西曆2015年12月25日(金・祝) グリニッヂ標準時15:00 英女王の聖誕祭メッセージ

http://www.royal.gov.uk/ImagesandBroadcasts/TheQueensChristmasBroadcasts/ChristmasBroadcasts/ChristmasBroadcast2015.aspx

http://www.royal.gov.uk/imagesandbroadcasts/thequeenschristmasbroadcasts/ahistoryofchristmasbroadcasts.aspx

http://en.wikipedia.org/wiki/Royal_Christmas_Message

[動画](9分08秒)

The Royal Family

https://www.youtube.com/watch?v=8Mzor6Hf1tY

The 1st and the 3rd stanzas from the National Anthem

英国国歌の第1連と第3連のみ

1

God save our gracious Queen,

神(かみ)よ我(われ)らが慈悲(じひ)深(ぶか)き女王(じよわう)を護(まも)り給(たま)へ、

Long live our noble Queen,

我(われ)らが氣髙(けだか)き女王よ永久(とこしへ)にあれ、

God save the Queen:

神よ女王を護り給へ。

Send her victorious,

君(くん)に勝利(しょぅり)を、

Happy and glorious,

幸福(かうふく)と榮光(えいくゎぅ)を賜(たま)はせ、

Long to reign over us,

御世(みよ)の長(なが)からむことを、

God save the Queen.

神よ女王を護り給へ。

[第2連を省略]

3.

Thy choicest gifts in store,

汝(なんぢ)が選(え)り抜(ぬ)ける進物(しんもつ)の、

On her be pleased to pour;

君(くん)に喜(よろこ)びと注(そゝ)がれむことを。

Long may she reign:

御世(みよ)の長(なが)からむことを。

May she defend our laws,

君(くん)よ我(われ)らが法(ほふ)を守(まも)り給(たま)へ、

And ever give us cause

絕(た)へず大義(たいぎ)を與(あた)へ給(たま)へ、

To sing with heart and voice

歌(うた)ふ心(こゝろ)で歌ふ聲(こゑ)で

God save the Queen.

神よ女王を護り給へ。

[第4連から第6連まで省略]

(訳者不詳・原田俊明一部改変訳)

[スピーチ原稿]

At this time of [the] year, few sights evoke more feelings of cheer and goodwill than the twinkling lights of a Christmas tree.

この時期になりますと、クリスマスツリーのきらめく光ほど多くの活力や善意の気持ちを喚起(かんき)する光景は、ほかにまずありません。

The popularity of a tree at Christmas is due in part to my great-great grandparents, Queen Victoria and Prince Albert. After this touching picture was published, many families wanted a Christmas tree of their own, and the custom soon spread.

クリスマスにツリーを飾る習わしを一般に広めたのは、我が曽々祖父母であるヴィクトリア女王とアルバート公[註1]による功績が大きいです。心の琴線(きんせん)に触れるようなこの絵[註2]が公開されてからというもの、多くの家庭が自分の家でもクリスマスツリーを飾りたくなり、その習慣はすぐに広まりました。

註1: ヴィクトリア女王(Queen Victoria, 1819-1901; 在位1837-1901)は同い年で自分より三ヶ月だけ若いドイツ貴族のアルバート公(Albert, Prince Consort, 1819-61)と1840年2月10日(月)に結婚した。そして英国王室史上初めて理想的な家族像を国民にアピールすることに成功した。クリスマスツリーをバッキンガム宮殿内に飾り、ツリーを囲む王族一家団欒(だんらん)の絵が公開されると、現女王も聖誕祭メッセージで述べるように一般庶民が真似するようになったという。なお、室内にクリスマスツリーを飾る習慣はアルバート公(Albert, Prince Consort, 1819-61)がドイツから持ち込んだように一般には誤解されることが多いが、実際には1761年9月8日(火)にヴィクトリア女王の祖父に当たる国王ジョージ三世(George III, 1738-1820; 在位1760-1820)のもとにドイツから嫁入りした王妃ゾフィー・シャルロッテこと、英語名 シャーロット(独 Sophie Charlotte zu Mecklenburg-Strelitz; 英 Charlotte of Mecklenburg-Strelitz, 1744-1818)が祖国ドイツから齎(もたら)した文化である。一般に七十九年もの時差をもって誤解されているのは、アルバート公の持ち込んだクリスマスツリーの習慣が瞬(またた)く間に一般庶民にも広まったからである。夫のアルバート公1861年12月14日(土)に四十二歳の若さで他界したため、ヴィクトリア女王は以来四十年近くも寡婦(かふ: a widow)として喪に服して過ごした

註2: 下記の絵を参照のこと。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/c/c4/Christmas_Tree_1848.jpg

https://historymyths.files.wordpress.com/2011/12/christmas_tree_albert2_747156.jpg

https://www.google.co.jp/search?q=picture+of+christmas+tree+prince+albert+%26+queen+victoria&hl=ja&tbm=isch&imgil=7JbuxfkGpKxe-M%253A%253BkLCzn_1J5b462M%253Bhttps%25253A%25252F%25252Fhistorymyths.wordpress.com%25252Ftag%25252Fqueen-victorias-christmas-tree%25252F&source=iu&pf=m&fir=7JbuxfkGpKxe-M%253A%252CkLCzn_1J5b462M%252C_&biw=1280&bih=891&usg=__zasXBvKMwyQIzn7gdyeP6KNM6Pc%3D#imgrc=7JbuxfkGpKxe-M%3A&usg=__zasXBvKMwyQIzn7gdyeP6KNM6Pc%3D

In 1949, I spent Christmas in Malta as a newly-married naval wife. We have returned to that island over the years, including last month for a meeting of Commonwealth leaders; and this year I met another group of leaders: The Queen’s Young Leaders, an inspirational group, each of them a symbol of hope in their own Commonwealth communities.

1949年に私は英領マルタ(現英連邦マルタ共和国)[註3]で海軍軍人の新婚の妻としてクリスマスを過ごしました。私ども夫婦はその後長年に亘(わた)って何度もその島(=マルタ島)を再訪しています。たとえば先月(2015年11月)は英連邦首脳会議のために、そして今年(2015年)はまた別の首脳会議である「女王の若手指導者たち」と題された、人々の模範となる集団の会合に出席しました。彼ら(=若手指導者たち)は各々(おのおの)が自分の属する英連邦国家の地域社会で希望の象徴となっています。

註3: マルタ島(イギリス発音: ルタ)は地中海の真ん中に位置する地の利の良さから、二十世紀の二度の世界大戦(1914-18 & 1939-45)で英国海軍の一大拠点となったが、第二次世界大戦後の1964年9月21日(月)に独立した。独立十年後の1974年12月13日(金)に共和制に移行して今日(こんにち)に至るため、エリザベス英女王が君臨するわけではないが、英連邦(Commonwealth of Nations)には加盟している。

Gathering round the tree gives us a chance to think about the year ahead—I am looking forward to a busy 2016, though I have been warned I may have Happy Birthday sung to me more than once or twice. It also allows us to reflect on the year that has passed, as we think of those who are far away or no longer with us. Many people say the first Christmas after losing a loved one is particularly hard. But it’s also a time to remember all that we have to be thankful for.

クリスマスにツリーの周りに集(つど)うと、私たちは来(きた)る年について考える機会が与えられます。私は多忙な2016年を楽しみにしています。とはいえ、「ハッピーバースデイ」の歌を人に歌ってもらえるのはあとせいぜい1~2回を超える程度なのではないかと人から警告を受けているのですが。それ(=クリスマスツリー)はまた過ぎ行く年についてよく考える機会、遠く離れて不在の人や他界してしまった人に思いを馳(は)せる機会も与えてくれます。多くの人が述べています、最愛の人を亡くしてから初めて迎えるクリスマスは特につらいと。しかしそれはまた私たちが感謝すべきすべての人、すべての物事を記憶すべき時でもあります。

It is true that the world has had to confront moments of darkness this year, but the Gospel of John contains a verse of great hope, often read at Christmas carol services: “The light shines in the darkness, and the darkness has not overcome it.”

確かに世界は今年(2015年)闇の時々(=つらいこと)に直面せざるを得ないことが度々(たびたび)ありましたが、(『新約聖書』の)「ヨハネによる福音書」には大いなる希望の一節が載っていて、それはクリスマス・キャロルの礼拝で屡(しばしば)読まれますが、そこにはこうあります。「光は闇の中で輝き、闇はそれ(=光)を制圧してはいない。」と。

One cause for thankfulness this summer was marking seventy years since the end of the Second World War. On VJ Day, we honoured the remaining veterans of that terrible conflict in the Far East, as well as remembering the thousands who never returned. The procession from Horse Guards Parade to Westminster Abbey must have been one of the slowest ever, because so many people wanted to say ‘thank you’ to them.

この夏(2015年夏)感謝の念を抱いた理由のひとつとして、第二次世界大戦終結七十周年記念がありました。VJデイ(対日戦勝記念日)に私どもは極東のあのひどい紛争で戦った退役軍人の生き残りの方々に栄誉を授(さず)け、祖国に帰還することのなかった何千何万もの人々を追悼しました。近衛騎兵練兵場(ホーガーヅプァれイド)からウェストミンスター寺院までの行列行進は今までにないほどゆっくりしたものだったに違いありません。というもの、大変多くの人々が彼ら(=退役軍人及び戦歿者)にお礼を言いたかったからなのです。

At the end of that War, the people of Oslo began sending an annual gift of a Christmas tree for Trafalgar Square. It has five hundred lightbulbs and is enjoyed not just by Christians but by people of all faiths, and of none. At the very top sits a bright star, to represent the Star of Bethlehem.

あの戦争の終わりに、(ノルウェー王国首都)オスロ市民たち[註4]が(ロンドン中心部の)トラファルガー広場に飾るようにとクリスマスツリーの贈り物を送って寄越(よこ)すようになり、それは毎年恒例になりました。それ(=そのツリー)には五百個の電球が取り付けられていて、基督(キリスト)教徒のみならず、あらゆる宗教宗派の人々、それに無宗教の人々をも楽しませてくれます。その一番てっぺんには輝かしい星が鎮座(ちんざ)していて(基督生誕の地)ベツレヘムの星[註5]を表しています。

註4: 第二次世界大戦(1939-40)中の1940年4月9日(火)から欧州戦線終結の’45年5月8日(火)までの五年一ヶ月に亘(わた)りノルウェー王国はナチス・ドイツの占領下にあった。ナチス撃滅に対する感謝を込めて、ノルウェーの主要都市はクリスマスツリーの贈り物を英国各地に毎年送っている。

註5: 『新約聖書』によると東方から三人の占星術師(東方の三賢者)がユダヤの町ベツレヘムの方角に輝く星を見て、ユダヤの新たな王が生まれたと確信し、イエスを見るためにベツレヘムにやって来たという

The custom of topping a tree also goes back to Prince Albert’s time. For his family’s tree, he chose an angel, helping to remind us that the focus of the Christmas story is on one particular family.

ツリーに飾りを付ける習慣もアルバート公の時代に遡(さかのぼ)ります。アルバート公は自分の一家(=王族)のためにひとりの天使を選びました。それはクリスマスのお話の中心に、或(あ)る特定の一家がいるということを思い出す手助けになります。

For Joseph and Mary, the circumstances of Jesus’s birth—in a stable—were far from ideal, but worse was to come as the family was forced to flee the country. It’s no surprise that such a human story still captures our imagination and continues to inspire all of us who are Christians, the world over.

(イエスの両親)ヨセフとマリアにとってイエス誕生の状況は、家畜小屋[註6]の中でのことであり、理想とは程遠いものでした。しかし一家はその後国外逃亡せざるを得なかったのですから、最悪の事態はまだこれからでした。そのような人間ドラマ[註7]が今でも私たちの想像を搔き立て、基督(キリスト)教徒である私たち皆を世界中で感化し続けていることは驚くに当たりません。

註6: 日本では屡々(しばしば)「厩(うまや)」や「馬小屋」などと訳されるが、欧米人の感覚ではむしろ牛や羊の小屋としているため、ここでは中立的に「家畜小屋」と訳した。

註7: 直訳では「人間的な話」または「人間的なストーリー」。

Despite being displaced and persecuted throughout his short life, Christ’s unchanging message was not one of revenge or violence but simply that we should love one another. Although it is not an easy message to follow, we shouldn’t be discouraged; rather, it inspires us to try harder: to be thankful for the people who bring love and happiness into our own lives, and to look for ways of spreading that love to others, whenever and wherever we can.

基督(キリスト)はその短い生涯を通して追放され迫害されながらも、その変わらぬメッセージは復讐や暴力のメッセージではなく、単に私たちがお互い同士を愛しなさいというものでした。それは簡単に従うことのできるメッセージではありませんが、私たちはやる気を削(そ)いではなりません。そうではなく、それ(=そのメッセージ)は私たちがもっと努力するよう、つまり私たちの人生に愛と幸せを齎(もたら)す人に感謝するよう、そしてその愛を他者に広める方法をできる時はいつでも、できる場所ではどこでも探すよう、感化しているのです。

One of the joys of living a long life is watching one’s children, then grandchildren, then great grandchildren, help decorate the Christmas tree. And this year my family has a new member to join in the fun!

長い人生を生きる喜びのひとつは、自分の子供たちが、それから孫たちが、そしてひ孫たちがクリスマスツリーの飾りつけ作業の手伝いをする姿を見守ることです。そして今年(2015年)は私の一家にその楽しみ(=ツリーの飾りつけ作業)に加わる新しい仲間[註8]が生まれました!

註8: 女王の孫のケイムブリヂ公ウィリアム王子(Prince William, Duke of Cambridge, b.1982)には、2013年7月22日(月)にジョージ王子(Prince George of Cambridge, b.2013)が生まれているが、この2015年5月2日(土)には、第二子である女児が誕生し、ケイムブリヂ公息女シャーロット(Princess Charlotte of Cambridge, b.2015)と命名された。女王はこのことに言及している。

The customary decorations have changed little in the years since that picture of Victoria and Albert’s tree first appeared, although of course electric lights have replaced the candles.

しきたりとしての飾りつけはヴィクトリア女王とアルバート公のツリーが初めて登場してから長い年月が経(た)っても殆(ほとん)ど変わっていません。とはいえ、電気の光が蠟燭(ろうそく)に取って代わりましたが。

There’s an old saying that “it is better to light a candle than curse the darkness”.

古い格言に、「闇を呪うより蠟燭を灯(とも)す方が良い。」とあります。

There are millions of people lighting candles of hope in our world today. Christmas is a good time to be thankful for them, and for all that brings light to our lives.

今日(こんにち)この世界には希望の蠟燭を灯す何百万何千万もの人々がいます。クリスマスは彼ら(=希望の蠟燭を灯す人々)に感謝する絶好の時です。そして私たちの人生に光を齎(もたら)すすべての人、すべての物事にも。

I wish you a very happy Christmas.

皆さんに幸(さち)多きクリスマスを。

The Children of Her Majesty’s Chapel Royal, St. James’s Palace

聖ヤコブ宮殿女王陛下の王立礼拝堂児童団

“Away in a Manger” (1895)

直訳 「遠(とほ)く飼(か)ひ葉(ば)の桶(おけ)の中(なか)」

邦題 「神の子イエス」

独人ルター(Martin Luther, 1483-1546)原作詞と伝承され

米人ゲイブリエル(Charles H. Gabriel, 1856-1932)英訳詞

英領愛蘭生米人カークパトリック(William J. Kirkpatrick, 1838–1921)作曲

Directed & Arranged by Huw Williams

ヒュー・ウィリアムズ指揮・編曲

Away in a manger, no crib for a bed,

遠く飼ひ葉の桶(おけ)の中、赤子用の寝臺(しんだい)も無く、

The little Lord Jesus laid down his sweet head,

小さき主(しゆ)イエスは其(そ)の芳(かんば)しき頭(かうべ)を橫たへり、

The stars in the bright sky looked down where he lay,

星どもが晴れやかなる空より見下ろすは彼(か)の橫たはりし處(ところ)、

The little Lord Jesus asleep on the hay.

小さき主イエスは干草(ほしくさ)の上で眠る。

The cattle are lowing, the baby awakes,

家畜牛ども唸(うな)り鳴き、赤子は目覺めん、

But little Lord Jesus no crying he makes.

しかれど小さき主イエスは聊(いさゝ)かも泣かず。

I love thee, Lord Jesus look down from the sky,

我は汝(なんぢ)、主イエスを愛す、空より見下ろし給(たま)へ、

And stay by my side until morning is nigh.

そして我の傍(かたは)らに留(とゞ)まれよ、朝が來るまで。

Be near me, Lord Jesus, I ask you to stay

どぅか近くに居(を)られよ、主イエスよ、留(とゞ)まれよと我は乞(こ)ひ

Close by me for ever, and love me, I pray.

すぐ傍(そば)に永遠(とは)に、そして我に愛をと禱(いの)る也(なり)。

Bless all the dear children in thy tender care,

祝福されよ、なべて愛(いと)しき童(わらは)に汝(なんぢ)の優(やさ)しき御加護で、

And fit us for heaven, to live with thee there.

そして我等(われら)を天へと導(みちび)き給(たま)へ、其處(そこ)で汝(なんぢ)と共(とも)に住まはんが爲(ため)。

(聖誕祭メッセージと歌詞の日本語訳: 原田俊明)