とりあえず、前のめりに同棲しようとしていたことは止めて。俺はハルカとの関係はそのままに他の女とも付き合ってみることにした。スマホに出会い系アプリを入れ、軽いプロフィールを書いて。ハルカは全て知っているが、俺に何も言わない。
投げやりと呼ぶにはあまりにも冷静な気持ちで。他の女に夢中になれるなら乗り換えたいと思っていた。それがお互いのためのような気がして。我ながら打算的で、妙な浮気だ。
自分の経験値不足が気になるのもあったし、ハルカにハマりすぎている状況が恐ろしくもあった。もっと視野を広げて、冷静に選ばないと。女はたくさんいるんだから。
ハルカは俺が他の女と寝ている方が気が楽なのか、俺に何の不満も言っては来なかった。嫉妬すらされないのが悔しくて、女と会った直後にわざとハルカに電話したり家に押しかけたりした。我ながら最低だが、ハルカは俺が誰とどこにいようと文句を言うことはなかった。
「人の心は縛れないし……遼くんの人生だから」
無理している感じもなく。ハルカはいつもの透明な笑顔で優しく言う。すがすがしいほど冷たい人だと思った。
浮気相手は皆、俺に彼女がいることは知っていた。彼女から俺を奪おうとする人もいた。でも何かが足りなかった。顔も体も魅力的なのに、何かが決定的に足りなくて。俺は不倫夫のように結局ハルカの元に戻ることになる。大学を卒業して就職してもこの状態が続いた。俺がどんなに遊んでても、ハルカが仕返しに浮気するということはなくて。
「なんでハルカはしないの?」
「遼くん一人で、充分だから」
苦笑して言うその意味も本当と捉えていいらしかった。他の男と寝たいわけじゃないんだ。俺はなぜか安心できる気がして。誰かと会って遊ぶたびハルカならどんな反応をするだろうと考えたりして、予習というか実験台にしてしまっているところがあった。世の中には浮気歓迎、遊び大好きって女が多いことも知った。俺含めこんなドロドロした世間に身を置いているのにハルカだけはどこ吹く風って様子で、違う世界の住人であるかのごとく、いつも透明で明るかった。ハルカを捨てるために浮気してるはずなのに結局ハルカの尊さを思い知るという困った状況に俺はなってきた。全部自業自得なんだけど。俺は真正の愚か者らしい。