投稿日: May 30, 2013 7:19:42 AM
邦楽いろは談義(第15回)「着物しぐさと舞」公演の模様を報告します。
午後6時の開場前から、入場を待つ人の列ができ、予約やチケット購入者のほか
当日いきなりの入場者でふくれあがり、予測を超えた入場者となり、
会場への通路や入り口付近は、公演へのぞめきが渦巻いていました。
このため急遽、補助席を増やして椅子席を増設し、来場者とスタッフ出演者を含めた
総勢102人の大入りの公演開始となりました。
1、会場設営とリハーサル
会場は、広島市中心部の中区基町の広島城公園の一角に鎮座する広島護国神社です。
五月晴れの空の青さと白い雲、そして新緑が眼に眩しい素晴らしい天気でした。
(リハーサル 楽器の位置を確かめる)
2、開演、舞「待てど暮らせど」
午後6時30分、いよいよ開演。古澤侑峯が花道に登場し、舞「待てど暮らせど」。
大正浪漫を代表する竹久夢二が作詞して一世を風靡した詩歌をもとに、
古澤侑峯が創作した地歌舞です。
琴の音の演奏につづけて、地歌が入ります。
「待てど暮らせど 君いでず」
「日は暮れはてて ほの白き 角のほとりの 小路の花よ」
と歌い、さらに
「待てど暮らせど 来ぬ人を 宵待草のやるせなさ 今宵は月も出ぬさうじゃ」
と、後半は、唱歌宵待草の歌詞を、ほぼそのまままに歌います。
どことなく艶っぽくなっている唄に、古澤侑峰がつける振り付けは、どんなんだろう?
と、どうしても観たかった舞台姿が、いま目の前にありました。
待つ女の細やかな情念を、情感あふれる舞で魅せてくれました。
(参集殿で舞台の設営をする) (も少し、ずらせようか・・・)
護国神社でお借りした会場の使用ルールは、利用者が会場設営し、
終了後は、使用前の状態に現状復帰する。どこのホールでも採用してる原則でした。
会場設営が終わり,午後5時15分からリハーサル。
出演者の舞台への出入りと、楽器の搬入搬出,音出しのタイミングをチェックしました。
(舞への期待が高まる) (会場の広島護国神社)
参集殿瀬戸の間に、格子の窓を背負って高さ40cmの舞台を設営し、
これを取り囲むように、正面、北面,南面の三方に椅子を並べて,座席を設置しました。
椅子席は最前列を基準に、席と席の合間に後ろの席が並ぶようにずらせて配置。
このわずかなずれだけで最後尾の椅子席からも、すっかり舞台が見えやすくなりました。
(花道から登場) (「待てど暮らせど」 古澤侑峯、待つ女を舞う)
3、和楽器演奏「瀬音」、「海鳴り」
つづいて、筝と十七絃の演奏で「瀬音」、そして箏を三絃に持ち替えて「海鳴り」。
十七絃は光原大樹、筝と三絃は岡野志保です。
「瀬音」 は宮城道雄の作曲。宮城が群馬県に旅行したときの、
谷川の上流を流れる清流と水音が、まるで目の前に迫ってくるような、真迫の演奏でした。
( 「瀬音」 宮城道雄作曲 ) (三絃岡野志保、十七絃光原大樹 「海鳴り」)
筝を三絃に持ち替えての二曲目は、現代曲の「海鳴り」(石井由希子作曲)でした。
三味線が高音を、そして十七絃は重低音を奏でて、
太平洋か、日本海か、荒波が打ち寄せる曇り空の大海原を思わせる
深いメロディと迫力あるリズムが会場に充満します。
三味線が小刻みに、強い風をうけ押し寄せる白波を思わせるメロディーを反復します。
それを十七絃のリズムが、まるでうねる大きな波頭のように追いかけて重なりあい、
とどまることのない大海原の風景が目に浮かんだと思った瞬間、
十七絃が、グゥオォ~オォ~ンと、とどめの波音を響かせ、海が吠えて曲は終わりました。
ながい静寂ののち、力強い拍手が会場を包みこみました。
4、「着物しぐさと舞」 古澤侑峯
そして、古澤流家元の「「着物しぐさと舞」をテーマにした、お話しが始まりました。
日本舞踊と歌舞伎、そして地歌舞との関連から家元の話しははじまり、
地歌舞と美しい姿勢について、しぐさと健康な姿勢へと話しは推移します。
さらに、美しく見えるときの人の顔の表情、とりわけ眼の輝きを増すしぐさを演じ、
歩く姿勢の美しさを保つ秘訣へと、話しは縦横に広がりました。
最後は、地歌舞をもとに考案された舞体操を古澤さんの指導で、身体を軽く動かしました。
会場の参加者も舞台に上がり、荒城の月の曲に沿って、地歌舞の基本動作で腕や肩をまわし、
肩こりをほぐし、ストレス解消の健康体操を全員が楽しみました。
(「着物しぐさと舞」のお話し) (参加者全員が、舞体操)
5、邦楽いろは談義(第15回) 終章
邦楽いろは談義(第15回)「着物しぐさと舞」は、会場のみなさんの舞体操で幕を閉じました。
平日、花の金曜日の夕方公演でしたが、会場をいっぱいにする大勢の方々に、
ご来場いただき、ほんとうにありがとうございました。
広島で地歌舞を知って欲しいと、最初に公演を手がけてから、今回が都合6回目の舞台。
お馴染みの方々に、今回もたくさんお越しいただき、深く感謝いたします。
もっと、もっと、広島に地歌舞を馴染ませたいと意気込んで、
今回の邦楽いろは談義は、ワンコインで企画しました。ちょっと寄って見ようかと、
足を運んでくださった人が多勢あり、初めての方々にもたくさんご覧頂くことができました。
これまで手がけてきた広島での地歌舞公演とあいまって、今回は、
地歌舞の裾野が、少しずつ広島でも広がり始めている実感を持つことができた公演でした。
地歌舞が見足りない、というお叱りの声を、うかがいました。
ワンコインで企画した意気込みに免じて、ご容赦ください。
次の公演は、地歌舞をたっぷりご覧いただける舞台にしたいと、ひそかに期しているところです。
みなさま、ほんとうにありがとうございました。