投稿日: May 13, 2013 12:22:3 PM
邦楽いろは談義(第15回) 「着物しぐさと舞」での、
地歌舞と演奏曲目の紹介をします。
地歌舞
◇ 「待てど暮らせど」 舞 古澤侑峯
童謡、唱歌としてうたわれる、「宵待草」(よいまちぐさ)は、大正浪漫を代表する画家の竹久夢二によって創られた
詩歌のタイトルです。恋多き夢二の、実ることなく終わった
ひと夏の恋によって、この詩が創られました。
多忠亮(おおのただすけ)により曲が付けられて出版され、
高峰三枝子の唄で、一世を風靡します。
黒船(竹久夢二)
地歌舞「待てど暮らせど」は、古澤流家元の古澤侑峯の創作した舞です。
筝の演奏に、
「待てど暮らせど 君いでず」
と、地歌が入ります。つづいて、
「日は暮れはてて ほの白き 角のほとりの 小路の花よ」
と歌い、さらに
「待てど暮らせど 来ぬ人を 宵待草のやるせなさ 今宵は月も出ぬさうじゃ」
と、唱歌宵待草の歌詞が、ほぼそのまままに歌われています。
唱歌に比べると、どことなく艶っぽい唄になっています。
歌を聴いていると、古澤侑峰がこの歌につけた振り付けは、どんなんだろう?
地歌舞はどんな仕草かな?、着物は・・?と、舞台姿がどうしてもも観たくなります。
当日が、楽しみです。
演奏
◇ 「瀬音」 (宮城道雄 1923年 作曲) 筝:岡野志保、十七絃:光原大樹
宮城道雄が、29歳のとき作曲した代表的な作品です。
群馬県に旅行したとき、利根川の上流の水の流れる音を聴いて作曲したものです。
谷川の、上流を流れる澄み切った水音が、目に浮かぶような曲です。
宮城道雄は作曲家であり、また箏曲家として自作や古典曲の演奏を行っていますが、
同時に、古典楽器の改良や新しい楽器の開発をたくさん行っています。
十七絃(じゅうしちげん)も、宮城の考案した楽器のひとつで、
それまでの筝に、4本の絃を追加して、17本の絃を持つています。
このため、低音域が拡張され、箏の音域と表現力が飛躍的に拡大しています。
「瀬音」は、自ら創作した十七弦をつかって、豊かな低音域の表現に挑戦した曲で、
冒頭の十七絃の低音に支えられた激流、そして穏かな流れとなった中間部の
美しい音色をたっぷりと、お聴きください。
◇ 「海鳴り」 (石井由希子 1998年 作曲) 三絃:岡野志保、十七絃:光原大樹
石井由希子作曲の、三味線と十七絃という珍しい組み合わせによる演奏です。
石井由希子は千葉県出身で、武蔵野音楽大学作曲学科を卒業して、
現在、精力的に、尺八や三味線、筝、十七絃など邦楽の曲を作っています。
「海鳴り」は、三味線の高音と、十七絃の重低音がよくマッチして、
ずっしりとした深いメロディと迫力あるリズムが印象的な作品です。
十七絃はメロディ部分を演奏する箇所もあり、作曲者の女性らしい繊細さと、
ポップスに通じる激しいながらも綺麗なメロディラインを奏でています。
中間部分には、穏やかな大海のイメージが出てき、その前後には、
激しくうねる大海原のイメージがあるなど、たいへんダイナミックな曲です。
黒船屋(竹久夢二)画像出典:Wikipedia
「待てど暮らせど 来ぬ人を・・・、宵待ち草のやるせなさ」
このフレーズは、ご存知の人は多いでしょう。