西曆2019年10月11日(金) 日本アマゾンのレビュー、『創作者のためのドイツ語ネーミング辞典』

伸井太一(のびい たいち)こと、本名 柳原伸洋(やなぎはら のぶひろ)東京女子大学准教授編著 『創作者のためのドイツ語ネーミング辞典 ドイツの伝説から人名、文化まで Das Namenswörterbuch für Kreative』(株式会社ホビージャパン, 2019年5月)

レビュー題字: 良書だが難点が無いと言うと、、、

投稿者 原田俊明

投稿日 2019/10/11

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ドイツ語の名詞と固有名詞を中心に、初学者にとって頭痛の種である格変化を抜きにして、楽しく頁を捲ることができる。単語は項目別に分けてあり、和独辞典の配列(五十音順)で載せてある。学習が進む良書だが難点が無いと言うと嘘になる。三分の一ほど読んで気づいた点を以下のような正誤表にしてみた。

ほぼ全頁

(誤)スペル

(正)綴り

(修正理由)スペル(spell)という英単語は名詞で「呪文」、動詞で「綴る」を表す。したがってスペリング(spelling)とすべきだが、文字数が5文字で多いし、ドイツ語を教える本書にも相応しくない。だからと言って無理にドイツ語にしてブーフシュターベン(Buchstaben)やシュライベン(Schreiben)などとするのも考え物だ。むしろ日本語で「綴り」と書くべきで、これなら僅か2文字だ。

p.20

(誤)聖ミカエル ザンクト・ミハエル

(正)聖ミカエル ザンクト・ミヒャエル

p.21

(誤)ヴィクトーア・フランケンシュタイン Viktor Frankenstein

(正)ヴィクトル・フランケンシュタイン Victor Frankenstein

(修正理由)長篇小説『フランケンシュタイン』の原作は英語で書かれており、事実上の主人公的存在である在野(当初はインゴルシュタット大学の医学生)の科学者はジュネーヴ人(現在で言うスイス・フランス語圏の人)という設定なので、ヴィクトル(Victor)とするのが正しい。過去の和訳本には英語読みでヴィクターとする物も多い。今手元にある Reclam Leipzig から刊行された独訳本(Ursula u. Christian Grawe による共訳)も、その在野の科学者を英語原文通りに Victor としている。

p.47

(誤)火葬 フォイヤー・ベシュタットゥング

(正)火葬 フォイアー・ベシュタットゥング

p.47

(誤)犠牲 オプファルング

(正)犠牲 オプフェルング

p.50

(誤)大虐殺 直訳は「血のプール」の意味。

(正)大虐殺 直訳は「血の風呂」の意味であり、英語でも blood bath である。

p.51

(誤)涜神 ゴッテス・レスタルンク

(正)瀆神 ゴッテス・レステルング

p.52

(誤)陰鬱、暗闇 ドゥスターニス

(正)陰鬱、暗闇 デュスタニス

p.55

(誤)まがいもの ナーハ・アームング

(正)まがいもの ナッハ・アームング

p.56

(誤)陰惨 ドゥスターカイト

(正)陰惨 デュスターカイト

p.57

(誤)粛清 ゾイバルング

(正)粛清 ゾイベルング

p.58

(誤)血まみれの ブルート・ベシュミアート

(正)血まみれの ブルート・ベシュミールト

p.59

(誤)別離 アップ・シート

(正)別離 アプシート

p.59

(誤)別離 アップシーツ・シュメルツ

(正)別離 アプシーツ・シュメァツ

p.68

(誤)いわゆる「ビール純粋令」は、Reinheitsangebot(ラインハイツ・アンゲボート))と言う。

(正)いわゆる「ビール純粋令」は、Reinheitsgebot(ラインハイツ・ゲボート))と言う。

p.70

(誤)結婚式 ホホ・ツァイト

(正)結婚式 ホーホ・ツァイト

p.70

(誤)「ホッホ・ツァイト」と書かれることもある。

(正)「ホッホ・ツァイト」と書くのは誤り。

p.70

(誤)女性形は、Nebenbuhlerin(ネーベン・ブーラリン)となる。

(正)女性形は、Nebenbuhlerin(ネーベン・ブーレリン)となる。

p.70

(誤)恋のアバンチュール リーベス・アーベントイヤー

(正)恋のアバンチュール リーベス・アーベントイアー

p.75

(誤)追憶 エアインナルング

(正)追憶 エアインネルング

p.77

(誤)彷徨 ヴァンデルン Wandeln

(正)彷徨 ヴァンデルン Wandern

p.77

(誤)猛撃 シュヴェアラー・アングリフ

(正)猛攻撃 シュヴェラー・アングリフ

p.78

(誤)過疎化 エント・フェルカルング

(正)過疎化 エント・フェルケルング

p.79

(誤)残虐さ ブルタリテート

(正)残虐さ ブルータリテート

p.79

(誤)自明 ゼルプスト・フェアシュテンドリヒカイト

(正)自明 ゼルプスト・フェアシュテントリヒカイト

p.79

(誤)純潔、無垢 プリテート

(正)純潔、無垢 プーリテート

p.81

(誤)不在、欠席 アップ・ヴェーゼンハイト

(正)不在、欠席 アプ・ヴェーゼンハイト

p.81

(誤)不滅性、不死 イモルタリテート

(正)不滅性、不死 インモアタリテート

p.82

(誤)明晰さ アップ・ゲクレーアトハイト

(正)明晰さ アプ・ゲクレーアトハイト

p.82

(誤)優等 フォーア・ツュークリヒカイト

(正)優等 フォア・ツュークリヒカイト

p.82

(誤)霊性 シュピリチュアリテート

(正)霊性 シュピリトゥアリテート

p.84

(誤)ステファン

(正)シュテファン

p.86

(誤)キリスト教の使徒アンドレに由来。

(正)キリストの使徒聖アンデレに由来。

p.88

(誤)聖クリストフォロス

(正)聖クリストフォロス。「キリストを担ぐ者」の意味。

p.91

(誤)マテーウス

(正)マテオス

p.91

(誤)ミハエル

(正)ミヒャエル

p.91

(誤)短縮形はMichi(ミッヒ)など。

(正)短縮形はMichi(ミッヒィ)など。

p.94

(誤)アンジェリカ

(正)アンゲリカ

p.98

(誤)英語ではデニス。

(正)英語ではデニーズ。

(修正理由)英語で男性はデニス(Denis または Dennis)で、女性はデニーズ(Denise)。

p.98

(誤)フランス語ではナディア。

(正)フランス語ではナディア(Nadia)またはナディーヌ(Nadine)。

p.99

(誤)ブリュンヒルト Brunhild

(正)ブリュンヒルト Brünhild

(註)ウムラウトを補う。ウムラウトの印刷が不可能なら Br''unhild または Bruenhild。

p.100

(誤)マライ Marei

(正)マーライ Marei

p.100

(誤)ミハエルの女性形。

(正)ミヒャエルの女性形。

p.101

(誤)ヨハンナ Johanna 神の慈悲深さ

(正)ヨハンナ Johanna 神の慈悲深さ ヨハンネスの女性形。

p.103

(誤)哲学者イマニュエル・カントの名で知られる。

(正)哲学者インマヌエル・カントの名で知られる。

p.104

(誤)グリュンヴァルト

(正)グリューンヴァルト

p.105

(誤)靴屋

(正)靴職人

p.105

(誤)シュスター

(正)シュースター

(註)シュスターの発音もあるにはあるが、シュースターの方が一般的。

p.106

(誤)シュタットフェルト Stadtfeld 町と田

(正)シュタットフェルト Stadtfeld 町原

p.110

(誤)ベーゼンドルファー Bösendorfer 悪徳の村

(正)ベーゼンドルファー Bösendorfer 悪徳村の者

(註)ウムラウトの印刷が不可能なら B''osendorfer または Boesendorfer。

p.110

(誤)ベートホーフェン Beethoven カブ農家

(正)ベートホーフェン Beethoven 甜菜(テンサイ)農園

p.

(誤)ルガー

(正)ルーガー

p.114

(誤)青木 グリュン・バウム

(正)青木 グリューン・バウム

p.114

(誤)石田 シュタインス・フェルト

(正)石野または石原 シュタインス・フェルト

p.114

(誤)語源的には「井戸の周りで」、その場合は Nebenbrunnen(ネーベン・ブルンネン)。

(正)語源的には「井戸へ」、その場合は Zumbrunnen(ツーム・ブルンネン)。

p.114

(誤)岡田 ヒューゲル・フェルト

(正)岡野または岡原 ヒューゲル・フェルト

p.114

(誤)織田 ヴェーバース・フェルト Webersfeld

(正)織田 ヴェーバース・ライスフェルト Webersreisfeld

p.115

(誤)本来は「藤原氏」が由来。

(正)本来は「佐々木氏」と「藤原氏」の混成が由来。

その他、「田」はすべて

(誤)フェルト

(正)ライスフェルト

疲れたので、この辺でやめるが、中には著者が明らかに間違って覚えてしまった箇所(×ミハエルや、×ヴィクトーア・フランケンシュタインや、×ホッホなど)もある。この著者は着眼点が良いので、もし改訂版を出すことがあれば、上記の点に留意いただきたく思った次第。