吐く息は白く、雪はやみそうにありませんでした。私は外套の前を押さえながら、行くあてもなく雪の中をとぼとぼ歩きます。身を投げられる高い崖でもあったらよかったのですけれど。あたりには山も川もなく、海もありませんでした。ずっと先に暗い森の木々が見えたので、そちらへ歩を進めます。
オオカミに食べられるのは痛そうだな……。私は死ぬことよりその前の痛みが怖くて、暗い気持ちになりました。痛みも苦しみもなく死ねたら良いのに、なんて。私は図々しすぎるでしょうか。雪はいいなあ。雪のように跡形もなく消えてしまえたらいいのに。
空はどんどん暗くなって夜が近づいてくるようでした。やっぱり夜の森に入るのは怖いなあ。雪に埋もれて凍え死んでしまおうか。私はせっかく森の入口まで歩いてきたのにどうしても中に入る勇気が出ず、雪を払って大きな木の根元に腰を下ろしました。
座った部分から冷たさが伝わってきて、少しずつ全身を冷やしていきます。季節が冬で良かったかな……。私は指を組んで祈りながら目を閉じると、静かに死ぬのを待っていました。頭や肩にも雪が降り積もって。このまま雪に包まれながら、でも遺体は見つかりますようにとそれだけを願っていました。
「君は……何故外にいる? ルイスはどうした」
だいぶ体も冷えてぼんやりしてきた時でした。どなたでしょう、私に話しかける御方がおられます。
「早く家に戻れ。……歩けないのか?」
低いお声で、若い男性のようでした。ギュッ、ギュッと雪を踏まれながら私の方に歩いて来られるように感じましたが、私は動くことも目を開けることもできなくて。力なく下を向いておりました。
その時バーン! ビリビリッという落雷のような音がして。辺りが一瞬明るくなったように感じられました。私はビクリと震えてしまって。
「去れ」
天からのお声のようなものがかすかに聞こえます。その後、どなたかが背後から私をギュッと抱きしめて下さる感触がしました。
「死ぬつもりだったのかい? こんなに冷えて」
可哀想に、とその御方は優しく仰いました。長いマントのようなものをお召しで、私を抱きしめながら包んで下さいます。
「一度捨てた命なら、もらってもいいよね」
強いお力で抱きしめて下さるので、私は震えながらじっとしておりました。マントに包んで頂いた体はあたたかく、心地よくて。すぐ眠ってしまいそうです。そのうち力なく閉じた瞼の裏にまばゆい光を感じて、体がふわっと宙に浮いたような気がしました。音もなく、大きなあたたかい光のようなものに包まれて。私は天に召されたのかもしれないと思いました。