居酒屋を出て、次カラオケ行こうかって話になったとき、俺はハルカの手を取ると迷わず駅方向へ歩いた。
「お先失礼します!」
申し訳程度の挨拶を、ハルカを強引に誘ってきたサークル代表に投げつける。ヤリサーにするつもりなら今すぐ抜けようと思った。写真を出しにするな。イライラしていた。
強く手を握ったまま、ほとんど引きずるようにハルカを引っ張って歩いた。そのことも、駅まで来て手を離してから気づいた。
「ごめん」
強く握りすぎたかと思った。でも、嫌なら言えよ。受け身ばかりのお前も悪いよ。言ってることと思いが矛盾して、頭ん中がごちゃごちゃする。
「ありがとう」
ハルカはこんな俺の身勝手にも嫌な顔ひとつすることなく、笑って礼を言った。その微笑みに、俺の何かがブチっと切れて。
「ついてきて」
俺は再びハルカの手を取ると、最寄り駅まで電車に乗り、家まで歩いて帰った。ハルカは始終おとなしくついてきた。馬鹿かと思った。お前は迷子か何かか? なんで大して話したこともない俺に黙ってついてくるんだよ。俺を信用してるのか? お前は俺の何を知ってるって言うんだよ。犯されたいのか? 一瞬たりとも握った手を離せなかった。21時台の電車は混んでいたのに。俺たちは双子のように、ぴったりくっついて帰った。