地歌舞は、ちょうどこういう空間で舞うのが一番良いのです。
日本舞踊、歌舞伎は劇場で舞います。
舞台で起きることは人殺しが起きようが、なにが起きようがお客様は安全です。
ちゃんと、舞台と客席が分かれている。
地歌舞は違います。お座敷舞と申します。
座敷の中で舞われて、気配を感じる空間で、舞は舞われたものなのです。
ですから、ずっと居なくても良いのです。
気配で感じる、同じ空間で感じて、何かひと時を楽しむというのが地歌舞、地歌というもので、
気配を感じるのは、そういった小さな空間が良いのではないかと思います。
歌舞伎では動きもはっきりわかりやすく、新しい物であった。
それに比べて地歌舞はお座敷の中で、二方向で発展してまいりました。
花柳界で、舞妓さん芸妓さんが舞った。
ここでは食事が出ていますから、そこでほこりを立てると不潔になりますので、
静かに舞ったともいわれております。
また、余裕の有るお嬢さん、奥さま方が舞われた。
こちらでは仕草をしっとりと、女らしさを培うために、静かに舞ったと。
気持ちの豊かな表現が必要であった。
歌舞伎は型があってそこに心を入れていきますね。
私はそれは難しいと思います。地歌舞は型が後なんです。
気持ちを持っていって動きになった時、型ができるという、そういう文化です。
日本の文化はとても奥が深いと思います。
着物文化そのものが無駄なものを付けておいてね、でも無駄じゃない。
これが、お袖がかわいらしい。
そして袖も、いろんな意味合いがありますよね。
袖の露なんていいますと、袖に露があたったのではなく涙のことですね。涙の露。
袖を片敷く、というのは一人で袖を片方に敷いて寝ている。
ほんとうなら、彼の腕枕があるはずのところがなくて、私は袖をひいて寝ている。
一人寝の寂しさをいいますね。
お袖とか、裾なんかも物語が隠れているので、文化を大事にして。
思いますのは、虫の音を聞いたりする。自然のものを大事にする気持ち。
これが着物の四角を、四角なまま着物にするというのにもついていますし、
そして、着物を着ることで、仕草が美しくなる。
ちょっとした、こころ配りができるようになることなのです。
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