会議事堂爆破及び国王暗殺テロ計画(Gunpowder Plot ガンパウダー・プロッ: 直訳「火薬陰謀」)が未遂に終わる事件が起きたが(ガイ・フォークスの一味は翌年1月末に公開処刑)、これにより国民のカトリック勢に対する敵愾心(てきがいしん)が高まった。その名残りとして今でも毎年11月5日が近づくとガイ(Guy)と名づけられた等身大または極端に大きな人形を子供たちが町中に引き回し、11月5日当日の夜にガイ人形を火にくべて喝采(かっさい)するという教育上問題のある伝統行事が綿々と続いている。

1673年3月29日にロンドンのイングランド議会で1673年審査法(Test Act of 1673)を制定され、カトリック信徒(Roman Catholics; papists)及び非国教徒(Nonconformists)は公職(public office)に就けなくなる。この状態が、1828年聖礼典審査法(Sacramental Test Act 1828)によって1673年審査法が廃止されるまで続くことになる。

同じく十七世紀(1601-1700年)の末には、1698年教皇制法(Popery Act 1698)により、英国各地のカトリック信徒は財産を保有する権利や、土地の相続や、イングランド陸軍(English Army)、1707年5月1日以降は英国陸軍(British Army)に入隊することを禁止された。

十八世紀(1701-1800年)初頭の1701年王位継承法(Act of Settlement 1701)によりカトリック信徒は英国王になることは許されず、この法典は今日(こんにち)に至るも有効である。また、2013年の部分改正までは、カトリック信徒と結婚すれば王位継承権を喪失するとしていた。イングランド王国(ウェールズを含む)とスコットランド王国の1707年合同法(Act of Union 1707)でも上記の王位継承法と同様に、「教皇主義者」(papist: プロテスタント信徒がカトリック信徒を蔑(さげす)んで使う用語)は王位を継承することができないと定められた。

カトリック信徒の市民権(civil rights)の制限は、1778年教皇主義者法(Papists Act 1778)が議会で可決されて変わり始めた。これによりカトリック信徒も財産保有権や土地の相続権や、英国陸軍(British Army)への入隊が漸(ようや)く許された。しかしこれに怒ったスコットランド出身の貴族政治家ゴードン卿(Lord George Gordon, 1751-93)が1780年にゴードンの乱(Gordon Riots)を起こした。これはグレートブリテン王国(1707-1800年末)がカトリック信徒にプロテスタントと同等の権利を与えることに、プロテスタント側が猛反発して暴動にまで発展したのだった。

十九世紀(1801-1900年)になると新たに成立した連合王国(1801年から現在に至る)が、ナポレオン戦争(1803-15年)中に「敵の敵は味方」とばかりにローマ教皇庁やポルトガル王国やスペイン王国といったカトリック国家とも対ナポレオン同盟を結んだため、カトリックの世界との和解が進んだ。フランス革命から逃れて来た数千人のカトリック信徒がイギリスに流入して来た。しかしカトリック信徒は未(いま)だに職業選択の自由を制限されていた。

十九世紀前半に1828年聖礼典審査法(Sacramental Test Act 1828)と1829年ローマ・カトリック信徒救済法(Roman Catholic Relief Act 1829)が議会で可決した。後者はカトリック信徒(男性のみ)にも投票権や公職に就く権利を含めて、イングランド教会の信徒と殆(ほとん)ど平等な市民権(civil rights)を与えるという画期的な内容の法律だった。これによりカトリック信徒に対する制度的な差別が終焉(しゅうえん)したように見えた。カトリック信徒が公職に就くことを法的に禁じられることもなくなったが、二十一世紀(2001-2100年)の現在に至るも英国王になることだけは禁じられている。

ところが十九世紀(1801-1900年)中盤に英領(当時)アイルランドでジャガイモ飢饉(ききん)(Irish Potato Famine)が発生し、ブリテン島を始めとして世界中にアイルランド人が移民して行ったが、このためイングランドでもカトリック信徒の人口が急増した。ほぼ同時期にイングランド人の間で反カトリック感情が高まった。英国王ではなくローマ教皇に忠誠を誓うカトリック信徒は、大多数の英国人には警戒心を持って受け止められた。

十九世紀(1801-1900年)中盤の1850 年に教皇ピウス九世(Pius IX, 1792-1878; 在位1846-78)がイングランド&ウェールズのカトリック教会の聖職位階制(羅 Sacri Ordines; 英 holy orders)を復活させ、1878年に教皇レオ十三世(Leo PP. XIII, 1810-1903; 在位1878-1903)がスコットランドの聖職位階制を復活させると、英国の多くの知識人・著名人がカトリックに改宗した。このことで英国に於(お)けるカトリックの社会的地位が向上した。聖職者ではニューマン枢機卿(Cardinal Newman, or John Henry Newman, 1801-90)、教会建築家のピュージン(Augustus Pugin, 1812-52)、詩人のホプキンズ(Gerald Manley Hopkins, 1844-89)、作家のチェスタトン(G. K. Chesterton, 1874-1936)、神学者のノックス(Ronald Knox, 1888-1957)、作家のイーヴリン・ウォー(Evelyn Waugh, 1903-66)、作家のグレアム・グリーン(Graham Greene, 1904-91)、大物新聞記者のマガリッジ(Malcolm Muggeridge, 1903-90)、女性作家のミュリエル・スパーク(Muriel Spark, 1918-2006)、作家のジョセフ・ピアース(Joseph Pearce, b.1961)といった錚々(そうそう)たる顔ぶれである。ブレア(Tony Blair, b.1953; 首相在任1997-2007)元首相も政界引退から僅(わず)か半年後の2007年12月にカトリックに改宗して国民を驚かせた。また、改宗者ではなく、生涯を通じてカトリック信徒だった著名人に作曲家のエルガー(Sir Edward Elgar, 1857-1934)がいる。

上述したように、二十一世紀(2001-2100年)の現在に至るもカトリック信徒が英国王になることは禁じられているが、2013年4月25日(木)に部分改正された形で施行された「2013年王位継承法 (Succession to the Crown Act 2013)」によって、カトリック信徒と結婚した者も王位継承権を失わないことになった。

https://ja.wikipedia.org/wiki/カトリック教会

https://en.wikipedia.org/wiki/Catholic_Church

https://ja.wikipedia.org/wiki/イングランドとウェールズのカトリック

https://en.wikipedia.org/wiki/Catholic_Church_in_England_and_Wales

https://ja.wikipedia.org/wiki/イギリスのカトリック

https://en.wikipedia.org/wiki/Roman_Catholicism_in_the_United_Kingdom

(参考リンク)

英国政府観光庁(BTA: British Tourist Authority)の公式ウェブサイト Visit Britain (ヴィズィット・ブトゥン: 直訳「英国を訪問せよ」)による説明: イギリス(英国)のカソリック

https://www.visitbritain.com/en/About-Britain/Religion/ (リンク切れ)

https://www.visitbritain.com/ja/About-Britain/Religion/ (リンク切れ)

但し、日本語版の「ヘンリー8世は*1553年英国国教会を設立した。」の年号は明らかに誤記であり、正しくは、「1533年に教皇上訴禁止法が制定され、それまで認められていた聖職者の教皇への上訴が禁じられ、カンタベリーとヨークの大司教が教会裁治の権力を保持することになり、1534年に国王至上法を公布して ヘンリー八世はイングランドの教会のトップに君臨することで、イングランド教会が設立された。」とするのが正しい。

【参考】

The main differences between Catholics and Protestants

(カトリックとプロテスタントの主な相違点)

独公共国際放送 Deutsche Welle (ドイチェヴェレ: 「ドイツの波」の意)

クラウス・クレーマー(Klaus Krämer)記者署名解説

2017年3月10日(金)

https://www.dw.com/en/the-main-differences-between-catholics-and-protestants/a-37888597

【参考】

【日本人の知らない教養】「カトリック」と「プロテスタント」の違いを説明できますか?

ダイヤモンド・オンライン

上馬キリスト教会ツイッター部 MARO(マロ, b.1979)こと、本名非公開

2020年8月11日(火)

https://diamond.jp/articles/-/245156

https://diamond.jp/articles/-/245156?page=2

https://news.yahoo.co.jp/articles/486cf669277da49cdbc42fec393ac10fa0392b2f (リンク切れ)

小見出し1: 「カトリック」と「プロテスタント」の違いを説明できますか?

小見出し2: 「教派」はこうして分かれていった

小見出し3: 「カトリック」と「プロテスタント」の違い

小見出し4: キリスト教って、面白いんです

小見出し5: 入門書以前の「キリスト教超入門書」を書いたわけ

小見出し6: サクサク読めて、ためになる!

ローマ教皇(ローマ法王)とは、ヴァティカン(バチカン)市国(1929年建国)の国家元首(Head of State of the Vatican City State)にして、全世界のカトリック教会のトップ。羅典(ラテン)語で Pāpa(「父」の意)または Pontifex maximus (「大神祇官」「最大司教」の意)。英語で the Pope (ラテン語の Pāpa の転訛(てんか))、または the Bishop of Rome (「ローマ司教」の意)、または the Supreme Pontiff (「最高司教」の意)、または the Holy Father (「聖なる神父」の意)、または the Vicar of Christ (「基督(キリスト)の代理人」の意)。

【参考】

ヴァティカン市国の建国(1929年)から現在までの歴代ローマ教皇

第259代教皇(1922年2月6日(月)~1939年2月10日(金))

ピウス十一世(羅 Pāpa Pius Undecimus; 英 Pope Pius XI, 1857-1939; 教皇在位1922-39)こと、俗名アキッレ・アンブロージョ・ダミアーノ・ラッティ(Achille Ambrogio Damiano Ratti, 1857-1939)。イタリア人。在位中の1929年にイタリアの独裁者ムッソリーニとラテラノ条約(Lateran Treaty)を結び、ヴァティカン(バチカン)市国を建国し、イタリアから独立。ヴァティカン市国の初代国家元首と成る。共産主義(communism)やナチス主義(Nazism)に反対。第二次世界大戦勃発の半年以上前に薨去(こうきょ)。

第260代教皇(1939年3月2日(木)~1958年10月9日(木))

尊者ピウス十二世(羅 Pāpa Venerabilis Pius Duodecimus; 英 Pope Ven. Pius XII, 1876-1958; 教皇在位1939-58)こと、俗名エウジェーニオ・マリーア・ジュゼッペ・ジョヴァンニ・パチェッリ(Eugenio Maria Giuseppe Giovanni Pacelli, 1876-1958)。イタリア人。ヴァティカン市国の第二代国家元首。第二次世界大戦中のローマ教皇。戦争終結に尽力するも、ホロコースト(ナチス・ドイツによるユダヤ人虐殺)を黙認したことが戦後に批判される。

第261代教皇(1958年10月28日(火)~1963年6月3日(月))

聖ヨハネ二十三世(羅 Pāpa Sanctus Ioannes Vicesimus Tertius; 英 Pope St John XXIII, 1881-1963; 教皇在位1958-63)こと、俗名アンジェロ・ジュゼッペ・ロンカッリ(Angelo Giuseppe Roncalli, 1881-1963)。イタリア人。ヴァティカン市国の第三代国家元首。1962年10月11日(木)、その後のカトリック教会の方向性を決定づけることになる第二ヴァティカン公会議(羅 Concilium Vaticanum Secundum; 英 Second Ecumenical Council of the Vatican, 1962-65)の開会を宣言。同年(1962年)10月後半のキューバ危機(Cuban Missile Crisis)では第三次世界大戦が勃発しそうになったのを回避することに尽力。道半(みちなか)ばでの当人の薨去(こうきょ)により、第二ヴァティカン公会議は次代の教皇パウロ六世へと引き継がれる。

第262代教皇(1963年6月21日(金)~1978年8月6日(日))

聖パウロ六世(羅 Pāpa Sanctus Paulus Sextus; 英 Pope St Paul VI, 1897-1978; 教皇在位1963-78)こと、俗名ジョヴァンニ・バッティスタ・エンリコ・アントーニオ・マリーア・モンティーニ(Giovanni Battista Enrico Antonio Maria Montini, 1897-1978)。イタリア人。ヴァティカン市国の第四代国家元首。「旅する教皇」の異名(いみょう)を取り、外国訪問に熱心だった。1965年12月7日(火)にロシア正教会のトップと会見し、九百十一年ぶりに和解。また、同年(1965年)12月8日(水)には先代の教皇ヨハネ二十三世から引き継いだ第二ヴァティカン公会議を終結させ、その後の現在に至るカトリック教会の方向性を決定づけた。

第263代教皇(1978年8月26日(土)~9月28日(木))

尊者ヨハネ・パウロ一世(羅 Pāpa Venerabilis Ioannes Paulus Primus; 英 Pope Ven. John Paul I, 1912-1978; 教皇在位1978)こと、俗名アルビーノ・ルチアーニ(Albino Luciani, 1912-1978)。イタリア人。ヴァティカン市国の第五代国家元首。二十世紀生まれの初のローマ教皇。突然死のため在位期間は僅か三十三日間。代々のイタリア人教皇の時代もここに終わりを告げる。

第264代教皇(1978年10月16日(月)~2005年4月2日(土))

聖ヨハネ・パウロ二世(羅 Pāpa Sanctus Ioannes Paulus Secundus; 英 Pope St John Paul II, 1920-2005; 教皇在位1978-2005)こと、俗名カロル・ユゼフ・ヴォイティワ(Karol Józef Wojtyła, 1920-2005)。ポーランド人で、実に四百五十五年ぶりの非イタリア人教皇。ヴァティカン市国の第六代国家元首。他宗派や他宗教との対話を積極的に推進。「空飛ぶ教皇」の異名(いみょう)を取り、百ヶ国あまりを訪問。その一環として1981年2月にはローマ教皇として史上初の訪日を果たす。広島市と長崎市を訪れ、日本語で「戦争は人間の仕業(しわざ)です」「戦争は死です」と演説し、核兵器の廃絶を訴えた。1980年代は一貫して母国ポーランドの民主化を陰で支え続け、1989年11月のベルリンの壁(独 Berliner Mauer; 英 Berlin Wall)の崩壊に端を発する東欧共産圏諸国の民主化では人々の精神的支柱の役割を果たし、影の立役者となった。西暦2000年にイングランド教会の名目上のトップである英女王エリザベス二世(Elizabeth II, b.1926; 在位1952-)と四百四十二年ぶりに和解して関係を修復。

第265代教皇(2005年4月19日(火)~2013年2月28日(木))

ベネディクト十六世(羅 Pāpa Benedictus Decimus Sextus; 英 Pope Benedict XVI, b.1927; 教皇在位2005-13)こと、俗名ヨーゼフ・アロイジウス・ラッツィンガー(Joseph Aloisius Ratzinger, b.1927)。ドイツ人。ヴァティカン市国の第七代国家元首。前任者の教皇ヨハネ・パウロ二世の存在が大き過ぎたため割を食ってしまい、多くの信徒らからは軽蔑を込めて苗字の「ラッツィンガー」で呼ばれてしまう。カトリック教会内の過去の児童(現在は成人)への性的虐待事件があちこちで次々と明るみに出るも、事件の調査に消極的で、教会の隠蔽体質を引きずり続け、世界中から非難が殺到。教皇の職責に耐えられなくなり、在位八年足らずで退位。退位後は静かに余生を過ごし、満90歳を超えても健在。

第266代教皇(2013年3月13日(水)~現在に至る)

フランシスコ(羅 Pāpa Franciscus; 英 Pope Francis, b.1936; 教皇在位2013-)こと、俗名ホルヘ・マリオ・ベルゴリオ(Jorge Mario Bergoglio, b.1936)。南米アルゼンチン人のスペイン語話者。欧州以外の出身者による初のローマ教皇。とは言うものの両親はイタリアからの南米移民。イエズス会士。ヴァティカン市国の第八代国家元首。先々代(第264代)の教皇ヨハネ・パウロ二世の例に倣(なら)い、他宗派や他宗教との対話を推進し、その一環として2016年2月12日(金)にはロシア正教のトップとキューバの首都ハバナ(西 La Habana, Cuba; 英 Havana, Cuba)で初の会見を行ない、東西キリスト教会の和解を世界に印象づけた。2019年11月には東南アジアの仏教国タイ王国に続き、史上二度目の訪日(三十八年と九ヶ月ぶり)を果たした。令和という新元号になって間もない日本では、長崎県長崎市と広島県広島市(訪問順)で核兵器の廃絶を訴えた。更には新型コロナウイルス(new coronavirus; novel coronavirus; WHO国際名称 Covid-19)のパンデミック(pandemic: 「世界的感染拡大」の意)が終熄しない2021年3月5日(金)~8日(月)の四日間に亘り、イスラム教が多数派を占める中東イラクを訪問し、現地のイスラム教シーア派最高権威スィスタニ師(Ayatollah Sistani, b.1930)こと、大アーヤトゥッラー・サイイド・アリー・フサイニー・スィースターニー (Grand Ayatollah Sayyid Ali al-Husayni al-Sistani; علي الحسيني السيستاني‎; على حسينى سيستانى‎, b.1930)=90歳と会見。ローマ教皇のイラク訪問は、先々代の教皇ヨハネ・パウロ二世が計画していたが、当時の独裁者サッダーム・フセイン(Saddam Hussein; صدام حسين عبد المجيد التكريتي = Ṣaddām Ḥusayn ʿAbd al-Maǧīd al-Tikrītī, 1937-2006; 大統領在任1979-2003)によって阻止されたのだった。

プロテスタント(Protestantism: 「抗議する者」の意から派生)

十六世紀(1501-1600年)の宗教改革でカトリック教会から枝分かれしたが、(カトリックとは大きく異なり)プロテスタント全体を統括する教団連合組織がなく、歴史上分裂を繰り返してきたため、その思想は各宗派でバラバラである。世界に約5億人(500 million)の信徒がいて、その多くは西欧のアルプス以北や、アイルランド共和国を除く英語圏諸国(北米やオセアニアや南ア)に住む。

https://ja.wikipedia.org/wiki/プロテスタント

https://en.wikipedia.org/wiki/Protestantism

プロテスタント諸派の見取り図

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/0/07/Protestantbranches_ja.svg

[参考]

世界史の窓「福音信仰/福音主義」

http://www.y-history.net/appendix/wh0903-010.html

・プロテスタント諸派

イングランド教会(Church of England: ウィキペディア日本語版では「イングランド国教会」の訳語で、日本の世界史教科書では伝統的に「英国国教会」の訳語

英国外での名称は聖公会(Anglican Church)。カトリックとの因縁の歴史があるため、イングランド教会を知りたければ、上記のカトリック教会の項目をよく読まれたし。

ヘンリー八世(Henry VIII, 1491-1547; 在位1509-47)による1532年教皇上訴禁止法(Ecclesiastical Appeals Act 1532)が翌年(1533年)に制定されたことと、1534年国王至上法(Act of Supremacy 1534)の布告によってカトリックから分かれて成立(詳細は、授業資料08番 https://sites.google.com/site/xapaga/home/historicrulers へ)。ヘンリー八世の一人息子で新国王のエドワード六世(Edward VI, 1537-53; 在位1547-53)は、九才三ヶ月で王位に就くと側近の助けを借りて父ヘンリー八世の築いた国教をカトリックから更(さら)に遠ざけ、よりプロテスタント的なものにした。この国王の治世で行なわれた国家的な事業としては、1549年に刊行された英語による『一般祈祷書』(Book of Common Prayer, 1549)が挙げられる。それまでの羅典(ラテン)語ではなく、自国語であるイングランド語(English: 今でいう英語)を用いて祈祷文の集大成を刊行したことがプロテスタント精神を体現した。しかしながらエドワード六世は弱冠十五歳九ヶ月で歿してしまう。

その後は一時期の例外(1553年9月に新女王メアリー一世がプロテスタント信徒たちを逮捕してカトリックを国教に戻してから1558年11月17日のメアリー一世の死まで) を除き、イングランド王国(西暦927年7月12日から1707年4月30日まで)の歴代国王(但(ただ)し、その中でも1534年11月3日から)、グレートブリテン王国(1707年5月1日から1800年12月31日まで)の歴代国王、連合王国(1801年1月1日から現在に至る)の歴代国王がイングランド教会の名目上のトップを兼務している。

カトリック教会から分かれてプロテスタントの教義から影響を受ける一方で、カトリック教会の信条・聖職制度・典礼等を引き継ぐ。位置づけとしては、カトリックとプロテスタントの中間。現在でも国家元首(女王)及びその家族(王室)が信仰する。イングランドの主流派で、上流及び上層中産(中の上)階級が信徒であるため、「金持ちのための教会」という、キリスト教の本義から外れたイメージが定着している。

カトリックとは異なり、プロテスタント各派にはローマ法王やローマ教皇庁のような 全体を束(たば)ねる統一的な存在がないが、プロテスタントの他派はイングランド教会及び聖公会をプロテスタントとは認めず、カトリックの亜種(あしゅ)・亜流(ありゅう)と考えている。それは1558年に王位に就いたエリザベス一世(Elizabeth I, 1533-1603; 在位1558-1603)が、イングランド王国を再びイングランド教会(Church of England)の国家に戻した際に(詳しくは前述の「カトリック教会」の項目を参照)、カトリックとプロテスタントの中間的な「中庸(ちゅうよう)の道(羅 via media ウィア・メディア)」を模索したことに由来する。イングランド教会及び世界の聖公会の中庸的な(悪く言うとどっちつかずの)性格はエリザベス一世によって方向づけられたのだった。

イングランド教会内部には主教(カトリックで言う司教)と典礼の権威を重視し、ピューリタンを否定する高教会派(High [Anglican] Church)と、聖書に則(のっと)った信仰を重視しピューリタンなど非国教徒に理解を示す低教会派(Low [Anglican] Church)の違いがあった。1688年の名誉革命(Glorious Revolution)以降の体制を支えたのは宥和的な低教会派であった。

西暦2000年に英女王エリザベス二世(Elizabeth II, b.1926; 在位1952-)が当時のローマ法王ヨハネ・パウロ二世(羅 Ioannes Paulus PP. II; 英 Pope John Paul II, 1920-2005; 在位1978-2005)と歴史的和解を行なうことで、カトリック教会の総本山ヴァティカン(バチカン)と実に四百四十二年ぶりに関係を修復した。

1994年には女性司祭(female priests)の聖職叙任(せいしょく じょにん: ordination)が認められ、それ以降は毎年百人を超える女性司祭が叙任されるようになった。その二十年後の2014年7月14日(月)には最高決議機関である総会(General Synod)の場で初の女性主教(the first female bishop)の就任が取り決められ、翌2015年1月26日(月)に四十八歳のレイン(Libby Lane, b.1966)女史がイングランド北部のヨーク大聖堂(York Minster)にて正式に史上初の主教(bishop)に任じられた。2014年以降は、北アイルランドを除く連合王国で同性婚(same-sex marriage)が法的に認められたが、伝統を重んじるイングランド教会(聖公会)では、教会堂での挙式を拒否し続けている。

https://ja.wikipedia.org/wiki/イングランド国教会

https://en.wikipedia.org/wiki/Church_of_England

(参考リンク)

イギリスBBC イギリス国教会 初の“女性主教”誕生へ

NHKニュース キャッチ! 世界の視点

2014年7月28日(月)

http://www.nhk.or.jp/catchsekai/marugoto/2014/07/0728.html (リンク切れ)

聖公会(Anglicanism or Anglican Church)及び監督派教会(Episcopal Church: 米国聖公会)

イングランドの外での上記イングランド教会の呼ばれ方。日本では米国聖公会が学校法人立教学院(英称 St. Paul’s)を建学。

https://ja.wikipedia.org/wiki/聖公会

https://en.wikipedia.org/wiki/Anglicanism

非国教徒(Nonconformism)

上記のイングランドに於ける主流派であるイングランド教会に従う(コンフォームする)ことを拒絶するという意味でノンコンフォーミズムという。ウェールズやイングランドの一部、たとえばウェールズに近い西中部地方(West Midlands)で盛ん。1829年から非国教会信徒も公職に就けるようになった。非主流派ながら二十世紀初頭の第一次世界大戦(1914年8月4日(火)英国対独宣戦布告; 1918年11月11日(月)停戦成立; 1919年6月28日(土)講和条約調印)中にはウェールズ人でこの宗派出身のロイド・ジョージ(David Lloyd George, 1st Earl Lloyd-George of Dwyfor, 1863-1945; 首相在任1916-22)が首相に就任し、絶大なリーダーシップを発揮した。ロイド・ジョージ首相は戦時中に数々の改革を実行した。福祉国家(welfare state)への最初の一歩を築(きず)いたのも、資源の節約を目指す夏時間の実施(時計の針を1時間進めること)や、二十一世紀(2001-2100年)初頭まで続いたパブ(大衆酒場)の営業時間制限も、すべて「人間発電機」(human dynamo)と呼ばれたロイド・ジョージによる精力的な改革の賜物(たまもの)だった。

https://en.wikipedia.org/wiki/Nonconformist

清教徒またはピューリタン(Puritanism)

聖書を信仰の唯一の拠(よ)り所とし、労働と質素な生活を重んじるカルヴァン主義(下記参照)の改革派教会から影響を受けて、上記のイングランド教会から枝分かれした過激派・原理主義者。スチュアート家(the House of Stuart)のジェイムズ一世(James I of England, 1566-1625; 在位1603-25)の治世(1603-25年)にはイングランド教会の立場に立つ王政から弾圧され、その一部がピルグリム・ファーザーズ(Pilgrim Fathers: 直訳「巡礼者の父祖たち」)として北米の殖民地ニューイングランド(現在のアメリカ合衆国北東部)へ移住した。十七世紀中盤の清教徒革命(Puritan Revolution, 1642–51)ではクロムウェル(Oliver Cromwell, 1599-1658; 護国卿在任1653-58)率いる独立派清教徒(Independent Puritans)が一時的に王政(monarchy)を倒してイングランド共和国(Commonwealth of England, 1649-60)を樹立し、権力を握って優勢となった。独立派とは、教会の主教制度(episcopacy)と長老派(Presbyterians)の両方を否定しており、教会は同等の信者が集まる独立したものであると主張をしているため、こう呼ばれる。しかしながら、歌舞音曲(かぶ おんきょく)やクリスマスの行事を禁止して只管(ひたすら)禁欲を強()いる清教徒の政策に民心は離れてゆき、独裁的な色彩を強めた指導者クロムウェルが死ぬと王政復古(Restoration, 1660-88)の時代がやって来た。清教徒は再び少数派(minority)と成り、抑圧されるようになる。1673年3月29日にロンドンのイングランド議会で1673年審査法(Test Act of 1673)が制定され、カトリック信徒(Roman Catholics; papists)及び非国教徒(Nonconformists)は公職(public office)に就けなくなる。1688年の名誉革命(Glorious Revolution)後に1690年免責法(Indemnity Act 1690)が制定され、信仰の自由が認められたが、審査法は継続していたので清教徒が公職に就けない状態は続いた。この状態が、1828年聖礼典審査法(Sacramental Test Act 1828)によって1673年審査法が廃止されるまで続くことになる。現在のイギリスに清教徒はほぼ皆無。「宗教的狂信者は全員アメリカへ渡ってしまった。」と現代イギリスの一般人は冗談とも本気ともつかないことを屡々(しばしば)言う。

https://ja.wikipedia.org/wiki/ピューリタン

https://en.wikipedia.org/wiki/Puritan

メソディスト派(Methodism; Methodist Church; Wesleyanism)

イングランド教会の司祭(priest)だったジョン・ウェスリー(John Wesley, 1703-91)が開祖。イングランド教会から枝分かれした質素倹約や禁酒禁煙を旨とする下層民のための宗派だが、日本では金持ちが信徒。禁欲的で規則正 しい生活を推奨。日本では米国メソディスト教会が女子小學校(創立二十周年で靑山學院に改称; 現在の学校法人青山学院)を、カナダメソディスト教会が東洋英和女學校(現在の学校法人東洋英和女学院)を建学した。したがって青山学院大学正門を見下ろす巨大な銅像は教祖ウェスリー(但し、日本では屡々(しばしば)訛(なま)ってウェスレー)を象(かたど)った物である。現在では労働者階級の教会離れが進み、教会の建物の荒廃がイギリス全土で進む。パブ(節酒・禁酒活動に熱心なメソディスト信徒が最も嫌う場所)やレストランや、イスラム教のモスクになった建物も多い。1829年からメソジスト信徒も公職に就けるようになった。

https://ja.wikipedia.org/wiki/メソジスト

https://en.wikipedia.org/wiki/Methodism

https://en.wikipedia.org/wiki/Wesleyanism

ルーテル教会(Lutheran Church)、またはルター派(Lutheran)、またはルター主義(Lutheranism)

上記のイングランド教会よりも少しだけ長い歴史があり、2017年にはドイツ各地(但し、南部のバイエルン州や西部の一部の都市を除く)でルターの宗教改革(Reformation)五百周年が祝われた。ドイツ北部・東部や北欧諸国では多数派ながらイギリスでは少数派。1517年10月31日にドイツ人神父・教師(後に宗教改革者)のマルティン・ルター(Martin Luther, 1483-1546; また古くはラテン語読みで「ルーテル」とも)が、「贖宥状の効能に関する議論」(羅 Disputatio pro declaratione virtutis indulgentiarum)と題して羅典(ラテン)語で書いた文書をヴィッテンベルク城教会(独 Schloßkirche zu Wittenberg od. Schlosskirche zu Wittenberg)の門扉に貼り出したことが、ドイツ及び中欧・北欧諸国の宗教改革の発端となった。この文書は後世に於いては通称「95ヶ条の論題」(独 95 Thesen; 英 Ninety-five Theses)の名で知られている。贖宥状(ゆうしょく じょう: 日本では一般的に「免罪符(めんざいふ)」の名で知られる; 羅 indulgentia インドゥルゲンティア; 英 indulgence インルヂェンス; 独 Ablaßbrief od. Ablassbrief プラースブりーフ)の販売を批判した時点で騒動を引き起こしたルターは四年後の1521年にカトリック教会から正式に破門(excommunicated)されるも、ドイツ語圏の諸侯の間に支持者を集め、ルター派が形成されていった。後に上からの改革でイングランドに於ける宗教改革を推し進めることになる国王ヘンリー八世(Henry VIII, 1491-1547; 在位1509-47)は、羅典(ラテン)語で反ルター論文を発表した功績で、1521年10月11日にローマ教皇レオ十世(Leo X, 1475-1521; 教皇在位1513-21)に褒(ほ)められ、「信仰の擁護者(羅 Fidei Defensor; 英訳 Defender of the Faith)」の称号を授(さず)かって悦に入っていた(詳細は、授業資料 https://sites.google.com/site/xapaga/home/historicrulers へ)のは皮肉な話である。

https://ja.wikipedia.org/wiki/ルター派

https://en.wikipedia.org/wiki/Lutheranism

カルヴァン主義(Calvinism)

スイスで起こった長老派教会の根底にある厳格な思想。聖書を信仰の唯一の拠()り所とし、労働と質素な生活を重んじる。かつてはピューリタン思想に影響を及ぼした。

https://ja.wikipedia.org/wiki/カルヴァン主義

https://en.wikipedia.org/wiki/Calvinism

小坂井敏晶(こざかい としあき; Toshiaki Kozakai, b.1956)パリ第八大学准教授著 『民族という虚構』(東京大学出版会, 2002年)を増補改訂した文庫版 『増補 民族という虚構』(筑摩書房 ちくま学術文庫, 2011年)の pp.100-102がドイツの政治学者・社会学者・経済学者マックス・ヴェーバー(Max Weber, 1864-1920)著 『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』(独原題 Die protestantische Ethik und der Geist des Kapitalismus, 1905; 英訳 The Protestant Ethic and the Spirit of Capitalism, 1930; 仏訳 L’Éthique protestante et l’esprit du capitalisme, 1964)の中のカルヴァン主義に関する説明を以下のように簡潔に纏める。

[前略] 魂の永遠の救済に関して、カトリック教会は日常生活における敬虔な努力の重要性を説くが、それに対してカルヴァン主義ではこのような呪術的発想を拒絶する。人間のこざかしい努力で救済を得られるなどという考えは、愚かな迷信であるばかりか、全能の神を恐れぬ冒瀆行為でさえある。「神の意志により、また神の栄光の示現のために、ある人間は永遠の命を定めら[p.100/p.101]れ、他の人間は永遠の死を定められている」というウェストミンスター告白(一六四七年)にみられるように、カルヴァンの提唱する救済予定説はそれまでの神学的発想と一線を画す。人間は、神が自らの栄光を成就するための単なる道具にすぎない。神のために人間が創造されたのであり、その反対に人間のために神がいるのではない。各信徒がどんな行為をしようとも、神が一度定めた彼らの運命には何らの変更も加えられない。また、能力に限りある人間という存在には、神がどんな運命を与えるのかを知ることもできない。自らが救われるのか、あるいは永遠に呪われる運命をたどるのかを知る方策はまったく存在しない。

救われる運命にある者は、どんな悪行を行っても、また神の恩寵を拒絶しようとしても否応がなしに救われる。また反対に、呪われる運命に定められた者は、どんなに善行を積んでも神の恩寵には手が届かない。さて、人間の意志や努力を無視するこのような決定論的世界ではどのような人間行動が観察されるだろうか。常識的に考えるならば、諦観を伴った宿命論に行き着くほかないだろう。運命が最初から決まっていて地獄に堕ちる定めなら、どんなに努力しても報われない。あるいは逆に、どんなに怠けても、さらには他人に危害を与えても、神の恩寵を受けて救われる運命にあるのなら、地獄に堕ちる心配はない。そうならば、わざわざ苦労をして他人のために尽くしたり、よりよい生き方を求めて努力する人間がいるだろうか。[p.101/p.102]

しかし、そのような合理的判断に合致する行動を救済予定説は導かなかったとヴェーバーは主張する。「予定説から導かれる論理的帰結は言うまでもなく宿命観であろう。しかし『試練』という概念の導入により、実際の心理的結果はまったく反対のものになった」のである。(文中の太字の箇所は、書籍では傍点で強調される)

実は、自分が神に選ばれた人間なのかどうかを探る方法が、間接的だが、たった一つだけある。確かに、神の意志を知る能力は人間には与えられていない。しかし神に選ばれた人間は、神の栄光を実現するための道具なのだから、敬虔な生活を送る有能な人間であるはずだ。酒に溺れ、淫行にうつつを抜かす輩であるはずがない。したがって、脇目もふらぬ努力を毎日重ねている事実こそ、まさに神の軍団に属す証拠ではないか。つまり、禁欲的生活を送るという外的な徴候を通して、自らが神に選ばれている、自らの存在が無意味ではないという主観的な確信を得るのである。休みなしに勤勉な生活を常に求め続けることにより、信者の物質的および精神的生活が次第に豊かになる。またひるがえって、その経済的繁栄が、自分は選ばれた存在だという確信を強化する循環ができあがる。こうして初めの虚構がついには確たる現実を作り出す。

[改行・後略]

外務省(MOFA: Ministry of Foreign Affairs of Japan)の元主任分析官(元受刑者)で、キリスト教カルヴァン派信徒、日本基督教団京都教区加茂教会(Kamo Church, Parish of Kyoto, United Church of Christ in Japan)会員で、作家・評論家の佐藤優(さとう まさる, b.1960)氏は、2017年1月26日(木)に新党大地(New Party DAICHI)主催の月例定例会で次のように語っている。

「カルヴァン派の場合、神によって選ばれる人は生まれる前にあらかじめ定められている、と考える。本人の努力は一切関係ない。[中略] そうすると、試練にすごく強くなる。どんなにひどいことに遭っても、負けない。どうしてか。神様が与えた試練なので、最後に勝利すると決まっていると考える。そして、問題はどういう勝利の仕方なのか、と考える。」と。

同じく佐藤氏はプレジデント誌2020年7月17日(金)号の記事の中でも、「トランプ米大統領の信仰する長老派の特徴は、打たれ強いこと。その代わり、負けを認めず、反省しません。新型コロナウイルスや人種差別反対デモへのトランプ大統領の対応は、俺は間違えていない。だからやり方を変えないという態度です。強い信念はカルヴァン派の思考の特徴ですが、そのマイナスの面が出ていることを感じます。」と述べている。

(2020年11月17日(火)付のヤフーニュース個人の高橋浩祐(たかはし こうすけ, b.1968)署名コラムに依拠)

改革派教会(Reformed faith or Reformed tradition)

上記のカルヴァン主義の第一派でスイスやオランダで主流派。アメリカでも盛んながらイギリスでは少数派。かつてはピューリタン思想に影響を及ぼした。

https://ja.wikipedia.org/wiki/改革派教会

https://en.wikipedia.org/wiki/Reformed_churches

長老派教会(Presbyterian Church or Presbyterianism)、またはスコットランド教会(Church of Scotland)、またはスコットランド国教会

非国教徒(Nonconformists)の一つで、上記のカルヴァン主義の第二派で、ピューリタンと同じく同じくカルヴァン派(Calvinists)の流れを汲(く)み、ジョン・ノックス(John Knox, c. 1513–72)によって主導されてスコットランドで発展した。そのためスコットランドで主流派で、スコットランド系の多く居住する北米でも盛んである。宗派名は希臘(ギリシア)語で「長老」を意味する「プれスビュテろス(πρεσβυτερος = presbyteros)」に由来し、聖職者と「長老たち(elders)」と呼ばれる信徒代表とが対等に教会を統治しようとする制度。清教徒(ピューリタン)の一派として説明されることもあるが、長老派は長老制度(聖職者である司教ではなく、経験の豊かな信者を教会の指導者とする制度)による教会組織の運営を主張した点が異なる。スコットランドの長老派教会がジェイムズ一世(James I of England, 1566-1625; 在位1603-25)やチャールズ一世(Charles I, 1600-49; 在位1625-49)によるイングランド教会の強制に対して叛乱を起こし、それがイングランド革命(English Revolution, 1642–51)の出発点となった。革命が進行する中で、イングランドでは長老派は王権との妥協を図る穏健な立憲王政(constitutional monarchy)の主張を展開したため、クロムウェル(Oliver Cromwell, 1599-1658; 護国卿在任1653-58)率いる独立派清教徒(Independent Puritans)によって議会から一時的に排除されたが、1658年のクロムウェルの死によって勢力を盛り返し、王政復古(Restoration, 1660-88)を実現する勢力となった。しかし国王チャールズ二世(Charles II, 1630-85; 在位1660-85)と跡を継いだ弟の国王ジェームズ二世(James II, 1633-1701; 在位1685-88)がカトリックを復興させる試(こころ)みの中で、長老派は再び弾圧されるようになり、新天地を求めて西隣のアイルランド島に移住する者も多かった。1673年3月29日にロンドンのイングランド議会で1673年審査法(Test Act of 1673)が制定され、カトリック信徒(Roman Catholics; papists)及び非国教徒(Nonconformists)は公職(public office)に就けなくなる。1688年の名誉革命(Glorious Revolution)後に1690年免責法(Indemnity Act 1690)が制定され、信仰の自由が認められたが、審査法は継続していたので公職には就けない状態は続いた。この状態が、1828年聖礼典審査法(Sacramental Test Act 1828)によって1673年審査法が廃止されるまで続くことになる。

米国発祥の世界的な慈善事業・社会奉仕団体である国際ロータリー(Rotary International: 中文繁体字 「國際扶輪」)を1905年2月23日(木)に米国イリノイ州シカゴ市(Chicago, Illinois, USA)で創立した米人弁護士ポール・P・ハリス(Paul Percy Harris, 1868-1947)も長老派教会の出自であったため、この宗派から多大な影響を受けている。つまり上記の「カルヴァン主義」の項目に書いたような、「脇目もふらぬ努力を毎日重ね、禁欲的生活を送るという外的な徴候を通して、自らが神に選ばれている、自らの存在が無意味ではないという主観的な確信を得て、休みなしに勤勉な生活を常に求め続けることにより、信者の物質的および精神的生活が次第に豊かになり、その経済的繁栄が、自分は選ばれた存在だという確信を強化する」活動をしたのである。しかしながら、ハリス自身は様々な宗派の礼拝に参加することで、一つの宗派に固執することはなかった。また、国際ロータリーでは信教の自由を認めながらも、何か特定の宗教・宗派の活動をロータリーの活動として行なうことを禁じている。

因(ちな)みに日本では唱歌「故郷(ふるさと)」(大正三年=1914年)の作曲者である岡野貞一(おかの ていいち, 1878-1941)や、童謡「赤とんぼ」(昭和二年=1927年)の作曲者である山田耕筰(やまだ こうさく; Kósçak Yamada, 1886-1965)や、かつての準国歌「海行かば」(昭和十二年=1937年)や日本全国様々な学校の校歌の作曲者である信時潔(のぶとき きよし, 1887-1965)が洗礼を受けた教会でもある。したがってこれらの作曲家(岡野、山田、信時)の作品にはキリスト教(特に長老派)の讃美歌からの影響が色濃く反映されている。日本の一般大衆は歌詞の持つ雰囲気に騙されてしまいがちだが、日本の原風景を歌っているかのように錯覚されている唱歌「故郷(ふるさと)」( https://sites.google.com/site/xapaga/home/igirisubunkaron2019b の中の質疑49番)や童謡「赤とんぼ」( https://sites.google.com/site/xapaga/home/igirisubunkaron2019b の中の質疑49番)や準国歌「海行かば」( https://sites.google.com/site/xapaga/home/elgar )にはキリスト教的な旋律(melody)が組み込まれているのである。

https://ja.wikipedia.org/wiki/プレスビテリアン

https://en.wikipedia.org/wiki/Presbyterianism

https://ja.wikipedia.org/wiki/スコットランド国教会

https://en.wikipedia.org/wiki/Church_of_Scotland

俗に言うクエーカー(Quakers)

正式にはキリスト友会(ゆうかい)(Society of Friends or Religious Society of Friends)であり、信徒は友会徒(Friends)と自称するが、信徒以外からはクエーカー(Quakers クウェイカーズ; 直訳「揺さぶる人たち」)と呼ばれ続ける十七世紀イングランドで設立された宗教団体。「クエーカー」という俗称は、開祖ジョージ・フォックス(George Fox, 1624-91)が判事に神名冒瀆罪(しんめい ぼうとく ざい: blasphemy ラェスファミィ)で裁かれた1650年に初めて使われた。判事はフォックスの信徒たちが神の言葉で身を震わせたためにクエーカーと呼んだとのこと。初期の友会(ゆうかい)は会合で体を震わせ振動させて聖書の感動を味わっていた。開祖フォックスを含めて信徒にはこの呼び名を嫌う人がいるが、世界に定着してしまったので、部外者にはクエーカーという名称を使うこともある。信徒は自分たちが集まる家屋を教会(church)や礼拝堂(chapel)とは呼ばず、友会徒の集会の家(Friends Meeting House)と称している。絶対的平和主義のため暴力的な喧嘩(けんか)や戦争に参加することは断じて禁じられている。信者の数は少なく、全世界で約60万人(内、北米約12万、英国約4万)しかいない。単純計算すると英国の人口の約0.06%が友会徒(クエーカー信徒)ということになる。1829年からクエーカー信徒も公職に就けるようになった1956年公開のアメリカ映画 Friendly Persuasion(直訳 『友会徒の宗派』と『友好的説得』の両義、邦題 『友情ある説得』)がこの宗派のことを描いている。なお、東京都港区に在る私立名門女子中高である普連土(ふれんど)学園(英称 Friends School)はキリスト友会(=クエーカーの集まり)によって創立された日本では唯一の学校法人である。

https://en.wikipedia.org/wiki/Quakers

https://ja.wikipedia.org/wiki/クエーカー

【参考】

人生を変える「沈黙」の時間とは? 普連土学園の教え

朝日新聞社 AERAdot.

矢野耕平(やの こうへい, b.1973)中学受験専門塾スタジオキャンパス代表・国語専科 博耕房代表署名コラム

2020年8月10日(月・祝)

https://dot.asahi.com/dot/2020080600059.html?page=1

https://dot.asahi.com/dot/2020080600059.html?page=2

https://dot.asahi.com/dot/2020080600059.html?page=3

https://news.yahoo.co.jp/articles/b3953a295d1b3d1b5b57c2bfb94f3884f7f5653f (リンク切れ)

小見出し1: 日本唯一のクエーカー系中高一貫校

小見出し2: 心の中の「泉」を思い浮かべる

小見出し3: 他者の声に耳を傾ける姿勢を培う

小見出し4: アイデンティティーを喪失しやすい時代の中で

讃美歌も説教もない「沈黙の礼拝」に込める教育理念 普連土学園中学校・高等学校(1)

ヤフーニュース個人

育児・教育ジャーナリスト ペンネーム「おおたとしまさ」こと、本名 太田敏正(おおた としまさ, b.1973)署名コラム

2020年12月10日(木)

https://news.yahoo.co.jp/byline/otatoshimasa/20201210-00211683/

小見出し1: キリスト教「フレンド派」では国内唯一の学校

小見出し2: ローマカトリックから最も遠い宗派

小見出し3: 自らの生き方をもって語りなさい

小見出し4: 都会のど真ん中にある隠れ家的学校

イングランドの宗教

Religion in England

https://en.wikipedia.org/wiki/Religion_in_England

連合王国の宗教

Religion in the United Kingdom

https://en.wikipedia.org/wiki/Religion_in_the_United_Kingdom

https://ja.wikipedia.org/wiki/イギリスの宗教

【参考】

教会堂(church)と礼拝堂(chapel)と大聖堂(cathedral)の違い

・教会堂(church)・・・登録信者(日本仏教で言う檀家、神道で言う氏子)を抱えるキリスト教の宗教施設のこと。

・礼拝堂(chapel)・・・登録信者の居ない施設のこと。大きな教会堂の中や、オクスブリヂ(Oxbridge)両大学の学寮(college)の中や、英国海軍(RN: Royal Navy)の軍艦の中にも存在する。

・大聖堂(cathedral)・・・ビショップ=bishop(カトリックで司教、イングランド教会及び聖公会で主教)という高位聖職者の座る椅子が置かれた教会堂のこと。したがってカトリックでは司教座聖堂と訳し、イングランド教会及び聖公会では主教座聖堂と訳す。要するにチャーチの中でも宗教組織上最重要なものが cathedral(シードろォ)である。カタカナ語の「カテドラル」はフランス語のcathédrale(カテドゥはッル)に由来する。

【参考】

和製英語「バージンロード」とは

英語で a virgin road / the virgin road / virgin roads / the virgin roads と言うと、「前人未到の道」という意味になってしまうため、教会堂(church)や礼拝堂(chapel)や大聖堂(cathedral)の真ん中の通路のことは単に aisle (アイル)と呼ぶ。つまり旅客機や新幹線などの座席の間の縦長の通路 aisle (アイル)と全く同じ単語である。ただ、どうしても乗り物の通路と区別したい場合にのみ、church aisle (教会の通路)や wedding aisle (結婚式の通路)と呼ぶことも可能である。

和製英語の「バージンロード」が広まった背景には、1994年11月に富永裕美(とみなが ひろみ, 生年非公開)の漫画『16バージンロード』第1巻が刊行されたこと、1997年1月6日(月)~3月17日(月)にフジテレビ系列でドラマ『バージンロード』が放映され、日本国内のブライダル業界がバージンロードという用語を使用するようになったという経緯がある。いかにも平成前期の1990年代的な現象である。

無宗教を標榜(ひょうぼう)する人々の間の3種類の立場

1つめは「神の存在は認めるが如何(いか)なる既成宗教にも与(くみ)しない」という立場である。これを表す英単語は今のところ存在しないが、それでも敢()えて英語で表現すると、one who believes in God but does not adhere to any organised religion または a believer in God without any adherence to organised religion または a believer in God with no adherence to organised religion となる。また、前者を複数形にすれば、those who believe in God but do not adhere to any organised religion となり、一人称単数(first person singular)の「私」で表現すると、I [do] believe in God but [I] don’t adhere to any organised religion. となる。角括弧内の do は強調の助動詞だが、これが無くても意味を為()す。

無宗教の2つ目は神の存在を肯定も否定もしない不可知論者(agnostic アグスティック)であり、3つめが神の存在を全否定する無神論者(atheist エイシ゜エスト)である。

不可知論(agnosticism)

無宗教であり、神の存在・不在は人智(じんち)では量(はか)れないとする立場。

以下は、Oxford Advanced Learner’s Dictionary(直訳『オクスフオッド上級学習者辞典』、邦題『オックスフォード現代英英辞典』)による agnostic(不可知論者)の定義:

・A person who believes that it is not possible to know whether God exists or not.

(和訳: Godが存在するか否かを知るのは不可能であると信じる人。)

以下は、無料英英辞典「ウィクショナリー」による agnosticism(不可知論)の定義。

https://en.wiktionary.org/wiki/agnosticism

https://ja.wikipedia.org/wiki/不可知論

1. The view that absolute truth or ultimate certainty is unattainable, especially regarding knowledge not based on experience or perceivable phenomena.

(和訳: 特に経験にも知覚可能な諸現象にも基(もと)づかない知識に関して、絶対的な心理や究極的な確信は到達不可能であるとする考え方。)

2. The view that the existence of God or of all deities is unknown, unknowable, unproven, or unprovable.

(和訳: Godまたはあらゆる神的なる者の存在は未知のものであり、知ることができないものであり、立証されておらず、立証不能であるとする考え方。)

3. Doubt, uncertainty, or scepticism regarding the existence of a god or gods.

(和訳: 単数の神または複数の神の存在についての疑い、確信のなさ、または懐疑心(かいぎしん)。)

[参考]

墺太利共和国首都ウィーンに居住する長谷川良(はせがわ りょう, 生年非公開)が国連記者室から書き送るブログ

ウィーン発 『コンフィデンシャル』(註: confidential とは「秘密の」「マル秘の」「㊙の」「極秘」の意味の英単語)

欧州社会で広がる「不可知論」

2010年2月2日(火) 6:00 JST

http://blog.livedoor.jp/wien2006/archives/51562244.html

無神論(atheism)

無宗教であり、神や絶対的な存在を完全否定する立場。自由民主党(Liberal Democrats; 通称 LibDem)の党首(2007-15年)で副首相(2010-15年)だったクレッグ(Nick Clegg, b.1967)氏や、最大野党労働党(Labour Party; 略称 Labour)の党首(2010-15年)だったミリバンド(Ed Miliband, b.1969)氏は自ら無神論者であることを公言している。

以下は、Oxford Advanced Learner’s Dictionary(直訳『オクスフオッド上級学習者辞典』、邦題『オックスフォード現代英英辞典』)による atheism(無神論)の定義:

・The belief that God does not exist.

(和訳: Godが存在しないという信念。)

以下は、無料英英辞典「ウィクショナリー」による atheism(無神論)の定義:

https://en.wiktionary.org/wiki/atheism

https://ja.wikipedia.org/wiki/無神論

1. (narrowly) Belief that no deities exist (sometimes including rejection of other religious beliefs).

(和訳: [狭義に] いかなる神的なる者も存在しないする信念であり、時には他の宗教的信仰の拒絶も含む。)

2. (broadly) Rejection of belief that any deities exist (with or without a belief that no deities exist).

(和訳: [広義に] 何らかの神的なる者が存在するという信念・信仰の拒絶であり、いかなる神的なる者も存在しないという信念を伴(とも)なうこともあるし、伴わないこともある。)

3. (very broadly) Absence of belief that any deities exist (including absence of the concept of deities).

(和訳: [非常に広義に] 何らかの神的なる者が存在するという信念・信仰の欠如(けつじょ)であり、神的なる者の概念の欠如を含む。)

4. (loosely, uncommon) Absence of belief in a particular deity, pantheon, or religious doctrine (notwithstanding belief in other deities).

(和訳: [緩(ゆる)く稀(まれ)に] 或()る特定の神的なる者や神話中の神々や宗教的教義の信念・信仰の欠如(けつじょ)であり、他の神的なる者を信じているにも拘(かか)わらずにである。)

無神論者の一覧(Lists of atheists)

https://ja.wikipedia.org/wiki/無神論者の一覧

https://en.wikipedia.org/wiki/Lists_of_atheists

バートランド・ラッセル

Bertrand Russell (1872-1970)

こと

第3代ラッセル伯爵バートランド・アーサー・ウィリアム・ラッセル

Bertrand Arthur William Russell, 3rd Earl Russell (1872-1970)

https://ja.wikipedia.org/wiki/バートランド・ラッセル

https://en.wikipedia.org/wiki/Bertrand_Russell

ラッセル[著] 『なぜ私はキリスト教徒ではないか』

Why I Am Not a Christian (1927)

https://en.wikipedia.org/wiki/Why_I_Am_Not_a_Christian

https://www.amazon.co.uk/product-reviews/0415325102/

https://www.youtube.com/watch?v=0F6J8o7AAe8

A Debate on the Existence of God: The Cosmological Argument -- F. C. Copleston vs. Bertrand Russell

(神の存在をめぐる討論: 宇宙論的証明—イエズス会士 F. C. コプルストン対バートランド・ラッセル)

Frederick Charles Copleston, SJ, CBE (1907-94) 宗教家

Bertrand Arthur William Russell, 3rd Earl Russell (1872-1970) 無神論者・世襲貴族

1948年1月28日(水)収録の英国放送協会(BBC: British Broadcasting Corporation)ラジオ討論番組

0:00-3:26 導入部

3:27 ディベート開始

https://www.youtube.com/watch?v=hXPdpEJk78E

「君はバートランド・ラッセルを知っているか」

内藤順(ないとう じゅん, b.1975)署名コラム

東洋経済オンライン

https://toyokeizai.net/articles/-/80514

https://toyokeizai.net/articles/-/80514?page=2

https://toyokeizai.net/articles/-/80514?page=3

https://toyokeizai.net/articles/-/80514?page=4

ドクシアディス(Apostolos Doxiadis)[他著] 『ロジ・コミックス: ラッセルとめぐる論理哲学入門』

https://www.amazon.co.jp/product-reviews/448084306X/

当時ザ・ビートルズ(The Beatles)のメンバーだった故ジョン・レノン(John Lennon, 1940-80)の1966年4月時点での発言

“Christianity will go. It will vanish and shrink. I needn’t argue about that. I’m right and will be proved right. We’re more popular than Jesus now. I don’t know which will go first—rock’n roll or Christianity. Jesus was all right, but his disciples were thick and ordinary. It’s them twisting it that ruins it for me.”

「キリスト教はなくなるさ。それは消えて縮みあがるだろう。それについて論じるまでもない。僕は正しいし、正しいと証明されるだろう。僕ら(=ビートルズ)は今ではイエス・キリストよりも人気がある。僕には分からないよ、どっちが先になくなってしまうのか、ロックンロールなのかキリスト教なのか。イエス・キリストはいいとしよう。でも彼の使徒たち(しとたち: キリストの弟子12名のこと)は愚鈍で平凡だったのさ。奴らこそそれ(=キリスト教)を捻()じ曲げてぶち壊したんだよ、僕にしてみればね。」

出典: Bob Spitz, The Beatles: The Biography (New York, NY & Boston, MA: Little, Brown & Company, 2005), p.615

註: 上記はロンドンの夕刊紙 イーヴニング・スタンダード紙(Evening Standard)の記者モーリーン・クリーヴ(Maureen Cleave, b.1941)女史による単独インタービューで飛び出した言葉であり、英国内では何ら反響がなかった。ところが同年(1966年)7月29日(金)に米国のティーン(13~19歳)向けの『デイトブック』誌(Datebook)に転載されると全米のキリスト教原理主義者たち(Christian fundamentalists)が合法・非合法を問わず厳重抗議と不買運動と脅迫行為を開始していたため、1966年8月11日(木)~29日(月)に敢行されたザ・ビートルズ(The Beatles)が四度目にして最後のアメリカ横断ツアー「マジカル・ミステリー・ツアー」(The Magical Mystery Tour)での米マスコミのインタビューは敵意や悪意に満ちたものとなった。

スティーヴン・ホーキング博士

Stephen Hawking (1942-2018)

理論物理学者、ケイムブリヂ大学教授、同大学理論的宇宙学センター元センター長。

https://ja.wikipedia.org/wiki/スティーヴン・ホーキング

https://en.wikipedia.org/wiki/Stephen_Hawking

「神は存在しない」 ホーキング博士、最後の著書出版

米CNN日本語版

2018年10月17日(水) 10:11 JST

https://www.cnn.co.jp/fringe/35127106.html

https://asahi.5ch.net/test/read.cgi/newsplus/1539786189/

https://asahi.5ch.net/test/read.cgi/newsplus/1539974143/

ロンドン(CNN) 「神は存在しない」――。今年3月に死去した天才宇宙物理学者、スティーブン・ホーキング氏。このほど出版された最後の著書「大きな疑問への簡潔な答え」で、そう結論付けていた。

ホーキング氏はALS(筋萎縮性側索硬化症)と闘いながら偉大な業績を残し、76歳で死去した。未完成だった最後の著書を遺族や同僚が完成させ、16日に出版した。

(改行・中略)

神については、「神は存在しない。宇宙を司る者はいない」と断言し、「何世紀もの間、私のような障害者は、神に与えられた災いの下で生きていると信じられていた」「だが私はそれよりも、全ては自然の法則によって説明できると考えたい」と記した。

(改行・後略)

ポール・ナース(Sir Paul Nurse, b.1949)博士

https://ja.wikipedia.org/wiki/ポール・ナース

https://en.wikipedia.org/wiki/Paul_Nurse

遺伝子学者、2001年ノーベル生理学・医学賞受賞者、王立協会元会長、フランシス・クリック研究所研究員。

同博士の言葉:

It was during my time at secondary school that I abandoned religion.

(私が宗教を捨て去ったのは、自分の中高時代のことだった。)

ベストセラーサイエンス作家が語る、これだけ「心を打たれた本」は初めてだ

ダイヤモンド・オンライン

サイエンス・ライター、翻訳者 竹内薫(たけうち かおる, b.1960)署名コラム

2021年3月6日(土)

https://diamond.jp/articles/-/264433

https://diamond.jp/articles/-/264433?page=2

https://diamond.jp/articles/-/264433?page=3

https://news.yahoo.co.jp/articles/bd79bb08187e2ffeaabfec0a468036c70fbe717c

https://news.yahoo.co.jp/articles/bd79bb08187e2ffeaabfec0a468036c70fbe717c?page=2

https://news.yahoo.co.jp/articles/bd79bb08187e2ffeaabfec0a468036c70fbe717c/comments

(前略・改行)

本書にもエピソードが登場するが、このころ、ポール・ナースは信心深いバプテスト派のキリスト教徒であることをやめてしまう。学校で進化論を学び、聖書の解釈に悩み、牧師に相談したけれど一蹴されたのだという。日本のような八百万の神=アニミズム、そこに仏教などが混在した多様な宗教風土と異なり、一神教の国では、科学を志す人間は、宗教を乗り越えて科学を「選ぶ」ことを迫られる。

(改行・後略)

時間がない人にも推奨、生命科学の歴史から最先端の知見まですんなりと入ってくる本とは?

ダイヤモンド・オンライン

東北大学副学長、同大学大学院教授 大隅典子(おおすみ のりこ, b.1960)署名コラム

2021年3月12日(金)

https://diamond.jp/articles/print/265159

https://news.yahoo.co.jp/articles/c704a51d4484f9434adf27895b2cc4002f82a927

https://news.yahoo.co.jp/articles/c704a51d4484f9434adf27895b2cc4002f82a927?page=2

https://news.yahoo.co.jp/articles/c704a51d4484f9434adf27895b2cc4002f82a927/comments

ノーベル生理学・医学賞を受賞した生物学者ポール・ナースの初の著書『WHAT IS LIFE?(ホワット・イズ・ライフ?)生命とは何か』が世界各国で話題沸騰となっており、いよいよ3月9日に日本でも発刊された。

ポール・ナースが、生物学について真剣に考え始めたきっかけは一羽の蝶だった。12歳か13歳のある春の日、ひらひらと庭の垣根を飛び越えた黄色い蝶の、複雑で、完璧に作られた姿を見て、著者は思った。生きているっていったいどういうことだろう? 生命って、なんなのだろう?

著者は旺盛な好奇心から生物の世界にのめり込み、生物学分野の最前線に立った。本書ではその経験をもとに、生物学の5つの重要な考え方をとりあげながら、生命の仕組みについての、はっきりとした見通しを、語りかけるようなやさしい文章で提示する。

(改行・後略)

リチャード・ドーキンズ博士(正しくはドーキンズだが、日本では誤ってドーキンス)

Richard Dawkins (b.1941)

動物行動学者・進化生物学者、無神論者、オクスフオッド大学新学寮(New College, Oxford)名誉教授。米カリフォルニア大学バークリー校(UC Berkeley)にも教員・研究員として在籍。

https://ja.wikipedia.org/wiki/リチャード・ドーキンス

https://en.wikipedia.org/wiki/Richard_Dawkins

理性と科学のためのリチャード・ドーキンズ財団公式ウェブサイト

Richard Dawkins Foundation for Reason & Science

https://richarddawkins.net/

ユーチューブ上の動画

https://www.youtube.com/watch?v=IwcIq42WpjI

ドーキンス[著] 『神は妄想である 宗教との決別』(原題は『神という妄想』)

The God Delusion (2006)

https://ja.wikipedia.org/wiki/神は妄想である

https://en.wikipedia.org/wiki/The_God_Delusion

https://www.amazon.co.jp/神は妄想である―宗教との決別-リチャード・ドーキンス/dp/4152088265/

https://www.amazon.co.uk/God-Delusion-Richard-Dawkins/dp/055277331X/

https://www.amazon.com/God-Delusion-Richard-Dawkins/dp/0618918248/

ドーキンズは『神は妄想である』(2006年)の52ページ(版によっては31ページや51ページ、垂水雄二(たるみ ゆうじ, b.1942)氏による2007年刊行の邦訳では51ページ)にこう書いている。

[原文] The God of the Old Testament is arguably the most unpleasant character in all fiction: jealous and proud of it; a petty, unjust, unforgiving control-freak; a vindictive, bloodthirsty ethnic cleanser; a misogynistic, homophobic, racist, infanticidal, genocidal, filicidal, pestilential, megalomaniacal, sadomasochistic, capriciously malevolent bully. (p.52 or p.31 or p.51 in other editions)

[和訳] 『旧約聖書』の神は、おそらくまちがいなく、あらゆるフィクションのなかでもっとも不愉快な登場人物である。嫉妬深くて、そのことを自慢にしている。けちくさく、不当で、容赦のない支配魔。執念深く、血に飢え、民族浄化をおこなった人間。女嫌い、ホモ嫌い、人種差別主義者、幼児殺し、大虐殺(ジェノサイ ド)者、実子殺し、悪疫を引き起こし、誇大妄想で、サドマゾ趣味で、気まぐれな悪さをするいじめっ子だ。(垂水雄二訳, p.51)

【引用文】

https://dwindlinginunbelief.blogspot.jp/2008/12/richard-dawkins-god-of-old-testament.html

https://en.wikiquote.org/wiki/Richard_Dawkins#The_God_Delusion_.282006.29

【ドーキンズ自身による自著朗読動画】

https://www.youtube.com/watch?v=ovWs8JQN7FE (2006年10月23日(月))

https://www.youtube.com/watch?v=UA3OqrNnezc (0:13以降)

ドーキンズ自身が語りかける形式で2006年1月に英民放第四チャンネル(Channel Four)で放映されたTVドキュメンタリー映画 『神は妄想である』(The God Delusion, 2006)1時間33分41秒

https://www.youtube.com/watch?v=9FiHRVb_uE0 (リンク切れ)

https://www.youtube.com/watch?v=uQ7GvwUsJ7w

アマゾン提供の動画(ドーキンズが自著について語る)

https://www.amazon.com/God-Delusion-Richard-Dawkins/dp/0618918248/

上記動画(アマゾンによって削除される)の語り

The God Delusion is an advocacy of the belief that there is no God, that there are no gods. I think it’s a very important and interesting question, because the great majority of people on this planet do believe that there is some kind of supreme being, very differently in different parts of the world. But I think it is a mistake. I think that it is an impoverished view of the world, but it’s a very exciting question. Historically it’s always been very important to people that their belief in some kind of supreme being. It’s not a dull question. It’s not an unimportant question. And I give in the book the argument, I find it’s rather a strong argument, that there is no supernatural supreme being and that a belief in such a being can under a certain circumstance be rather a bad thing.

拙著 『神は妄想である』は、神はいないという信念、神々はいないという信念を擁護(ようご)します。私はそれが非常に重要で興味深い問題だと思います。というのも、この惑星(=地球)の大多数の人が何か人智を超えた存在がいると、世界中で様々な異なる方法で信じているからです。しかし私はそれが間違いだと考えます。私はそれが貧困に陥(おちい)った世界観だと思います。しかしそれは非常に人をわくわくさせる問題です。歴史的に見て人々にとって非常に重要だったのは、何らかの人智を超えた存在がいると信じることでした。それは退屈な問題ではありません。重要性のない問題でもありません。そして私はこの著書の中に議論を注入しました。いくぶん断固とした議論でして、超自然的な人智を超えた存在はいないということ、そしてそのような存在を信じていると、或()る特定の状況下では良からぬことになるという議論です。

One of the central points I make in the book is that the existence of God is a scientific question, because there are people who say it’s nothing to do with science, quite separate from science. I think it’s a scientific question, because the universe with a God would be an entirely different kind of universe from one without a God. If you think about it, universe without a God starts from essentially nothing and builds up to the sort of complexity we see at least on this planet by gradual degrees which we now understand reasonably well. The alternative view that there’s a God who designed the universe is shatteringly different, because on that view there is an intelligence, there’s complexity, there’s design right from the start. On my view, on the atheistic view, design, intelligence, complexity are all things that come late in the universe as a consequence of slow and gradual process of evolution.

私が著書の中で主張している主眼点のひとつは、神の存在は科学的問題だということです。というのも、それは科学とは無関係だ、科学からは全く別物だ言っている人たちがいるからです。私はそれが科学的問題だと考えます。というのも、神のいる天地万物(ユニヴァース)は、神のいない天地万物とは全く違った種類の天地万物だからです。それについて考えれば、神のいない天地万物は本質的に無から始まり、今では私たちがかなり良く理解している段階を辿(たど)って、少なくともこの惑星(=地球)で私たちが見ているような種類の複雑性にまで積み重なっていく。これとは二者択一で別の見方、つまり天地万物を創造した神がいるとする見方は衝撃的なまでに異なります。というのも、そうした見方では、まさに最初から知性があり、複雑性があり、デザイン(=意匠、意図)があるということになります。私の見方、つまり無神論的な見方では、 知性や複雑性はどれもゆっくりとした段階的な進化の過程の結果として天地万物に遅れて入ってきたものなのです。

It is a preposterous suggestion that I sometimes need, frequently need, that we somehow need religion in order to be moral. If you think about that, there are only two ways in which religion, I think, would feed into morality. One way is that Holy Books could tell us what to do. And I hope that anybody who’s read either The Old Testament or The Qurʼan will never say that because it would be quite appalling if we follow The Old Testament or The Qurʼan in developing our morality. That’s one way. The other way is that we are moral because we are frightened of God, we are moral because we want to go to heaven, we want to please God, we want to avoid going to hell. And that again is a pretty ignoble reason for being good. If I’m good despite the fact that I don’t believe in God, then isn’t that a more noble reason for being good than somebody who is good only because they are frightened of being punished by God?

私たちが道徳的であるためには、私はときどき必要、頻繁に必要(言い間違え)、私たちはどういうわけか宗教が必要だと示唆(しさ)するのは、本末転倒なことです。そのことについて考えるなら、宗教が道徳に入り込むには二つの方法と私には思われますが、それしかありません。一つめは聖なる教典が私たちにすべきことを教えてくれるというものです。そして『旧約聖書』や『クルアーン』(=通称『コーラン』)を読んだことのある人には決してそんなことは言ってほしくありません。というのも、 『旧約聖書』や『クルアーン』に従って私たちの道徳観を養(やしな)うとすれば、かなりぞっとするようなことになります。それが一つめです。 もう一つの方法は私たちが神を恐れるから道徳的になる、天国に行きたいから道徳的になる、神を喜ばせたいから、地獄に行くのを避けたいから道徳的になるという方法です。そしてそれもまた、善良であろうとする理由としては、かなりさもしいものです。もし私が神の存在を信じないにも拘(かか)わらず善良であるなら、それは善良であることの理由として、より高貴な理由になりはしませんか。神に罰せられるのを恐れているからという理由でのみ善良でいる人よりもね。(英文書き取り・日本語訳: 原田俊明)

【参考1】

ドーキンズの言う「気まぐれな悪さをするいじめっ子」(capriciously malevolent bully)としての神(God)については、

中村圭志コラム「聖書の神の道徳性を診断する エリザベス・アンダーソンの診断」より抜粋

https://sites.google.com/site/xapaga/home/nakamuracolumn2019

を参照されたし。

【参考2】

ドーキンズの言う「気まぐれな悪さをするいじめっ子」(capriciously malevolent bully)としての神(God)を扱ったベルギー・フランス・ルクセンブルク合作のドタバタ喜劇映画に、ベルギー王国フランス語圏のヴァン・ドルマル(Jaco Van Dormael, b.1957)監督による 『神様メール』 (仏原題 Le Tout Nouveau Testament; 英題 The Brand New Testament; 独題 Das brandneue Testament; 直訳 『新新約聖書』; 中文題 《死期大公開》, 2015年)があるが、ドーキンズの著書 『神は妄想である』(2006年)から直接影響を受けたか否かは不明。日本では 『神様メール』 の邦題で、2016年4月12日(火)、フランス政府の文化宣伝機関であるアンスティチュ・フランセ東京エスパス・イマージュ(« Espace Image » de l’Institut français du Japon - Tokyo)に於ける来日中のヴァン・ドルマル監督舞台挨拶付き試写会を皮切りに、2016年5月27日(金)からTOHOシネマズ シャンテ他で全国公開された。

https://www.amazon.co.jp/神様メール-DVD-ピリ・グロワーヌ/dp/B01JLR67CM

https://www.amazon.co.uk/product-reviews/B01FIB7M5Q/

https://ticketcamp.net/kamisama-mail-tickets/

https://www.france-jp.net/02info/06cinema/249.html

https://www.institutfrancais.jp/tokyo/events-manager/cinema1605251830/

https://coco.to/movie/40508/all/200

https://en.wikipedia.org/wiki/The_Brand_New_Testament

DEBATE: Atheist vs Christian (Richard Dawkins vs Cardinal George Pell)

(討論: 無神論者対キリスト教徒—リチャード・ドーキンズ対ジョージ・ペル豪州カトリック教会枢機卿)

豪州放送協会(ABC: Australian Broadcasting Corporation)のテレビ番組 Q&A

2013年放映

Richard Dawkins (b.1941) 無神論者・進化論者

Cardinal George Pell (b.1941) 宗教家

https://www.youtube.com/watch?v=y8hy8NxZvFY

の中でもドーキンズが上記の道徳論を展開

Richard Dawkins Vs Rowan Williams Debate

(リチャード・ドーキンズ対ローワン・ウィリアムズ主教の討論)

Nature of Human Beings and the Question of Their Ultimate Origin

(人間の性質とその究極の起源の問題)

at Sheldonian Theatre, ‘Sophia Europa’ (Theology Faculty), University of Oxford on Thursday 23rd February 2012

(2012年2月23日(木)、オクスフオッド大学神学部「叡智欧州(ソフィア・エウローパ)」のシェルドーニアン講堂教室で収録)

Richard Dawkins (b.1941) 無神論者・進化論者

Rowan Douglas Williams, Baron Williams of Oystermouth (b.1950) 宗教家・貴族

Sir Anthony Kenny (b.1931) 司会者・不可知論者

https://www.youtube.com/watch?v=bow4nnh1Wv0 (長尺版)

https://www.youtube.com/watch?v=gVwnI2u9fuM (短縮版)

ドーキンズの論敵

アリスター・マグラス博士(日本では誤ってマクグラス)

Alister McGrath (b.1953)

オクスフオッド大学で化学と分子生物学・生物物理学を修めるが神学に転じ、同大学歴史神学教授を経て、現在はロンドン大学教授。元来は無神論者だったが信仰に目覚め、現在ではイングランド教会の司祭も兼務。

https://ja.wikipedia.org/wiki/アリスター・マクグラス

https://en.wikipedia.org/wiki/Alister_McGrath

マグラス教授の論点の要約

Studies in Doctrine: Understanding Doctrine, Understanding the Trinity, Understanding Jesus, Justification by Faith (1997)

直訳 『教義の研究 教義の理解、聖三位一体の理解、イエス・キリストの理解、信仰による正当化』(1997年)

https://books.google.co.jp/books?id=uNYn17UbMVEC&pg=PA131&q=atheism&redir_esc=y#v=snippet&q=atheism&f=false

Atheism is, in fact, no more scientific than Christian faith, despite the attempts of atheists to convince us otherwise. Both atheism and Christianity are, then, matters of faith — whereas agnosticism is just a matter of indifference.

無神論とは実際のところ、科学的というよりもむしろキリスト教の信仰になってしまっている。無神論者がそうではないと我々に信じ込ませようと企(くわだ)てているにも拘(かか)わらずである。そうなると、無神論もキリスト教も信仰の問題なのであり、他方、不可知論は単に無関心の問題なのである。

ユーチューブ上の動画

https://www.youtube.com/watch?v=tKXk-VeCaGY

マクグラス[著] 『神は妄想か? 無神論原理主義とドーキンスによる神の否定』

The Dawkins Delusion? ―Atheist Fundamentalism and the Denial of the Divine (2007)

https://en.wikipedia.org/wiki/The_Dawkins_Delusion?

https://www.amazon.co.jp/神は妄想か-―無神論原理主義とドーキンスによる神の否定-A-E-マクグラス/dp/4764266954/

https://www.amazon.co.uk/Dawkins-Delusion-Atheist-Fundamentalism-Denial/dp/0281059276/

https://www.amazon.com/Dawkins-Delusion-Atheist-Fundamentalism-Denial/dp/083083446X/

https://www.amazon.com/Dawkins-Delusion-Atheist-Fundamentalism-Denial/dp/0281059276/

【ドーキンズの言動に対するフェミニストからの批判】

無神論者になった私が、フェミニストとして居心地が悪い理由

Wezzy (ウェジー)

北村紗衣(きたむら さえ, b.1983)武蔵大学准教授・博士(ロンドン大学国王学寮)署名コラム

2018年4月17日(火)

https://wezz-y.com/archives/53921

https://wezz-y.com/archives/53921/2

小見出し1: 信仰とフェミニズム

小見出し2: 新しい無神論の男性中心的な文化

小見出し3: フェミニストは何を信じればいいのか

【参考記事】

無神論者は疑われやすい、同じ無神論者ですら偏見 研究

フランス通信社(AFP: Agence France-Presse)日本語版

2017年8月8日(火) 10:31

https://www.afpbb.com/articles/-/3138491?act=all

https://asahi.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1502173431/

【8月8日 AFP】無神論者は、キリスト教やイスラム教、ヒンズー教、仏教などを信仰する人々よりも悪行に対する嫌疑をかけられやすいとする一風変わった社会調査の結果が7日、発表された。

英科学誌「ネイチャー・ヒューマン・ビヘイビア(Nature Human Behaviour)」に掲載された論文によると、この研究では、世界5大陸13か国の3000人以上を対象に意識調査を実施。

(改行・後略)

Nature Human Behaviour に載ったオリジナル記事

https://www.nature.com/articles/s41562-017-0157

ユダヤ・キリスト・イスラムの一神教的な世界観や、そこから派生した無神論を批判する日本の宗教学者・多神教優越主義者

山折哲雄(やまおり てつお, b.1931)

https://ja.wikipedia.org/wiki/山折哲雄#.E5.AE.97.E6.95.99.E8.A6.B3

国際日本文化研究センター(米称 International Research Center for Japanese Studies)元所長・名誉教授、総合研究大学院大学(英称 Graduate University for Advanced Studies)名誉教授。

熱烈な多神教優越主義者であり、一神教を砂漠の宗教として、自然豊かな環境で生まれた多神教と対比させ、後者の前者に対する寛容性と優越性を強く主張している。(ウィキペディア日本語版の記述より、太字はxapagaによる)

【上記の山折氏への反論】

統計調査を基に考察、「日本人は多神教だから寛容」通説は本当なのか

東洋経済

国際基督教大学(ICU: International Christian University)教授、牧師・神学者 森本あんり(もりもと あんり, b.1956) 名前とは裏腹に男性。

2021年2月8日(月)

https://toyokeizai.net/articles/-/409378

https://toyokeizai.net/articles/-/409378?page=2

https://toyokeizai.net/articles/-/409378?page=3

https://news.yahoo.co.jp/articles/05d71a85187c48c6dbd00033a20ea293a469d14d

https://news.yahoo.co.jp/articles/05d71a85187c48c6dbd00033a20ea293a469d14d?page=2

https://news.yahoo.co.jp/articles/05d71a85187c48c6dbd00033a20ea293a469d14d?page=3

https://news.yahoo.co.jp/articles/05d71a85187c48c6dbd00033a20ea293a469d14d/comments

【人類を目覚めさせる】ツァイトガイスト動画まとめ

2007年公開のアメリカの自主制作映画 『ツァイトガイスト』(Zeitgeist, 2007)

https://matome.naver.jp/odai/2149456597853099201

https://ja.wikipedia.org/wiki/ツァイトガイスト_(映画)#第一部

https://www.youtube.com/watch?v=4Ezj5gHN2Tg

題名のツァイトガイスト(Zeitgeist)は、ドイツ語で「時代精神」の意味だが、英米人の多くは正しく発音できず、「ザイトガイスト」と読んでしまう。

第一部

キリスト神話説に基づき、イエス・キリストは周辺地域にある神話や伝説から創作された存在であるとする。

冒頭によれば後代に政治、教育、銀行カルテルを作り出したのと同じ勢力によってなされた。イエスと大きな共通点を持つ神話としてホルス、アッティス、クリシュナ、ディオニューソス、ミスラをあげる。

イエスだけでなく『旧約聖書』も他神話からの盗用がなされているとする。モーセの出生はサルゴン王のそれからの流用であり、モーセが律法を授けられたという事跡も、インドのマヌ(『マヌ法典』)といった他宗教の神話と同様のものであり、十戒の文面もまたエジプトの『死者の書』にある125番目の呪文から盗んだものとする。

キリスト教信仰ではイエスの予形とされるヨセフのエピソードも、盗用元とみなす。イエスが歴史的に実在した根拠は皆無とした後、キリスト教の教義はニケア公会議上で捏造されたと述べる。この背後にあったのは政治的な目的に過ぎなかったとする。

キリスト教会が歴史上で犯してきた過ちを強調し、人間にとって有害であると説いて第一部は終了する。

宗教をめぐって様々な立場の人々がテレビで白熱した討論を展開

2007年9月9日(日)放送開始、英国放送協会(BBC: British Broadcasting Corporation)第一チャンネル(BBC One)で信仰と倫理(faith and ethics)の問題のみを扱う

人気討論番組 The Big Questions (直訳: 「大問題」)の例1

前半

‘Should unfit parents be stopped from having more babies?’

「(子供を持つ)資格が無いような親にこれ以上子供を持たせるべきではないのだろうか」

後半

‘Is Britain still a Christian country?’

「英国は今でもキリスト教国か」

2008年12月28日(日)放映

https://www.youtube.com/watch?v=IYd6k7peIwU

論客の一人として上記のドーキンズ博士登場。

上記の討論番組の例2

‘Is there any evidence for God?’

「神が存在する証拠はあるのか」

2012年1月15日(日)放映

https://www.youtube.com/watch?v=pBInzDv3zE0

Taking part are the priest and particle physicist, Dr Andrew Pinsent The Times columnist, David Aaronovitch the Muslim thinker, Adam Deen leading atheist scientist, Professor Peter Atkins bible scholar, Francesca Stavrakopoulou author, Charles Foster Patsy McKie, founder of Mothers Against Violence and the former Triad gangster turned Methodist Minister, Kim Goh.

上記の討論番組の例3

‘Is there a difference between a religion and a cult?’

「宗教とカルトに違いはあるのか」

2012年5月20日(日)放映

https://www.youtube.com/watch?v=Spe9JbmDOms

上記の討論番組の例4

‘Should Britain become a secular state?’

「英国は世俗国家になるべきか」

2013年3月24日(日)放映

https://www.bbc.co.uk/religion/0/21883918 (リンク切れ)

https://www.youtube.com/watch?v=EE-4wy8vsiQ

Nicky Campbell presents a pre-recorded edition of the programme from Manor CoE School in York asking just one question - should Britain become a secular state? Among those taking part are philosopher AC Grayling, former Bishop of Rochester Rt Rev Dr Michael Nazir-Ali, Prof the Baroness Afshar from York University, Symon Hill from Ekkelsia, Rabbi Jonathan Romain from Maidenhead Synagogue, Naomi Philips from Labour Humanists, writer and academic Myriam Francois Cerrah, Gita Sahgal from Centre for Secular Space, Pastor Mark Mullins from Strangers' Rest Mission and Dr Audra Mitchell from York University.

1:23-2:03

Nicky Campbell:

The last Census shows how religious belief has changed in Britain. Despite a growing population, there are 4 million fewer Christians now than ten years ago, making up only 59 per cent of the population in England and Wales. And a quarter now say they have no religion at all. The fastest growing religious belief is Islam, which is risen by 75 per cent to form 5 per cent of the population. It’s estimated that by 2018 Christians could be in a minority. And currently the Church of England can only lay claim to four in ten. Has the time come for Britain to become a secular state?

司会者キャンベル(Nicky Campbell, b.1961)氏の言葉

最新の国勢調査が英国に於()ける宗教信仰の変化の様子を示しています。人口は増えているのに、10年前(の調査)と比べてキリスト教徒の数が四百万人も減って、イングランド&ウェールズの総人口の僅(わず)か59%を構成しているに過ぎません。そして今や四分の一(=約25%)は無宗教と答えています。最も急成長している宗教はイスラム教で、(過去10年間で)75%の伸びを示し、英国の総人口の5%を占めています。2018年にはキリスト教徒が少数派に転じるのではないかと推測されています。そしてイングランド教会は10人中4人(=約 40%)しか信者を獲得できていません。英国が世俗国家になるべき時が来たのでしょうか。

上記の討論番組の例5

‘Are religions unfair to women?’

「宗教は女性に不公正(アンフェア)か」

2013年5月5日(日)放映

https://www.youtube.com/watch?v=aPwsPf6vpxw

Taking part are: Francesca Stavrakopoulou, Professor of Hebrew Bible and Ancient Religion at the University of Exeter; Cole Moreton, author of Is God Still an Englishman?; Christina Rees, who sits on The Archbishops’ Council of the Church of England; the theologian Vicky Beeching; the feminist Kate Smurthwaite; Liz Weston from Christ Church, Southampton; Sarah de Nordwall from Catholic Voices; Eunice Olumide, a convert to Islam; Rania Hafez from Muslim Women in Education; Rabbi Shmuel Arkush, Director of Lubavitch in the Midlands; and Bharti Tailor, President of the Hindu Forum for Europe.

上記の討論番組の例6

‘Does freedom of speech give the right to offend?’

「言論の自由は人を不快にする権利を与えるのか」

2015年1月11日(日)放映

https://www.youtube.com/watch?v=sfnNtmGhuNc

Among those taking part in the debates are: Rev Rose Hudson-Wilkin, chaplain to the speaker of the House of Commons; Rabbi Dr Jonathan Romain from Maidenhead Synagogue; Julian Huppert MP; Raza Nadim from MPAC UK; Dan Hodges, Daily Telegraph columnist; Douglas Murray from The Spectator; Pavan Dhaliwal from the British Humanist Association; the feminist writer Kate Smurthwaite; Richard Garside, director, Centre for Crime & Justice Studies; Roz Hardie, CEO of Object; and Taiwo Ade, founder of Discuss Jesus.

上記の討論番組の例7

‘Does evidence undermine religion?’ / ‘Is evidence undermining religion?’

「証拠の存在が宗教を弱めているか」

2015年1月18日(日)放映

https://www.youtube.com/watch?v=B8vaGe_P20g

Nicky Campbell presides over a special debate asking just one big question - does evidence undermine religion? Taking part in the debate are: evolutionary biologist Adam Rutherford, Biblical scholar professor Francesca Stavrakapolou, Rabbi Miriam Berger from the Finchley Reform Synagogue, author Robert Feather, Hamza Tzortzis from iERA, Visnu Murti Das from the Hare Krishna Temple, philosopher Dr Arif Ahmed, Lola Tinubu from London Black Atheists, professor Joan Taylor from King’s College, philosopher Dr Peter Cave and Dr Radisa Antic from the Seventh Day Adventist Research Centre. Recorded at The Harris Academy Peckham, London.

上記の討論番組の例8

‘Is God the problem (for mankind)?’

「神は(人類にとって)問題か」

2015年5月31日(日)放映

https://www.youtube.com/watch?v=yRQp2KqiSRw

Hosted by Nicky Campbell.

上記の討論番組の例9

‘Did man create God?’

「人間が神を創造したのか」

2016年5月29日(日)放映

https://www.youtube.com/watch?v=258cesWsu38

Hosted by Nicky Campbell.

なお、テレビ朝日の討論番組「朝まで生テレビ!」(1987年4月26日(日)放送開始)のように政治的な問題を扱う討論番組に、1979年9月25日(火)放送開始の英国放送協会(BBC: British Broadcasting Corporation)第一チャンネル(BBC One)による Question Time (直訳「質問時間」)がある。

米国の場合

米国で無宗教が増加、5人に1人 若者では3割超す

https://www.cnn.co.jp/fringe/35022852.html

米、プロテスタントが半数割れ 史上初、無宗派増え2割に

https://www.47news.jp/CN/201210/CN2012100901001671.html (リンク切れ)

日本人の宗教観が理解できないアメリカ人あるある

だいじろー Daijiro

2020年5月5日(火・祝)

https://www.youtube.com/watch?v=1kzbBJPkPSo

外国人が話す日本語のものまね6選

だいじろー Daijiro

2020年8月20日(木)

https://www.youtube.com/watch?v=51__B5u4FzU

「ぼくはそういうアメリカの偽善がいやでした」50年前に“トランプ登場”を予想した男がアメリカ人をやめた理由

著者は語る 『ぼくがアメリカ人をやめたワケ』

文春オンライン

『週刊文春』2020年12月24日(木)号掲載

翻訳家、東京工業大学元教授 ロジャー・パルバース(Roger Pulvers, b.1944)

国際ジャーナリスト 大野和基(おおの かずもと, b.1955)編

2020年12月21日(月)

https://bunshun.jp/articles/-/42336

https://news.yahoo.co.jp/articles/e50726f3c014d647effec8f856161f583bd0fa3a

https://news.yahoo.co.jp/articles/e50726f3c014d647effec8f856161f583bd0fa3a/comments

(前略・改行)

「アメリカは神政政治に近い国です。戦前日本には国家神道がありましたが、それに近いです。それがすごくいやでした。初めて日本の土を踏んだのは昭和42年ですが、その日から日本人はほとんどの人が無宗教だと思いました。その精神の自由を初めて感じたのは日本に来てからです」

(改行・中略・改行)

「トランプが消えてバイデンが大統領になるとアメリカはよくなると勘違いしている人が多いですが、裏に潜んでいるのはアメリカ的原理主義です。神様の慈悲というと美しく聞こえますが、実際は残酷な思想が底流にあります。オバマやバイデンも基本的にはレトリックが違うだけで内容はそれほど変わりません」

ユダヤ系フランス人の歴史人口学者・家族人類学者エマニュエル・トッド(Emmanuel Todd, b.1951)博士の見方

キリスト教崩壊の第一段階は十八世紀(1701-1800年)前半の1730-40年であり、カトリシズム(Catholicism)の約半分が崩壊した。その中心はフランスのパリ盆地だった。パリ盆地とは非常に広い地域を指し、パリを中心としたフランス中央である。その他にはスペイン南部やイタリア南部などでカトリシズムの集団的な信仰が消えた。この歴史的地殻変動は、思想信条の自由を説いたフランスの無神論思想家ヴォルテール(Voltaire, 1694-1778)こと、本名フランソワ=マリ・アルーエ(François-Marie Arouet, 1694-1778)ら啓蒙思想家の教会批判が成した業(わざ)ではない。ヴォルテールらの言説こそ、キリスト教崩壊の反映だったのだ。しかし欧州の他の地域では依然としてカトリシズムが生きていた。プロテスタンティズム(Protestantism)も相変わらず健在だった。フランスのパリ盆地を中心とする広い地域でカトリシズムが崩壊したが、それから半世紀ほど経った1789年にフランス革命が起きている。フランス革命はカトリック的価値観である天国へのアクセスという死後の救済に際して堅持されていた普遍主義を地上世界(現世)に転位し、世俗化した革命だった。

キリスト教崩壊の第二段階は十九世紀(1801-1900年)末から二十世紀(1901-2000年)初頭にかけて、具体的には1870年から1930年の間である。プロテスタンティズム地域の全体、つまりイギリス、ドイツ、スカンディナビア半島(北欧)全域で集団的現象としての信仰が同時崩壊した。十九世紀ドイツの哲学者ニーチェ(Friedrich Nietzsche, 1844-1900)の言う「神は死んだ」(独 „Gott ist tot.“ ; 仏 « Dieu est mort. » ; 英 “God is dead.”)が想起される。第二次世界大戦(the Second World War; World War II, 1939-45)後の欧州で宗教が強い影響力を維持したのはベルギーの大半、オランダ南部、ドイツ西部のラインラント地方と南部のバイエルン州、その隣の墺太利(オーストリア)、フランスの周縁部諸地方、スペイン北部のバスク地方やガリシア地方、アイルランドなどカトリシズムの残っていた地方だった。欧州のアルプス以北全域でプロテスタンティズムが崩壊した後に何が起こったかというと、各国でイデオロギー(希 ιδεολογία = ideología イデオロギー; 羅 ideologia イデオロギア; 独 Ideologie イデオロギー; 仏 idéologie イデオロジ; 英 ideology アイディロジー: 「観念形態」の意)が硬直化・過激化した。キリスト教崩壊の第一段階と第二段階から抽出できる法則は、宗教が衰退して、消滅と言ってもいいような状態になると、そこでイデオロギーの危機が始まり、新しいイデオロギーが勃興(ぼっこう)してくるということである。「危機」を表す西欧語(希 κρίση = krísi りー; 羅 crisis クりシス; 仏 crise ひー; 独 Krise りー; 英 crisis らイシス)の本来の意味は「転機」だが、その意味で新しいイデオロギーが急激に力を増す。西洋列強にナショナリズム(nationalism)の時代が訪れた。典型的な例はドイツで、1930年代初頭にナチズム(Nazism)が格段の勢いで擡頭(たいとう)した地域はルター派のプロテスタンティズムが崩壊した地方だった。国家社会主義ドイツ労働者党(独 NSDAP: Nationalsozialistische Deutsche Arbeiterpartei; 英訳 National Socialist German Workers’ Party)、蔑称(べっしょう)「ナーツィース」(Nazis)、日本語で「ナチス」が政権を掌握したのは1933年1月のことだが、その前年の1932年の選挙でヒトラー(Adolf Hitler, 1889-1945; 首相在任1933-45; 総統在任1934-45)に大きな支持を与えた地域は、殆(ほとん)どが元来はルター派のプロテスタンティズムの地盤だった地域であり、その少し前に宗教の権威が薄れてしまった土地柄だった。集団的な信仰としての宗教という現象が消失して暫(しばら)くすると大きな危機が到来し、極端なイデオロギーが生まれてくる。そのイデオロギーはもはや宗教ではなく、世俗的(secular)なもの、屡々(しばしば)国粋主義的(ultra-nationalistic or jingoistic)なものだが、巨大な集団を動かす力を持つ。この現象はその時々の経済的状況と無関係に起こるが、確かに1930年代初頭のドイツは世界史上最も悲惨な経済危機を経験していて、失業率も非常に高かった。そうしたことは歴史の本にたくさん書かれている。しかしながら、ナチス擡頭(たいとう)の少し前にルター派のプロテスタンティズムが崩壊していた事実に着目する教科書はまず無い。この側面は注目すべきことであり、経済的な危機と宗教的な空白の重なる時こそ非常に危ない。

キリスト教崩壊の第三段階は、第二次世界大戦(the Second World War; World War II, 1939-45)の終戦から暫(しばら)くしてから、1960年代から1990年頃にかけて、或(ある)いは2000年頃にかけて、欧州全域でカトリシズムの残っていた地域、フランスに於()いては、北西部のブルターニュ半島、中央山岳地帯、南東部のアルプス地方などの周縁的各地が相当する。これらの地域で教会に行ってミサに出席したり、司祭(priest)になるというカトリシズムの実践が崩壊した。同様にベルギーでもオランダ南部でも、ドイツ南部のバイエルン州でも、スペイン北部でも宗教の崩壊が起こった。若干遅れてアイルランド、続いてポーランドでもカトリシズムの熱が冷めた。冷戦(Cold War, 1945-89)中のポーランドでは共産主義(communism)に対抗するための背骨(backbone)としてのカトリシズムが強かったが、1989年末に欧州の共産主義イデオロギーが消滅してしまったため、カトリシズムへの熱も消えてしまった。

フランスでは集団の組織的な実践という意味での宗教は今や完全になくなり、二十一世紀(2001-2010年)初頭から宗教の影響力の薄れた社会になった。これは歴史上初めての事態である。カトリシズムの信仰を失ったフランス周縁部は、社会のヒエラルキー(希 ιεραρχία = ierarchía イエらるヒー; 羅 hierarchia ヒェらるキア; 独 Hierarchie ヒエラァヒー; 仏 hiérarchie イェらスィ; 英 hierarchy ハイァらーキィ: 「位階制」の意)を自発的に受け入れやすい体質があり、労働の規律を守り、社会の不平等を甘受(かんじゅ)する点で、現代のグローバリゼーション(globalisation; globalization)にうまく適応し、教育水準が高く、失業率も相対的に低く、結果に於()いて成功している。

第二次世界大戦(the Second World War; World War II, 1939-45)後のフランスは、宗教的な側面から見た場合、基本的に安定した時期だった。戦後も暫(しばら)くはフランスの周縁部では相変わらずカトリシズムが強く、それに対してパリ盆地に代表されるフランス中央にはライシテ(laïcité: 「世俗性・非宗教性・政教分離の原則」の意)に則(のっと)った地域が拡がっていた。これら二つの性格の異なる地域は対立的であると同時に補完的でもあった。フランス中央の多くの人々は宗教を信じず、形而上学的(metaphysical)な展望を持っていなかった。「フランス周縁部で強い影響力を保持したカトリック教会の無知蒙昧(むち もうまい: extraordinary lack of knowledge)から自分たちは自由なのだ」「教会に服従しているあのバカな連中と自分は違うんだ」という優越感・満足感を抱いていた。カトリック勢力の弱い地域はフランス共産党が力を持ち、カトリックの強い地域に共産党は入っていけなかった。フランスの二つの勢力は対立したが、全体としては補完的な関係にあり、長い間継続的にバランスが保たれていた。両者合わせてこそ「フランス」だった。

しかしながら、カトリシズムが1960年代から1990年頃にかけて、或(ある)いは2000年頃にかけて、崩壊して以来、フランスでは共産党も一緒に崩壊した。対抗する相手を失って困ってしまったかのように共産主義も共(とも)倒れしたのだった。逆に現在のフランス社会党は、伝統的にカトリシズムの地盤で、頑固で保守的だった地域、カトリシズムの信仰を集団的に失った地域で勢力を伸ばした。

今日(こんにち)のフランスでは会話の中で唐突に「自分はアテー(athée: フランス語で「無神論者」の意)だ。」とアピールする現象が起きている。それは恰(あたか)も1789年のフランス革命の初期段階で宗教的迷信から脱却した人たちが誇らしく「神はいない!」と言い張った時代に先祖返りしている。

出典:

2016年1月28日(木)

慶應義塾大学総合政策学部 堀茂樹教授研究室主催

同大学大学院政策・メディア研究科「現代社会文化プロジェクト」

エマニュエル・トッド氏来日記念講演会

「宗教的危機とは何か」

於、慶應義塾大学三田キャンパス北館ホール

活字媒体での初出: 月刊誌 『三田評論』 2016年4月号

再掲: エマニュエル・トッド(Emmanuel Todd, b.1951)著、堀茂樹(ほり しげき, b.1952)訳 『問題は英国ではない、EUなのだ 21世紀の新・国家論』(文藝春秋 文春新書, 2016年)の中の第7章「宗教的危機とヨーロッパの近代化—自己解説『シャルリとは誰か?』」(pp.225-249)

なお、元来が口頭による講演だったため構成がやや纏(まと)まりを欠いていたが、これを再構成し、デスマス体をデアル体に改め、重要と思われる箇所を太字にしたのは、このウェブサイトの管理人 xapaga (原田)である。

https://www.amazon.co.jp/dp/4166610937

https://www.amazon.co.jp/product-reviews/4166610937/

スコットランド起源の謎の秘密結社が秘密のベールの一部を取り払う

【参考記事】

Freemason membership records spanning 190 years go online

(フリーメイソンが百九十年にも及ぶ会員記録を初めてウェブ上で公開)

フランス通信社(AFP: Agence France-Presse)英語版から英国ヤフーニュースへ転載

2015年11月24日(火)

https://uk.news.yahoo.com/freemason-membership-records-spanning-190-years-online-162132749.html

フリーメーソン幹部に聞いてみた 世界征服を企んでいますか?

毎日新聞

篠田航一(しのだ こういち, b.1973)記者署名記事

2020年11月29日(日)

https://mainichi.jp/premier/politics/articles/20201118/pol/00m/010/011000c

https://news.yahoo.co.jp/articles/c9e10d2fdf656e79c16c1252cc93d701b6028327

https://news.yahoo.co.jp/articles/c9e10d2fdf656e79c16c1252cc93d701b6028327/comments

イギリス人から見た日本

【附録】

「訪日・滞日イギリス人のカルチャーショック」

原田俊明(はらだ としあき, b.1968)

昭和女子大学近代文化研究所発行『學苑』2008年11月/第817号文化創造紀要

https://ci.nii.ac.jp/naid/110007041829

https://swu.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=4748&item_no=1&page_id=30&block_id=97

事例173)キリスト生誕前夜祭(英語で Christmas Eve)である12月24日の晩は,恋人同士で過ごすものと勘違いしている人が多い82。日本人はクリスマスとバレンタインデーを混同している。

事例174)12月に入ると街の飾りつけはクリスマス商戦一色だ。しかし25日のキリスト生誕祭の日(英語で Christmas Day)にも店が普通に営業しているのが不思議だ。

事例175)12月25日はキリスト生誕祭の日でありながら,クリスマスの飾りつけが突然消えるのが不思議だ。イギリスでは年が明けてもまだクリスマスだ83

事例176)結婚式をキリスト教の教会で挙げた知人が若くして死んでしまったが,葬儀会場に行ってみたら仏教の寺だったので面食らった。これは一体どういうことだ84

事例177)電車の窓から教会のような巨大な建物が見える。しかし日本ではキリスト教はあまり権力を持っているようには見えないので不思議に思い,日本人の友人に訊いてみた。なんと結婚式場(a wedding hall)とのことだった。チャペルまたは教会も併設しているが,結婚式にのみ特化していて,洗礼式も葬儀もキリスト生誕祭ミサも復活祭ミサも一切行なわないと聞いて驚いた。さらに驚愕したことに,日本人は結婚式だけをキリスト教式に挙げる人が多いとのことだ。日本人の宗教観は実に不思議だ。

事例178)日本の遺族は大金を出して仏教の僧侶から故人の死後の名(戒名のことで,英語では the posthumous Buddhist name)を買うと聞いたが,本当か。もし本当なら正気の沙汰ではない。贖宥状(しょくゆうじょう)(英語で indulgenceだが,通常の和訳では誤訳した「免罪符」)を販売して金銭的に潤った中世ヨーロッパのカトリック教会を思わせる。日本は西洋より少なくとも400年は遅れているようだ。日本にも宗教改革の波が押し寄せるのは,いつのことだろうか。

事例179)日本の仏教では何度も故人を偲んで memorial service(一周忌,三回忌,七回忌,十三回忌といった法事のこと)をやっていると聞いた。その都度,遺族には金がかかり,坊主(bonze)が丸々儲ける仕組みだ。日本人の死者はまるでイギリスの王族のような扱いを受けている。否,王族ですら,せいぜい死後十周年ぐらいしか偲んでもらえない。

82 これは1980年代バブル期に東京などの大都市圏で起こった歴史の浅い習慣である。

83 厳密には翌年の1月6日までがクリスマスとされる。

上記註釈の訂正: クリスマスは第一日(12/25)=基督生誕祭の祝日(Christmas Day)、第二日(12/26)=箱を渡す日の祝日(Boxing Day)、第三日(12/27)、第四日(12/28)、第五日(12/29)、第六日(12/30)、第七日(12/31)=元日前夜祭(日本で言う大晦日)、第八日(1/1)=元日の祝日(New Year’s Day)、第九日(1/2)、第十日(1/3)、第十一日(1/4)、第十二日(1/5)までである。その翌日(1/6)は公現日(Epiphany)といって宗教的には重要な日だが、祝日ではない。繰り返すが、この期間の国民の祝日は、12月25日と同26日と1月1日のみである。

84 バジル・ホール・チェンバレンは,「一度ならず著者が経験したことだが,ヨーロッパ人旅行者が日本人に,あなたの宗教は何か,仏教か神道かとたずねる と,その日本人は全く困った顔つきをするので,著者はおもしろく思ったものである。どんな気持ちでそんな質問をするのか,日本人にはどうしても分からないのである。(中略)われわれによく見られるような,他の宗教に対するあの酷しい差別は彼らに見ることはできない。/ 日本人のこの締りの無さ,そして著者が日本人を『宗教心がない』(アンデヴォーショナル)と上に述べたために,読者が思い誤るようになってはいけない。信心と倫理,神学と行為は別物であることを銘記せねばならない。(後略)」(チェンバレン.高梨健吉訳.『日本事物誌2』「宗教 (Religion)」の項pp.186-7)と書いている。

【関連記事: クリスマスを恋愛の日と勘違いした日本人】

「クリスマスを粉砕せよ!」渋谷でデモ 主催者が訴える日本社会の闇とは

「電通もリクルートも、非モテの敵だ!」

HuffPost Japan (ハフィントンポスト日本版) in association with The Asahi Shimbun

ニュースエディター 吉川慧(よしかわ けい, b.1988)記者署名記事

特集「#だからひとりが好き」ディレクター

2017年12月24日(日)

https://www.huffingtonpost.jp/2017/12/24/anti-xmas-demo_a_23316143/

https://www.facebook.com/HuffPostJapan/videos/969585859862563/

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171224-00010001-huffpost-soci (リンク切れ)

カップルなどで賑わうクリスマスイブの12月24日、東京・渋谷で「非モテ(モテないこと)」を自称する人々が集まり、「クリスマス粉砕!」などと叫びながらデモ行進した。

この「クリスマス粉砕デモ」は、恋愛資本主義への反対を掲げる革命的非モテ同盟(革非同)が主催。2006年からほぼ毎年クリスマスの時期に実施し、今年で10回目を迎えた。同団体は「モテない人の明るい未来を築き上げるべく、非モテ同士の連帯を」と提唱している。

デモ隊は午後2時ごろ、代々木公園を出発。約30分にわたって20人(主催者発表)ほどの参加者がデモ行進した。

「カップルはー自己批判せよー!」

「リア充はー爆発しろー!」

「非モテの人権蹂躙を許さないぞー!」

「クリスマス労働者を解放せよー!」

「モテなくて、何が悪いんだー!」

こうしたシュプレヒコールを叫びつつ、デモ参加者は渋谷の街を練り歩いた。また、「電通もリクルートも、非モテの敵だ!」「はあちゅうも非モテの敵だ!」と、広告代理店などへの批判を訴えた。

非モテたちの叫びを聞いた沿道の人たちからは「いいぞー!」「何あの人たち?」といった声が聞こえた。中にはスマホやタブレットでデモの様子を撮影する人もいた。

(改行・後略)

一人きりの聖夜「クリぼっち」、今年は増える?

讀賣新聞

加藤亮記者署名記事

2020年12月13日(日)

https://www.yomiuri.co.jp/life/singlestyle/20201212-OYT8T50087/

ヤフーニュース転載

2020年12月23日(水)

https://news.yahoo.co.jp/articles/ade080d48b0715adf1eae9875407430871ecdc8d?page=2

(前略)

始まりはあの歌から?

ところで、イエス・キリストの誕生を祝う日が、いつから恋人と過ごす日になったのか。

博報堂買物研究所の山本泰士所長は「1980年代に、流行歌やトレンディードラマの影響で次第に恋人たちのものになっていったのではないでしょうか」と話す。松任谷由実の「恋人がサンタクロース」(80年)や、山下達郎の「クリスマス・イブ」(83年)といったロマンチックな曲が流行。バブル期には、恋人同士で高級ホテルに泊まり、ブランド物のプレゼントを贈る、といった金のかかる過ごし方がメディアで紹介された。みんながそうだったわけでは、もちろんない。

そしてバブルは遠くなった。

(改行・後略)

「クリスマスイブなのに恋人も友達もいない」と劣等感を抱いてしまう根本原因

ダイヤモンド・オンライン

読書猿(どくしょ ざる)=本名非公開

2020年12月24日(木)

https://diamond.jp/articles/-/254969

https://diamond.jp/articles/-/254969?page=2

https://news.yahoo.co.jp/articles/677aec3d3633aeadbdecefc7d497052f5e26bc2b

https://news.yahoo.co.jp/articles/677aec3d3633aeadbdecefc7d497052f5e26bc2b/comments

クリスマスに恋人と過ごす=バブル期の刷り込み!?「クリスマスに恋人がいなくてもいい」と言う人が増えている理由

カナウ

ライター・占い師 沙木貴咲署名コラム

2020年12月24日(木)

https://www.the-uranai.jp/column/love/no-lover-christmas/

https://trilltrill.jp/articles/1725141

小見出し1: 『恋人がサンタクロース』による刷り込み

小見出し2: バブル期に『作られた』クリスマスの定番

小見出し3: バブル期のクリスマスが幼稚に思える最近の20代

小見出し4: クリスマスは自分が楽しく!

【話題】騙され続ける日本人 / クリスマスにチキンを食べる習慣は元KFC社長の嘘が発端「誰も不幸にならない嘘」

人に幸せな時間を届ける嘘

バズプラスニュース(Buzz Plus News)

Another Writer (「或()る別の書き手」を意味する匿名の書き手)

2019年12月25日(水)

https://buzz-plus.com/article/2019/12/25/eat-kentucky-fried-chicken-at-christmas/

https://asahi.5ch.net/test/read.cgi/newsplus/1577261746/

https://asahi.5ch.net/test/read.cgi/newsplus/1577267085/

いまやクリスマスにチキンを食べる行為は、日本において常識となっています。あくまで「日本においては」ですが。西洋文化ではクリスマスシーズンにチキンを食べることが常識だと思っていたら、それは大きな間違いです。その文化は日本だけといっても過言ではないでしょう。

クリスマスにチキンを食べる行為を日本独自の文化にしてしまったのは、日本ケンタッキー・フライド・チキン(以下KFC)の元社長であり、設立メンバーの大河原毅氏(76歳)。彼は1070年(註: 「1970年」の誤記)に日本でKFC1号店をオープンさせ、みずから店長として店頭に立った。その彼が「西洋ではクリスマスにチキンを食べるのが習慣」であると世間に広めたのです。嘘ですけど。

KFC1号店オープン当時の日本では、クリスマスを大々的に祝う習慣はありませんでした。今のようにケーキを食べたり、カップルがイチャつく習慣はほぼなかったといえます。そしてチキンを食べる習慣はほぼ皆無。そもそも日本に突如として出現した謎の店だったKFCは客が入らず苦戦していたといいます。

(改行・後略)

Why Japan celebrates Christmas with KFC

(なぜ日本はKFCでクリスマスを祝うのか)

How a fast-food marketing campaign turned into a widespread Yuletide tradition for millions.

(如何(いか)にしてファーストフード市場拡大キャンペーンが何百万人ものクリスマスの伝統として拡がったのか。)

英国放送協会(BBC: British Broadcasting Corporation)

エリック・バートン(Eric Barton)記者署名記事

2016年12月20日(火)

https://www.bbc.com/worklife/article/20161216-why-japan-celebrates-christmas-with-kfc

日本人の宗教観、海外と違うけど変じゃない?

米メディアが探る日本人の心根

NewSphere

阿津坂光子(氏名の読み・生年ともに不詳)記者署名記事

2015年9月22日(火)

https://newsphere.jp/national/20150922-1/

(前略・改行)

クリスチャン・サイエンス・モニター紙(CSM)は、宗教と信仰が大部分において乖離している日本の状況について論じた記事を掲載した。同紙は、世界の宗教に関するニュースを幅広く取り上げている。

(中略)日本は62%もの人が信仰はないとしているにもかかわらず、多くの人が寺社仏閣などに参拝している日本の状況を説明する。つまり、ある参拝者が述べるように「神社にお詣りするのは、宗教を信じているのとは別」であり、宗教が生活の慣習の一部として存在しており、「聖と俗が分かちがたい状況にある」ということだ。

その理由の1つとして、CSMは日本人の神社へのお詣りが現世利益主義的な側面が強いことを指摘する。明治神宮に飾られた絵馬には、さまざまな願いごとが書かれている。病気治癒や職場での昇進に、嵐のコンサートのチケットまで。宗教は、個人の信仰としてあるわけではなく、絵馬に書かれたように「願いごとがすべて叶いますように」と祈るためにある、というわけだ。

(改行・中略)

米公共ラジオ放送(PRI)は、日本の土着の信仰である、八百万の神を祀る「神道」に日本人の宗教観の背景を見出している。PRIに詳細を語っているのは、東京都の渋谷に位置する金王八幡宮の田所克敏宮司。彼の言によれば、「ある日、仏陀と呼ばれる神がアジア大陸からやってきた。その後、キリストと呼ばれる神が船でやってきた。すでにいた八百万の神にもう2つ加わった、というだけのこと」。田所氏はさらに、こういった日本人の受容性の高さを、天ぷらを使って説明する。もともと天ぷらはポルトガルから伝えられたものだが、日本人は受け入れ、文化の一部としている。

田所宮司はさらに、次のように述べる。「人々は宗教を、何を信仰しているのかという観点ではなく、儀式の観点から見ている」。つまり、「この儀式(冠婚葬祭)はどう執り行うのか」が重要であるため、子どもが生まれれば神社にお宮参りし、結婚式はキリスト教の教会で挙げながら、問われれば即座に「仏教徒」と答える状況になっている、とPRIは論ずる。

(改行・中略)

ケンタッキー州にあるベリア大学のジェフリー・リチー准教授が、2011年の東北大震災に見舞われた人々が見せた忍耐強さを、宗教的観点から論じている。

(中略)日本人の災禍に対する考えは、日本の伝統的な宗教文化に見られるような荒ぶる神としての姿に根付いている、と述べる。そして、本居宣長の『古事記伝』に記した「神(古事記伝では「迦微」)」についての論述を引用して、日本の神は善いものも悪いものもさまざまおり、その心も行いもとりどりであり、人の小さな知恵では計り知れないものだ、とする日本人の宗教観を示した。

だからこそ震災が起きた時に、一神教のキリスト教、ユダヤ教、イスラム教の信者が持つような「震災は神の裁きなのか」という問いではなく、「震災をどう受け止めるべきなのか、震災はどう自分の内面のためにあるのか」という問いを、伝統的な宗教観をもつ日本人は抱きがちになるのではないか、とリチー准教授は問いかける。

西洋の基準からしてみれば、信仰心がないように見え、また日本人の自覚としても宗教に対する信仰心はないとしている人でも、人智を超えたものを畏れ敬う気持ちが日本人の中にあることは、以上の3つの記事からは示されているようだ。

ドイツから感じた、「日本型結婚式」の違和感

なぜキリスト教徒でないのに教会式なのか?

東洋経済オンライン

在独フリーライター 雨宮紫苑(あまみや しおん, b.1991)

2016年12月28日(水) 10:50

https://toyokeizai.net/articles/-/151390

https://toyokeizai.net/articles/-/151390?page=2

https://toyokeizai.net/articles/-/151390?page=3

https://toyokeizai.net/articles/comment/151390

https://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20161228-00151390-toyo-soci (リンク切れ)

入学式や成人式など、人生の節目を祝うセレモニーはいくつかある。その中でも、特に夢にあふれているのが、「結婚式」ではないだろうか。結婚式で新婦が身にまとうウエディングドレスは、「女性のあこがれ」などと言われるし、結婚式の日を「幸せの絶頂」と言い表すこともある。

「結婚総合意識調査2016」(リクルートブライダル総研調べ http://bridal-souken.net/research_news/2016/10/161018-1.html )によると、日本の挙式実施率は67.0%、披露宴・披露パーティの実施率は58.7%で、半数以上の新婚夫婦が、公の場で結婚のセレモニーをしている。だが、日本の結婚式のあり方は、どうも首を傾げざるをえないことがある。今回は、日本の結婚式に関して、特に不思議だと思う「宗教意識」「費用」「形式」について、私が住んでいるドイツの結婚式事情と比較して考えてみたい。

日本とドイツの結婚式事情

まず、違和感を覚えるのが式の形式だ。結婚情報のポータルサイト「日本の結婚式」が行った「全国の独身男女の結婚式に関する意識調査2014」( https://nihon-kekkon.com/special_monthly/no15/nihon-kekkon.pdf )によれば、理想の挙式の形は、教会式が58.4%と圧倒的だ。続いて神前式が21.2%、 人前式が17.9%となっている。日本人の6割弱がクリスチャンということはありえないから、これは「宗教にかかわらず、チャペルで挙式したい」と考えている人が多いのだろう。

クリスチャンでもないのに、何に対して愛を約束するのだろう。結婚式の当日だけ、クリスチャンのように振る舞い、神父や牧師の下で神に永遠の愛を誓うのは、宗教意識が薄い日本人らしいやり方と言える。式場に併設されているチャペルは、宗教的意味はほとんどない。神聖なチャペルを「おしゃれな式場」として扱うのは、キリスト教に失礼ではないだろうか。

(改行・後略)

働き方改革、ドイツに学ぶべき点はここだ

讀賣新聞 深読みチャンネル

在独ジャーナリスト 熊谷徹(くまがい とおる, b.1959)

2016年10月11日(火) 5:20

https://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/ichiran/20161006-OYT8T50042.html (リンク切れ)

(前略・改行)

ドイツは世界の主要な国の中で最も労働時間が短く、日本よりも有給休暇の取得率がはるかに高い。それにもかかわらず、高い経済パフォーマンスを維持することに成功している。

(改行・中略)

キリスト教の精神が浸透している国には、「労働はなるべく少なくするに越したことはない」という世界観がある。その考え方は、アダムとイブが禁断の実を食べたために、神の怒りに触れてエデンの園から追放され、労働によって日々の糧を得なくてはならなくなったことから来ている。

ドイツに多いプロテスタント信者の間には、「労働において成功した者を、神は天国に行かせる」という考え方もある。しかし、「労働によって自分を実現する」とまで考える人は、日本ほど多くない。日独の間には大きな労働観の違いが横たわっている。

(改行・後略)

日本人にとっての心の在り方

豪州メルボルン(Melbourne, Australia)のラトローブ大学(La Trobe University)名誉教授の杉本良夫(すぎもと よしお; Yoshio Sugimoto, b.1939)著『日本人をやめる方法』(ほんの木, 1990; ちくま文庫1993)文庫版pp.68-69から抜粋

事実、日本社会はお金については、いろいろあからさまである。神社や寺院へ出かけると、多額の寄付金をした人の名前と金額を明示した木札や紙札がぶらさがっているところが多い。「金〇〇万円也、××殿」という、あれである。こういう習慣が、神聖な宗教の場で、堂々とまかり通っているところに、日本文化の一段面がある。欧米の教会でも寄付はあるが、その個人額を張り出したりはしない。

お金による意思表示といえば、日本では慶弔金の慣習が根深い。結婚式や葬式には、現金をつつんで持っていくことが、ひとつの常識になっている。香典返しなどというしきたりも、当り前に近い。こういう宗教や冠婚葬祭の場でキャッシュが行き来するということは、欧米社会では相当品のない行為と考えられている。私も長い間アメリカとオーストラリアで暮らす間、何度も結婚式や葬式に参加したが、プレゼントや花束の進呈はあっても、現金の手渡しということは一度も経験したことがない。

こういう側面を綿密に検討していくと、政界の汚職や疑獄問題は、民衆生活のパターンの拡大という面を持っていることが分かる。「善良な庶民に対する俗悪な政治家」という図式は気持ちがいいけれども、必ずしも正確ではない。政界の図柄は庶民の日常生活の図柄をズーム・アップして見せているという点を、しっかり押さえておく必要があると思う。[後略]

なお、著者の杉本氏が述べている冠婚葬祭の場でキャッシュが行き来する様子は、大正時代に定着した慣習だと数学者で評論家の森毅(もり つよし, 1928-2010)氏が文庫本の解説に書いているので、さほど長い歴史があるわけではないようである。

山村明義(やまむら あきよし, b.1960)一般社団法人日本人らしさ・地域らしさ研究所理事長[著] 『日本人はなぜ外国人に「神道」を説明できないのか』(ベストセラーズ ベスト新書, 2018年1月10日(水)発行)

https://www.amazon.co.jp/dp/4584125708

特別番組「日本人はなぜ外国人に「神道」を説明できないのか」山村明義 倉山満

2018年1月9日(火)配信

https://www.youtube.com/watch?v=K_F0EMrun9Y

大宅賞作家が記録した3・11後の「霊体験」

讀賣新聞 深読みチャンネル

読売新聞メディア局編集部 伊藤譲治(いとう じょうじ )記者署名記事

2017年8月10日(木) 5:20

https://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/ichiran/20170809-OYT8T50014.html

https://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/ichiran/20170809-OYT8T50014.html?page_no=2

https://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/ichiran/20170809-OYT8T50014.html?page_no=3

https://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/ichiran/20170809-OYT8T50014.html?page_no=4

東日本大震災で家族を失った人たちの不思議な体験を記録した『魂でもいいから、そばにいて 3・11後の霊体験を聞く』(新潮社)が注目を集めている。2月の刊行から約5か月間で10刷と版を重ね、計4万1000部に達している。著者は、大宅壮一ノンフィクション賞も受賞しているノンフィクション作家の奥野修司さん(69)。ノンフィクションの題材にそぐわない「霊体験」を、なぜ選んだのか。取材や出版の経緯などについて奥野さんに聞いた。

小見出し1: 死後、兄から届いたメール…熊谷常子さんの体験

小見出し2: おもちゃを動かす3歳児…遠藤由理さんの体験

小見出し3: きっかけは緩和ケア医・岡部健さんとの出会い

小見出し4: 「被災者の2割が幽霊を見た」とも

小見出し5: 「一人に3回以上聞く」を取材ルールに

小見出し6: 話すことができなかった「霊体験」

小見出し7: 「死者と生きる」…文芸誌「新潮」に連載

小見出し8: 体験とは「グリーフケア」

(詳細は記事本文へ)

なぜ減った? 正月飾りをつけるクルマ

オートックワン

自動車評論家 国沢光宏(くにさわ みつひろ, b.1958)署名記事

2017年12月29日(金) 21:14

https://autoc-one.jp/lexus/is/special-5001081/

(詳細は記事本文へ)

富岡八幡・宮司殺人事件の背景にある「神社崩壊」という大問題

実際に神社をあるいて考えた

現代ビジネス

宗教学者・作家 島田裕巳(しまだ ひろみ, b.1953)署名コラム記事

2018年1月5日(金)

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/53991

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/53991?page=2

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/53991?page=3

小見出し1: 境内に事件の背景が見える

小見出し2: なぜ富岡八幡宮は豊かなのか

小見出し3: 祖父が作った神社秩序を地位独占のため離脱

小見出し4: 解体に向かう神社界

(詳細は記事本文へ)

神社本庁の“腐敗”をレポート 幹部の不倫騒動、土地ころがし疑惑で有名神社が続々離脱

新潮社 デイリー新潮

『週刊新潮』2020年12月10日(木)号掲載

小川寛大(おがわ かんだい, b.1979)宗教専門誌『宗教問題』編集長

2020年12月15日(火)

https://www.dailyshincho.jp/article/2020/12150558/?all=1

https://www.dailyshincho.jp/article/2020/12150558/?all=1&page=2

https://news.yahoo.co.jp/articles/0d4f0eb73a2d4c7db691bd755c56d462b761df28

https://news.yahoo.co.jp/articles/0d4f0eb73a2d4c7db691bd755c56d462b761df28?page=2

https://news.yahoo.co.jp/articles/0d4f0eb73a2d4c7db691bd755c56d462b761df28?page=3

https://news.yahoo.co.jp/articles/0d4f0eb73a2d4c7db691bd755c56d462b761df28?page=4

https://news.yahoo.co.jp/articles/0d4f0eb73a2d4c7db691bd755c56d462b761df28/comments

小見出し1: 続々と離脱する有名神社

小見出し2: 元凶は田中総長体制

小見出し3: 政治ごっこからの脱却を

日本の死生観に魅せられた米国人教授が危惧する“葬式不要論”〈週刊朝日〉

朝日新聞社 AERA.dot

『週刊朝日』2020年12月25日(金)号掲載

宗教学者 カール・ベッカー(Carl Becker, b.1951)京都大学特任教授

ライター、ジャーナリスト 大崎百紀(おおさき ゆき, b.1969)署名コラム

2020年12月18日(金)

【3・11を想う】英紙タイムズ東京支局長 リチャード・ロイド・パリーさん 「仕方がない」と我慢してはだめ

産經新聞

リチャード・ロイド・パリー(Richard Lloyd Parry, b.1969)

インタビュー聞き手: 橘川玲奈(きっかわ れいな, 生年非公開)

2021年3月11日(木)

https://www.sankei.com/affairs/news/210311/afr2103110062-n1.html

https://www.sankei.com/affairs/news/210311/afr2103110062-n2.html

https://news.yahoo.co.jp/articles/9eec64cf2217bff6e2723e23b232946df541d9c6

https://news.yahoo.co.jp/articles/9eec64cf2217bff6e2723e23b232946df541d9c6/comments

日本に25年以上暮らし、英紙タイムズのアジア編集長・東京支局長を務めるリチャード・ロイド・パリー氏(52)は、東日本大震災を取材し、2017年に「津波の霊たち 3・11 死と生の物語」(日本語訳は翌年出版)を出版した。児童74人らが津波の犠牲となった宮城県石巻市立大川小の悲劇や、被災地で「目撃」された幽霊などについて記し、国内外で評価された。

(後略・改行)

世界有数の無宗教国家…日本人にとって「宗教」とは一体何か?

現代ビジネス

北海道大学准教授 岡本亮輔(おかもと りょうすけ, b.1979)署名コラム

2021年4月19日(月)

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/82280

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/82280?page=2

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/82280?page=3

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/82280?page=4

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/82280?page=5

https://news.yahoo.co.jp/articles/aeb7019514cf72f0d74cc213f95e5197a5c01674?page=2

https://news.yahoo.co.jp/articles/aeb7019514cf72f0d74cc213f95e5197a5c01674?page=3

https://news.yahoo.co.jp/articles/aeb7019514cf72f0d74cc213f95e5197a5c01674?page=4

https://news.yahoo.co.jp/articles/aeb7019514cf72f0d74cc213f95e5197a5c01674/comments

国は見殺し「コロナでお寺がどんどん消滅」で国民が被る深刻な影響

プレジデント・オンライン

浄土宗正覚寺住職、ジャーナリスト、佛教大学・東京農業大学非常勤講師 鵜飼秀徳(うかい ひでのり, b.1974)署名コラム

2021年4月21日(水)

https://president.jp/articles/-/45318?page=1

https://president.jp/articles/-/45318?page=2

https://president.jp/articles/-/45318?page=3

https://news.yahoo.co.jp/articles/755e3c5dd336d066d6b6ff4ce75f320b9259b68b

https://news.yahoo.co.jp/articles/755e3c5dd336d066d6b6ff4ce75f320b9259b68b?page=2

https://news.yahoo.co.jp/articles/755e3c5dd336d066d6b6ff4ce75f320b9259b68b?page=3

https://news.yahoo.co.jp/articles/755e3c5dd336d066d6b6ff4ce75f320b9259b68b/comments

一部日本人にとって一種のカルト(cult)と化した憲法九条教

2019年12月4日(水)、中村哲(なかむら てつ, 1946-2019)医師・NPO法人ペシャワール会( http://www.peshawar-pms.com/ )現地代表・九州大学高等研究院特別主幹教授=73歳が、ボランティア活動先のアフガニスタン(アフガン)東部で正体不明のテロリストの銃撃を受け、同国ナンガルハル州の病院に一旦は搬送されたが手に負えず、首都カブール近郊のバグラム米空軍基地へ向けての搬送途中に死亡したという。死の約十一年半前には日本國憲法第9条が「我々(ペシャワール会)を守ってきた」と力説していた。なお、故中村氏は、戦時中に従軍作家として名を馳せたが戦後は周囲の手のひら返しで「戦犯作家」の汚名を着せられ、1960年1月24日(日)に睡眠薬自殺した火野葦平(ひの あしへい, 1907-60)こと、本名 玉井勝則(たまい かつのり, 1907-60)の妹の息子、つまり甥に当たる。

中村哲医師が死亡 アフガン東部で銃撃

産經新聞

森浩(もり ひろし)特派員署名記事

2019年12月4日(水)

https://www.sankei.com/world/news/191204/wor1912040021-n1.html

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191204-00000562-san-asia (リンク切れ)

【シンガポール=森浩】アフガニスタン東部ナンガルハル州ジャララバードで4日午前、現地で農業支援などの活動を行っていた日本人医師、中村哲さん(73)が乗った車が武装勢力に銃撃された。州政府報道官によると、中村さんは銃弾を受けて地元病院に運ばれたが、その後死亡が確認された。

地元警察によると、車に同乗していたボディーガードと運転手のアフガン人5人も銃撃で死亡した。犯人は現場から逃走しており、警察当局が行方を追っている。犯行声明は出ていないが、イスラム原理主義勢力タリバンは関与を否定する声明を発表した。

(改行・後略)

Tetsu Nakamura: Japanese doctor among six dead in Afghan gun attack

(中村哲氏: 日本人医師、アフガン襲撃死者6名のうちの1人)

英国放送協会(BBC: British Broadcasting Corporation)

2019年12月4日(水)

https://www.bbc.com/news/world-asia-50654985

アフガニスタン 医師の中村哲さん銃撃 複数の男らの犯行か

NHKオンライン

2019年12月5日(木) 5:13

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191205/k10012202561000.html (リンク切れ)

小見出し1: 治療にあたった病院の担当者

小見出し2: 10年来の親交の知人「今後、どう中村先生の遺志をつなぐか」

小見出し3: 母校の九大の学長「理不尽さに憤り」

小見出し4: 国連特別代表「功績は大きく、日本人として誇り」

小見出し5: 10月に現地で活動の様子を取材

小見出し6: 人道援助関係者の死傷者が増加

「中村先生の命を守れなかった。ごめんなさい」 成田に在日アフガン人ら集まる

毎日新聞

中村宰和記者署名記事

2019年12月8日(日)

https://mainichi.jp/articles/20191208/k00/00m/030/159000c

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191208-00000042-mai-int (リンク切れ)

https://asahi.5ch.net/test/read.cgi/newsplus/1575818805/

中村哲さんに聞いた

アフガニスタンという国で、9条をバックボーンに活動を続けてきた

マガジン9「この人に聞きたい」

2008年4月30日(水) ウェブ掲載

http://www.magazine9.jp/interv/tetsu/tetsu.php

https://asahi.5ch.net/test/read.cgi/newsplus/1575447550/

(前略)

「平和国家」日本に期待されていること

編集部

現地では、NGOとか国際機関なんかが襲撃されるということは、かなりあるんですか?

中村

何回も、見聞きしたことはありますよ。でも、我々ペシャワール会が襲われたことは一度もありません

編集部

それだけ、ペシャワール会の活動が現地の方々に浸透しているということでしょうか。

中村

そうですね。アフガンの人たちは、親日感情がとても強いですしね。それに、我々は宗教というものを、大切にしてきましたから。

(中略)

中村

そうです。それに僕はやっぱり、日本の憲法、ことに憲法9条というものの存在も大きいと思っています。

編集部

憲法9条、ですか。

中村

ええ、9条です。昨年、アフガニスタンの外務大臣が日本を訪問しましたね。そのとき、彼が平和憲法に触れた発言をしていました。アフガンの人たちみんなが、平和憲法やとりわけ9条について知っているわけではありません。でも、外相は「日本にはそういう憲法がある。だから、アフガニスタンとしては、日本に軍事活動を期待しているわけではない。日本は民生分野で平和的な活動を通じて、我々のために素晴らしい活動をしてくれると信じている」というようなことを語っていたんですね。

編集部

平和国家日本、ですね。

中村

ある意味「美しき誤解」かもしれませんが、そういうふうに、日本の平和的なイメージが非常な好印象を、アフガンの人たちに与えていることは事実です。日本人だけは、別格なんですよ。

(中略)

中村

日本は、軍事力を用いない分野での貢献や援助を果たすべきなんです。現地で活動していると、力の虚しさ、というのがほんとうに身に沁みます。銃で押さえ込めば、銃で反撃されます。当たり前のことです。でも、ようやく流れ始めた用水路を、誰が破壊しますか。緑色に復活した農地に、誰が爆弾を撃ち込みたいと思いますか。それを造ったのが日本人だと分かれば、少し失われた親日感情はすぐに戻ってきます。それが、ほんとうの外交じゃないかと、僕は確信しているんですが。

(中略)

編集部

そう言えば、雑誌『SIGHT』(07年1月)のインタビューで、「9条がリアルで大きな力だったという現実。これはもっと知られるべきなんじゃないか」とおっしゃっていましたね。

中村

そうなんですよ。ほんとうにそうなんです。僕は憲法9条なんて、特に意識したことはなかった。でもね、向こうに行って、9条がバックボーンとして僕らの活動を支えていてくれる、これが我々を守ってきてくれたんだな、という実感がありますよ。体で感じた想いですよ。

武器など絶対に使用しないで、平和を具現化する。それが具体的な形として存在しているのが日本という国の平和憲法、9条ですよ。それを、現地の人たちも分かってくれているんです。だから、政府側も反政府側も、タリバンだって我々には手を出さない。むしろ、守ってくれているんです。9条があるから、海外ではこれまで絶対に銃を撃たなかった日本。それが、ほんとうの日本の強味なんですよ。

編集部

その体で実感した9条を手放すことには、どうしても納得できない。

中村

具体的に、リアルに、何よりも物理的に、僕らを守ってくれているものを、なんで手放す必要があるんでしょうか。危険だと言われる地域で活動していると、その9条のありがたさをつくづく感じるんです。日本は、その9条にのっとった行動をしてきた。だから、アフガンでも中東でも、いまでも親近感を持たれている。これを外交の基礎にするべきだと、僕は強く思います。

(後略)