西曆2017年11月 6日(月) 個人電子書簡(芬国独立百周年記念企画トーク&コンサート「私の祖父ジャン・シベリウスと彼の音楽の世界」)

2017年11月6日(月) 17:30

Subject: トーク&コンサート「私の祖父ジャン・シベリウスと彼の音楽の世界」での誤りを訂正

日本シベリウス協会御中

去る11月4日(土)午後は、トーク&コンサート「私の祖父ジャン・シベリウスと彼の音楽の世界」を興味深く拝聴することできました。ありがとうございます。

さて、Satu Jalas 女史の英語でのお話を〇〇〇〇〇女史が滑らかな日本語に通訳(但し、大部分は事前の文書翻訳)されていたお手並みは見事なもので、感心して聴いておりました。ただ、気になった箇所が二点だけございましたので、指摘しておきます。

お話の中に opera omnia (ペらムニア)という羅典(ラテン)語表現があり、それをカタカナで「オペラ」と訳出されていましたが、「Sibelius にオペラ作品なんてあったのだろうか?」と訝しく思われた聴衆もいたことでしょう。実はこれは英語で言う Complete Works (コンプリートゥウァークス)、ドイツ語で言う Gesamtwerk (ザムトゥヴェるク)または Sämtliche Werke (ムトゥリッヒェヴェるケ)のことですので、正しい日本語では「全作品」または「作品全集」または単に「全集」、或いは「全集版」と訳出すべき表現です。Satu さんがわざわざ難しい羅典(ラテン)語を使ったのは、世界共通で(特に西洋音楽の文脈の中で)理解されるものとお考えになってのことでしょう。

もう一点。Sibelius の葬儀ではヘルシンキ大聖堂(英 Helsinki Cathedral; 芬 Helsingin tuomiokirkko, Suurkirkko; 典 Helsingfors domkyrka, Storkyrkan)から延々と30マイル(thirty miles)離れた墓所まで一般市民が列を成したという Satu Jalas 女史のお話でしたが、それが「160キロ」と訳されていたことが気になりました。ここは Satu さんご本人の弁に従えばメートル法に換算して「約50キロ」とでも訳出すべきでした。ところが Sibelius 永眠の地アイノラ(Ainola)は首都ヘルシンキ(芬 Helsinki; 典 Helsingfors)から約38キロ(約23マイル半)しか離れておらず、その自治体ヤルヴェンパー(芬 Järvenpää; 典 Träskända)市は首都から約37キロ(約23マイル)の距離です。したがってこれはどうやら Satu さんご自身の誤りであり、「英語を話すときは英米人のように距離をマイル換算で言わねば」という強迫観念から「30キロあまり」(英 more than thirty kilometres; 米 more than thirty kilometers)とすべき箇所をうっかり「30マイル」(thirty miles)と言ってしまったものと思われます。もしかすると通訳者の〇〇さんには Sibelius 生誕地ハメーンリンナ(芬 Hämeenlinna; 典 Tavastehus)市のことが念頭にあったため斯様な「160キロ」という誤訳になったのでありましょう。しかれどもハメーンリンナ市は首都ヘルシンキから約98キロ(約61マイル)しか離れていません。それでもあれほど人口僅少な国で38キロも人垣が続いたのは驚嘆に値します。

以上、細かいことで失礼しました。

日本シベリウス協会会員

原田俊明

2017年11月29日(水) 10:58

Subject: Re: Re:トーク&コンサート「私の祖父ジャン・シベリウスと彼の音楽の世界」での誤りを訂正

日本シベリウス協会事務局長

〇〇〇〇〇様

ご返信ありがとうございます。

当方の主旨といたしましては、誰にでも間違いや思い違いはあるものですので、どうか大事になさらずに事実を淡々とお伝えいただければと存じます。会報等で簡単な正誤表(Errata: つまり Erratum の複数形)を載せるなり、理事運営委員会でお決めいただければその決定に従う所存であります。

日本シベリウス協会会員

原田俊明