「バルトの結婚披露だけど、どうする?」
「石持ちが大勢来るんでしょう。危険では?」
「でも夫婦で来いって招待状だぜ。あいつ何か企んでんのかな」
次の朝私がぼんやり目を覚ましますと、お二人が真剣に話し合っておられるようなので私はホッと致しました。お二人が仲直りされてよかった……。私はお布団の中でゴロゴロしながら、つい二度寝しそうになってしまいます。
「ビビって連れてこなかったと思われても癪だし。顔までガードして行くか」
「船なんですよね?」
「ああ。超大型客船らしい」
「私もついて行きましょう。バルト・アルマンへの紹介が終わり次第連れて帰ります」
私はとても怠惰で。眠くて仕方ありませんでした。お二人には申し訳ないのですが、どうしても頭がぼんやりして……。私の人生は起きているより寝ている時間のほうが長いのではないかと思えるほどです。
「リテ、調子悪いのかな」
「力を吸いすぎなんじゃないですか」
「俺のせいみたいに言うなよ」
「私は与えることを意識してますからね」
お二人は朝からサッと行動されるのに、申し訳ないなと思いました。起きなきゃ……。これ以上ご心配をおかけするのはよくないと思い、なんとか動こうとするのですが。体が重くて言うことをききません。
「リテ……大丈夫ですか」
分身さんが私の腰の下あたりにすっと御手を伸ばされるので、私はビクッとしてしまいました。
「大丈夫ですよ。リラックスして……」
私は静かに深呼吸して。触れて頂いたところからじんわり温かくなる気がします。
「我々の命を分けますからね」
分身さんはそう仰って、もう片方の御手で私の体を優しくさすって下さいました。私は機械のように充電されていく気がして。
「まあ、のんびり行こうや」
ゼオラさんも微笑まれると、すっと立ってお部屋を出ていかれました。
◇◇◇
「一応説明しとくと、君はエイドっていって人に力を分け与えられる存在なんだ。自分を犠牲にしてまでね。それで君らエイドからは金木犀みたいないい匂いがすんの。君は特にそれが強くて、石持ちなら誰でも虜にするくらいの甘い匂いがしてる」
「はい……」
私は寝坊しながらも何とか起床させて頂くと、ベッドの上に正座してゼオラさんのお話を伺いました。
「だからそういう君を人前に連れ出すのは嫌なんだけど、今日はのっぴきならない大人の事情でついてきてもらいます。君の魅力はお肌からにじみ出てるらしいから手や顔まで覆うファッションになるけど、いいかな」
「……はい、お願いします」
私はコクリとうなずいて、全てお任せしました。私の世話は大変なんだと思います。私はゆったりしたドレスに黒いヴェールを被せて頂くと、黒いレースの手袋をはめました。綺麗な靴も履かせて頂いて。
「リテは素直でいいね」
ゼオラさんは完全武装した私に納得なさったご様子でうなずかれると、私の頬を撫でて下さいました。
「もっといろいろうるさい女だったら大変だったわ」
「ルイス・マイヤーの教育の賜物でしょう」
分身さんも私の衣装を確認して下さいながら、落ち着いたお声で仰います。
「あいつが女の子の面倒見るとは到底思えないんだけどなー。絶対放置してたと思うぞ」
「まあ、何でも買い与えるタイプじゃなさそうですね」
分身さんはそう仰るとパッと白いフクロウに姿を変えられて。私の肩にとまられました。
「じゃあ行こうか」
ゼオラさんが私の手を取って下さって。すっと抱き寄せて下さると同時に目の前がパッと眩しく光って、思わず目をつぶります。ふわりと体が浮く感覚があった次の瞬間、私たちは豪華客船の立派な船室内に立っておりました。