私たちはお城に着くと謁見の間へ通されました。舞踏会の催された大広間より、もっと荘厳な感じのするお部屋です。ヒューが先に立って歩いてくれて、私はヒューの後に続きました。陛下にお会いするのはやはり怖くて足が震えましたが、ヒューはそんな私の手を引いて、陛下の御前まで付き添ってくれました。
「ヒュー!」
陛下はヒューをご覧になるなり玉座から駆け下りて、熱いハグをして下さいました。ヒューも陛下と談笑して、二人はやっぱりとても仲が良さそうです。
私はそんな二人の様子を嬉しく、でも遠い気持ちで見守りました。二人の後方で両膝をついてうつむき、黙って控えます。私はいつまでも待てる気がしました。いつまでもこの時間が続けばいいのに、などと願いながら……。
「サラ、君も大変だったね」
やがて、陛下が私に呼び掛けて下さるお声が聞こえました。陛下は舞踏会の時と同じように、とても優しく私に話しかけて下さいます。
「亡くなったヒューのお爺様は、僕の大叔父にあたる方なんだ。ヒューと僕はは・と・こ・だったんだね。この事実を知ったとき、僕もとても驚いたよ」
「本当に……お詫びのしようも、ございません」
私はなんとか申し上げましたが、声が震えて上手く言えませんでした。
「僕たちが生まれる前のことだから……。僕は苦労したヒューの希望を一番に叶えてあげたいと思っているんだけれど。顔を上げてくれるかな、サラ」
陛下がそう仰るので、私は緊張しながらそっと顔を上げました。私の目の前にはヒューがいて、その後ろには陛下が立っておられ、二人はよく似た笑顔で微笑んでいます。
「ヒューから君にお願いがあるんだって」
陛下は私にパチッとウインクなさるとそう仰いました。ヒューは私の手をとってゆっくり立ち上がらせてくれると、
「僕と結婚して、姉さま」
逆に私にひざまずいて、スッと右手を伸ばしてくれます。私はあまりのことに困惑してしまって、陛下とヒューを交互に見つめました。
「ヒューはどうしてもサラじゃないと嫌みたいだよ」
陛下は微笑んで頷いて下さいます。私は涙ばかりぽろぽろ溢れてきてしまって、両手で顔を覆いました。そんな私をヒューはそっと抱きしめて、頬を摺り寄せてくれました。
「僕と一緒にいて、僕だけを愛してほしい。これからも、ずっと」
ヒューがそう囁くので、私は今まで抑えていた声を漏らして、ヒューの胸で泣いてしまいました。
「でも、いいの……?」
「逃がさないって言ったでしょ」
ヒューはそう言って笑うと、私の涙を拭って、誓いのキスをしてくれました。