その日学校から帰ってくると、アシムはまっすぐ私たちのお部屋へ参りました。トントンと律儀にドアをノックしてくれて。
「いいよ」
ゼオラさんが静かにお返事なさいます。私は席を外したほうがいいかと思いましたが、ゼオラさんが私を抱き寄せられてお隣に座らせて下さるので、このままここにいさせて頂くことにしました。
「入るね」
アシムは緊張した面持ちでお部屋に入ってくると、ゼオラさんの前まで歩いてきて、緊張気味に立っていました。ゼオラさんは近くの一人用ソファをお示しになられて。アシムを座らせて下さいます。
「お前の言うことは正しいと思うよ。確かに俺は自分が一番強いと思って傲慢に生きてきたし、リテとの結婚だって。同意を得たつもりだけど、俺が上手く言いくるめて無理やりものにしたと思われても仕方ない」
ゼオラさんの口調は落ち着いておられました。アシムもゼオラさんのお話を静かに聞いています。
「ただ俺はリテのこと本気で好きだし、一生護りきる覚悟で妻にしてる。いくら息子のお前でもとやかく言う筋合いないんじゃねえの」
「うん……ごめんなさい」
アシムは反省した様子で、静かに謝りました。
「いや、俺もアシムに謝ることあるんだよ。俺お前への当たりキツかったよな。ごめん」
ゼオラさんはアシムにぐっと頭を下げられると、アシムをじっと見つめられました。
「お前の魔力やセンス、頭の良さは凄い武器だと思う。必ずもっと強くなれるよ」
アシムはゼオラさんのお言葉を聞いてハッとしたように顔を上げました。
「お前見てるとさ、俺も負けてらんねえなって気持ちになるよ。今度俺とやるか?」
「僕と戦ってくれるの?」
アシムはソファから立ち上がると、声を弾ませて尋ねました。
「僕父さんと戦いたい!」
「アシム、お前意外と好戦的なんだな! いいよ、ガンガンやり合おうぜ!」
ゼオラさんはウキウキしたように仰ると、立ち上がられて嬉しそうにアシムの肩を抱かれました。私は心からホッとして。でも戦うということは、お二人共傷だらけになってしまうのでしょうか……。
「大丈夫ですよ。親子ですから」
私の不安をお察し下さったのか、分身さんは片目をつぶられそっと耳打ちして下さいました。
「戦うことで深まる絆もありますから」
「そう、ですか……」
私はゆっくり頷いて。強い方たちは違うんだなと思いました。
◇◇◇
その後、ゼオラさんは週末になるとアシムを伴われてパッと消えてしまわれることが多くなりました。
「じゃ行ってくるねー」
嬉しそうに微笑まれると私にウインクして下さって。アシムも私に笑顔で手を振ってくれます。私も手を振り返してお二人の背中を見送りました。
「にーちゃんとお父さん仲直りできて良かったね!」
アイマンがニコニコ笑って私に言ってくれるので、私はアイマンも気づいていたんだと有り難く思いました。
「ごめんね、アイマンにも心配かけて」
「いいよ! にーちゃんとお父さんって似てるもんね!」
アイマンはフフフと笑って言います。
「そう、かしら……?」
「うん、二人とも強いもん! 僕はにーちゃんもお父さんも大好き!」
アイマンがお二人を褒めてくれるので、私も嬉しくなりました。
「そうね。お二人ともお強くて頼りになって、素敵ね」
「僕は? お母さん!」
アイマンがくりくりした瞳で問うので、私は微笑みました。
「アイマンは誰より優しくて素敵ですよ」
分身さんがアイマンを抱っこして下さって。私は皆さんがいて下さって本当に幸せだと思いました。