幸せな夢から覚めた絶望で、私はほの白い部屋で鈍い瞬きをしました。早朝、でしょうか……?
ヒューに、謝らなきゃ。謝ってすむことじゃないけれど。そして国王陛下に、私の処分についてご指示を仰がなければ。処刑の可能性は低いでしょうが、国外追放は免れないだろうと思います。ヒューがこの家と国境伯のお仕事を継げますように。私はそれだけを願って、ベッドから身を起こしました。
「起きた? 気分はどう?」
驚きました。私の様子に気づいたヒューがソファから起き上がり、心配そうに私を見つめてくれます。私はベッドから降りるとヒューの足元に両膝をついて座り、深く頭を垂れました。
「本当に申し訳ございませんでした、殿下」
「やめてよ」
ヒューはつらそうに笑って私の手を取ると、そっと立ち上がらせてくれました。そして私を包み込むように、強く抱きしめてくれます。
「私たちの秘密、想像以上に酷かったね……」
私はしょんぼりしてしまって、ヒューの胸でつぶやきました。
「そうだね」
ヒューも少し笑って、私の額にキスをくれます。
「私、ヒューにこの家をお返ししたいの。陛下にお話して、どんなお咎めも受けるわ」
私は早くこの家から出て行かなきゃと思いました。過去の罪は消えないけれど。私が去るから、これからは元通りに戻ってほしい。そしてヒューにはこれまで以上に幸せになって―――。
「僕も一緒に行くよ」
ヒューは私を抱きしめたまま、静かに言います。
「でも……」
「姉さま一人で陛下に謁見できるの? そもそも事前にお許しを得ないと、すぐには会えないよ」
「そう、だよね」
そうだと思って私は反省しました。手続きとか、何もしてなかった。ヒューは昔からこうやって思いつきばかりの私を助けて、いつも希望を叶えてくれます。どうしてそんなに優しいんだろう。私は不思議で仕方ありませんでした。私の存在自体が許せないくらいでしょうに……。
秘密が暴かれてしまった後も、ヒューは私をここに居させて、変わらず優しく接してくれました。心なしか、前より優しいくらいです。私は陛下へ謁見をお願いする手紙を書きました。そして陛下のお許しを頂いてから、ヒューと一緒に再び王都へ向かいました。
決意したものの不安はぬぐえず、私は心配で仕方なかったのですが、ヒューはとてもリラックスした様子で、道中私に花を買ってくれました。
「そんなに心配しないで。僕が陛下にお取り成しするから大丈夫だよ」
私の手を握って、優しく言ってくれます。
「陛下はヒューのことご存じだったの?」
私は不思議に思ってききました。
「違うと思うよ、僕も話してないし。ただ何となく親しくさせて頂いててね。見た目が似てるからかな?」
ヒューもよくわからないようで、首をかしげています。
「でも、絶対大丈夫。僕を信じて」
ヒューがそう言って抱きしめてくれるので、私は有難くて涙が出そうでした。あと少しだけ、甘えてもいいかな。王都に行くのもこれで最後になるかもしれないと思いながら、私は馬車に揺られてお城へ向かいました。