私たちは、ルースワイツ王国という北の国へお邪魔させて頂きました。出かける準備をして靴も履くと、ゼオラさんと分身さんが私たちを抱き寄せて下さり、まばゆい光に包まれて。一瞬で目的地に連れてきて下さいます。
私たちが降り立ったのは宮殿の一室といった感じのお部屋で、若い女性と十歳くらいの男の子が一人、優美な椅子に座られ大きな楕円形のテーブルでお茶を飲んでおられました。
「俺は先に挨拶してくるから」
ゼオラさんはそう仰ると分身さんに目配せなさって、お部屋を出て行かれます。白いマントを翻され、肩までの頭巾も着けて正装しておられて、いつもより荘厳なご様子でした。アイマンは分身さんが抱っこして下さって、私は不安そうなアシムの手を握って、そっと抱き上げました。
「あっ、あなたは以前会ったわね!」
その時椅子にかけておられた女性がパッと立ち上がられて、私に近づいてきて下さいました。
「私はナディア、レヴィの妻よ。こっちは息子のライリー」
「こんにちは」
ライリーと呼ばれた少年はお母さんと同じようにパッと椅子から立ち上がると、私に礼をしてくれます。
「こんにちは。はじめまして」
私も丁寧にお辞儀して。以前お会いしたと仰って頂きましたが、全く覚えていないことを申し訳なく思いました。
「ごめんなさいね、あなた記憶ができないのね。それなのに私、船であなたを見つけた時つい嬉しくなって声をかけちゃって」
「いえ、こちらこそ。覚えていなくてすみません」
「いいのいいの。可愛いお子さんたちね」
ナディアさんはアシムとアイマンを交互に見ながら、私に微笑んで下さいました。
「こちらがアイマンで、兄の方がアシムです」
分身さんが赤ちゃんのアイマンと二歳になるアシムを順に紹介して下さいます。
「あなたは、あの怖そうな人の兄弟?」
「魔法で作られた分身です」
「そう……そっくりね」
ナディアさんは目を丸くなさいながら分身さんを眺めておられました。その時ゼオラさんがパッと私の前に出現されて。
「ルースワイツ王がリテに会いたいって言うんだけど。来てくれるかな」
私に優しくお尋ねになりました。私は抱っこしたアシムを見て一瞬戸惑ってしまいましたが
「アシムは私が見ていましょう」
分身さんがすぐそう仰って、私をお気遣い下さいます。
「私達も見てるから。行ってらっしゃい」
ナディアさんも笑顔でそう勧めて下さって。
「すみません。ありがとうございます」
私は皆さんのお言葉に甘えてアシムを預けると、ゼオラさんの後に従いました。