私が今日は宮廷舞踏会に呼ばれたので王都に来たことを話すと、司祭様は
「お連れの方はおられないのですか」
と優しく私に尋ねられた。
「一緒に行くはずだった兄に急用で断られてしまって。今日は一人なんです」
私は少し恥ずかしく思いながら答える。舞踏会に女一人なんてありえないよね……。でも一度「出席」とお返事したのを断るのも失礼かもしれないと思い、田舎者の私は困って、結局一人で来てしまった。
「よろしければ、私とご一緒しませんか」
司祭様は、初対面の私をとてもあっさり誘って下さった。
「えっ……でも、いいんですか?」
「私もちょうど相手がいなくて困っていたところですので」
司祭様は私を見るとそう仰って、にこっと優しく笑った。さっき聖堂のドア越しに見ていた女の人はいいのかな? と私は思ったけれど、有難いお誘いなのでお受けしようと決めた。
「じゃあ、お願いします。でも私、着いたばかりで着替えができてなくて」
「では夕刻、お迎えに参りますね。宿にお泊りなのですか?」
「はい」
私は宿の名を伝えて、司祭様と別れた。都会では司祭様も舞踏会に出るんだなあ。とても端正な方だったし。さっきの女性、司祭様のことが好きなのかな?
私は王都に取ってある宿まで歩いて戻ると、ドレスを着て髪を整えてもらった。バラの首飾りの彼女にまた会えるかな。どんな男性よりあの人と会えるのが楽しみな気がして、我ながらおかしかった。何か彼女は気になって仕方ないんだ。
司祭様は約束通り、夕方宿まで私を迎えに来て下さった。私の手を取ると馬車の戸を開けて、親切に乗せて下さる。
「あの、失礼だったらごめんなさい。その……目がお悪いのですか?」
私はどうしても気になってつい司祭様に尋ねてしまった。
「ええ、気づきましたか」
「私を見るとき、少し目を細めておられるようだったので」
「ぼんやりとは見えているのですが、はっきりした形までは。ガラス越しのような状態でしょうか。かなり近づくと見えるのですが」
司祭様は私の不躾な質問にも丁寧に答えて下さる。
「できれば私と腕を組んで歩いて下さいますか。誰かにぶつかることは無いと思いますが、つまずくと危ないので」
「はい。こんな感じですか?」
私は司祭様の左腕に自分の右手を絡めて添えると、感覚を確かめてもらった。
「ええ、ありがとう」
司祭様はやっぱりにっこり笑って下さって。とても癒される笑顔をなさる方だなあと私は思った。