「じゃあリテはまだ、誰とも……?」
ゼオラさんはルイスさんのお答えにだいぶ衝撃を受けられたご様子で、私の隣から跳ねるように立ち上がられました。
「待って。ちょっと待っ…………ヤバい、俺……」
お顔を押さえながら窓際まで歩いて行かれると、私と距離を取られます。
「俺、またやらかさないかな。制御できる自信がない」
ゼオラさんは深刻そうなお顔でルイスさんにご相談されました。
「共生の魔印っていうのがあるから、しとこうか」
ルイスさんはいつもの落ち着いたお声で答えて下さいます。
「何それ?」
「エイドの力を吸いすぎないように制御する魔印だよ」
「それをすれば絶対殺さない?」
「普通に暮らしてるぶんにはね。二人の間に専用回路を作ってエネルギーをやりとりするんだ」
ルイスさんはそう仰いながら私の方にも向かれて、優しく教えて下さいました。
「全く痛くはないんだけど、魔法で体に模様を描くんだ。全身ではないんだけど。嫌かな?」
私の目を覗き込みながら丁寧に確認して下さいます。
「いえ……お願いします」
私はペコリと頭を下げて、ルイスさんに全てお任せしました。ルイスさんから何か教えて頂くと心が落ち着く気がします。さっき赤ちゃんの頃からと仰っていたので、ルイスさんは長年にわたって何でも忘れてしまう私を保護し、いろいろ教えて下さったのでしょうか。
「仙骨の辺りに印が残るけど平気?」
ルイスさんはゼオラさんにも確認を取られていました。
「仙骨って?」
「腰とお尻の境目って言うか……お尻の始まり辺りだよ」
「……そこしか無いの?」
ゼオラさんはかなりびっくりなさったお顔で、小さく問われました。
「魔印は全部場所が決まってるから。ここじゃないと効果がないんだ」
「そう……いや俺は全然いいけど」
ゼオラさんは呆気にとられたご様子で小さくうなずかれると
「だいぶエロい位置だね」
素直に思ったことを仰いました。
「まあ夫婦の印だからね。他の人間が容易に触れたり、印を解除できないような位置にあるんだ」
「なるほど」
ルイスさんは何を訊かれても冷静にお答えになられて。博士のようになんでも知っておられるんだと私は尊敬致しました。ゼオラさんもルイスさんを信頼なさっておられるのか、今度は納得なさったご様子でまたうなずかれました。