こいつもしかして、性転換した元男とかじゃないか……? それで体の関係を拒むのかもしれない。欲求が抑えきれずおかしくなってきた俺はこんな疑いを持ったりもした。でも体形は間違いなく女の感じなんだ。柔らかさ、骨格、声も。彼女の体は隅々まで撫でまわしてきたけど、やっぱり男って感じじゃない。って、その手の人に詳しいわけでもないし、断言するのもおかしいけど。ハルカは女だ、そう信じたかった。
「なあ、ハルカの弟さんに会わせてくれない?」
完全にお手上げだと思った俺はある時、ハルカにそう頼んでみた。母子家庭で育ったらしいハルカには4つ下の弟がいると言っていた。
「いいよ。連絡してみるね」
ハルカは弟とのやり取りも逐一見せてくれた。要所要所に「これでいいかな?」と確認してくれるのが嬉しい。ハルカのこういう丁寧なところを俺は愛していた。頭が男なんだよな、おそらく。ハルカは物事を効率で考えてくれる。「今日〇〇ちゃんがさ~」といった、女子によくある無駄話もしないし。まあ無駄話できる友達がいないんだろうけど……。
俺が弟君に会ったのは、ハルカと俺が互いに20歳の誕生日を過ぎた頃だった。付き合い出して1年以上、欲求に耐えたことになる。俺って結構凄いんだな。俺は、自分はもっと狼みたいにがっついたやつだと思っていたが、いざハルカを前にすると、それほどでもなかった。ハルカはエロい服で俺を誘惑してくるってこともなかったし。俺と一緒にいられるだけで嬉しいって顔で、ただニコニコしていた。それが余計俺をイラつかせて。俺はこんなんじゃ全然足りないのに。もっとハルカを知りたいし、汚したかった。ハルカの過去に何があったのか、男を避けるようなトラウマがあったのか。知りたかった。