きょうはありがとうございます。
お話に入る前に、ちょっと皆さんにご覧いただきますが、
(と着物の半襟を指す)。
これはDen10の会がお世話になっている、
ずいこさんの手描き友禅の半襟です。
いろは談義の4回目に、友禅染めに挑戦の折りに、
会員さんが私のために描いてくださったものです。
素敵でしょう。
こんなことも、Den10の会ではやっているそうですので、紹介しました。
1、着物しぐさは舞いしぐさ
着物しぐさの話しをしようと思った動機を、先にお話します。
日本には日本舞踊という、歌舞伎からきた歌舞伎舞踊の華やかな舞台と、
地歌舞という先ほど舞わせていただいた非常に動きの少ない、
ちょっと地味な舞のふたつがございます。
これを舞と踊をひとつにして、日本のものだからということで日本舞踊と言う言葉を
坪内逍遥先生がつくられたというふうに聞いております。
歌舞伎はどうしても誇張した動きになります。いろいろ練り型があります。
顔もこうかわいらしく、とても愛くるしくするとか、男の人は男らしくなったりします。
日本舞踊はいろんな流派があり、地歌舞も流派がありますので、流派によって違うのですが、
地歌舞は気持ちが滲んで出て来て、そして見るんでもすっとこう見る。
おとこでも男らしくするんでも、ガッとやらずに、なんとなくためて見る。
動きがおとなしいんですけれども、これは、普段の日常の生活に近い動きでございます。
歌舞伎の中のヒロインのように、こうやって歩くと普段は変ですよね。
やっぱり、自然な動きを大事にしている、そうした成り立ちの上にある地歌舞が舞しぐさとして、
着物しぐさには良いんではないかと、思ったわけです。
(歌舞伎の誇張した動きは)、どうしてかといいいますとひとつには、
舞台で見ることを中心に、その目的のために発達した歌舞伎。
男性が女性の形をしますから、男性はどうしてもヒップは小さいですし、
女性と体格が違いますから、それでちょっと誇張して女らしく、というところがございました。
まして、昔はごく離れたところから、蝋燭の火で見たりしましたから、
動きは誇張した動きに、それでもって型となって、
とても美しいものとなって、残されたわけであります。
地歌舞は御座敷の中で、京都の舞妓さんも大阪の芸妓さんも地歌舞をしますが、
お座敷で、お料理の出ているところで、ばたばたしてはいけませんので、
自然に静かな動き、そして気持ちが、気配が通じる動きが地歌舞でございます。
そこで、違いはどうかといいますと、(地歌舞は)お能とは似ているんです。
着物の場合と洋服の場合ですと、洋服は人間の形にあわせて、
特に美意識としては、女性はバストがちょっとグラマーで、ヒップも外人の方のように出ていて、
ウエストがくびれていて、こういう形がきれいですよね。
かたや、着物の場合は柳腰と申しますね。あまりお尻が出ていないほうが美しい。
ほっそりとしてなで肩で、というのが基本になっています。
これは動き、姿勢でそういうことができます。
私お弟子さんに言うんですけど、むかしプリーツスカートをはいて電車に乗るとき、
こうやって座りますよね。このとき、ここを伸ばすじゃないですか。腰の上のとこを。
こうすると真っ直ぐになりますね。そしてここをまっすぐのまますっと立って胸を張る。
これが地歌舞とか、お能の基本でございます。
これが、実はとても身体にいいそうでございます。
2、健康で美しい姿勢
ハワイのシャーマンに日本人ではじめてなられた菅原真樹さんとお会いしたんですが、
彼は美人塾をやっているんです。健康になって美しくなる。
そのためには、一番重要なのは、ここのところ(腰の後ろ)を、
上向に寝るとそってると、ここに手が入りますが、
(床に)ぴたっと付けて、首も後ろに付けて、そうするとそれが身体に一番良く美しい。
確かにそうですよね、年取ると、だんだん首がこうなりますよね。(と前に、顔を出す)
これ、あまり美しくないですね。ぐっと首を後ろに引いて。
ここが、寝たときにできるだけ後ろに付く。
そして、お尻がキュッと後ろに出ていると腰痛に悪いんです。
西洋の方は、骨がしっかりしています。日本人と違って。
日本人はデリケートというか、華奢な、繊細な造りなのですね。
ですから、あまり腰に負担をかけてはいけない。
骨がいっぱいありまして、きゅっと曲がると、全部の体重が
そこにいっぺんに来るので、腰が悪くなりますが、
同じように真っ直ぐしていると、ひとつずつに体重が分散して、
この形は、着物しぐさの中ではお尻が出なくて、柳腰できれいに見えるわけなんです。
そして、いかり肩。
私いかり肩なので、着物似合いませんとおっしゃる人がありますが、
そんなことないです。日本人は、みんな着物似合います。
たいてい、いかり肩の人は首が長いですね。
そして、なで肩の人はだいたいあまり首は長くありません。
ちゃんとバランスが取れているんですね。
もし、肩がそんなになで肩でなくて首が短い人でも、仕草でバッチリいきます。
たとえば、肩が猫背で、キュッとこうしているといかり肩に見えますでしょう。
これが、まず姿勢を良くする。でもまだ、肩張ってますよね。
これを、わきの下に卵が入っているようにふわっとする。
でイメージとしては、背中からエンジェルの羽根のように手がはえているです。
ふわーっと、こう前にきている。どうですか、なんとなくなで肩に見えません。(会場どよめき)
そして、お尻はキュッと出してはだめです。引っ込めて、お尻のほっぺたをキュッとします。
そうすると、ヒップはアップします。
やはり着物は、実は身体のラインがすごく出るんですね。
男性でも女性でも、ちょっとセクシーな人の後姿は、お尻がカッコ良くありませんか。
そして、足も身体に一番良いのは、これも真樹さんの話ですが、
膝の向きと足の親指と人差し指の間、足袋だと割れているところですが、
それが同じ方向に向いているのが身体に良い。
じゃ、ウチワだと(足先が)内向いているじゃない。そんなことありません。
膝も内をむきます、足と同じ方向に。これが女性の着物の歩き方ですが、
男性の場合は、これがこのまま股のところで開いて、膝と足をこんなに。(と、開く)。
ちょっと男らしくありません、私。凛々しく見えないでしょうか。
やっぱり、世界中は僕のもの、ちょっと人に貸していますけどね。手に負えないので。(笑い)
世界中の女性は僕のもの、だから女性に優しくしますが、手に負えないので人に貸しています。(笑い)
そういう感じでいくと男らしくなります。
3、鉢巻、タスキ、腰紐
そして、もうひとり(河野)智聖先生、気功の先生です。お会いする前にご本を拝見しました。
日本人には、鉢巻、タスキ、そして腰紐がある。
まず、腰紐からいきましょう。
地歌舞を教えていますと、腰を入れてこう歩いて欲しいんです。
ところがみんな、そんなことしないで、腰を入れてくれない。
裾引きの着物を着ると、うーんと下で締めるんです。
裾引きの着物を着て舞台に立たせると、みんな腰が入ります。
ここに一本はいるだけで、腰が入ります。安定します。
お相撲さんのマワシ、あれパンツでしたらどうでしょう。(笑い)
だいたい力が入らないでしょうね。
マワシが締まっているから力が入って腰が(落ちて、具合)いいんです。
だからお稽古で、どうしても腰の入れ方が分からない子には
着物の上から、一本腰紐を差しまして、ぎゅっと締めるんです。
そうすると、意識して腰が安定するんです。
これと同じようなことが、鉢巻なんです。これはわたし試していません。
運動会で鉢巻しますよね。受験のときに捻り鉢巻をしますよね。
あれが良いんですって。ぎゅっと締めると、脳の活性化がされて、あれが良いんです。
賢くなったらどうしましょう。
それとタスキ。このタスキをこう後ろからします。
これが、働くときに良いんです。肩が凝らなくて、という風にうかがいました。
だから、日本人は昔の知恵を疎かにしないで、復活すればどうでしょうか。
快適に過ごせるんではないでしょうか。
4、着物の常識、豆知識
打ち合わせをしていた時のお話しをします。
お着物の方多勢いらっしゃるので、ご存知だと思いますが・・・。
私の友人で男の人がおしゃれに、着物で邦楽の会に行った時のことです。
みなさん洋服で来ているところに、彼は着物で行ったんです。
彼は自信もって正装だからいいんだと思って、ちょっと偉い先生のところに
挨拶に行ったら、「羽織を脱ぎなさい」と言われた。
「いじめられた」と、仰るんですが、違うんですよね。
目上の人の前では、羽織を着てはいけません。
羽織は普段着なので、目上の人には正装でお会いしますから、羽織は取る。
大阪の芸妓さんは羽織は一切着ません。道でどんな方に会うかもしれない。
お客様かもしれない。自分は目下でございます、ということで羽織は着ません。
左褄、芸者さんのことを左褄といいます。
左手で褄を持って歩きます。ちょっと色っぽいでしょ。素敵でしょう。
奥さんは、こうして右手で褄を持ちます。凛として品がいいじゃありませんか。
でも、もし右手で褄を持っていると、殿方がここに手を入れようとしたとき、
左手で払うの大変ですよね。男の方が、ちょっと悪いことしようとしたとき、
左褄ですと、右手で払えますよね。それで左褄というんだそうです。
聞いてびっくりしましたが、ほんとのことだか分かりませんが・・・。
5、美人に見える顔のしぐさ
仕草って、ちょっとしたことで変わってきます。
舞のときも、顎を引いてお腹を引き締め、ちょっと体重を前にかけて、
そうすると、身体の形もきれいに見えますが、顔が美人に見えます。
なぜかというと、アエラに書いてあったんですが。「美人美男どうしてか」。
赤ちゃんの顔に近いのが良いんだそうです。
歳を取ると、顔の下半身が成長するんです。(顔の下半身が)駄目になるんです。
で、上が大きくて、下が顎が小さくて、顎をぐっと引いて、目をパチッと開いて、
ぐっと見ますと、どうですか。(と、その表情を見せる)。
眼を見つめたりすると、目が大きく見えて、眼の輝きですね。眼は心の窓です。
人間って、たとえば恋人の顔を見つめているとき瞬きしないんです。
気を抜いたとき瞬きします。
ご主人がこっち向いていて瞬きをしたら、怒っていいですよ。(笑い)
でもね、眼がしょぼしょぼして、瞬きしちゃうときはどうしましょう。
遠くを見るんです。
遠くを見ると眼は輝きます。そして美しい目になります。
寄り眼の方がいて、毎日遠くを見てて、だいぶ良くなった。
人間の身体は正常に持っていけばよくなるし、悪循環を繰り返すと悪くなる。
椅子に座るときに、お尻の下に半紙を敷いているように、
これをバリッとしないで、そーと座る感じですね。
そして、体重は少し前のほうにかけている感じで、
すると安定が悪いので顎を引きますね。
こういう形でお写真を撮ってもらう。
ずーとしてると疲れますから、お家では好きなようになさって、(笑い)
ちょっとおしゃれして、出かけたときの姿勢で。
真っ直ぐに見るのは、まじめな話聞くときは横座りはいけませんが、
気楽なときは、ちょっと斜めにしますと、立体的に見えて身体が細く見える。
男舞でもそうです。これは、閻魔様みたい、でもちょっと色男に見える。
女の子はこう。奥さんはこう。芸者さんになると、こう。(とそれぞれのシナを作って見せる)
明るい見方は、こうです。
だから、仕草でいろいろ語ります。知らないうちに仕草は語っています。
ですから、日常の自分が出ていってしまいますが、
できれば美しく出たほうがいいじゃないかと思います。
折角おしゃれしたときだけは、ちょっと、しんどいかもしれないですが、
身体にもいいんですから、体重を前にして、顎を引いて、
ちょっとこういう風に、お澄まししてみるのでどうでしょうか。
仕草でおしゃれしてみてはいかがでしょうか。 (了)
(小見出しは、Den10の会ホームページ編集部でつけました。)