お二人が去られてしまうと、お部屋はまた元のように静まり返って。私を護って下さっていた光の檻も消えてしまいました。私は手首に残る細い金鎖にそっと触れて。どこか温かい気持ちになります。
「大丈夫、母さん?」
氷の短剣を握って緊張していた少年は、剣をパッと消すと私に駆け寄ってくれました。
「はい。ありがとう。アシム……さん」
私は壁にかけてある写真を見て自信なく言いました。写真には仲の良さそうな家族が笑顔で写っていて。一瞬で消えてしまわれた銀髪の御方やこの子もいます。写真には皆さんのお名前が書いてあって。私はそれをじっと読んでいました。
「アシムでいいよ」
アシムは優しく教えてくれると、ベッドに乗って私にギュッと抱きついてきました。
「ごめんなさい、母さんを護れなくて」
「ううん、ありがとう。怖かったね」
私はアシムを抱きしめて。優しい子だなと思いました。自分も怖かったでしょうに……。お部屋の細氷はいつの間にか消えてしまって、窓からは朝の光が差しています。私は消えてしまわれた銀髪の御方のことを思っていて。ご無事が心配でした。とても怒っておられるようでしたが……。
アシムが私を抱きしめながら何か考えているようでしたので、私もじっとアシムの体温を感じていました。ここは何処なのでしょう。今日は何月何日で……学校のある日でしょうか。時計を見ると七時でしたので、私は朝の支度をしたほうがいいのだろうかと思いました。
「お母さーん! おはよー!」
その時廊下から大きな声がして、誰かがお部屋のドアを開けようとするのがわかりました。アシムはすっと私から離れて。
「お母さん、叔父さんいない?」
栗色髪の男の子がお部屋のドアを開けると、くりくりした瞳で私に尋ねます。
「母さんは一日目に戻っちゃったんだ」
「そっかー」
「ロディは?」
「ご飯作ってるよ!」
この子が弟のアイマンくんでしょうか。私は先ほどの写真を思い出しながら考えました。
「おはよう、アイマンくん」
「おはよう!」
私が声をかけると嬉しそうに大きな声で返事をしてくれて。
「お母さん、僕はねー、朝の準備も自分でできるから見てて!」
そう言うと張り切ってお部屋を出て行きますので、私はつい微笑みました。自分もベッドを出ようとしていますと、目の前がまばゆく光って。先ほど消えられた銀髪の御方がすっと出現されました。
「ゼオラ、さん……」
私は驚いてその御方を抱きしめました。相当お疲れなのか、よろけておられるようです。
「父さん、ごめんなさい」
アシムはゼオラさんを見るとすぐ頭を下げました。
「危ないから、もうするなよ。少し、二人にしてくれ……」
ゼオラさんはアシムに優しい口調で仰ると、私をギュッと抱きしめられました。アシムは静かにお部屋を出ていって。
「リテ……疲れた……」
ゼオラさんは脱力されて、私にもたれかかっておられます。私はゼオラさんをお支えするほどの力は全く無くて。そのままベッドに倒れ込みました。
「ごめん、癒やして……」
私は夢中でゼオラさんを抱きしめると、お体のご回復を祈りました。
「お好きなように、なさって下さい」
ゼオラさんがお元気になって下さることだけを強く願っていて。夢中で抱きしめます。
「気持ちいい……」
ゼオラさんは閉じられた瞳のまま嬉しそうに微笑まれると、私にキスを下さいました。
「コピーも入れて戦ったから……。ちょっと待ってね」
学校送る時間までには出すから……と仰るので、私はゼオラさんのお体に密着して、全てを差し上げたいと思っていました。