専門英語(歴文)02(2014/ 5/ 8) 古代希臘羅馬の建築・美術

古代建築における様式(Classical orders)

古典主義建築の基本単位となる円柱(columns)と梁(はり: beams)の構成法で、独立円柱(柱基、柱身、柱頭)と水平梁(エンタブラチュア: entablature)から成る。一般的にはドリス式オーダーとイオニア式オーダーとコリント式オーダーのギリシア建築3様式が基本である。

上記の3様式にトスカーナ式オーダーとコンポジット式オーダーの2様式を加えたローマ建築5様式があるとされる。

http://en.wikipedia.org/wiki/Classical_order

図版説明(フランス語、左からエジプト式、希臘ドリス式、希臘イオニア式、希臘コリント式、羅馬トスカーナ式、羅馬ドリス式、羅馬コンポジット式)

http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/1/1f/Column_architecture-fr.svg

図版説明(やや古風なフランス語、上段左トスカーナ式柱頭、上段右ドリス式柱頭、中段左イオニア式柱頭、中段右近代イオニア式柱頭、下段左コリント式柱頭、下段右コンポジット式柱頭)

http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/6a/Classical_orders_from_the_Encyclopedie.png

図版説明(やや古風なドイツ語)

http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/5/53/Schema_Saeulenordnungen.jpg

エンタブラチュア、または誤ってエンタブレチュア(希 ἐπιστύλιον = epistýlion エピステュリオン; 羅 epistylium エピステュリウム; 英 entablature エンブラチュア; 仏 entablement アォンタブルムォーン; 独 Gebälk ゲルク)

オーダー最上部の水平梁(すいへいばり)のこと。下から順にアーキトレーヴ(希 επιστυλίου = epistylíou エピステュウー; 羅 epistylium エピステュリウム; 英 architrave アーキトれイヴ; 仏 architrave アふシトはーヴ; 独 Architrav アるヒトらーフ)とフリーズ(希 ζωοφόρος = Zōophóros ゾーオプホろス; 羅 zoophorus ゾーフォるス; 英 frieze フりーズ; 仏 frise フひーズ; 独 Fries フりース)とコーニス(希 κορνίζα = korníza コるザ または γεῖσον = geîson ゲイソン; 羅 corona コろナ; 英 cornice コーニス; 仏 corniche コふニシュ; 独 Geison ガイゾン)から成る。

アーキトレーヴとは、エンタブラチュアの下部を構成する水平材のことで、台輪とも称する。矩形開口部を帯状に形造っている。フリーズとは、エンタブラチュアを構成する3つの中間部水平帯のことで、しばしば帯状の彫刻がある。コーニスとは、エンタブラチュアの最上層部のことで、軒(のき)、蛇腹(じゃばら)。

図版説明(フランス語、左から1.希臘ドリス式、2.羅馬ドリス式、3.トスカーナ式、4.イオニア式、5.コリント式、6.コンポジット式)

フランスの1922年版『ラルース辞典』(le Larousse, 1922)から転載

http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/ac/Entablements.jpg

図版説明(英語、ドリス式のパルテノン神殿)

http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/1/16/DoricParthenon.jpg

図版説明(英語、イオニア式)

http://upload.wikimedia.org/wikipedia/en/0/02/Ionic_entablature.jpg

図版説明(英語、コリント式)

http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/9/91/CorinthianOrderPantheon.jpg

ギリシアの3様式を説明した動画

音楽と文字のみ

Ancient Greek Architecture

http://www.youtube.com/watch?v=o78AxVYXyTo

カーン・アカデミー(Khan Academy)のズッカー博士(男性)とハリス博士(女性)の対話形式

The Classical Orders

http://www.youtube.com/watch?v=nrRJkzXl4a4

上記動画のための語註

- post & lintel: 支柱または標柱と楣石(まぐさいし)

- pediment: ペディメント、つまり古典建築の三角形の切妻(きりづま)壁または破風(はふ)屋根。

- entablature: エンタブラチュア、つまり古典主義建築の柱の上に構成される部分の名称。

- frieze (triglyphs & metopes): フリーズという名の小壁(トリグリフ、つまり一定間隔で繰り返される三条の溝のある突起石、またはその溝と、メトープ、つまり2個のトリグリフの間にはさまれた四角な壁面)

- capital: 柱頭(ちゅうとう)

- Vitruvius: ウィトルウィウス(紀元前1世紀ローマの建築家)

- shaft: (円柱の)柱身, 柱体.(研究社『新英和中辞典』第7版)

- column: 柱(一般的な語)

- fluting or flute: フルーティング、つまり溝彫りまたは縦溝装飾。

- entasis: エンタシス、つまり円柱につけられた微妙なふくらみで、建物に視覚的な安定感を与えるためのもの。

1)ドリス式オーダー、またはドーリス式オーダー、またはドーリア式オーダー(希 Δωρικός ρυθμός = Do̱rikós rythmós ドーりス・りュトス; 羅 Ordo Doricus オるドォ・ドりクス; 英 Doric order りックォーダー; 仏 Ordre dorique オふドふ・ドひック; 独 Dorische Ordnung ドーりッシェ・ふドヌング)

オーダーの中では 最も起原が古いと考えられ、ペロポネソス半島(ギリシア本土南部を構成する半島で、コリント地峡によってかろうじて本土につながっているが、東をエーゲ 海、南西をイオニア海、北をパトレー湾とコリント湾に囲まれているため、地図上でほぼ島のように見える)で発展し、最古のギリシア建築に用いられているの がドリス式オーダー。古代ギリシア建築前期のもので、柱頭に鉢形装飾を持たない。パルテノン神殿などギリシアで見られる柱基(柱の下に設けられる部材)を 持たない柱をギリシア・ドリス式、柱基を持つものをローマ・ドリス式として区別する。

ウィキペディア英語版( http://en.wikipedia.org/wiki/Classical_order )から抜粋

The Doric order originated on the mainland and western Greece. It is the simplest of the orders, characterized by short, faceted, heavy columns with plain, round capitals (tops) and no base. With a height that is only four to eight times its diameter, the columns are the most squat of all orders. The shaft of the Doric order is channeled with 20 flutes. The capital consists of a necking which is of a simple form. The echinus is convex and the abacus is square.

語註

- faceted: 彫面を刻まれた.

- column: 柱(一般的な語).

- capital: 柱頭(ちゅうとう).

- base: 柱基(ちゅうき).

- diameter: 直径.

- squat: ずんぐりとした, しゃがんだような.

- shaft: (円柱の)柱身, 柱体.(研究社『新英和中辞典』第7版)

- echinus: 【建築】 エキナス, まんじゅう形《ドリス式建築様式の柱頭の冠板 (abacus) を支える繰形》.(研究社大英和辞典6版)

〔建〕 エキーヌス《Doris 式建築において柱頭のアバクスの下にある円形の部材》.(研究社羅和辞典)

- channeled: 溝が掘られた.

- flute: フルーティング(fluting), つまり溝彫りまたは縦溝装飾.

- necking: 《建築》襟巻きの刳形(くりがた); 柱頸(ちゅうけい)(gorgerin).(小学館『プログレッシブ英和中辞典』第4版)

- convex: 凸(とつ)状, 凸面の.

- abacus: 冠板(かんむりいた).

例1)イタリア南部に残るギリシア建築、パエストゥム (Paestum)遺跡

初期の例。紀元前550年ごろゼウス神(ギリシア神話の最高神)の伴侶でオリュンピアの女王ヘラのための神殿建築が行なわれた。その100年後ぐらいに町 の主神ポセイドン(海の神)のための神殿が建てられた。古代ギリシア美術では見られないほど粗削りで古風な建築。ユネスコ世界文化遺産に登録済(1998 年)。

例2)ギリシアの首都アテネ市のアクロポリスの丘に建つパルテノン神殿(希 Παρθενών = Parthenó̱n パるテノーン; 羅 Parthenon パるテーノン; 英 Parthenon パーセノン)

最盛期の例。アテナイ(アテネ)の神殿。「けがれのない、純潔の」の意味から「処女神の宮殿」の意味で解釈される。女神アテーナーへの信仰に基づく神殿とされる。紀元前447年に建設が始まり、紀元前438年に完工。ドーリア式建造物の最高峰とされ、ユネスコ世界文化遺産に登録済 (1987年)。主としてドーリア式オーダーが用いられているが、イオニア式の要素も持ち合わせている。胞室の外壁を取り囲む装飾はイオニア式のフリーズ で、これは紀元前442年から紀元前438年の作。古代ギリシアが発祥の建築方法であるエンタシス(entasis)と呼ばれ、円柱の下部から上部にかけ て徐々に細くした、もしくは中部から上部にかけて細くした形状の柱を使用。エンタシスを施した柱を下から見上げると、真っ直ぐに安定して見える錯覚を生む ため、巨大建築物の柱に用いることが多い。法隆寺東院伽藍廻廊(七世紀後半から八世紀初頭の創建)にも使用されていると言われてきたが、疑義を挿(はさ)む意見もある。

http://www.youtube.com/watch?v=LZLvA2Z-AyI

http://www.youtube.com/watch?v=MLo9F3aVDZA

http://www.youtube.com/watch?v=i_4aike-6nQ

http://www.youtube.com/watch?v=IKoeFOt1RGs

2)イオニア式オーダー(希 Ιωνικός ρυθμός = Io̱nikós rythmós イオーニス・りュトス; 羅 Ordo Ionicus オるドォ・イョニクス; 英 Ionic order アイオウニックォーダー; 仏 Ordre ionique オふドる・イョニック; 独 Ionische Ordnung イオーニッシェ・ふドヌング または Jonische Ordnung ヨーニッシェ・ふドヌング)

渦巻模様(volutes)が特徴。紀元前6世紀ごろに小アジア(現在のトルコ西部)で作成され始めたオーダー。紀元前5世紀頃には、アッティカ半島(ギ リシアのアテネ周辺を指す地域名)で広く使用されるようになり、ヘレニズム時代(紀元前323年のアレクサンドロス大王の死から紀元前30年のプトレマイ オス朝エジプト滅亡までの約三百年間)には、ドリス式に代わって殆ど全ての神殿建築に取り入れられた。線の細いイオニア式は女性的しなやかさにたとえられ る。

ウィキペディア英語版( http://en.wikipedia.org/wiki/Classical_order )から抜粋

The Ionic order came from eastern Greece, where its origins are entwined with the similar but little known Aeolic order. It is distinguished by slender, fluted pillars with a large base and two opposed volutes (also called scrolls) in the echinus of the capital. The echinus itself is decorated with an egg-and-dart motif. The Ionic shaft comes with four more flutes than the Doric counterpart (totalling 24). The Ionic base has two convex moldings called tori which are separated by a scotia. The Ionic order is also marked by an entasis, a curved tapering in the column shaft.

語註

- Aeolic: 【建築】 アイオリス様式の《柱頭には下から昇ってきた渦巻が 2 本反対方向に巻き, その下に水蓮のつぼみ状の装飾が凸形リングになって 2 個ついている》.(研究社大英和辞典6版)

- base: 柱基(ちゅうき).

- volute: 渦(うず)巻き模様.

- scroll: 渦(うず)巻き模様.

- echinus: 【建築】 エキナス, まんじゅう形《ドリス式建築様式の柱頭の冠板 (abacus) を支える繰形》.(研究社大英和辞典6版)

〔建〕 エキーヌス《Doris 式建築において柱頭のアバクスの下にある円形の部材》.(研究社羅和辞典)

- convex: 凸状, 凸面の.

- tori: torusの複数形.【建築】 (柱基 (base) の)トルス, 半円形繰形, 大玉縁(ぶち).(研究社大英和辞典6版)

〔建〕 トルス《柱基上の横に出っ張った繰形(くりがた)》.(研究社羅和辞典)

《建築》トーラス:円柱脚の大玉縁(ぶち).(小学館『プログレッシブ英和中辞典』第4版)

- scotia: 【建築】 スコティア《古典主義建築の柱礎などに用いる深くえぐった繰形》.(研究社大英和辞典6版)

〔建〕1 (柱礎の深くえぐった)繰形(くりがた).2 軒蛇腹(じゃばら)に刻まれた溝.(研究社羅和辞典)

例1)ギリシアの首都アテネ市のエレクテイオン神殿(希 Έρέχθειον = Éréchtheion れク(フ)テ(ヘ)イオン; 羅 Erechtheion エれクテイオン)

アテナイ(アテネ)のアクロポリスの丘に残る神殿。紀元前421年から紀元前407年の間に完成したと考えられている。多くの聖蹟と神格の祭祀所を一つの建物にまとめた複雑な構造。

例2)英京倫敦の大英博物館(British Museum, London)

新古典様式

http://www.youtube.com/watch?v=PEWL5ebV8y8

3)コリント式オーダー(希 Κορινθιακός ρυθμός = Korinthiakós rythmós コりンティ(ふ)アス・りュトス; 羅 Ordo Corinthius オるドォ・コりンティウス; 英 Corinthian order コりンスィアンノーダー; 仏 Ordre corinthien オふドふ・コひンシアン; 独 Korinthische Ordnung コりンティッシェ・ふドヌング)

紀元前5世紀頃に、アテナイ(アテネ)で作成され始めたオーダー。アカンサス(acanthus)の葉を模した柱が特徴。通常は、柱頭に上下8枚ずつ、互 い違いに アカンサスが彫り込まれる。繊細な肢体を持つ少女に準えられる。ギリシア本国では殆ど受け入れられず、ローマで発展した。

ウィキペディア英語版( http://en.wikipedia.org/wiki/Classical_order )から抜粋

The Corinthian order is the most ornate of the Greek orders, characterized by a slender fluted column having an ornate capital decorated with two rows of acanthus leaves and four scrolls. It is commonly regarded as the most elegant of the three orders. The shaft of the Corinthian order has 24 flutes. The column is commonly ten diameters high.

語註

- ornate: 絢爛(けんらん)豪華な, 華美(かび)な.

- fluted: フルーティング, つまり溝彫りまたは縦溝装飾を施(ほどこ)された.

- acanthus leaves: (複数の)アカンサスの葉.

- scroll: 渦(うず)巻き模様.

- shaft: (円柱の)柱身, 柱体.(研究社『新英和中辞典』第7版)

- diameter: 直径.

例1)ローマのパンテオン(Pantheon)

「すべての神に捧げられた神殿」の意。現イタリア首都ローマ市内に残る古代ローマの円形神殿。古代ローマ最大の円蓋建築。紀元前27年にローマ帝国初代皇 帝アウグストゥス(Augustus, 63BC-AD14; 在位27BC-AD14)の腹心だったアグリッパ(Marcus Vipsanius Agrippa, 63BC-12BC)が建設。後に焼失したが、AD120年から125年にかけてハドリアヌス帝(Hadrianus; Hadrian, AD76-138; 在位117-138)が再建を命じた。現在はキリスト教寺院で、画家ラファエロ(Raffaello Santi, 1483-1520)らの有名人や、近代イタリア諸王の墓廟となっている。

例2)パリのパンテオン(Panthéon, Paris)

新古典様式

1758年着工、1790年完成。上記の在ローマ元祖パンテオンを模していて、文豪ユゴー(Victor Hugo, 1802-85)、文豪ゾラ(Émile Zola, 1840-1902)、社会思想家ルソー(Jean-Jacques Rousseau, 1712-78)ら、フランスの国家的功労者の墓廟になっている。

例3)米国首都ワシントンの米国議会(United States Capitol)

新古典様式。1854年の建造。

例4)ニューヨーク中央郵便局(General Post Office, New York)

新古典様式。1913年の建造。

例5)日本の東京都渋谷区の青山学院大学間島記念館

新古典様式

1929年竣工で、設計・施工は清水組。当初は図書館として建築されたが、現在は学院資料館として使用されている。青山学院大学のシンボル的建築。2008年以来、日本国登録の有形文化財(建造物)。

例6)日本の東京都千代田区の旧明治生命保険相互会社本社本館(現明治安田生命保険相互会社明治生命館)

新古典主義様式

1934年竣工で、設計は岡田信一郎(1883-1932)。5階分のコリント式列柱が並ぶ。1997年に日本国重要文化財に指定登録済。

http://www.youtube.com/watch?v=Ea_Wt3MNSyw

http://www.youtube.com/watch?v=Ay4vtwpWL_A

4)トスカーナ式オーダー(希 Τοσκανικός ρυθμός = Toskanikós rythmós トスカニス・りュトス; 羅 Ordo Tuscanus オるドォ・トゥスカヌス; 英 Tuscan order スカンノーダー; 仏 Ordre toscan オふドふ・トスカン; 独 Toskanische Ordnung トスカーニッシェ・ふドヌング)

エトルリア(Etruria: 紀元前8世紀から紀元前1世紀ごろにイタリア半島中部にあった都市国家群で、現在のイタリアのトスカーナ州の辺り)に起源を持つ最も単純な形式のオー ダー。一見ドリス式に似ているが、柱身に彫溝(フルーティング: fluting)がなく、柱間(はしらま)も大きく、エンタブラチュアも簡素。単体で存在する場合、ドリス式と見分けがつきにくい。ギリシアには存在しな いオーダー。

ウィキペディア英語版( http://en.wikipedia.org/wiki/Classical_order )から抜粋

The Tuscan order has a very plain design, with a plain shaft, and a simple capital, base, and frieze. It is a simplified adaptation of the Doric order by the Romans. The Tuscan order is characterized by an unfluted shaft and a capital that only consists of an echinus and an abacus. In proportions it is similar to the Doric order, but overall it is significantly plainer. The column is normally seven diameters high. Compared to the other orders, the Tuscan order looks the most solid.

語註

- plain: 簡素な.

- design: 意匠(いしょう), デザイン.

- capital: 柱頭(ちゅうとう).

- base: 柱基(ちゅうき).

- frieze: フリーズ(エンタブラチュアを構成する3つの水平帯の中間部).

- unfluted: フルーティング, つまり溝彫りまたは縦溝装飾を施(ほどこ)されていない.

- echinus: 【建築】 エキナス, まんじゅう形《ドリス式建築様式の柱頭の冠板 (abacus) を支える繰形》.(研究社大英和辞典6版)

〔建〕 エキーヌス《Doris 式建築において柱頭のアバクスの下にある円形の部材》.(研究社羅和辞典)

- abacus: 冠板(かんむりいた).

- solid: 密で堅い, ぎっしり詰まった, しっかりした, 堅固な.

5)コンポジット式オーダー、または混合式オーダー(希 Σύνθετος ρυθμός = Sýnthetos rythmós シュンテ(ヘ)トス・りュトス; 羅 Ordo Compositus オるドォ・コンポシトゥス; 英 Composite order コンポジットォーダー; 仏 Ordre composite オふドふ・コンポジット; 独 Komposite Ordnung コンポジーテ・ふドヌング)

柱頭の上下に異なったオーダーの要素を組み合わせたもので、通常はコリント式の上部にイオニア式の渦巻模様を載せた柱頭を持つ。ギリシアには無いオーダー。

例1)ローマのティトゥス門(羅 Arcus Titi アーるクス・ティーティ; 伊 Arco di Tito アーるコディ・ティートォ; 英 Arch of Titus アーチョヴ・タイタス)

AD82年頃のローマ帝国の建造物。

例2)旧ドイツ帝国議会、現ドイツ連邦議会の国会議事堂ライヒスターク(独 Reichstag らイヒスターク)

新古典様式。1884-94年の建造。

ウィキペディア英語版( http://en.wikipedia.org/wiki/Classical_order )から抜粋

The Composite order is a mixed order, combining the volutes of the Ionic with the leaves of the Corinthian order. Until the Renaissance it was not ranked as a separate order. Instead it was considered as a late Roman form of the Corinthian order. The column of the Composite order is ten diameters high.

語註

- volute: 渦(うず)巻き模様.

- diameter: 直径.

古代ギリシア美術(Ancient Greek art)

古代ギリシアの文化が確立される以前にもエーゲ海で栄えたエーゲ文明(希 Αιγαιακός πολιτισμός = Aigaiakós politismós アイガイアス・ポリティスス; 英 Aegean civilizations イッヂーアン・シヴィリゼイション)が存在した。紀元前3000年頃から紀元前1100年頃に栄えたキクラデス文明(希 Κυκλαδικός πολιτισμός = Kykladikós politismós キュクラディス・ポリティスス; 英 Cycladic civilization サイクディック・シヴィリゼイション)、紀元前2800年頃から1060年頃に栄えたギリシア本土のヘラディック期(希 Ελλαδική περίοδο = Elladikí̱ período エッラディ・ペオドォ; 英 Helladic period ヘッデク・ピァリオッド)、紀元前2000年頃から1400年頃に栄えたミノア文明(希 Μινωικός πολιτισμός = Mino̱ikós politismós ミノーイス・ポリティスス; 英 Minoan civilization ミノウアン・シヴィリゼイション)、紀元前1600年頃から紀元前1200年頃に栄えたミケーネ文明(希 Μυκηναϊκός πολιτισμός = Myki̱naïkós politismós ミュキーナイス・ポリティスス; 英 Mycenaean civilisation マイニアン・シヴィリゼイション)が19世紀終盤になって次々に発見された。

古代ギリシアの哲学者達は、美術を「熟練した洞察力と直感を用いた美的な成り行き」として定義している。そこで、絶対的な美の基本は見るものをどれくらい 感動させられるか、という点にある。その結果、ギリシアの藝術作品は、完璧な美を備えている神々の姿をとった彫刻が多い。

ギリシア彫刻の発展はアルカイック期(英 Archaic period アーケイック・ピァリオッド: 紀元前1000年頃に始まり、紀元前480年から紀元前448年まで続いたペルシア戦争ぐらいまでの五百年以上の期間)、クラシック期(英 Classical period クシコー・ピァリオッド: 紀元前480年から紀元前448年まで続いたペルシア戦争の時代から紀元前323年のアレクサンドロス大王の死までの百五十年前後の期間)、ヘレニズム期(英 Hellenistic period ヘレステク・ピァリオッド: 紀元前323年のアレクサンドロス大王の死から紀元前30年のプトレマイオス朝エジプト滅亡までの約三百年間)に分けられる。

アルカイック期の彫刻は、両手を腿に当てた直立したほぼ左右対称的な彫刻が特徴的(特に初期)。独特の微笑みである「アルカイック・スマイル(Archaic smile アーケイック・スマイル)」を湛(たた)えた彫刻でも知られる。

クラシック期は政治的には貴族政治が終わり、民主主義の時代に入ったため、彫刻藝術にも変革が起こった。様々なポーズをつけ、リアルな表情をした人体表現がこの時代の特徴である。

ヘレニズム期は、 アレクサンドロス大王による領土拡張により、波斯(ペルシア)や印度(インド)など東方の様々な文化が混じり合った複雑な彫刻藝術が登場する。彫刻はより 自然に近いものとなる。この時期の代表作にパリのルーヴル美術館(仏 Musée du Louvre ミュゼ・デュルーヴふ; 英 Louvre Museum)に飾られたミロのヴィーナス(仏 Vénus de Milo ヴェニュス・ドゥ・ミロ; 伊 Venere di Milo ヴェーネれ・ディ・ミーロ; 希 Ἀφροδίτη τῆς Μήλου = Aphroditē tēs Mēlou フロディテー・ティスルゥ; 英 Aphrodite of Milos フロダイティー・オヴミッロース)がある。

http://ja.wikipedia.org/wiki/ギリシア美術

http://en.wikipedia.org/wiki/Greek_art

http://en.wikipedia.org/wiki/Ancient_Greek_art

http://www.youtube.com/watch?v=N5ZLKkIM_lk

http://www.youtube.com/watch?v=-Yh6V7CUstc

http://www.youtube.com/watch?v=7MV47jJPMeU

http://www.youtube.com/watch?v=IKoeFOt1RGs

ウィキペディア英語版( http://en.wikipedia.org/wiki/Ancient_Greek_art )から抜粋

Archaic

Inspired by the monumental stone sculpture of Egypt and Mesopotamia, during the Archaic period the Greeks began again to carve in stone. Free-standing figures share the solidity and frontal stance characteristic of Eastern models, but their forms are more dynamic than those of Egyptian sculpture. After about 575 BC, figures, such as these, both male and female, wore the so-called archaic smile. This expression, which has no specific appropriateness to the person or situation depicted, may have been a device to give the figures a distinctive human characteristic.

語註

- Inspired by: ~に霊感(インスピレーション)を受け, ~に触発(しょくはつ)され.

- monumental: 記念碑のような; 重々しい, 堂々とした.

- stone sculpture: 石の彫刻.

- carve in stone: 石に彫刻する.

- Free-standing: 自力で立っている, 自立した.

- share: ~を分かち合う, ~を共有する.

- solidity: 堅固さ, 固さ.

- frontal stance: 正面性をもって立った姿勢; 画面と並行して立った姿勢.

- characteristic: 特徴.

- Eastern models: 東方のモデル.

- forms: 形態(複数).

- dynamic: 動的な, ダイナミックな.

- those: (この文脈では)形態.

- so-called: 所謂(いわゆる).

- archaic smile: 古風な微笑み, (和製英語発音で)アルカイック・スマイル, (実際の英語発音で)アーケイック・スマイル.

- expression: 表情.

- , which has no specific appropriateness to: それは~に対して特定の妥当性(だとうせい)を有していない

- the person or situation depicted: そこで描かれた人物や状況.

- may have been: ~であったかも知れない.

- a device: 一つの装置.

- a distinctive human characteristic: はっきりした人間的特徴.

Classical

In the Classical period there was a revolution in Greek statuary, usually associated with the introduction of democracy and the end of the aristocratic culture associated with the kouroi (the plural of kouros, or a young male figure). The Classical period saw changes in the style and function of sculpture. Poses became more naturalistic, and the technical skill of Greek sculptors in depicting the human form in a variety of poses greatly increased. From about 500 BC, statues began to depict real people.

語註

- revolution: 革命.

- Greek statuary: ギリシア彫刻.

- usually associated with: 大抵(たいてい)~と関連づけられる.

- the introduction of: ~の導入.

- democracy: 大衆政治, 民主政治, 民主主義.

- the aristocratic culture: 貴族文化.

- kouroi: クーロイ.

- the plural of kouros: クーロスの複数形.

- , or a young male figure: つまり若い男性像.

- saw changes: 変化を見た.

- the style and function: 様式と機能.

- naturalistic: 自然な, 自然主義的.

- the technical skill: 技術的わざ

- sculptors: 彫刻家たち.

- in depicting: 描写する際の

- the human form: 人間の形態, 人体.

- a variety of: 様々な~.

Hellenistic

The transition from the Classical to the Hellenistic period occurred during the 4th century BC. Following the conquests of Alexander the Great (336 to 323 BC), Greek art became more diverse and more influenced as the cultures of people were drawn into the Greek orbit. In the view of some art historians, it also declined in quality and originality; this, however, is a judgement which artists and art-lovers of the time would not have shared.

語註

- transition: 推移.

- occurred: 起こった.

- conquests: 征服.

- Alexander the Great: アレクサンドロス大王(紀元前336-323).

- diverse: 多岐(たき)にわたる.

- cultures: 諸々(もろもろ)の文化圏.

- drawn into: ~に引き寄せられ.

- the Greek orbit: ギリシア文化の勢力圏.

- In the view of: ~の観点(見方)では.

- declined: 衰退した.

- in quality and originality: 質と独創性(オリジナリティー)に於(お)いて

- a judgement: 判断, 決めつけ.

- of the time: 当時の~.

- would not have shared: 共有しなかったであろう.

古代ローマ美術(Ancient Roman art)

ローマ帝国の主流となった美術は作者が主としてギリシア人だった。クラシック期からヘレニズム期のギリシア美術を範とした模倣的な傾向が強い。彫刻作品で は肖像彫刻が発達した。現実の人間や事件をテーマにして造形芸術で表現した。多くの個性的な肖像彫刻や、トラヤヌス円柱浮彫などの壮大な叙事作品を遺し た。戦勝祝を神話で比喩的に表現するギリシアの習慣とは異なる、ローマ美術の特色である。

http://ja.wikipedia.org/wiki/ローマ美術

http://en.wikipedia.org/wiki/Ancient_Roman_art

例)古代ローマのポンペイ遺跡(イタリア南部)

AD79年8月24日、町の北西約10kmにあるヴェスヴィオ山(伊 il monte Vesuvio イルモンテ・ヴェズーヴィオ; 英 Mount Vesuvius マウント・ヴェスーヴィ アス)の大噴火により押し寄せた火砕流や有毒ガスが、ポンペイ(羅英 Pompeii; 伊 Pompei)の人々の命を次々と奪った。火砕流は現代の研究で時速約100キロの速度だったと考えられており、一瞬にして5メートルの深さにまで町全体 を飲み込んだ。これは当時の人々にとっては過酷な災害だったが、後世の我々に幸いなことに、町を隙間なく埋め尽くした火砕流が天然のタイムカプセルのよう な役割を果たし、当時の人々の生活をそのままの状態で保存した。火山灰には乾燥剤に似た成分が含まれ、湿気を吸収したため、壁画や美術品の劣化が最小限に 食い止められた。1748年にポンペイの町が発見され、18世紀から19世紀にかけて発掘作業が続いた。人々は古代ローマの文化水準の高さに目を見張っ た。ポンペイの壁画の様式には年代により変遷が見られ、主題も静物、風景、風俗(男女の交わりを描いた絵も)、神話がある。

多くはフレスコ画(伊 affresco アッフれースコ; 仏 fresque フへスク; 英 fresco フスコ)である。これはイタリア語で「新しい」「新鮮な」という意のfresco (フれース コ)に由来する。フレスコ画の技法では、まず壁に漆喰(しっくい)を塗り、その漆喰がまだ「フレスコ(新鮮)」、つまり生乾きのうちに石灰水で溶いた顔料 (絵の具)で描く。石灰がつくる結晶の中に顔料の一粒一粒が閉じ込められるため、色が大変美しく、耐久性は抜群で数千年も保たれる。難点としては、やり直 しが効かないため、綿密な計画と高度な技術力を要すこと。漆喰が濡れているうちに全て描いてしまわなければならないため、あらかじめその時間内に描ける部 分の面積を割り出して下地を作らねばならない。失敗したら漆喰をかき落として、やり直す羽目になる。

フレスコ画の他にモザイク画も残っていて、それらは現在ナポリ博物館で収蔵されている。

http://en.wikipedia.org/wiki/Pompeii

http://ja.wikipedia.org/wiki/ポンペイ

2009年、在豪州ヴィクトリア州コリングウッド市のゼロ・ワン・アニメーション社( http://www.zerooneanimation.com/ )制作、豪州メルボルン博物館公開のCGアニメーション教育用映画「ポンペイの一日(A Day in Pompeii)」

http://www.youtube.com/watch?v=dY_3ggKg0Bc

【参考文献】

佐藤達生 『図説 西洋建築の歴史 美と空間の系譜』(河出書房新社, 2005年)

佐野敬彦 『ヨーロッパの都市はなぜ美しいのか』(平凡社, 2008年)

世界遺産検定事務局[編] 『世界遺産検定公式ガイド300』(毎日コミュニケーションズ, 2010年)

ホプキンス(Owen Hopkins) 『世界の名建築解剖図鑑』(エクスナレッジ, 2013年)—Reading Architecture: A Visual Lexicon (Lawrence King Publishers, 2012)の和訳本